麦わらの一味殲滅RTA〜夢を閉ざす者〜   作:敗北者

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今回の話は難産、というかなんというか。
ちょっと上手く書けた感じがしない……

三人称一元視点で書きました。だからかな?

後で修正するかもしれません。


幕間 海賊志望・海兵志望

「なんなんだ? あいつら」

 

「あのジジイは……ルフィのジジイだ。後の二人は知らねえ」

 

 小さく呟いたサボに、エースもまた小さな声で返答した。

 突然やってきたガープが、また小さな子どもを連れてきた。しかも今度は二人だ。あいつらもここに預けられるのだろうか、そう考えると、エースは顔を顰めずにはいられなかった。

 

 今となってはエースはルフィとは義兄弟として仲良くやれているが、最初からそうであったわけではない。初めは、付きまとってくるうっとうしいヤツ。ぐらいにしか思っていなかったのだ。

 しかし、ブルージャムの仲間のあの海賊──ポルシェーミの一件があって、ルフィは信用できるやつだとわかった。ブルージャムに命を狙われることになったから三人で協力するようになって、一緒に暮らしていくうちに掛け替えのない存在になった。

 そして……義兄弟の盃も交わした。

 

 だが、ルフィと仲良くなれたからってあいつらとも仲良くなれるとは限らない。というか、エースは仲良くなんてなる気はない。それどころか、エースとサボとルフィ。この三人の輪の中には誰にも入られたくないとすら思っている。

 そもそも、命を狙われているエースたちと仲良くすればあいつらも命を狙われかねない。エースにとってあいつらがどうなろうが知ったことではないが、自分たちのせいで捕まったりしたら面倒だしなんとなく嫌な気分になる。きっと、あいつらが情報をもらす可能性があるからだろう。やはり、近くにいてほしくはない。

 

「……ルフィとは仲良さげだな。知り合いなのかな」

 

「……」

 

 その可能性もあるが……フーシャ村にあんな子どもはいただろうか。

 

「こっちに来るな」

 

「……ああ」

 

 表情が乏しい静かな女と明るくニコニコした女。正反対の二人だ。そんな二人組を、ルフィが引き連れてきた。

 

「エース! サボ! 紹介するよ! おれの妹と新しい友達だ!」

 

「シアはシアだよ! よろしくね、エースくん、サボくん!」

 

「ホムラ……妹の方」

 

 静かな方──ホムラはルフィの妹だったのか。道理で親しげだったわけだ。そういえば、以前ルフィは双子の妹がいると言っていた。こいつがそれだというわけか。

 

「ああ、よろしく。おれはサボだ」

 

 ルフィの妹だと聞いて、サボは多少警戒が解けたようで無難に挨拶を返した。

 

「……エースだ」

 

 だが、エースは警戒心をまるで解かなかった。エースは覚えていたのだ。ルフィの妹は海兵を目指しているという話を。こいつは敵だ。となると、一緒にいるシアも同じ海兵志望なのだろう。エースはより一層ホムラとシアに対しての警戒を深める。

 

「……」

 

 ホムラがエースをじっと見つめてくる。何を考えているかわからないが、海兵なんぞを目指しているやつに見られるのは不快だ。

 

「……ん」

 

 スッと、何かを差し出してきた。どうやら、袋に入った煎餅のようだ。だが、そんなものを渡してきてどうするのだ。

 

「あ? なんだこれは?」

 

「……お煎餅」

 

 そんなものは見ればわかる。エースが知りたいのはそういうことではない。

 

「……お菓子あげれば……仲良くなれるって聞いた……おいしいよ……?」

 

 その言葉を聞いて、エースはカッと頭に血がのぼるのを感じた。それではまるで、餌付けだ。エースはそんな手段で懐柔されるようなガキでもないし畜生でもない 。バカにされているのかと思った。

 思わずとっさに手を振り上げて……振り下ろす場所に困った。相手はルフィの妹だ。それでなくとも歳下の女。こんなことで殴りかかったりするのはさすがに情けないとエースは思った。

 

「ちっ……いらねぇ」

 

 振り上げた手で、煎餅の袋を弾く。このぐらいなら許されるだろう。これで多少は溜飲が下がった。

 

「……」

 

 

 ◆

 

 ホムラの表情が完全に消える。ホムラは、実は今日ここに来るのをわりと楽しみにしていたのだ。ガープから、血は繋がっていないがもう一人孫がいると、今はルフィと同じ場所に預けていて今回の帰郷で会いにいくと聞いた。

 初めて会う相手だが、ガープの孫なら自動的にホムラにとっても家族ということになる。親友のシアは家族は仲良くするものだと言っていた。

 

 だから、ホムラもなんとか仲良くなれないかと考えた。教官にアドバイスをもらってプレゼントを贈ると良いと聞いたから、月500ベリーのお小遣いを貯めて1000ベリーのお煎餅を用意した。

 マリンフォードにあるホムラの大好きなお店のお煎餅。きっと喜んでくれるはず。

 そう信じて疑わなかった。

 

 やってきたダダンという山賊の住処。ガープに教えられたエースという少年。なぜかもう一人子どもがいたが、ひとまずはエースだ。

 

 ホムラは周りの人には隠しているが、実は口下手で結構人見知りするタイプだ。生来の大人しい性格と相まって、知らない人と会話するのはいつも一苦労する。このことはまだ誰にも気づかれてはいないだろうが、苦手なことだと自覚していた。

 

 だけど、初対面だがエースは家族ということになっている。だから、ホムラは勇気を出して自分から話しかけた。

 お煎餅もちゃんと渡そうとした。

 

 なのに……なのに、お煎餅は受け取ってくれなかった。それだけならまだ良かった。もしかしたらお煎餅が嫌いだったのかもしれない。それならプレゼントにお煎餅を選んだホムラが悪い。そう納得しかけて、その思いも霧散した。

 

 あろうことか、エースはホムラのお煎餅は乱雑に払い除けたのだ。ホムラが二ヶ月分のお小遣いで買った、自分で食べるのも我慢してエースのために用意したホムラの大好物。これから家族になる彼にも一緒にこの美味しいお煎餅を共有してほしくて、喜んでもらえると思ったのに。

 

 全てを裏切られたホムラは、もうすでにエースのことを嫌いになりそうだった。

 

 そもそも、食べ物を粗末にするのは悪いことだ。ホムラはマキノにそうやって教えてもらった。その上、それがホムラの大好物だったのだから尚更だ。もうホムラはこの男をボコボコにしたくて仕方なかった。この男は〝悪〟だ間違いない。

 だけど犯罪を犯したわけではないから、捕まえることはできない。

 

 だけどまぁ、一発ぐらいは良いだろう。

 

 食べ物は粗末にしてはいけないと、わからせてあげなければならない。ガープがルフィによく行っていた、教育の拳だ。この一発でなんとか頑張って怒りを沈めよう。そして、この男に食べ物を粗末にしてはいけないとキチンと教えてあげるのだ。

 

 そう思った時にはすでに、ホムラは拳を振り抜いていた。

 

 あんなに楽しみにしていた自分が滑稽で笑えてくる。くだらない。家族はルフィとガープにマキノと、それに義姉妹の盃を交わす約束をしたシアだけで良い。

 

 ルフィには悪いけれど、この男はいらない。

 

 ホムラはそんなことを考えていた。

 

 ◆

 

 

「ぐあっ!!」

 

 ──こいつッ! いきなり殴ってきやがった!! 

 

 ホムラに殴られたエースは吹き飛び、壁に背中を叩きつけられる。

 

「「エースッ!!!!」」

 

「いってェ……」

 

 なんとか起き上がるが、殴られた腹と壁にぶつけた背中がズキズキと痛む。

 いきなり殴り掛かってくるか、普通? エースはつい先ほど、ホムラに殴り掛かりそうになった自分を棚に上げて、ホムラの神経を疑った。

 

 だが、それでもエースはまだ冷静だった。菓子を跳ね除けたのは、悪いことだと自覚していたからだ。せっかくあげようとした菓子にそんな扱いをされればホムラが怒ることも理解できる。

 

 いきなり殴り掛かってくるのはおかしいが、一発くらいは甘んじて受けよう。そう思う程度には、エースは悪いことをしたと自覚していたし、やはりまだ冷静だった。

 そう、冷静だったのだ……次の瞬間まで。

 

「……ふっ」

 

「ッ! テメェ……!!」

 

 ──ハナで笑われた……? 

 

 ──このおれが……? 

 

 ──クソッ!! 許さねェ……! ブッ飛ばしてやる!!!! 

 

 ああ、確かに悪いのはエースだっただろう。一発くらいは甘んじて受けてもいい。

 だが、嘲笑されて黙っていられるほどエースは大人ではなかった。ホムラが何を思って嘲笑してきたのかは知らないが、ナメられたままでいられるわけにはいかない。女だからとか関係ねえ。わからせてやらねばなるまい。

 

 冷静さを明後日の彼方へ投げ捨る。やはりこいつは敵だった。警戒していて正解だった。海兵志望なんてロクな奴はいない。そう判断してからはエースに迷いはなかった。

 

 エースが突っ込むと、自分から喧嘩をふっかけたはずのホムラはなぜか驚いた顔をした。反撃されないとでも思ったのだろうか。

 だが、どうだっていい。エースは構わず殴りかかる。

 

「オラァ!」

 

 しかし、彼女はそれを難なく躱す。さらなる攻勢を仕掛けるが、悉く防ぐ、躱す、受け流す。さらには、隙を突いてエースの腹を的確に殴り抜いてきた。とっさにかわそうとしたが、あまりにも的確なタイミングだったためにろくに防御もできず、再び殴り飛ばされた。

 

「がぁっ!」

 

 ──こいつ! クソつええ……!! 

 

 ホムラのことを歳が下だし女だしと、絶対に格下だと思っていたエースだったが、その予想以上の強さに唖然とする。

 まるで流水を相手にしている気分だった。攻撃は何も通じず、流れるようなカウンターを打たれた。

 

 コルボ山の獣や、並みの大人相手になら難なく勝てるエースだが、そのエースをもってしても明らかな強者。力や速度はこちらの方が速いし、今まで相手してきた敵と比べても特別速いというわけではない。

 だが、その技術力という一点だけが、力技しか覚えのないエースにも明確にわかるほどに鮮やかで圧倒的だった。

 

 それでも負けるわけにはいかない。エースは何よりも逃げ出すことが大嫌いだ。何度殴られてもエースは己を奮い立たせて、諦めずにホムラに殴り掛った。

 

「エースッ! この!」

 

「サボまで! やめろお前ら!」

 

 サボが加勢してくると、状況が変わった。元々、身体能力はエースが勝っていたのだ、いくらホムラに技術があるとはいえ、自分よりも基礎的なスペックが高い相手に二人掛かりで攻められればさすがに苦戦するらしい。

 

 その上、エースとサボのコンビネーションは抜群だ。

 

 サボが加勢した以上、エースは負ける気がしなかった。

 絶対に勝てる。そう確信していた。

 

 だが……

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

「ッ……! ……く、くそっ!」

 

「……はぁ……ふぅ……」

 

 床に転がっているのは、サボとエース。疲労困憊でありながら立っているのはホムラだけ。

 

 負けたのだ、エースは。歳下の女に、二人掛かりで挑んで、それでも負けた。もう情けなさで死にたい気持ちだった。

 何発か攻撃は当てることができたが、それでも攻撃を当てた回数ではエースたち二人を合わせてもなお、ホムラの方が十倍は多いだろう。

 

 完膚なきまでの敗北だ。

 

「……はぁ…………嫌い。かえる」

 

 小さく簡潔に今の心情を呟いたホムラは、踵を返す。

 

「……ハァ……おい、……待てッ!」

 

 エースはとっさに呼び止める。なんでそんなことをしたのか自分でもわからない。気づいたら声を上げていた。しかし、ホムラはそれを無視して出て行こうとする。だが、そこに待ったをかける者がいた。

 

「待って! ホムラちゃん!」

 

 シアだ。親友であるシアの呼びかけに、ホムラは足を止めた。

 

「……なに?」

 

「えっとぉ……、そう! 喧嘩したら仲直りしなきゃダメだよ!」

 

「なんで?」

 

「何でって……何でも!」

 

「……べつにいい。仲良くする気はない」

 

 にべもなく突き放すホムラに困ったような顔をするシア。彼女は本気でエースたちのことが嫌いなようで、もう目を向けもしていない。

 

「もう! ホムラちゃんが知らない人と話すのが苦手なのは知ってるけど、こんなんじゃダメだよ!」

 

 シアの言葉を聞いて、明らかに動揺した表情をするホムラ。今の言葉のどこに動揺する要素があったのだろうか。彼女が口下手で人見知りなのは、この短時間しか接していないエースでもすでに気づいていたことだ。きっとサボも気づいているし、ダダンたちも気づいたことだろう。

 いや、ルフィだけは気づいてないかもしれん。あいつはバカだ。

 

「な、なんで……知って……」

 

「仲良くなりたいならちゃんと話さなきゃ! あんなにエースくんと仲良くなりたいって言ってたじゃん!」

 

 ──は? ホムラがおれと仲良くなりたかっただと……? 

 

 ホムラと出会ってからのことを思い出す。挨拶された。菓子を差し出された。お菓子をあげると仲良くなれるとかなんとか言ってた気がする。それを断った。それだけで飽き足らず払い除けた。そしたら殴られた。そりゃそうだ。

 鼻で笑われたことだけは理由がわからないが、ホムラのこの様子だと別にエースを嘲笑したのではなく、何らかのちゃんとした理由があったのかもしれない。

 それで逆上して二人掛かりで殴りかかったのは、今になって思うと明らかにやりすぎだ。

 

 ──全面的におれが悪くねぇか……? 

 

 海兵志望だからといって、あまりにも警戒心が強すぎてホムラのことを穿りまくった目で見ていたことを、エースは今更ながらに自覚する。

 ただ菓子をくれようとしただけで餌付けってなんだ。常識的に考えてそんな訳がないだろ。発想が飛躍しすぎだ。

 

 冷や汗がたらりと流れる。

 

「おい待て、それは本当なのか……?」

 

「知らない」

 

「もー! ホムラちゃんはいつまで拗ねてるの! あんなに会うの楽しみにしてたでしょ! ガープ中将のお孫さんなら、家族だから、仲良くなりたいって! 言ってたじゃん!」

 

「……」

 

 表情に乏しいのでわかりにくいが、何となく恥ずかしがっている気がする。その反応を見れば、誰でもわかる。本当のことらしい。

 

 それにしても……家族、か。エースに血の繋がった両親はすでにいない。それどころか、父親はもう死んだがとんでもない大罪人だ。そのことを知れば、誰もがエースを嫌い、蔑み、否定する。エース本人だってそんな迷惑な父親のことは大嫌いだ。

 ホムラはきっと、エースの父親のことは知らないだろう。ガープにエースの素性を聞いていないからこそ、その言葉が出てきた可能性は高いだろう。

 それでも、自分を家族と呼ぼうとしてくれたという事実は、多少なりともエースの心を動かした。少しだけ、ささくれ立った心を解きほぐした。

 

「……すまん。おれが悪かった」

 

「……!」

 

 エースは、一言で言うとクソガキである。その上、海賊を目指していることから、食い逃げ、盗み、暴力など、悪いことはなんでもやってきた。さすがに、例え相手が悪人であっても殺しはやってないし、一般市民への暴力も基本的にはしない。だが、それでも札付きのワルであるのは間違いない。

 

 しかし、それらも悪いことをやっているという自覚はちゃんと持っている。反省はしないが、自覚は持っているのだ。

 

 だからこそ、その気になれば自分の非を理解して詫びるくらいのことは当然できる。

 

 札付きのワルではあるが、エースはタガが外れた悪人などでは決してないのだ。

 

 ましてや相手はめちゃくちゃ強いとはいえ、歳下の7歳の女子。こんな相手にしっかりと詫びを入れないのは、むしろダサすぎることだと、自らの高くそびえ立ったプライドが囁いた。

 

 エースが頭を下げると、ホムラは何かを考えるような仕草をする。

 

「……お煎餅……好き?」

 

「あ? ……まぁ、どっちかと言えば好きだ」

 

 付け加えるなら、辛ければなお良い。

 

「食べる?」

 

 そう言って先ほどと同じように袋を差し出すホムラ。なぜか封は開かれていて、中身が若干減ってる気がするが気のせいだろう。

 

「じゃあ、もらう」

 

「おいしい?」

 

「美味いな。今まで食べた煎餅で一番美味いかもしれねえ」

 

「ならいい」

 

 ホムラは満足そうに頷く。これは、謝罪を聞き届けてくれたのだろうか? 

 彼女は無口で表情も乏しく、エースには彼女が何を考えているのかよくわからない。結局そのすれ違いと、エースの被害妄想じみた思考の結果がさっきの喧嘩だ。今後も同じようなことが起こらないとも限らない、これはめんどうだなとエースは頭を抱えた。

 

「ほら! ホムラちゃんも謝って! 事情があったとはいえ、先に殴っちゃったのホムラちゃんでしょ!」

 

「ん、ごめん」

 

「あ、ああ」

 

「よし! ちゃんと仲直りできたね! サボくんもそれでいい?」

 

「……いいもなにも……ホムラ、悪かった」

 

「ん……わたしも、ごめんね」

 

「じゃあ、この話はおしまい! それより、もっと楽しいお話しようよ! さっきの喧嘩見てたけど、エースくんとサボくんも強かったね!」

 

 それは、楽しい話なのか? エースは疑問に思った。

 エースやサボ、ルフィにとっては喧嘩の話などは大好きだが、女子がそれを楽しいと思うのは何となく違う感じがする。だがまぁ、他でもない女子であるシアがその話を楽しいと思っているのだから、女子もこの手の話が好きだということなのだろう。

 エースはそう納得した。

 

「別に、強くねぇ。二人掛かりでホムラに勝てなかった」

 

「ああ、情けねぇよ」

 

 エースは己が強いと思っていた。サボもルフィも同じ気持ちだろう。──ただし、ルフィはあまり強くないが。

 今まで大人や獣に何度も勝利しているのだから、それは事実として間違いではない。

 だが、今回の喧嘩で自分の弱さを知った。ホムラはもっと強かった。

 

「そうだよ! ホムラってあんなに強かったのか、びっくりしたよ!」

 

「べつに、強くない」

 

 ルフィが心底驚いたように叫ぶ。兄なのにホムラの強さを知らなかったのか。以前、妹は海軍本部に行ったとルフィは言っていた。だとすると、海軍本部に行ってからこれだけ強くなったのだろう。それは少し、羨ましい。きっと、向こうには戦い方を教えてくれる優秀な指導者がいるのだろう。エースたちの環境だと、そんな存在はいないため独学で強くならねばならないのだ。

 

 まだ7歳のホムラだ。きっと、海軍の正式な海兵たちはもっと強いだろう。ホムラ本人も、自分は強くないと言っている。ホムラより強いやつがたくさんいるのだ。

 そう思うと、このままではいられない。もっと強くならないと、大海賊になんてなれはしない。エースは気合いを入れ直す。

 

「おれは、大海賊になんのさ。誰にも負けねぇくらい強くなる!」

 

「おれも自由な海賊になるんだ! このままじゃいられない!」

 

「おれは海賊王になるぞ!」

 

 エースの言葉に、サボとルフィが続く。別にここで夢を語る必要は特にない。だが、何となくホムラにはこれを言っておきたかった。エースは強い奴が好きで、弱くて情けない奴は嫌いだ。悔しい気持ちが最も強いが、自分たちを打ち負かしたホムラに対して尊敬の気持ちは僅かながらにあるし、すでにその強さを認めていた。

 だからなのか、こいつにも認めてもらいたいと思ったのかもしれない。自分の夢を、エースという存在を。

 

 後ろの方で「まだ海賊になるなどと、くだらんこと考えいるのか!」という怒声が聞こえたが、無視でいいだろう。

 

「……海賊。なら……シアたちのライバルだね!」

 

「わたしは最強の海兵になる……だから、三人ともわたしたちが捕まえる」

 

「捕まるわけにはいかねぇな」

 

 ライバルか……

 なるほど、その言葉はしっくりくる。ホムラもシアも、海兵志望の敵だが、すでにわだかまりはない。戦闘能力で圧倒したホムラはもちろん、シアの明るい人柄は敵となったら厄介になりそうだし、その実力はわからないがきっとかなり強いはずだ。彼女たちとライバルとして戦っていく関係。そういうのも悪くはないだろう。

 

 何より、この二人。特にホムラには負けたくないと、強く思う。エースは今までサボ以外の子どもに負けたことがないのだ。サボは敵ではなく義兄弟だし、負けてもそれはいつも通りの修行の一環にすぎない。

 だが、ホムラは違う。こいつは海兵志望の敵だ。だからこそ、負けたくはないし、こんなに悔しい思いをしているのだ。

 

 ──面白いじゃねえか。

 

 エースは、自然と笑みを浮かべて自らのライバルに堂々と宣言した。

 

「次は絶対に負けねぇ」

 

 その言葉に、やはりホムラも口もとを微かに緩めて笑った。

 

「次も勝つ」

 

 この日、エースはこの先ずっと続くことになる終生のライバルを得ることになった。

 

 

 

 

 

 

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