ゆずこ、縁、唯の情報処理部メンバーたちは、ある日部室のパソコンにて不思議なメールを受け取る。
それに添付されていたURLをクリックするとチェスゲームの画面が出てきて……

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息抜きで短編に挑戦してみました。ノーゲーム・ノーライフのタイトルがゆゆ式の最終回タイトルと似ているという思い付きからです。
ゆずこがチェスやれるかどうかなど、ツッコミどころが多い気もしますが、深く気にしないでいただけたら幸いです。


ノーゲーム・ノーライフ? ノーイベント・グッドライフ!!

ある日の情報処理部。

野々原ゆずこ、日向縁、櫟井唯の仲良し三人組は何故か部室のパソコンでチェスゲームをやっていた。

 

「やったー! ランキング1位ゲット!!」

「わーい!!」

「お前ら、部室でやるなよ」

 

いや、厳密にいえば唯以外の二人だった。なんでも、今回の課題をどうするか考えていると結局思いつかなかったという。所謂マンネリ状態に突入してしまったらしく、息抜き目的でとりあえずやってみようということになったとか。

一人参加していない唯は、二人の横で頭を抱えている。

 

「あれ? 唯ちゃん、なんかメールが来たけど」

 

いきなり部室のパソコン(ゆずこ使用中)にメールが届いた。

 

「? なんでわざわざ部室のパソコンなんかに?」

「さあ?」

「とりあえず、開けてみよっか」

 

そして縁の提案から、このメールを開けてみることにした。

 

「えーっと、[君ら三人は、生まれる世界を間違えたと感じたことはないかい?]だって」

「うわ、何それ怖」

 

突然届いたメールの内容に、思わず唯が引く。しかも、どこかで覗き見でもしているのか、こちらの人数を把握しているかのような文面だった。

 

「なあ、ヤバそうだから削除しないか?」

「待って。これ、どっかにつながっているよ」

 

ゆずこの言う通り、このメールにはURLが添付されていた。

 

「本当だな」

「う~ん……どうしよう縁ちゃん?」

 

とりあえず、部長であるゆかりの指示を仰ぐことにするゆずこだった。ちなみに、部長という自覚が縁本人にはないらしく、いつも通りの名前呼びであった。

 

「……とりあえず、見るだけ見てみよっか」

「そだね。今日のお題のヒントが見つかるかも」

「あ、コラ!」

 

唯が静止するも間に合わず、ゆずこはURLをクリックしてしまった。

 

「お前らなぁ、もしウイルスとか詐欺の類とかだったらどうするんだよ!?」

「え、これマジでやばいメール!?」

 

唯の一言で驚愕するゆずこだったが、その心配は気鬱だった。

 

「あれ? これって……」

「チェス盤だな」

 

そう。先程ゆずこがやっていたものと仕様は違うようだが、チェスゲームの画面に映ったのだった。

 

「私達と対戦したいっていうのかな?」

「みたいだな……」

 

メールの送り主の意図は読めなかったが、目的はチェスゲームをこちらにやらせるつもりらしい。新作ゲームの体験版でもやらせようというのか、それとも対戦形式で相手を探しているのか?

 

「唯ちゃん、とりあえずやってみていい?」

「……しょうがない、一回だけだぞ」

「よーし、やってやるぜ!!」

 

心なしか目が燃えて見えるゆずこ。そんな彼女を見て、「あたし、弱いな」と思いながら溜息をつく唯だった。

だが、ゲームの相手が異様に強く、メールが唯と縁を含めた3人あてだったことから、所々で交代してそれぞれの得意分野を責める方法で対抗する形となった。そして、対戦は部活動終了時間10分前まで続いた。

 

結果……

 

「勝ったぁ、そして終わったぁ…」

「まさか、ここまで時間食い込むとは…」

 

お題も決まらずに時間を浪費してしまったが、とりあえず達成感は得られた三人だった。すると、先程のメールの送り主からまたメールが届いた。

 

「また、届いたね」

「どうする?」

「とりあえず、読むだけ読んでみよう」

「了解!」

「お前らなぁ……」

 

縁の決定にゆず子はメールを読んでみる。

 

「[おみごと。それほどまでの腕前、さぞ世界が生きにくくないかい?]だって」

「また怪しい文面だな」

 

とりあえず、ゆずこはメールの返信をすることにした。ここまでやってきて、流石に詐欺という線もないだろうと三人そろって判断したためだ。

 

「[そんなの考えたこともないです]で、送信」

 

とりあえず、簡潔に問いかけに答える形でメールを書いて送信する。

すると……

 

「え? もう返事が届いたよ」

「は?」

 

返事のメールを送信し終えると即座に返信が来たのだ。少々気味悪く感じながらも、メールを読んでみることにした。

 

「[君たちは、その世界をどう思う? 楽しいかい? 生きやすいかい?]……えぇ~」

「コレの送り主って、何考えてるんだ?」

 

ますます送り主の意図が読めないが、とりあえず答えは決まっていたので返信しておく。

 

「[私たちは楽しいと思っています]で送信」

「楽しいよね、唯ちゃん」

「ま、まあな」

 

縁に対して若干顔を赤らめながら答える唯。相変わらず仲がよろしいようだ。すると、先程と同じくらいの速度で返信が来た。

 

「『それを踏まえた上で聞こう。もし、単純なゲームですべてが決まる世界があったらどう思うかな?』だって」

「なに? 偶に漫画とかで見る異世界への招待かなんかか?」

 

唯はメールの文章を見て胡散臭そうに目を細める。まるで異世界があるかのような言い分だったので、そう考えるのも仕方がないかもしれない。

すると……

 

「あったとしても行かないなぁ」

「縁さん、即答ですね」

 

縁の言葉に、ゆずこがふざけた様子で反応する。縁を普段はちゃん付けで呼ぶのに対し、今回はさん付けなのが証拠だ。

 

「で、真面目な話だけどなんでなの?」

「つまり、そんな世界があればゲームで強かったら好き勝手出来るんだろ。逆に弱かったら好き勝手にされるだろうけど、勝てばすごくいい暮らしが出来るんだろう?」

 

 

 

「だってこの世界で、

 

 

 

 

 

 

 

 

私は唯ちゃんとゆずちゃんに会えたんだよ」

 

ゆずこも唯も、縁のその一言に顔を真っ赤にする。縁は、そんな二人の様子に構わず続ける。

 

「ゆずちゃん達に会えたこの世界、それがつまんないはずないもん。今の私がいるのも小学校の頃に唯ちゃんに会って…」

「ちょ、縁やめ…」

「恥ずい、超恥ずい」

 

縁のこの一言にゆずこと唯は揃って悶えるのだった。

そして二人が落ち着いたところで……

 

「じゃあ、このメールに返事書いちゃうね」

「え?」

 

ゆずこがそのままメールの返事を書く。

 

「『今のこの世界に満足しています。なので、そんな世界があっても行きません』で送信っと」

 

そして、またも返信が届く。だが、先程と違う点があった。

 

「あれ? 今度はちょっと間が空いたね」

「だな」

 

そこが気になりつつも、とりあえずメールを読み上げる。

 

「[そうかい、誘いに乗ってくれなくて残念だよ。でも、君たちがそれで楽しいなら仕方がない。せいぜいこの世界での人生を謳歌したまえ]」

「……妙に上から目線だな。でも、これで終わりっぽいな」

 

メールの内容を確認し終えた三人は、とりあえずこのメールを一式削除しようとするが……

 

「あれ? 全部なくなってるよ」

 

ゆずこの指摘通り、先程届いたはずのメールが一つ残らず消えていたのだった。

 

「え~……」

「なんか、もう気味悪すぎだろ」

 

一連の出来事を思い出した三人は、背筋が凍り付くような感じがした。

すると、ゆずこがそれを吹っ飛ばそうとある一言を口にする。

 

「よし。今日のまとめ行こっか」

「え、特に調べ物もしてないのにか?」

 

唯のツッコミも無視してゆずこはホワイトボードにまとめを書きだす。

 

「おぉ!」

「なるほど。まさにさっきのやり取りを体現した感じだな」

 

 

 

 

三人が部室を去った後、部室をある人物が訪れる。その人物は情報処理部の顧問で三人の担任教師、松本頼子(通称お母さん、またはお母さん先生)である。

 

「今日は何か書いてあるかな~」

 

間延びした口調で呟きながら頼子は部室に入り、ホワイトボードを覗く。彼女はこのまとめを見て、その評価を書くぐらいしか顧問らしいことはしていないのだ。

 

「?」

 

頼子はホワイトボードに書かれていた内容を見て首を傾げる。

 

『ノーイベント・グッドライフ それこそが私たちの幸せ』

 

ホワイトボードにはそれだけが書いていた。

 

「う~ん、何を見てそう思ったのか見当つかないけど…………

 

 

ノーイベント・グッドライフ、深いわね」

 

感心した表情で頼子はホワイトボードに花丸と「深い一言、貰いました」の一文を隣に書き込む。

 

その頃、学校の校門を出てすぐの通りにはゆず子たち三人の話し声が響いているのだった。このメールにYESで答えたら本当にゲームですべてが決まる世界に呼ばれるのだが、彼女たちには必要ない。

何故なら……ノーイベント・グッドライフ、それが彼女たちのゆゆ式(ルール)だから。

その後、『  』(くうはく)というゲームプレイヤーが同じ相手を倒し、メールの問いかけにYESと答えて異世界に召喚されてしまうのだが、それはまた別の話。



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