あなたが私のマスターですか?─RE:I AM─【チラ裏版】   作:つきしまさん

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5000字追筆分(´・ω・`)

後半だけど正式版では前半合わせて1話で投稿するよ(´・ω・`)

分断したので後半分のアンケートも回収します(´・ω・`)

なお、1シーン残してるのでまた後で追加していきます(´・ω・`)


第10話

◆チャプター35

 

 白い流星が赤い残影を追って飛ぶ。  

 クレーターの落ち込んだくぼみに赤いザクが飛び込んだ。円面の淵に沿うようにスラスターを吹かしてシャアは敵の存在を背後に感じとる。

 

「一機だけでも。やれるか?」

 

 四人の部下を瞬殺した白いMSだ。奴に甘さはない。じきに追いつかれるだろう。

 もう一機と違ってこいつは危険だ。何のためらいもなく殺戮する。

 殺意があればわかる。だが奴からは気迫や意志を感じさせるものがなかった。まるで機械そのもののキルマシーンだ。

 本能でシャアはそう感じていた。

 

「私は甘いな……」

 

 ラルを救おうとした自分に対し自嘲するように呟く。

 復讐を果たすまでは死ぬことはできない。その想いは深く魂にまで刻まれた己の宿業だ。

 赤いザクにけん制のビームが迸った。誘いをかけるものでシャアはあえてその動きに乗じることにした。 

 

「こっちへ来い!」

 

 誘い出すつもりなら逆手に取ってこちらが先手を取る。

 背後に感じた強いプレッシャーに弾倉を空にしたマシンガンを投げつける。全速でメサイアに向かって突進した。

 

「よけられまいっ!」

 

 正面からぶつかった両機。格闘戦を仕掛けたザクにライフルを捨ててメサイアが応じた。

 がっちりと組み合う形で空中で回転しながらザクは加速して、岩壁に強烈に押し込んだ。激しい接触に装甲が悲鳴を上げてメサイアの機体が激しい火花を散らす。

 

「頑丈だが、中は無事では済まされんぞっ!」

 

 勢いのままにシャアはさらに揺さぶりをかける。加速した機体を遠心力とザクの重さで回転させながらさらに地面に激しく叩きつけた。

 身体にかかる強烈な負荷にシャアは歯をかみしめる。想定していたとはいえMSによる直の肉弾戦は大きな負担だ。

 これが通常のパイロットであれば脳震とうを引き起こしていただろう。が、そこでザクの動きが止まった。

 

「動けん……」

 

 振り回されるままだったメサイアの腕がザクの動きを封じている。損傷したザクの腕が引っ張られ空虚の間にザクが浮かぶ。

 振り上げたメサイアの腕から突き出した衝角槍がモノアイの頭部ごと叩き落とした。

 その強烈な衝撃がシャアを襲う。そして再度襲った揺れがコクピット内に響き渡った。

 意識が飛ぶのを感じシャアは気を失った。

 駆動系統を完全破壊されたザクが浮かび上がる。メサイアに仕掛けた後先考えぬ特攻はザクにも致命的な損傷を負わせていた。

 ザクの片腕をもぎ取ったメサイアがその腕を捨てた。

 

「任務を遂行します」

 

 敵の排除が命令である。リズエラはマスター命令を忠実に順守する。

 ビームサーベルで止めを──

 ざわめく感覚──

 違和感──

 それはずっと感じていたものの正体──

 彼を殺してはいけない!

 なぜ?

 彼とは誰?

 輝く光る剣にためらいの意思が吞み込まれる──

 

”地球に住む者は自分たちの事しか考えていない、だから抹殺すると宣言した!”

”人が人に罰を与えるなどと!”

”「私、シャア・アズナブルが粛清しようというのだ、アムロ!”

 

 その瞬間、声が私の心一杯に満ちた。

 

”「地球が持たん時が来ているのだ!そんな物では!」”

 

 声は続く。

 

”「──アクシズの落下は始まっているんだぞ!!」”

”「νガンダムは伊達じゃない!」”

 

 光のビジョンがリズエラを包み込む。その光は巨大な隕石の塊から発せられている。

 これは、何──?

 

”「結局、遅かれ早かれこんな悲しみだけが広がって地球を押しつぶすのだ。ならば人類は、自分の手で自分を裁いて自然に対し、地球に対して贖罪しなければならん。アムロ、なんでこれがわからん!」”

”「わかってるよ!だから、世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろ!」”

 

 嗚呼……! 光が見える……

 宇宙に投げ出された私の心は光の波によって押し流された。

 あの時、光となったすべての人々の声を聴いた。それは一つの奔流となってアクシズの軌道を変えさせた。

 

 

 

──凍り付いた世界で眠る私に暖かさをもたらしたもの──

 

 

 

 もっとも光り輝いた魂が二つ昇華しながら「彼ら」は私を導いた。

 その声がそっと優しく包み込んで地上に向けて「私」を送り込んだのだ。

 「シャア・アズナブル」

 「アムロ・レイ」

 「彼ら」と、そして「彼女」が──

 

「あなたたちが──」

 

 震えながら体を抱いた。熱い雫を頬に感じ、記憶とせめぎ合う意思の狭間に揺れた。

 

『リズエラ、もうデータは十分だ。帰還しろ』

 

 その声がリズエラを現実へと引き戻す。

 収束していたビームの光が消えて、ザクに止めを刺すことなくメサイアは月の宇宙(そら)を飛んだ。

 

「了解、帰投します」

 

 マスターから帰還指示に返答を返す。

 目の前に水分のしずくが漂ってリズエラはヘルメットを脱いだ。零れた明るい髪が広がって頬にかかる。

 リズエラは大きく息を吐き出して、遥か眼下になったザクを見降ろした後、メサイアは帰還していた。 

 

 

 月面の地表すれすれに赤い残骸が漂う。電子機器がわずかに点滅する暗いコクピット内で意識を失ったパイロットがいる。

 仮面の口元が開きわずかに指先が動く。

 落ち込んだくぼみの陰から赤いザクが漂い出る。シャアは太陽の光を見た。

 生きている──なぜ私は生きている? どうやって生き残った?

 ザクのコントロール機能は失われている。操縦桿に置いた手を戻してヘルメット・フェイスに触れた。

 残存酸素を確認する。問題はない。コクピットも空気漏れを起こしていない。

 MSは動きそうにない。激しい戦闘の傷跡を残す機体をどうにか動かそうと試みるが果たせなかった。

 このまま宇宙を漂うデブリの中で死ぬわけにはいかない。

 通信機能は死んでいなかった。

 私としたことがうかつだな……

 味方からの通信にノイズが混じる回路を開く。飛び込んできた声はオルテガのものだ。

 

『おい、赤い奴、生きとるかっ?』

 

 通信を送ったオルテガの後ろにはラルがいる。マッシュ機にはガイアが搭乗する。

 頭部を失ったザク二機に生存者である四名が搭乗していた。

 

『ラルだ。シャア上等兵、お前を回収して帰還するぞ』

「ご無事でしたか、大尉」

 

 ラルの声に仮面の下でシャアは笑みで答えた。

 

『無茶をするなと言ったはずだ』

「連邦は、あの白い奴は?」

『ミノフスキー博士を取られた。が、我々には眼中もくれずに行ったよ。お前が引き付けたもう一機もな』 

「そうでしたか」

『何があった、シャア?』

「わかりません……奴は、私を見逃したようです」 

『命あってこそ次がある。この雪辱は必ず晴らす。除名処分にならなけりゃだがな。あの四人は残念だった』

「はい……」

 

 何という無力さだ。シャアは動かそうにも動かぬ操縦桿を強く握りしめる。

 むざむざ四人の部下を死なせたこと。抗うには圧倒的な強さを持つ敵MSの存在。

 そして光を見たような気がした。

 その時のことをラルに説明する言葉をシャアは持たない。それが何であったのかを確かめることもできない。

 あの瞬間──刹那のひと時でしかなかった邂逅。

 機体を揺るがす衝動。頭部のないマッシュのザクが赤い機体を確保していた。

 視界を確保するためかハッチは開きっぱなしだった。

 

「そいつは捨ててこっちに移れ。酸素は問題ないか?」

「平気です」

「コクピットはこれ以上乗れん。図体がデカいのが二人いるからな。手に乗れ」

「了解」

 

 シャアはコクピットから出て味方機に乗り移る。

 

「こちらの位置は報せてある。直に回収が来る」

 

 ザクに乗り換え、友軍の指定ポイントに向かいながらシャアは激戦となったスミス海を振り返った。赤く燃えた戦場はすでに遠く地平線の向こうとなっていた。

 

◆チャプター36

 

『──M02、ミノフスキー博士を収容したらただちに帰還せよ』

 

 クリスの声がニムエのコクピット内に響く。

 散布されたミノフスキー粒子はほぼ散って通信機能が回復していた。

 ニムエは眼下の捕虜に目を向ける。捕虜の扱いなど知らないのだ。相手は軍人である。

 

「あの人たちはどうしますか?」

『あの人たち?』

「ええと、パイロットさんたちですけど……」

『ジオンなど放っておけ』

「いいんですか?」

『連邦の軍人なら拘束して捕虜にするだろうが我々は関係ない。ザクの回収も任せればいいさ。リズも帰還させる』

「了解です──」

 

 回収したミノフスキー博士にしっかり捕まっているようニムエが指示してメサイアが再起動する。

 救助艇のテムは乾いた口の中を湿らせた。白いMSから目を離すことができないでいる。

 

「これは現実なのか……? あれが、あれがモビルスーツだというのか?」

「部長」

「何だ?」

「アナハイム所属の船から通信です。所属はインダストリアル7ですが……」

「インダストリアル7だと?」

 

 テムが返事をする前に通信が開かれる。

 

『テム・レイ部長、こちらのデモンストレーションはいかがでしたか?』

「デモンストレーションだと?」

 

 女の声にテムが返す。眼下に拡がるのは一面戦場の跡だ。デモンストレーションなどという生易しい世界ではない。

 

『救助に手が足りないでしょうからこちらからも支援を出します。よろしいですか?』

 

 声がやたら近くに感じる。大きな船のシルエットが頭上にさしてテムは見上げた。そこにAEのロゴマークを付けた輸送船があった。

 

「やはり、あれがビストと共同で開発したというモビルスーツなのか……」

『その通りです。最高のパフォーマンスをご体験いただけたかと』

 

 眼下の惨状に心動かした風もないものの言いようにテムはいら立ちをぶつけた。

 

「君はいったい誰だっ!」

 

 その問いに冷徹な美貌を持つ双眸がゆっくりと瞬きする。その美しい唇が言葉を形作る。その所作一つさえもまるで芸術品のようだ。

 彼女の傍らでウォン・リーはその横顔を眺めながらメサイアがもたらした”戦果”を一望する。「救世主」の名を冠したマシンが引き起こした虐殺の現場を。

 

「私はクリスティン・マリア・ナガノ──あのモビルスーツ「メサイア」の設計者です」

「メサイア……ナガノ博士、やはり……」

 

 帰還する二機のメサイアがハッチが開いた輸送船に収容されて、遅まきの救援部隊がスミス海に到着していた。

 

 

 アナハイム聴聞委員会の議場で証人としてテムがその場に立つ。先のスミス海で行われた戦闘に対する関係者各位の聴聞会だ。

 その中でテムはRX-77部隊損失という責の矢面にいた。

 

「ジオニック社のモビルスーツ部隊は撃退という形で我が社のメンツは保たれましたが、RX-77部隊はMS-05によって全滅。全滅したRX-77の開発責任者はあなたですね、テム・レイ部長?」

「おっしゃる通り、スコアはゼロ対一二。開発責任者として慚愧の念に堪えません……」

「それは辞職する意思有りの発言かね?」

 

 議場に参列する役員たちから罵倒に近い言葉が投げかけられる。

 メサイアの活躍でジオンのザクは完膚なきまでの敗北を喫したが、ここで問題にされているのはRX-77の失態と部隊全滅という大きな損失に対するものであった。

 軍部のプライドを傷つけた責任は擦り付けの泥試合だ。そのスケープゴートとしての席にテムは立つ。

 

「新型モビルスーツの助けがなければミノフスキー博士の救援すら成功しませんでした。あの機体、RX-M「メサイア」の存在が窮地を救ったと言っていいでしょう。ジオンのザクは完成された兵器として恐るべき戦闘マシーンとして存在しました。それを上回る圧倒的な力をメサイアは発揮したのです」

 

 スクリーンに記録された戦闘シーンが展開される。テム自身がハロに記録させた映像が多い。

 メサイアが登場しザクを蹂躙し破壊していく様には座る役員たちも見入っていた。

 

「この驚異的な能力を誇るメサイアがあればジオンのモビルスーツを恐れる必要はないでしょう。ですが、我々アナハイムは企業です。このメサイアを生み出すために使われた資金と人材のコストは莫大なものであり、ライン製造の基準を到底満たすことはできません。ですから私はこのメサイアを基にした新たなRXタイプの開発を進めることを提言します」

「君は立場をわきまえているのかね? RX-77を大量生産させるためどれだけ尽力してきたことか。使った金と政治力ははねえ──」

 

 険を持った口調でテム糾弾を続けようとするのを立ち上がった一人が制した。

 スーツの女性はマーサ・カーバインが遮って発言する。

 その傍らにはクリス・マリアと会長令嬢リズエラの姿もある。

 

「それらの出費を補って余りある見返りを私たちは受け取る。そのためのモビルスーツ開発を推し進めます。ここにおられるテム・レイ部長を新たなRX-78の開発主任として任命します。これはメラニー会長直々のご指示です」

「そ、それは……」

 

 マーサの前で役員の一人がしりすぼみになり、抗議の声は沈静化する。 

 会長を引き合いに出した威力は絶大だ。役員らの顔を見ながらマーサは続ける。

 

「このメサイアをモビルスーツ開発の主軸に据え、RX-78建造の礎とすることで人材、資金のコストは押さえることができます。連邦政府からの要望に応えたコストでの建造を実現させ、この新基準モデルを持続可能な事業として実現することができるでしょう。ジオニック社の開発するモビルスーツよりも遥かに洗練されたマシンが量産されることで、我が社はそれを求めるすべての顧客のニーズに応えることができる──」

 

 マーサの言葉に聴聞会の雰囲気は流れを変えていた。

 

「テム主任、あなたからもどうぞ」

「サイド7でアナハイムが推し進めるこの計画──RX-78。その名をガンダムと呼びます!」

 

 テムが宣告して議場は締めくくられる。

 ガンダムの名を聞いて人々が囁き合う。これに反対意見を述べる者はいなかった。

 

「メサイア計画第二章──」

 

 クリスの小さな呟きは誰の耳にも届かない。隣のリズエラ以外には。

 

「ガンダム……」

 

 リズエラのヴァイオレットの瞳が大きなスクリーンにあるRX-78の姿を映すのだった。

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