あなたが私のマスターですか?─RE:I AM─【チラ裏版】 作:つきしまさん
チャプター35、36はまだ未完成
反応次第で全部消して書き直すよ(´・ω・`)
指摘は容赦なくてもいいよ仮投稿だし(´・ω・`)
50%くらいかなあ(´・ω・`)
◆チャプター34
テムの眼下で巻き起こった爆発の渦は月の地表を赤く照らしだした。その衝撃は真上にあった救助艇の船体を大きく揺らす。
ヒートホークの斬撃を受けてガンキャノンが崩れ落ちる。近接戦に持ち込まれた時点で連邦MS部隊の敗北は決まっていた。
圧倒的な機動性と運動力を持つザクが連携して動けば、赤子の手をひねる様なものだった。
また新たな爆発が地面を揺らしテムの目の前で強烈な閃光を放つ。
「危険です! これ以上は近づけませんよっ!」
「ダメだ! 何としても博士だけは回収しなければ! 探すんだっ!」
叱咤するテムの指示で灼熱の噴煙を上げる地表にセンサーを向けて救助艇が飛ぶ。いつ撃ち落されても仕方ない危険な行為だ。
赤いザクの照準が一瞬救助艇を捉えるが、何の火器も積んでいない船からすぐに照準を外す。
間一髪のところで命を救ったことを知らず、テムは生存者の姿を視界に捉えるが、すぐに噴煙の向こうにその姿を見失っていた。
破壊された車両から飛び出した人影は、戦場から逃げるように徒歩で走るが、無重力の世界を宇宙服を着て走る行為は水の中でもがくに等しい行為だ。
爆風がその背中を押すように弾き飛ばした。トレノフはもんどりうって破壊されるMSの姿を目にする。
「終わりだっ!」
悔恨の言葉が漏れて涙にぬれた目で追手であるザクを見上げる。
「食らいやがれっ!」
マッシュ機が振り上げたヒートホークがガンキャノンの頭部を激しく殴打し、頭部を破壊されても抵抗しようとする機体の右腕を斬り落とす。
「こんな……ことが」
繰り広げられる一方的な殺戮を前に、それ以上の言葉を失った部隊の指揮官が席から半ば腰を浮かしたまま呻くように呟いた。
一二機のガンキャノンに対するはザクが九機。接戦を予想した指揮官の計算は大きく狂っていた。
降下した鉄騎兵中隊は連邦が誇るMS部隊だ。それが圧倒的なまでの戦力差で各個撃破され全滅に等しい状態だ。
「戦力差は……撤収だ。回収して、退却っ!」
「無理です、どうやって! て、敵、回避!」
進路上に飛び出したのはオルテガのザクだ。バズーカを構え狙いを標的に定める。
「一人も生かして帰すかぁっ! 貴様のためにとっておいた残り弾だぁっ!!」
至近距離で滞空したオルテガが引き金を引く。
「派手な花火だぜっ!」
船のエンジン部に吸い込まれるように消えた弾頭は心臓部を打ち抜いて船体を大きく揺るがした。その次の瞬間には炎が舞うように爆発四散する。
その光景にテムは目を奪われる。が、すぐに自分の使命を思い出す。
「み、味方が全滅……もうダメだ。撤退しましょうっ!」
パイロットが座席に沈み込むように震えた。
「バカ者っ! 何のためにここに来たと思っている! ミノフスキー博士の救助のためだろうがっ!! この下に博士がいるのが見えんのか!」
「バカモノ! バカモノ!」
ハロが連呼し、救助艇パイロットの首根っこを掴んでテムが赤外線センサーを睨みつける。あまりにも多すぎる熱源のせいでセンサーはまるで役立たずの状態だ。
「ダメです! 熱源が多すぎてまるで役に立たないっ!」
「アソコ、イル! イルッ!」
「どこだ? どこにいる?」
ハロがミツケタと叫び、テムは一度見失った生存者の姿を探した。
だがあまりにも遅かった。戦場に立っているのはザクだけだ。
「博士がこの下にいるというのにっ!」
鉄騎兵中隊のMSはすべて撃破されている。ただ手をこまねいて見ていることしかできない。
「もう逃げられんぞ、博士……」
煙る炎の中からランバ・ラルのブグが姿を現す。破壊されたMSの陰に隠れたトレノフに最終通告を突きつける。
「博士、大人しく投降してください。もう誰もあなたを逃がすことはできやしない。我々とあなたは仲間だったはずだ! 連邦に魂を売り渡すおつもりかっ!?」
ザクの100ミリマシンガンがトレノフに向けられる。もう逃げられないと観念して姿を現した博士が立ち止まる。
「ラル大尉、私は……」
「大尉っ! 上方から熱源接近! 速いっ!」
「全機散開っ!」
シャアの警告によりラルが指示する。ラルとガイアたちのザクが散ってシャア部隊が迎撃の射撃体勢で迫りくるモノを迎え撃つ体制を取る。
灼熱の尾を引く高速の機体が揺るがすコクピット内──全標的を捉えたリズエラはそのうちの一機のザクに初撃を放った。
超音速を越えるスピードで降下するメサイアが眼下十数キロ先に向けて放った閃光はビームライフルによるものだ。
「ビーム砲?」
シャアの呟き後、長距離から放たれた一条の光がロルフ機の胸部を狙いたがわずに瞬時に打ち抜いた。それはエンジン部への直撃だった。
コクピットの乗員は瞬時に蒸発し核融合炉の爆発が新たな戦闘の火ぶたとなって散った。
シャアの指示と同時にEMSチームの三人が即座に跳ぶが、その爆発の影響をもろに受けて各機が混乱に陥る。
「今のは何だっ!」
「わかりませんっ! 艦砲射撃ではっ!?」
テムの問いにパイロットが応える。
「ジョウクウ12キロカラ、ソゲキ! ソゲキっ!」
「野郎! どこだっ!」
憤懣をオルテガが叫び、演算したハロがソゲキと連呼する。
「あれ……何だ?」
クルトの呟きにレオは月の空に滞空するモノを見た。純白のMSが戦場を睥睨するように見下ろしている姿があった。
それも背中合わせに二機のメサイアが光の粒子を散らしてさん然とそこに存在していた。
「白い……モビルスーツ?」
テムの呟きが無線に入り込んだノイズに消える。
「あの光は何だ?」
その姿を誇示するように浮かぶ機体から漏れ出る光──MSのムーバブルフレームが光る現象はまるで聖書にある天使か、救世主キリストの降臨の姿のようであった。
「シンクロナイズド・コントロール・クリア。コントロールをニムエに戻します」
「コントロール了解」
ニムエに操縦コントロールが戻される。
複数機同時制御プログラム。シンクロナイズド・コントロール・システムは脳波コントロールによって複数機操縦可能なMSシステムとしてクリスがリズエラと共に開発したものだ。
サイコフレーム──後にそう呼ばれることになる機体の構造材で、モビルスーツの先駆けであるメサイアに実験的に組み込んでいる。
対象が無人であっても脳波コントロールによる同時制御が可能だ。
メサイアそのものがサイコミュとして機能するが、適正化にはまだほど遠く、あまりにもホストパイロットにかかる負担が大きい。
ミノフスキー粒子散布化の世界では電装部品の意思伝導率が極端に低下し、リズエラの能力をもってしても数分で稼働停止に追い込まれる。
「SCSは不完全燃焼でーす」
頬を膨らませたリズエラが不服を漏らし、実用化までの課題と脳みそにメモすることを忘れない。
二機のメサイアを輝かせていた粒子が収束して消える。
「博士を確認、ニムエは確保を」
「了解です」
背中合わせのニムエが返事を返す。リズエラがマーカーを付けた場所に博士を確認する。
「あいつが、あいつがロルフをやりやがったんだっ!」
「ルッツ! うかつに動くなっ!」
「うるせえっ!」
レオの制止を振り切ってルッツ機がスラスターを吹かして跳んだ。
「援護する!」
「了解!!」
ルッツ機を援護するようにレオ機とクルト機がマシンガンを乱射する。
地を蹴って上に飛びあがるとヒートホークに持ち替えての特攻をルッツが仕掛けた。
「ゴーっ!」
その言葉がリズエラの合図だった。リズエラは正面の敵を相手にしニムエは博士を確保に動く。
ザク三機の連携行動を前にリズエラは即座に接近戦を選択する。突如下降しメサイアがビームサーベルを手にし突進してルッツ機と宙で交差する。
その刹那、胴体を断ち切った光の刃を人々は見た。あまりにもあっさりとルッツのザクが胴体と泣き別れして落ちた。
エンジン部を直撃しなかったものの誘爆を起こしてザクが四散する。
「うわぁぁぁっ! 何だ? こいつぅぅ~っ!」
クルト機が眼前に迫る敵にマシンガンを連射する。
「クルトっ、下がれ!」
レオ機がショルダーでタックルしてクルト機を押し出す。地上に降り立ったメサイアと正面からレオ機が接触する。
その瞬間、ザクの右腕が飛び、次には半分に絶たれた胴をねじ切られるように回転しながら吹き飛んで起伏のある丘の斜面に追突して爆散した。
「ビーム兵器っ! MS用に実用化していたのか! 何という威力だ……」
その恐ろしい威力にシャアは戦慄する。あっという間に三人の部下が命を落とした。
「野郎、ブンブン飛び回りやがってぇっ! 」
「オルテガっ! 突っ込むな! 陣形を守れっ!」
ラルの制止は届かない。
地表すれすれに低空飛行で飛んで旋回したニムエのメサイアがオルテガ機と交差する瞬間、地を蹴って機体を回転させて放たれた光の刃がザクの腕を二本とも斬り落とす。
「おろ? 何ぃぃぃ!?」
立ち往生しながら膝をついてオルテガ機が倒れこむ。
瞬時にかかる凄まじい反動と圧力の中でニムエは迫るマッシュ機と並走しながら挟み撃ちに動くガイア機をけん制するように後方に跳んだ。
「ぐっ!」
肉体にかかるGにニムエは唇の端を噛んだ。赤い粒が飛んでヘルメットのバイザーに赤い点を残す。
「何て動きだっ! ザクの比じゃないぞっ!」
「こいつはここで潰すっ!」
ガイア機とマッシュ機がヒートホークを手に最大加速してニムエ機に追いすがる。ラルはマシンガンで援護に動くが味方機が迫る最中では狙いが定まらない。
視界の隅でもう一機のメサイアが後方に動くのを見た。シャア機とクルト機が追撃する。
「奴は博士が狙いか!」
その合間にもマッシュ機の頭部が飛んで落ちた。ガイア機が振り上げたヒートホークは柄の部分を残して消失する。
「来ないでよっ! こっちの方が全然強いんだからさぁっ!」
血の味を舐めながらニムエが叫びガイア機の頭部にビームサーベルを突き刺す。二機のザクが頭部を失いバランスを失って後退するのを荒い息を吐き出しながら眺めた。
「シャア隊長、こいつはやりますっ!」
「よせっ! クルトっ!!」
マシンガンをけん制に撃ちながら突っ込んだクルト機がヒートホークに持ち換えリズエラに特攻をかけた。
「うぉぉぉーっ!」
「無駄です」
敵の排除をすることに何のためらいもなくリズエラは動く。マシンそのものとなって。
エンジンの爆発はさせられない。ミノフスキー博士の位置が近すぎる。先ほどの上空からの狙撃は爆発させても問題ないと計算した位置からのものだった。
だからコクピットのみを射抜く。ごく単純な選択だ。
「バカな、コクピットだけを……?」
「狙っているのかこいつは!」
驚愕するラルとシャアの前に光刃をクルトのザクの背中まで貫通させたリズエラ機の姿があった。
「くそぉっ! こいつめぇー!」
ヒートホークを振り回しニムエのメサイアにラルが仕掛けた。もはや特攻である。
「こ、来ないでよっ! 性能はこっちが上なんだからっ! わっかんないかなぁぁ~っ!」
ニムエがでたらめに振り回したビームサーベルがブグの肩を切り裂き、左腕を半ばまで落とした。
たちどころに溶解し機能を失った腕をラルは即座に切り捨てる。
「エンジンはダメ……エンジンはダメなんだからっ!」
敵も動いている。リズエラのように正確無比にエンジン爆発をさけて仕留める力は自分にはない。
それは攻撃の詰めの甘さとなっていた。決定打となる手をニムエは持たない。
撃ち合いざまにヒートホークとビームサーベルが干渉しあって強烈な光を散らしあった。
パワーでブグが劣るものの狙いすませた合打ちでメサイアの動きが乱れる。
ラルのブグは攻撃の機会を逃さない。目の前の敵に攻撃へのためらいのような反応があった。
再度の打ち込みを行った後、互いの間合いを伺う。
「さっきの人たちと違う……強い!」
ニムエは荒い息を吐き出す。額ににじんで落ちた汗が片目を曇らせる。
「このパイロット、甘い!」
戦場に立ったことがない。それを言うならばラルとてMSでは初陣。だが、軍人として生きてきた経験がある。
「ならば、やりようもあろうよ」
敵の動きを読んでラルは乾坤一擲を狙う。腰を落とした体勢から地を蹴って突進する。
「右? 左っ!?」
しかし、ニムエの迷いをついたラルの攻撃は閃光によって封じられる。
「させません──」
リズエラ機のライフルから迸った一撃がラル機が振り上げた武器を破壊し、もう一撃が脚部に損傷を負わせてブグは膝をつくことになった。
「くそっ!」
ラル機にはもう武器がない。リズエラのライフルの照準はラル機を捕らえたままだ。
圧倒的なまでの戦闘力の差──それだけではない、えも知れぬプレッシャーがラルを捕らえて放さない。
「大尉っ! こいつは私が引き付けるっ! 部隊を立て直してどうか撤退をっ!」
「シャア、無理はするなっ!」
リズエラ機を狙撃したのはシャアの赤いザクだ。シャアを追ってリズエラのメサイアが動いた。
「排除する」
博士の確保をニムエに任せてリズエラは赤いザクを追う。すでに残った敵は戦力的に無力化されたに等しい。
「全員動かないでっ! 生きている人はそこに集まってくださいっ!」
ライフルに持ち替えたニムエ機がこの場にいる全員に向けてビームライフルの銃口を向けた。
生存者であるラル、オルテガ、マッシュ、ガイアはわずかに動くことができるザクから降ろされ一か所に集められた。
「女にやられたのかよ……」
血の気収まらぬとオルテガが青筋を立てる。
「ミノフスキー博士ですね。お迎えに上がりました。こちらに」
メサイアの手に博士を乗せてコクピットハッチを出てニムエが手を差し出す。思ったよりも若い娘の声に戸惑いながらトレノフはその手を握り返していた。
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