魔王織田信長とアインズ様の異世界転移 作:アルトリア・ブラック(Main)
14巻を片手間に読みながらオリジナルルートに入ってます。
フィリップの愚行だけはどうしても書いておきたかったので書いてます
ーザナック王子ー
魔導国がバハルス帝国を属国化させた事はかなり王国の中でも話題になった。
属国化の引き金を引いたのは魔導王であり、その草案を1日でまとめて帝国に突き付けたのは宰相だ。
そして、バハルス帝国はすんなりと魔導国の支配下に収まった。
王国として見れば一気に帝国と同程度の国家を築いた魔導国とは友好関係を築きたいと思っていた。
とはいえ、そう思っているのはザナックと一部の重臣ぐらいで、大半の貴族は未だにアンデットに対する嫌悪と、魔導王に対しての偏見から彼らに良い顔をしない。
「ザナック王子。陛下、魔導国宰相殿下が参られました」
「良い、会おう」
あの戦いからだいぶ老け込んだ父がそう言う
「あと…宰相殿下から言伝があります」
「言伝?」
ザナックの言葉に配下が「先日、第六天魔王を封印した際に、その部下である赤髪の化け物を支配下に置き、側に仕えさせているが、皆々様に害意を向ける事はしないのでご安心を、とのことです」
それは一体どういう事なのだろうかと思ったが、次に入ってきた宰相の後ろに控えている赤髪の化け物を見て全て理解する。
ヤルダバオトが王国で暴れた際、復活した魔王の傍にいた赤髪の化け物。
血を被ったような真っ赤な髪に、獣のような歯を見せる男がいた。
宰相の逆側にいたのは帝国四騎士の一人レイナース・ロックブルズだった。
帝国が属国化した折に、皇帝から魔導国の宰相に鞍替えしたという噂は聞いていたが本当だとは思わなかった。
「待機しろ」
宰相は赤い髪の化け物にそう言うと、ドアの少し離れたところに立ち「おうよ!」と返してくる。
宰相の近くにあのアルベド使節団団長が居ないのを確認する。
「よく来てくださった魔導国宰相殿下。お変わりなさそうで何より」
「あぁ、陛下もお元気そうで何より」
嫌味だとでも言うように笑顔を見せる宰相。
「ザナック王子も元気そうで何よりです」
その言葉に頭を下げる。
(苦手だ…)
魔導国の宰相であるこの男は、どうしても苦手な存在だった。
人の姿をしているというのに腹の底が見えない話し方。感情の読めなさ、宰相であるというのに王であるような威厳。
そして、何よりこの宰相は周囲の人間の感情を何故か把握しているように思えた。
宰相が椅子に座ろうとすると、レイナースが椅子を引き、まるで従者のように仕えているのを見て洗脳されているのかと思ったが、そうでもない様子だった。
相変わらず無表情であることに変わりはないのだが、髪で隠していたところを分かるように見せていた。
「今後の話についてなのだが…」
父の話す内容は二つの国が同盟を結ぶことだった。
その話の内容はどうもチグハグで属国化ではなく、同盟という話に持って行こうとしていた。
宰相の返事は軽く、同盟の話になっても内容自体を逸らされている気がした。
宰相の様子をみれば同盟するつもりなんて毛頭無いのが手に取るようにわかる。
「…殿下、少しよろしいですか?」
「ん、どうした」
レイナースが書類を持って来てザナックと父の前に差し出す
「これが王国と元バハルス帝国の国の状況です。王国は魔導国との戦いで戦死者が出て働き手がいなくなったことによる被害で、こうなったと言われれば何も言えませんが、どうも釈然としません。全て魔導国のせいにしたがっているような…すいません。言葉がキツすぎました」
レイナースのキツイ言葉にそばにいた貴族が苛立つのが分かる。
それを見てレイナースが大げさにため息をつく
「これが戦争前の現状です。バハルス帝国は急激に国として勢いを増して来ていますが、王国は50〜60年変わらないまま、平坦に…いえ、やや落ち込む傾向にありました。この現状を見ても魔導国のせいと言うのは些か強引かと、殿下や魔導王陛下が同盟を渋るのもメリットがてんで感じられないからです」
レイナースの言葉は的確な判断だった。
王国の現状は良くなるというのを決して感じさせないものだった。
「……」
父は何も言わず無言で事実を黙って呑み込む。
(このままじゃいけない)
ザナックは同盟という話は無理でも、戦争をさせなければいいと感じ口を開く
「宰相殿下。魔導国として我々と同盟するメリットが無いというのは重々承知致しました。しかしながら、我々としてみれば魔導国と敵対したくはなく、私個人の意見としては、是非とも魔導国と友好関係を築いて行きたいと思うのです」
(あぁ、ヤキモキする…)
こんな回りくどい言い方をしないといけないのは、王国貴族たちの反感を買わないようにするためだ。
帝国のように一万岩の態勢でないということがもどかしくて仕方ない。
そう言えば宰相はレイナースと耳打ちで何か話しをしていた。
「この話は国に持ち帰ってアインズ…魔導王と話をする。答えはおいおいお知らせしましょう」
断らなかったことに安心しつつ、小さくため息をつく
「あー!疲れた!」
ドンッ!とソファーに座る
「お疲れ様ですお兄様。どうでした?会談は」
妹の言葉に肩を回しながら「どうもこうもない、宰相の言葉はどうも釈然としないし、話していて気味の悪さを感じる!」
アンデットと人間なのか化け物なのかよく分からないあの宰相。
カッツェ平野で見せた魔法で魔導王に対する警戒心はあるものの、あの宰相についてどれほどの力を持っているか不明なため、こちらとしてもどう対処して良いのか分からないのだ。
「お前はあの宰相をどう思う?」
「どう、とは?」
妹が可愛らしく首を傾げるが、それにときめくのは後ろにいるクライムぐらいだと言いたくなる気持ちを抑える。
「人間だと思うか」
「あ、そっちですか。他国の宰相の方ですからこう失礼な事は言えませんが、私は人間ではないとは思いますよ?どの種族かは分かりませんが…ところでお兄様。宰相殿下に贈り物はしておいた方が良いと思います」
「魔導王と宰相にか?」
「はい、宰相殿下は魔導王陛下からかなり信頼されておりますし、魔導王陛下も宰相殿下の事をかなり気に入られているのか、以前噂で聞いたのは、宰相殿下の悪口を言った帝国の貴族が消されたとかそんな噂を」
あくまで噂程度ですけどね、と言うラナーに少しだけ考える。
以前、魔導王と宰相が一度王国に来た際に、魔導王は確かに宰相にくっついているような感じだった。
あれはくっついていると言うよりいろいろ聞いているように見えた。
「それについては考えておく」
「殿下、陛下がお呼びです」
重臣の言葉に返事をして重臣の前に出る。
廊下で歩きながら重臣が評議国から使者が来たと言うことを話す。
その使者によれば、王に会うのではなく、王子である己に会いたいとのことだった。
「内密にとのことです」
「分かった会おう」
評議国の使者は人間の姿をしていて、話によれば魔導国の対策について話したいとのことだった。
ーフィリップー
デルヴィ男爵領の街道。昨日から兵士を連れて移動を開始したフィリップは、この領内で一晩野営した後、ようやく目的地…襲撃地点までやってきた。
事前情報によれば、今日の昼頃にはこの辺りを魔導国の荷馬車隊が通るという。
フィリップは己の前に整列した兵士たちを馬上から見下ろす。
自分の指揮する兵士。かき集めた村人たち
動員したのは全部で50人。領内の各所に労役を要求したが、あまり人は集まらなかった。
村々から返ってきた答えは、既に労役は終わっているというものだった。
(不愉快だ。本当に不愉快だ!)
今後の領内のために、領内全ての者達が幸せになるために、今回の計画を立てた。そして、得られる戦利品も膨大なはずであり、それを殆ど配って良いとも考えていたし、提案もした。
にも関わらず協力しないという。
何が利益になるのかも分からぬ、知恵なき者達。いや、だからこそ、知者である自分が支配し、導いて行かなくてはならない。
なので、ヒルマから借りている金銭で支払いすることにした。
そうして何とかかき集めた50人だが、働き盛りを遥か昔に過ぎた者や、明らかに貧弱な体格の者、粋がってよその村に喧嘩を吹っかける協調性の無いものなどが多いように見える。
そんな奴ら…兵士たちの視線を浴びていると何とも言えない高揚感に心が震える。
自分の、謳われるべき英雄譚が始まるような予感を覚える。
(いや事実、始まるのだ!)
この王国で誰も出来なかった最初の一撃を魔導国に与えるのだ。魔導国に対する牽制の一手を高く評価した王族は、相応の地位を与えることでフィリップに報いる。
もしかしたらあの美しい王女を娶るということも出来るかもしれない。
「よし!荷馬車が来るまで待機!きたら襲撃するんだ!」
返事がない。なのでフィリップはより声を張り上げる。
「分かったか!!」
「分かりました…」
不承不承ではあったが、幾人から声が上がった。
レイナース・ロックブルズ
帝国の四騎士であったが、顔の呪いを解いて貰った以降は信長に恩義を感じ、帝国から鞍替えした。
ジルクニフの配下から信長の従者になり、エ・ランテル近郊で暮らしている。
王国との交渉の際に従者として付いて行ったりしている。