食にハマってる悠二と宿儺の話。
pixivにも掲載してます。

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コンビニスイーツ食べながら書きました。


悠二と宿儺とコンビニスイーツ

 眼前にあるはコンビニスイーツ、しかも今日発売の新作。粉末状の砂糖のかかったもちふわドーナツのなかに粒あんとバターがサンドされたものだ。

 

 パッケージを開けた瞬間、ドーナツ特有の甘い香りが我らが主人公、虎杖悠二(いたどりゆうじ)鼻腔(びこう)をくすぐる。それを楽しみつつも袋の奥から少しずつドーナツを押し出した。その表面に粉雪のように(まぶ)された砂糖を床にこぼさないよう細心の注意を払いつつ、そのままゆっくりと口に運んだ。

 

 甘さは控えめ。少しの塩気。もちふわと称されたドーナツだけあってシュー生地のようにも思える触感。だけど、それ以外にも何か・・・・・・ふと、断面を見てみれば、粒あんやマーガリン以外にもドーナツ生地の間に何か挟まっているのが分かる。

 

 これは! もちもちの、ぎゅうひ? 求肥じゃん!?

 

 求肥! それは白い兎がトレードマークの大福状に整形された2個入りアイスや、つぶあんに抹茶といった餡の種類が特徴的な京都銘菓の定番和菓子の外側に使われていることで有名な、柔らかく弾力のあるもちもち食感が売りの練り物。その食感は食べれば食べるほど癖になること間違いなしだ。

 

 美味い。あんことバターのハーモニーは言わずもがな。そこに外のもちふわなドーナツの食感と中の求肥のもちもち食感がプラスされ、えも言われぬ旨味が口内に広がっていく。たまに来る少し強めのバターの塩味が良いアクセントになり、いくらでも食べられそうな気さえする。

 

「なあ宿儺(すくな)。これ、うめえぞ」

 

 悠二がそう言うやいなや、彼のうちに宿りし両面宿儺は全力で宿主の身体の制御権を奪いにかかった。しかし悠二もさるもの。今にも両目の下からさらに目が出てきそうな自分の顔を両の手で瞬時に押さえつけ、身体の主導権を渡してなるものかと身を(よじ)らせて抗っている。

 

 その対応の早さを見れば、日頃から悠二と宿儺の食を巡る仁義なき戦いが勃発していることは容易に想像できるだろう。

 

「ばっ、やめろ! オマエ出てくんな!」

 

「ならその甘味を寄越せ」

 

「嫌に決まってんだろ! お・れ・の! これは俺が食べるんだよ!」

 

「黙れ小僧! キサマには過ぎた代物だ!」

 

「これ俺が買ってきたやつだかんな!?」

 

「ならば特別に俺に献上することを(ゆる)してやろう」

 

「いや、しねえから」

 

「なん・・・だと・・・?」

 

「いや、そんな心底不思議そうな声をされてもやらねえからな」

 

 熾烈な攻防を経て、なんとか自身の顔から出てきた宿儺の口とそうそうに言い合いを始めた悠二。

 

 いつもであればこのまま論争の果てにやむを得ずお互いの妥協点を見つけるのだがしかし、口論のなか残り半分ほどとなったスイーツを見て、彼は気づいてしまった。

 

 あれ、これ1人で食べたら夕飯・・・・・・入らなくね?

 

 たかがスイーツ一個分と言うなかれ。されどスイーツ一個分なのである。おもむろにパッケージの裏側を見ると398kcalの文字が。コンビニスイーツは確かに美味い。だが、その分相応のカロリーを犠牲にしているのだ。

 

 宿儺との激しいスイーツの奪い合いをしながらも悠二は状況を冷静に整理する。

 

 今日はいつもより2時間ほど昼食が遅かった。高専の任務が予想以上に長引いたためである。一仕事した後の出先でのラーメンはそれはそれは格別であったが、ここで重要なのは夕食の時間が毎日同じ時間であるということ。東京高では任務か余程のことがない限りは指定の時間に夕食を食べるのだ。

 

 このスイーツを全て食べたとして、この後待ち受ける(めし)を満足に食えるのか?

 

 今日の夕飯のメインはよだれ鷄だ。茹でた鶏むね肉に痺れる辛さが特徴の花椒(ホアジャオ)とラー油、ネギなどをベースにしたタレをかけて食べる料理である。美味い、それはもう美味い。よだれが止まらないほど美味いと書にしたためた中国の偉人にも賛同できる逸品である。

 

 また考慮すべき事項として、両面宿儺が自身の身体を乗っ取っている間に食べたカロリーは自分には一切加算されないということ。すなわち正しくゼロカロリーなのである。さすがは特級呪霊のなかでも大物なだけある。乗っ取られている時間は感覚もないため、悠二にメリットはないに等しいがそれはさておき。

 

 スイーツとよだれ鷄、どちらも美味いが美味いのベクトルは全然違う。

 

 はてさて、ここで目先のスイーツ欲を取って普段より少ない夕飯で我慢するか、後でガッツリ夕飯を食べる道を選ぶのか。熟考の結果、悠二は後者を取ったーー!!

 

「宿儺、やるよ残り」

 

「っ、正気か小僧!? 目の前の甘味を自ら手放すなど!」

 

「手放す? いいや違うね。これは未来への布石だ」

 

「なに?」

 

「オマエには一生分からねえことだよ」

 

 冗談抜きにどれだけ食べてもゼロカロリーのお前には。

 

 断腸の思いでスイーツを諦め、既によだれ鷄のお腹になった悠二は今までの苛烈なやり取りなどまるで感じさせない菩薩の如きアルカイックスマイルを浮かべて身体の主導権を宿儺に明け渡した。

 

「まあ良い、献上するというのであれば構わん」

 

 宿儺も事が成った今、器の事情などという些事には捉われない。かくして悠二の身体にinした宿儺は無事コンビニスイーツへと辿り着いたのであった。

 

 途中まで悠二が食した後のため半分ほどしか残っていないが、だからといって美味しさは損なわれていない。むしろ最初から断面図が見える分、より視覚でスイーツを味わえるようになったと言えるだろう。

 

「ふむ、こうして見てみるとなかなかに趣向が凝らされているようだな」

 

 断面とパッケージの裏にゆっくりと目を通した宿儺はそう声を漏らした。悠二と違い、食べる前に求肥の存在を知覚している宿儺。だが、この特級呪霊は1つ失念していた。あんこを使った和菓子もバターを使った料理も経験済。しかし、あんことバターの組み合わせは初体験だということを!

 

「では実食と行くとするか」

 

 そんなこととはつゆ知らず、宿儺はドーナツを袋ごと両手に持って、まだ見ぬ甘味の世界へと旅立った。

 

「っ・・・・・・!?」

 

 ・・・・・・なんだこれは。今まで口にしたことのないような新しい食感が口内を駆け巡っていく。だが決して不快ではない。むしろ快! 圧倒的快! 

 

 あんことバターの調和を直接(ダイレクト)に感じた宿儺は新たなる境地(ステージ)に到達していた。さらにふわもち食感のドーナツともちもちの求肥が合わさる。今や彼の口内には宇宙が広がっていた。

 

「美味い、美味いぞこれは!」

 

 見事あんことバターという新ジャンルの開拓を果たした宿儺。

 

 新鮮味と純粋な美味さが相まって瞬く間にペロリと平らげてしまう。けれども、まだ食べたいという欲求が溢れ出していた彼は空になった袋をじっと見ていた。

 

「・・・・・・もう、ないのか」

 

 元々半分ほどしか残っていないドーナツだったので当然ではある。だがそれが分かっていてもなお、宿儺は空になった袋をぽつねんと見つめていた。

 

 後日、すっかりあんことバターにハマった宿儺に何かを察した悠二が小倉あんトーストを勧める姿があったとかなんとか。




諸事情(本誌の闇)から原作読み返さずに朧げなアニメ知識だけで仕上げてるので、キャラの口調とかズレてたらすまぬ。

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