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では本編どうぞ!
「なんの権利があって2人の仲を引き裂こうとするんですか」
放課後、食堂の時の様に深雪が達也達と帰ろうとするとまたもや1科生が文句を言って来た。因みにこの場に総司はいない。
「僕達は彼女に相談する事があるんだ!」
「そういうのは自活中にやれよ。ちゃんと時間が取ってあるだろうが」
「本人の意思も無視して相談も何もないわよ。高校生にもなってそんな事も知らないの?」
1科生の言い分にレオは威勢良く笑いを飛ばし、エリカも皮肉成分たっぷりの笑顔と口調で言い返す。
その後も1科生の言い分を全て正論で返すエリカ達。
「それに彼女を泣かせる様な奴がいるグループに彼女を任せられるか!」
「そうよそうよ!」
だが彼等は総司の事を言ってきた。これを言われるとエリカ達は弱い。理由がどうであろうと深雪がどう思おうとその事実は変わらないからだ。エリカ達は何も言い返せない。だが本人なら別だ。
「止めてください!」
先程まで黙っていた深雪が一喝した。
「悠木さんの悪口を言うのは止めてください。あれに関しては私が悪かったのです」
「司波さん」
「そんな事ないわ──」
「いいえ、あります」
彼女達が深雪は悪くないと言おうとするが言葉を遮られる。彼女の意思は硬い。この考えは覆せないだろう。1科生はそれでもなんとかこちら側に来てもらおうとする。
「司波さん駄目だって。ブルームの僕達がウィード如きと一緒にいては」
「同じ新入生じゃないですか!貴方達ブルームが今の時点で一体どれだけ優れていると言うんですか!」
彼等の暴言に対して真正面から反応したのは美月だった。しかしこれは不味い事になった。彼に魔法を使わせる理由を作ってしまったのだ。遠回しに魔法の凄さを見たいと言われたと捉える事が出来てしまう。その言葉を待っていたと言うように1科生の男子生徒が言い放つ。
「なら教えてやる。ブルームの実力を!」
「ハッ、おもしれぇ!是非とも教えてもらおうじゃねぇか!」
売り言葉に買い言葉。レオも乗ってしまったのだ。既に事態は止まらない。男子生徒は特化型CADの銃口をレオに向ける。彼のCADを抜き出す手際、照準を定めるスピード、どちらも1年の平均の遥か上を行っている。
「お兄様!」
深雪の言葉が終わらぬ内に達也は右手を突き出す。しかしその動作は無意味に終わる。
「ヒッ!」
エリカが彼のCADを弾き飛ばしたからだ。彼女の笑顔に動揺や焦りは見られない。今攻撃を受けようとしているのに冷静で対処したのだ。
「この間合いなら身体を動かした方が速いのよね」
「それは同感だがテメェ今俺の手ごとぶっ叩くつもりだったろ」
得意げに説くエリカに答えたのは危うく手を叩かれる所だったレオだった。そして目の前にいる敵も忘れて、ギャアギャアと漫才を繰り広げる。誰もが呆気に取られていたが、いち早く我を取り戻したのは彼等と向かい合っていた深雪のクラスメイトの女子生徒だった。
「こんなはずじゃない。……私はただ司波さんと」
誰もが彼女の魔法に気付くのが遅れる。起動式が構築され、あと少しで打ち出される時、1人だけ彼女に近づく者がいた。
「はい、ストップ」
それはこの場にいるはずのない人物。昼食時から生徒会室に連行されていたはずの総司だった。
時は少し遡る。
「はい、書き終わりましたぁ〜」
「ご苦労様。それではもう帰っていいわよ」
「え?授業は?」
「もう終わったわ。下校時間よ」
総司は反省文を書き終えて疲れたのか机に突っ伏す。そして少しサボった後に授業に出ようと思ったが真由美に既に放課後と言われて端末の時間を見る。すると彼女の言った通り、最終科目の時刻を過ぎていた。どんな授業も退屈だと思っていた彼にとって授業が潰れたのは不幸中の幸いだった。
「まさか反省文だけで放課後まで掛かるなんて思いもしなかったわ」
「それはあんたが事あるごとに口を挟んできたからでしょ。挙げ句の果てには関係ない世間話するから時間が掛かったんです」
「あら、そうだったかしら?」
反省文を書いているのにここが可笑しいと注意してくる。更にこちらは慣れてない反省文(慣れてないのはそもそも任務関係で学校に行く機会が少なかったから)を書かされているのに趣味や、得意な事を聞かれた。そんな話をされたら集中力が削がれて時間がかかるのも仕方がない。やっとの思いで終わったとふらふらしながら生徒会室を出ようとすると彼女に呼び止められた。
「ちょっと待って」
「なんですか?もう1枚反省文書けとか言うんじゃないでしょうね?」
「それは大丈夫。最後に1つだけ、聞きたい事があるの。今の1科生、2科生のシステムについて、どう思う?」
「……なんで急にそんな事を?」
「なんとなくよ。どう思うかしら?」
「……このシステムを考えた人は頭が悪い、以上」
そう言い残し総司は部屋を出る。もうこれ以上引き止められない様に素早く生徒会室を離れた。彼の回答を聞いて真由美は少し考える。彼はこんなシステムは理不尽やもっと平等にしてくれとは言わずただ一言、頭が悪いと言った。彼の回答を考察しようとしたが一本の電話が鳴る。
「頭が悪い、ねぇ………はいもしもし、……ええ⁈また⁈」
それは1年の1科生と2科生が言い争いをしているとの内容だった。昼食時に注意したのにと彼女ほ呆れ、彼の意図を深く考える暇もなく問題が起きている場所に向かった。
総司は歩きながら椅子に座っていて固まった身体をほぐしていた。授業もないしさっさと家に帰ろうとするが騒がしい声が聞こえた。総司はまた誰かが喧嘩してるのかなと思うが他人事なので無視して帰ろうとする。しかしこの声は昼食まで一緒に食事していたレオ達と1科生の声だった。しかも野次馬が1年の1科生と2科生が喧嘩してると言っているので十中八九彼等だと分かった。
「何?また喧嘩してるの?馬鹿だねぇ本当。……まぁそれで見に行く俺も馬鹿なんだけどさ」
知り合いの喧嘩を知っていてスルーする事は出来ない。しかも自分の事を言われるかも知れないと思った総司は迷惑をかける訳にもいかず、人が集まっている方に向かった。
総司が辿り着くと丁度1科生の男子生徒がレオに魔法を放とうとしている所だった。その魔法を冷静に分析する。
(へぇ、魔術式を構築するのは結構速いな。16歳でこれなら上等なんじゃないか。将来有望かも知れない。だが、その距離での魔術は判断を見誤ったな)
総司の予想通り、彼のCADをエリカが吹っ飛ばす。第三者視点から視野を広く持てた。そのため魔法が放たれる前にエリカが阻止出来ると分かった。
(流石だな、判断能力もスピードもいい動きしてるな。……だが詰めが甘い。まだ終わってないぞ)
総司は気付いていた。1科生の中にもう1人、魔法を放とうとしている少女がいる事を。だが誰もそれに気付く様子はない。この様子だとサイオン光が見えるまで気付く事はないだろう。それでは対処出来ない。総司は溜め息をつく。昼食時の事があるから彼等に会うのが気まずく、あまりでしゃばりたくなかったのだがそう言う訳にもいかない。魔法を放とうとしている少女に気配を殺して近付く。そして彼女のすぐ横まで来ると彼女の魔法を放とうとしている手に触れる。その瞬間、彼女が構築した起動式が消滅したのだ。まるで元から構築されていなかったかの様に。
時は戻る。(三人称)
「はい、ストップ」
誰もがその光景には目を疑った。ただ彼が触れただけでサイオンが消滅し、起動式が消し飛んだのだ。そんな事はあり得ない。魔法を邪魔する術は本体に魔法の展開を阻害させるダメージを与えるか、展開中に起動式にサイオンの塊を撃ち込み、サイオンの流れを妨害する他ない。だが総司の取った行動はどちらとも言えない。そもそもサイオンを触れる事は出来ないと言われている。それをこの男は触ったのだ。しかも驚くのはまだまだこれからだった。
「危ない!」
声が響き渡る。声質から言って風紀委員の摩利のものだ。声がした方を見るとサイオンの塊が彼、正確には先程魔法を撃とうとした彼女に向けられていた。恐らく魔法の起動式を確認したため、阻害しようとサイオンの塊を撃ったのだろう。しかし撃った直後に総司が間に入ってしまったため、彼に直撃しようとしているのだ。元々、起動式だけを破壊して本人にはダメージを与えない様に調節したが体に直撃となればそれなりのダメージが入ってしまう。だが放たれた魔法はもう止まらない。摩利は顔面蒼白となる。止めようと放ったものが誤射で新入生に直撃して怪我を負わせる。そんな事になればタダでは済まない。重い罰が下されるだろう。風紀委員長剥奪、CADの取り上げ、停学。彼女の頭に大量に負のイメージが湧き上がる。しかし、その心配も杞憂に終わった。
「ほいっ」
なんと摩利が放ったサイオンの弾丸を叩き落としたのだ。まぁ彼に触れた瞬間サイオンは消滅したのだから正確には叩き落とす様にサイオンを消滅させたのだ。またもあり得ない光景を目撃した。中には自分の目が信じられず目を擦る者まで出てくる。摩利は彼がどうやって自分の弾丸を消し去ったかは皆目見当もつかなかったがとりあえず大事にならなかった事で安心したのか、その場に座り込む。摩利がこの様な状況なので真由美が彼女の代わりを務め、場を取り締まる。
「生徒会長の七草真由美です!起動式の展開を確認しました。そもそも自衛目的以外の魔法による対人攻撃は校則違反である以前に犯罪行為ですよ!」
「さ、七草会長。これは違うんです彼等2科生の奴らが僕達1科生の魔法を見たいって言うから特別にちょこっと見せようとしただけで」
「だからって人に向かって撃っていいと言うんですか?」
真由美の正論に彼は何も言い返せなかった。先程のエリカとの言い合いの時といい、彼の口は相当弱い。そこで達也がこの場を収めようとした時、また総司が割り込んで来た。
「あれ?自衛目的以外は犯罪行為なんですか?ならさっきこっちに向かって撃ってきた渡辺先輩のは犯罪じゃないんですか?」
そう言われた瞬間摩利は体をビクつかせる。バレていた。全て総司に筒抜けだったのだ。もし訴えられでもしたらと考えると体が動かない。そんな摩利をフォローするかの様に真由美が答える。
「摩利はただその子の魔法を止めようとしただけです」
「仮にそうだとしても結果は俺に当たってるんだから何も言えないですよね?それにもし少しでも狂えば彼女に怪我をさせてたかもしれないんですよ。それなのに人に攻撃するなんて良いんですか?たとえ許されてるとしても」
総司はニヤリと笑う。それに対して真由美は唾を飲み込む。現状での立場は完全に逆転した。摩利は自分への処罰に怯えて言い返せる状況ではない。真由美としても摩利の不利益になる事は避けたい。それを察している総司は彼女らに取引を持ちかけた。
「別に先輩達をどうこうする気はないですよ。彼女らは攻撃を中断して摩利先輩も怪我をさせてない。結果、誰も被害に遭わなかった。それで良いじゃないですか。どうです?」
彼の言い分はつまり、そちらのミスを無かった事にするから代わりにこちらの事も無かった事にしろという取引であった。真由美は迷う。彼女1人であったならばこの取引に応じず、真実で自分もろとも処罰しようと考える。しかし今回は摩利がいる。というか彼女がやってしまったのだ。しかも今の摩利は一般生徒に魔法を撃ってしまった事と自分の処遇に動揺、怯えでそれどころで決断する力はない。苦渋の決断となるがこの取引に応じる事にした。
「分かったわ。総司くんの言うとおり誰も怪我していないみたいなので今回は不問とします。……でもあまり私達が動く様な問題は起こさないでくれると助かります」
「善処します」
「後、あまり女の子を虐めちゃだめよ」
「………善処します」
真由美は摩利の肩を担いで去っていった。総司は2人の後ろ姿を見送ると先程助けた女子生徒に声をかける。
「大丈夫か?」
「え?」
「え?じゃなくて怪我はないかと言ってるんだが?」
「あ、はい。大丈夫です」
「なら良いや。でもいくら自分の思い通りにならないからって何事も冷静でなくちゃいけないぞ。激情に駆られた行動は必ず不幸を呼ぶからな」
総司は先程の自分を思い浮かべながら言う。女子生徒は連続で凄いものを見たせいでまだ脳の処理が追いついていない。すると最初に魔法を放とうとした男子生徒が総司に話しかける。
「借りだなんて思ってないからな」
「?」(借り?)
「僕の名前は森崎駿。森崎家に連なる者だ。お前の名前は?」
「悠木総司だけど?」
「悠木総司。俺はお前を、お前達2科生を認めない。お前は司波さんを泣かした。彼女のご好意で許してやるが次泣かしたらただではすまさないぞ」
「許してやる?…ふっ。あの時、兄である達也以外、誰も刃向かえなかった腰抜けがか?」
「何⁈」
総司は煽る様に笑う。折角事態が収束したかと思われたのにまた1科生と2科生での喧嘩が始まる。そう思われたが総司の頭をエリカが叩いた事により有耶無耶になる。
「いってぇ!何すんだよ!」
「何すんだよじゃないわよ!終わったそばから始めないでくれる?」
「始めたのはお前達だろ!」
「そうだけどわざわざ煽る必要ないじゃない!生徒会長に問題は起こさないでって言われたばかりでしょ!」
2人の言い合いがまた見れて美月達は少し笑顔になる。昼食の件で仲違いしてしまったらどうしようと思っていたが案外早く仲直りが出来て良かった。森崎も今のこの2人に割り込む気はなかったのか深雪の1番近くにいる達也を指差して言う。
「俺はお前達を認めない。お前達と司波さんが一緒にいる事を。彼女はブルーム。ウィードの中ではいずれ枯れてしまう。彼女は僕らといるべきなんだ」
そう言って立ち去ろうとするがまたもや総司が彼を止める。
「あ、そうそう。ブルームとかウィードとかって、花と雑草って事だろ?ならその表現はやめた方がいいぜ」
「なんだと?」
「簡単さ。花は弱いからさ。雑草に力を奪われるのもそのせいだ。水が無ければ枯れ、踏まれれば元に戻る事はない。それに比べて雑草の生命力は凄い。コンクリートすら突き破る生命力を持つ。だから自分達を花なんて言い方はやめた方が良いぞ。何かあったらすぐに雑草に力を奪われて負けちまうからな」
彼の言い分には誰もが密かに納得してしまった。それは1科生も例外ではない。顔には出さないが心の内で納得してしまった。きっと彼等は今後総司達をウィードと呼ぶ事は無くなるだろう。
そしてまたも1科生にちょっかいを出したと言う事でエリカが総司の頭を叩く。リプライの様に言い合いに発展した彼に声をかける者がいた。
「あの、」
「ん?ああ、さっきの」
それは先程、魔法を放とうとして総司に止められた女子生徒だった。
「さっきは助けてくれてありがとうございました」
「さっきの事なら気にする必要ないよ。あの攻撃の角度的に君のを妨害しようとしただけだし、威力もほとんどなかった。直撃した俺がピンピンしてるんだから」
総司は手のひらをプラプラさせながら話す。実際は彼に触れた瞬間消滅したので威力は分かっていないが恐らく大丈夫だろうと思い。
「でもどうやったか分かりませんでしたが貴方が魔法を消してくれたから大事にならなかったと思います。
「いや、それも──」
それも君が放つ前に摩利の攻撃が当たるから平気だよと言おうととしたら後ろからちょんちょんと突かれた。振り返ると突いていたのはエリカだった。彼女は手振りで屈めと言うので言われた通りに屈むと耳元で囁く。
「そこは素直に受け取っときなさい。このままじゃ永遠に続くわよ」
彼女に言われてそう言うもんかと思い、素直にお礼を受け取った。
「あの、私は光井ほのかです。それで、その…良ければ駅までご一緒しても良いですか?」
恐る恐る尋ねるほのか。感謝の気持ちはあれど彼は先程生徒会長に向かって堂々と取引を持ちかけた男。簡単に慣れる方が無理がある。そして誰も断る理由も無かったのでそのまま同行するかと思いきやまさかの返答を総司は繰り出した。
「ああ、楽しんでくれよな。それじゃ」
ご愛読ありがとうございました。
やばい、書いてて思ったけど達也がまだ活躍してない。総司ばかりが悪目立ちしてる。そして駅まで同行しないと言う総司。その心境はいかに。
では次回もお楽しみに!またね