対魔法抵抗力エンドレスナイン   作:やってられないんだぜい

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痴漢、駄目、絶対

 

 色々と特殊な学校である魔法科高校だが、基本的な制度は普通の学校と変わらない。この第一高校にもクラブ活動は存在する。

 ただ、魔法と密接な関わりを持つ魔法科高校ならではのクラブ活動も存在する。

 

 なんといっても他の学校と違う所は九校戦だろう。魔法科高校は第一から第九まである。その九校で対抗戦を行うのだ。毎年、九校戦での成績が、各学校の評価にも反映される。学校側の力の入れようは、スポーツ名門校が伝統的な全国競技に注力する度合いを上回るかもしれない。優秀な成績を収めたクラブには、クラブの予算からそこに所属する生徒個人の評価に至るまで、様々な便宜が与えられる。そのため、新入部員獲得合戦は熾烈を極める。

 

 当然、この騒ぎを取り締まる必要があるため、風紀委員は借り出される訳だ。

 

 「大変だな、風紀委員って。まぁ妹を庇うためとはいえ、お前が勝負を挑んだんだ。自業自得」

 「分かってる」

 

 ため息をついてる達也の肩を叩く総司。自分はそんな面倒な事にならなくて気楽である。

 

 「あ、忘れてたが昼に会長が言っていたんだが放課後に生徒会室に来てくれと言ってたぞ」

 「そういうのは早く言ってくれ」

 

 要件は大体想像つく。先延ばしにするのも申し訳ないので達也に文句を言いながらも素直に向かおうとする。そんな総司達をキーの高い声が呼び止めた。

 

 「エリカか、1人か?」

 「珍しいかな?あんまり待ち合わせとかして動くタイプじゃないんだけどね」

 「待ち合わせは知らんが、少なくとも俺の知ってるエリカは誰かしらと行動してるぞ」

 「そう?まぁ、そんな事より2人ともクラブはどうするの?美月は美術部だって。誘われたんだけど、あたしは美術部って柄じゃないし、面白そうなトコないか、ブラブラ回ってみるつもり」

 「俺は特に決めてないな」

 「俺も、入るのはともかく見るのは面白そうだけど」

 「まぁ俺は風紀委員でこき使われるからゆっくり回る時間はないだろうな」

 

 そう言うと、エリカは顔を染めて髪の毛を弄りながら言った。

 

 「それじゃさ、総司君。良ければ私と回らない?」

 「良いんだけど少し用があってな。それからでも良いか?」

 「用?」

 「あぁ、これから生徒会室に用があってな」

 「なんでなの?また何かやらかした?」

 「人を問題児みたいに言うな」

 「実際そうだろ?」

 「達也は分かってるだろ。たくっ……七草会長に用があってな」

 

 また会長の名前が出た事にエリカは若干表情を曇らす。

 

 「そ、そうなんだ。じゃあ良いよ。邪魔すると悪いし。楽しみな、あんな美少女は滅多にお目にかかれないよ。注目されてるうちにアタックしちゃいな」

 「アホかっ‼︎それじゃまたな」

 「バイバーイ」

 

 エリカは元気良く手を振った。誰にも気付かれていなかったがそのエリカの表情は手とは裏腹に悲しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何故お前がここにいる!」

 

 達也が風紀委員会本部につくと第一声でこの声が響き渡る。

 

 「やかましいぞ、新入り」

 

 しかし摩利に一喝されて、森崎駿は口をつむぐ。

 

 「申し訳ありません」

 

 形上の謝罪を述べる摩利。他の人はどうか知らんが、森崎に摩利への恐怖はない。あの日、総司に、2科生に脅される程度の先輩に尊敬なんかあったもんじゃない。

 

 「まあいい、座れ」

 

 摩利もそんな事は直ぐに分かった。森崎が分かりやすいのもあるが、そう思われても仕方が無い醜態を晒したと自覚している。この場で実力の差を見せつけるのも良いがそれだと独裁者と変わらない。畏怖は与えられるが尊敬などされないからだ。恐らく彼以外にも摩利への尊敬の念が薄れた人物もいる。なら自分のすべき事はもう一度信頼を取り戻す事だ。

 

 まず新入りである森崎と達也をみんなに紹介する。そこでやはり起きてしまった。1年だからと言うのもあるが特に達也の左胸を見ての発言。

 

 「役に立つんですか?」

 「安心しろ。司波の腕前はこの目で見ているし、森崎のデバイス操作もなかなかのものだった。一昨日は相手が悪かっただけだ。それでも不安なら、お前が森崎についてやれ」

 「やめておきます」

 

 男は鼻白んだ表情を浮かべたが嫌味な口調で断った。

 

 あまり穏やかではない。達也と森崎は喧嘩腰の口調に驚くが、それ以外の者に変化はない。どうやら日常的にこの様な事が頻繁に起きているのだろう。同じ委員会で対立など馬鹿馬鹿しいと思うが口には出さない。

 

 

 

 一方その頃、総司は生徒会室で真由美と一対一でお茶を飲んでいた。

 

 「いや、なんで?」

 

 あまりに可笑しい状況に総司はツッコむ。真由美はどこか可笑しいかしら?と自分の服装を見直す。

 

 「いや、服じゃねぇよ。今ここでお茶を飲んでいる状況が可笑しいって言ってるんですよ」

 

 真由美は当たり前じゃないと言う顔をしていた。

 

 「きてくれたのだからお茶くらい出すわよ」

 「そうじゃなくて!何でもない日に来てお茶を出してくれるなら嬉しいですけど、そうじゃないでしょ。今はクラブ勧誘の時間じゃないんですか?会長だって所属クラブがあるでしょ!」

 「副クラブ長に用事で遅れるって言ったわ」

 「そんな無茶苦茶な」

 

 総司は真由美に対する我が儘に呆れ、こうして振り回されているであろう副部長に同情する。この場を去るには手短に要件を済ませるしかない。

 

 「はぁ………大分余計がありましたけど、例の件。断らせていただきますね」

 「やっぱりダメ?」

 「当然です。七草会長が言った様な力、会長を守る力(魔術)など、自分は持っていません。七草会長と会ったのもきっと別人です」

 「一緒だけどなぁ」

 「違います」

 「しょうがないわ。ボディガードの件は諦める。でもたまにはここで一緒に食べましょうね。その時は手料理を振る舞うから」

 

 総司は手料理という言葉に反応する。男は女子からの手料理を食べたいものだ。例え、その人が好きでないにしろ、女子から弁当を貰ったという事実が人生を潤す。それが学生時代ともなれば尚更だ。一生自慢できる。

 

 しかし迷う。ここで承諾してしまえば、必ず厄介な事になる。相手は皆の憧れ、七草真由美なのだ。その彼女とよく昼を共にしているなど知られてみろ。翌日から机が不幸の手紙でいっぱいになる。後果たし状も。そんな面倒な事になりたくない。

 

 プライベートで個人的に戦うなら分かる。それは自分のレベルアップにも繋がる。しかし魔法に取り憑かれ、服部の様に魔法以外の事を意識しない連中に万が一にも負けると思えない。自分の能力は魔法師にとって初見殺しだからだ。まぁ使いすぎでバレるのだけは避けたいが。

 

 兎に角、総司の意見は決まった。

 

 「たまになら」

 

 総司は承諾した。欲望には勝てなかったのだ。美少女からの手作り。その魅惑に提案に勝てるはずもなかった。自分の事を弱い男と思いながら立ち去ろうとすると真由美が呼び止めた。

 

 「なら、LINNを交換しない?」

 

 LINN、通称ライン。世界中に広く知られているコミュニケーションアプリだ。

 

 「予定を合わせるのに必要でしょ」

 

 そのまま彼女に任せてLINNを交換する。しかも彼女の名前を『運命の人』と勝手に変えられていたので即座に普通に戻した。彼女は『もぉ〜いけず〜』と頰を膨らませていたが無視する。

 

 「それじゃクラブ頑張って下さいね」

 「見に来てねっ!」

 「機会があれば」

 

 そう言って2人は別れた。

 

 

 

 

 「うーわっ」ヒキッ

 

 これは無法地帯もいいとこだった。侵入部員を獲得したいがためにそこは戦場と化す。そう言われて嘘だろと思ったが今、この現状を見るとあながち間違いではない。そこら中人だらけ。部員を獲得するためならなんでもやりそうな勢いである。

 

 (やばい。滅茶苦茶言いたい。『人がゴミのようだ!』って)

 

 だが自分がその場にいても見向きもされなかった。理由は2科生だからだろう。

 

 (2科生って良くね?授業は自習が多いし、こう言う所で相手にされないし)

 「チョッ、どこ触ってるの?やっ、やめ…!」

 

 そんな事を思っていると聞き覚えのある声がした。総司は人の間を縫うように声の主の場所へ進む。そして彼女へセクハラした手を掴み取ると大声で宣言する。

 

 「はーい!女子生徒にセクハラした人を捕まえました!風紀委員直ちに来て下さい!」

 「何⁈」

 

 その人物は2年の男子生徒だった。彼は人が蔓延り誰もが混乱している状況を利用してセクハラをしていたのだ。そんな時に見つけたのがエリカである。新入生総代である深雪や、生徒会長である真由美に劣るとはいえ、彼女だって美少女である。彼女を見つけると男は人を掻き分けて彼女の背後を取る。色んな人(主に女子。他の男子は女子であるエリカに疑われるのを恐れて遠慮している)が我が部にと引っ張る中、彼女の意識が他を向いた隙をつき、尻に触れたのだ。彼女は悲鳴を出すが人が渋滞している今、特定するのは困難である。欲をかいた男はもう一度触る。その瞬間に総司に捕まえられたのだ。

 

 「何を言い出すんだ!」

 「いやー、悪いんだけど、俺見ちゃったんだよね。あんたが女子生徒の尻を触ったの」

 「何処にそんな証拠があるんだ!」

 「これ何か分かるでしょ」

 

 そう言って総司は端末を見せびらかす。最近の端末は撮影のボタンを押すと赤く光る様になっている。盗撮を防ぐ為に出来た。その光が総司の端末から発せられていた。つまり撮影していると言っているのだ。

 

 「ぐっ……」

 

 男は歯を軋ませる。撮影されていては言い訳は意味を為さない。痴漢は今でも立派な犯罪だ。それ相応の処罰を受けるだろう。停学、もしくは退学もあるかも知らない。それだけでない。もし退学を免れたとしても、これから変態のレッテルを貼られるだろう。自分の人生の汚点である。

 

 「くそがぁ‼︎」

 

 男は総司に襲いかかる。自分がドン底に堕ちる原因を作ったからだ。逆恨みも甚だしいが今の彼にはそんなの関係ない。ここで魔法を撃とうとしなかったのは彼の良心がほんの僅か残っていたのだろう。

 

 総司は拳を引いて避けるのでは無く、敢えて踏み込む。そして彼の腹を力強く殴る。

 

 「ぐはぁ‼︎」

 

 男はたまらず胃液を吐き出す。だがまだ終わらない。総司は痛みで倒れようとする男の顎をアッパーで突き上げだ。男は空中に舞い、その場に勢いよく落下する。

 

 「女の身体に触れてんじゃねぇ、ゲスがっ!」

 

 

 

 




 ご愛読ありがとうございました。

 セクハラは絶対駄目ですよ。マジでゲスな行動ですから。女性が男性に対する痴漢が殆ど無いのにね。そんな事だから男は変態って言われるんですよ。

 では次回もお楽しみに!またね

 
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