皆さんお久しぶりです。元気にしていました?きのうの設定集は話数には入らないので6日振りの投稿ですね。
それにしても本格的にやばいですね。入学編終わるのに後何話かかる事やら。それでも付いてきてくれる皆様には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
それでは本編どうぞ
「──以上が剣道部の新歓演武に剣術部が乱入した事件の顛末です」
あの後、桐原以外の剣術部員は逆上して達也に襲い掛かるが、達也はそれを全ていなし続けた。相手は徒手格闘は門外漢な上に逆上していて、以前に総司が達也に言った様に雑で分かりやすい動作だった。そんな攻撃を避けるのは容易だった。まるで子供扱いされている様に感じた剣術部員の中に、魔法を使って応戦しようとする輩がいたが、達也は桐原と壬生に割って入った時に使った魔法を再び使用し、魔法を発動する事も叶わず、取り押さえられた。
そんな達也は現在生徒会室で事件を報告していた。
「それにしても10人以上を相手にして良く無事だったわね」
「流石は九重先生のお弟子さんというところかな」
達也の前に座っている2人、真由美と摩利から素直に褒められた。2人は集団相手に防御のみであしらった事に感心していたが、八雲の寺の門人達を相手にしている達也にとって、それがどの程度の価値を持つのか判らなかった。そんな事よりも達也の意識は2人の隣に座っている男に向いている。
部活連会頭、十文字克人。185前後の身長に分厚い胸板と広い肩幅。十師族、十文字家の次期当主だ。そんな彼の放つ存在感は人並み外れている。
「当初の経緯は見ていないのだな?」
「はい」
達也が見たのは壬生と桐原が言い争っている所からだ。一応、闘技場にいたが、達也が見ていた時は特に問題は起きていなかったので闘技場を去ろうと出口に向かった時に事件は発生したのだ。なので達也の言っている事は嘘では無い。
「最初に手を出さなかったのもそのせいかしら?」
「打ち身程度で済むのであれば当人同士の問題かと」
真由美の質問に達也は答える。もし壬生が決闘に応じず、それでも剣術部が手を出す様だったら止めに入ったが、彼女も決闘に応じた為、傍観に徹したのだ。実際、桐原が魔法を使用しなかったら達也はたまに入る気はなかった。摩利も達也の行動に文句は無い。いがみ合いが発生する度に止めに入る程の人員は風紀委員会にはない。
「それで、取り押さえた桐原はどうした?」
「桐原先輩は鎖骨が折れていたので保健委員に引き渡しました。魔法で直ぐに治癒可能な程度の怪我です。本人は非を認めておられたのでそれ以上の措置は必要ないと判断しました」
「ふむ…いいだろう。訴追は摘発した者の判断に委ねられているのだからな」
達也の言葉に摩利はあっさり頷く。
「聞いての通りだ十文字。風紀委員会としては今回の事件を懲罰委員会に持ち込むつもりはない」
「寛大な決定に感謝する」
こうして
「それと、痴漢の現場を押さえてくれてありがとうね、総司君」
「わざわざ呼び出す程の事ですか?」
「普通に良い事だと思うけど?風紀委員以外が取り締まってくれた前例は過去に無いから」
別に褒められたくて捕まえた訳では無い。だが達也の後だとショボく聞こえてしまう。事件に大きいも小さいもないのに。それと自分は役員では無いので犯人をどうするか部外者に話す訳にはいかないらしい。要も済んだので、2人は生徒会室を立ち去ろうとする。
「それでは失礼します」
「します」
「ありがとうね……明日は見に来て欲しいな」
「真由美も頑張るな。悠木も大変だろうが頑張れよ」
「?何がですか?」
総司がそう言うと摩利は頭を抱えて小声で『ラノベ主人公か貴様』と言う。勿論総司はそんなに鈍感では無い。そもそも返事をしろと言われたが、一応告白されては無い。彼女が言わない限り、自分から振る事はない。…因みに総司に対する恐怖は大分緩和された。食堂での一件や今回の件での総司の行動に優しさが垣間見れたのと、真由美の功績がデカイ。
「七草は悠木の事が好きなのか?」
この瞬間、この場にいる人物の中で十文字は馬鹿の烙印を押された。そしてこいつの前で恋バナは絶対避けた方が良いと。
「本人の目の前で堂々口にする奴がいるか馬鹿!」
摩利が怒った。この場に少しは物事をオブラートに包めと。真由美はそう言われて照れてはいるものの、否定はしない。つまり肯定を意味している。そんな空気に耐えかねた総司はそそくさと達也を連れて一緒に部屋を出る。
部屋を出ると総司は大きな溜め息をつく。
「大変そうだな」
「当たり前だろ。十文字先輩の爆弾発言には驚かされたよ」
「……それなら断ったりしないのか?」
「んー、そんな簡単なもんじゃないだろ。彼女は…まぁほぼ公言してる様なものだけど告白して来る訳ではないし。もしかしたらこのままいたいのかも知らないしな。関係を壊してまで振らないよ」
「そういうもんか?」
「さあ?俺だって偉そうに言える程、恋愛に詳しくないし」
「…振るって事は嫌いなのか?」
「別に嫌いって訳でもねぇよ。まぁ好きでも無いけど」
恋愛経験の無い者同士で語っても良く分からないのであった。それに話は変わるがさっきの会話で総司も達也に言いたい事があった。それは剣道部と剣術部の事だ。総司もその場にいたので当然、剣術部が魔法を使おうとしていた事を知っている。それでも達也は攻撃せずにその場を乗り切った。その技術は凄いのだが何処か甘さを感じたのだ。
(防御面は凄いんだがそんな戦い方だといつか足元救われるぞ。そうならない能力があるなら別だけど)
新入部員勧誘週間3日目、達也は既にこの仕事に嫌気が差していた。2日目から自分は狙われているのだ。それも逆恨みにもなっていない理不尽な怒りで。
剣術部の次期エース、2年生ではトップクラスの実力者である桐原を新入生のウィード如きが倒した。このニュースは直ぐに学校内全体に広まった。桐原本人は自分の非を認め、反省してるにも関わらず、中途半端な魔法選民主義に染まったこの事件と無関係の人達の怒りを買ってしまったのだ。ただ規則に則って行動しただけなのに酷い有り様である。
だが、あからさまな私闘は粛清対象。更に彼の後ろには真由美、摩利、十文字の三巨頭が控えている。ならばどうするか?答えは簡単、事故に見せ掛けるのだ。巡回中の達也が近付くのを待って、ワザと騒ぎを起こす。風紀委員である彼が仲裁に入ったところで、誤爆に見せ掛けた魔法攻撃を浴びせる。なんとも卑劣極まりない戦法だ。きっと彼等は卑劣様を尊敬しているに違いない。しかもさすがは名門・第一高校で学ぶ生徒、手口は極めて巧妙である。
「大変そうだな」
休み時間、これから来る放課後を憂鬱そうにしている達也を、総司は楽しそうに眺めていた。そんな総司に達也は怒りが込み上げて来る。
「……その楽しそうな顔を俺の方に向けないでくれ。殴りたくなる」
「まぁ、そう言うなって。お前に良い話を持ってきたんだよ」
「何?」
「こう言うのはどうだ?ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
「……下手すればお前も粛清対象だぞ?」
「何言ってんだよ。不正使用を暴いて取り締まられる言われはない。それにそうならない様工夫もちゃんとある」
「なら良いが…」
「しかも、今ならお値段なんと…………冗談だよ。そんな顔すんなって」
ポケットから端末を取り出して、商売人の様に電卓を叩く総司を達也は本気で引いていた。総司も流石に友達からこれ見よがしに金を取ろうとは思っていない。達也を助けるついでに、気に入らない奴等をぶん殴りたいだけなのである。
放課後、達也が巡回していると男達がいがみ合っていた。しかもCADに手を伸ばして今にも魔法を放とうとしている。男達はこちらをチラチラ見て来る。それが罠だと分かっていても風紀委員の役目の為、しょうがなく仲介に入る。もし止めに入らなかったらそれはそれで騒がれてしまう。男達は達也が近付いて来るのを見るとニヤリと笑う。
(バレバレだ。もう少し隠せよ)
「言っても話が分からねぇ様だな!」
「そっちこそ!」
ベタベタな上に下手くそな演技。思わず笑いそうになるのを我慢する。2人の間に入ると左腕に付けている風紀委員会の腕章を見せる。
「風紀委員会です。両者、CADから手を離して」
「なんだテメェ!」
「部外者が口を挟むんじゃねぇよ!」
男達の役目は兎に角注意を集める事だった。目的の達也の目は勿論、周りの目もだ。ここにいるのが1科生で達也を快く思ってない人物だけなら良い。だかもし2科生が混じっていては駄目だ。2科生の連中はこの男に味方する可能性が高い。この男は2科生の希望の星だからだ。彼が活躍すれば2科生だって出来ると言う証明になる。そんな奴らにこの作戦の要となる彼に魔法を放つ人物がバレたら自分達は連帯責任で粛清される。だからこそ自分達が目立つ行動をして注意を集める必要があるのだ。もし失敗してもあいつが離れる時間を作り、達也を自分達から離れられない状況を作り出せば最悪の状況にはならない。
作戦の要となる男は少し離れたところから喧嘩の様子を伺っている。既に起動式の展開を完了している。収束系・中距離戦闘用魔法『レーザー光線』。太陽光の光を集め、その光を相手に一点集中で当て、火傷の効果を与える魔法。名前の割りに殺傷性はない殺傷性ランクCだ。これを目に向かって放てば失明するが流石に今回は目を避けて皮膚を狙う。
いつでも撃てる様にしてると肩をぽんぽんと後ろから誰かが叩いてきた。
「あの生意気な風紀委員を狙うんですか?」
「そうだ。ウィードの分際で調子乗りやがって。どうせ風紀委員長にワイロでも送って風紀委員会にしてもらったに違いねぇ。後悔させてやる。ジワジワと、自分から逃げ出したくなる様にな」
「でも1人だとこの作戦厳しいですよね?」
「そのためのあいつらさ。今喧嘩してるのは全部演技。全ては奴の気を引いて俺が奴にバレないためさ………てかお前誰だ?」
そこで初めて疑問に思った。最初にあの男を生意気な風紀委員と言ったのでなんとなくこちら側の人間だと納得していた、が自分に話しかけてきた人物は一体誰なのだ?と。振り返ると、とっても良い笑顔でこちらを見下ろしている男がいた。180程の身長で中々鍛え上げられている。そんな男の笑顔がだんだん怖い顔に変わっていく。
「あんたさぁ、文句があるならこんなコソコソしてねぇで直接本人にぶつかれよ!」
総司はそう怒鳴り男の顎先を捉え、脳を頭骨内壁に激突させ、あたかもピンボールゲームの如く、頭骨内での振動激突を繰り返して生じさせ、典型的な脳震盪の症状を作り出した。男はそれに耐えられず、その場に倒れる。
「本当はまだ続くんだけど、弱いなお前」
「これは俺達の問題なんだよ!なぁ」
「そ、そうだぞ!」
特に達也は魔法を阻害していないのに、裏からの射撃がないのに2人は不安が募る。もしかして向こうに何かあったのではないかと。そうなったらこの作戦は意味をなさない。
2人の不安は的中してしまった。
「風紀委員さん。CAD構えて攻撃しようとしてる人がいたので捕まえたので引き取ってください。後そいつら共犯です」
2人の前に総司が現れる。しかも彼が連れてきたのはこの作戦の要で魔法を準備していた筈の男であった。2人は勿論粛清されたくないので男を裏切り言い逃れしようとする。
「は?なんの事だ?俺らここで口論してただけだぜ」
「俺達が共犯だって証拠あるのかよ」
「あんたらベタだね。証拠ならここに」
そして総司は録画していた動画の音をみんなに聞かせる。それを聞かせると1人は顔を青くして、もう片方は喋った男を見て馬鹿と罵る。
「これでもまだ無実を主張するか?」
「あーあ、折角の作戦だったのにそこの馬鹿の所為で全て台無しだよ。……まぁ1番は、テメェの存在だがな!」
怒り狂った男はCADを操作して魔法を発動しようとする。それを見た達也は魔法を阻害する『キャストジャミング』を発動しようとするが、総司が男の後ろ首をトンッと手刀して意識を奪う事により、発動せずに終わった。顔を青くしていた男はもう言い逃れ出来ないと悟り、素直に自首するのであった。
ご愛読ありがとうございました。
年上の癖に闇堕ちする男達。情けないったらありゃしないですな。単純に彼らの情けなさにイラつく総司でした。
みんなもこんなコソコソした事はしない様にね。
次回もお楽しみに、またね