対魔法抵抗力エンドレスナイン   作:やってられないんだぜい

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失恋

 翌日、いつもの面子はいつもの様に生徒会室で食事を共にしていた。

 

 「そうでしたか、壬生先輩は無事でしたか」

 「あぁ、後遺症も無かった。そもそも本当に魔法を受けていた事すら怪しい程にな。一応安静の為に入院しているが今日、明日には退院出来るだろう。まぁ強いて挙げるならカフェでの出来事を覚えていない。だから折角の口説きも無駄に終わってしまったな」

 「口説いてないですよ!」

 

 話題の中心は昨日に倒れてしまった壬生の事だった。一同は同行していた摩利から彼女の無事が確認して一安心していた。今となっては憶測でしか判人を語れない。そもそもどんな魔法を掛けられていたかすら不明なのだ。壬生を助ける事は出来たが事態が進展した訳ではなく、彼女達の顔色は晴れない。その時、あの場にいなかった摩利だけが総司の顔を伺う。

 

 「本当に掛かっていた魔法を解いただけなんだな?」

 「そうですよ」

 

 摩利の質問に即答する総司。摩利はいまいち信用出来ずにいたのだ。彼がエガリテの組織のメンバーで証拠隠滅の為に壬生の魔法を解いた。自分の身の潔白を証明する為に敢えて自分達が尾行した人に解いたと。摩利は昨日、話を聞く様に言った真由美に問う。

 

 「真由美、悠木から話は聞いたのか?」

 「………」

 「……真由美?」

 「え?あ、なんの話だっけ。ちょっとぼぉーっとしてて聞いてなくて」

 「大丈夫か?朝からその感じだが」

 

 しかし肝心の真由美は明らかに様子がおかしかった。会話に反応はしていても本当に聞いているのか微妙で、しかも授業でも普段ならしない様なミスの連発。いつもの真由美では無い事は明らかだった。一度保健室に行ったが熱は無い。風邪の症状も無く、摩利には原因が分からない。

 

 「悠木の事だ。話は聞いたのか?」

 「あ、うん。聞いたわ。助けられたのは実家の代々続く魔法を解除する魔法みたい。魔術に関しても言い間違いしただけだったわ。最初は平然としてたのに指摘されて動揺したのは、あの場面で間違えて恥ずかしくて気付かれない様に冷静を装ってたけど、簡単にバレて動揺してただけみたい。そうよね、総司君」

 「その話はもう勘弁してくださいよ。恥ずかしいんですから」

 

 真由美は昨日のうちに作っておいた嘘を話す。総司にふって、総司が照れ臭そうにするのもこの嘘に真実味を帯びさせる為だ。

 

 「そうだったのか。それじゃ2日目のあの日、1年の展開式を解除したのもその魔術って訳か?」

 「まぁそうですね。うちの家系が潰れず、ギリギリ生き残ったのもこれのお陰なんです。そしてうちではこれを魔法を解除する術、魔術と呼んでいるんです。まぁ時間が掛かるし、能力の限界があるんで殆ど使えないんですけどね。ほのか相手のだって術に込めたサイオン量が彼女を上回った結果です。だから相手がナメて掛かって来なきゃ意味が無いんです。本当は隠したかったんですが、ボロ出してしまいまして。だからこれは絶対内緒にして下さい!」

 

 そう言って頭を下げる総司。嘘に多少の真実を含ませる事でより真実味を持たす事が出来る。摩利は総司に必死さに一瞬驚く。だが彼の言い分も納得出来たため約束し彼の言う事が真実ならそれを破ったら彼の家系を滅ぼす事と同義。そんなことする気は毛頭ない。彼が悪と決まった訳ではないから。

 

 だが、深雪と達也は真実ではないと直ぐに分かった。

 

 (100%嘘だろうな。委員長を納得させる為に口裏を合わせでもしたのだろう。だが魔法を無効化する能力事態は真実かも知れないな。だがこの能力に裏がある事は間違いない。……まぁ詮索して無意味の争いはごめん被るからしないがな)

 

 もしこれだけの話なら命を賭けろなんて殺気交えて言ったりはしない。その証拠に今回は摩利に素直に話した。勿論これには深雪だって気付いている。だが、それ以上に2人が気になったのは真由美の態度だ。様子が可笑しいのは明らかだし、総司と話す時も以前より何処か遠慮を感じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真由美は昨日の事を引きずっていた。

 

 「私は……聞くわ」

 

 真由美は総司の話を聞く事にしたのだ。当然、総司は理由を尋ねる。それに対して真由美は迷わず答える

 

 「貴方の事が知りたいから、少しでも貴方の力になりたいの。それじゃ駄目かな?」

 

 総司は呆れてしまう。恋一つで女というものは命を顧みずに行動してしまうのかと。昔にどうやって出会ったか知らないが行動が馬鹿過ぎる。流石にもう少し利口だと思っていたのだが、予想が悪い意味で裏切られて少しショックを受ける。

 

 だが総司はそれでも話す。彼女がそうしてくれと言ったからだ。もし彼女が酷い目に遭っても自業自得(助けはするが)。これで酷い目に遭えば今後の考えを改めるだろうと小さじ一杯くらいの期待を胸に話す。この時点で真由美は、達也や深雪より愚か者であった。

 

 「分かりました。まず初めに魔術について説明しましょう」

 

 そうして魔術について説明していく。夢で起きたというにわかには信じがたい内容も隠さず全てを話した。真由美はいくら総司が言った事だろうと信じられずにいた。それはそうだ。あの名前も知らない先生が聖人過ぎるだけだ。

 

 「その話は本当なの?」

 「ま、そうでしょうね。分かってましたよ、信じられる方が異常だって。でも本当の事です。俺は貴方達の魔法を魔法とは認めていない。魔術という技術だって。だからそれでなんでも出来ると思い込んでる魔法師なんかクソくらえと思ってます」

 「ムッ、なんでもとは言わないけど魔法(魔術)で出来ない事の方が少ないわよ」

 「魔術は確かに便利ですよ。そこは否定しません。でもそれって0から1を作ったのではなく、1を100に広げたですよね。半世紀以上も立ってるのに魔術でしかなし得ない事が殆ど無いのにどうしてドヤ顔なんかできるかって話ですよ。大勢の人が使用できる様にした過去の偉人達の方が凄いと思いますがね」

 

 真由美は総司の言い分に口を閉ざす。確かに魔法(魔術)は便利である。彼もそれは認めている。そして彼の言う通り、魔術でしかなし得ない事が限りなく0に近い。そして魔術には適正がある。それを満たしていなければいくら便利だろうと使えない。確かにその通りだ。今まで考えなかった事を改めて考えさせられる。

 

 だがここまでの話を聞くと疑問が深まる。

 

 「貴方、そんなに魔法嫌っているけど良く第一高校に入学できたわね」

 「それ裏口入学。俺魔術なんて使えないし」

 

 もうどうせ話すなら全て話すとぶっちゃけている総司。ぶっちゃけすぎて、敬語を使うことすら忘れている。過去にここまで堂々と不正しているのを暴露した人がいただろうか?否、断じて否である。

 

 「ならどうしてこの学校へ?」

 「ある人から依頼されてね。これ以上は企業秘密なんで」

 「……」

 「そうそう、七草会長って俺の事好きでしょ」

 「ええ⁈そういう事こんな堂々と言う⁈普通はもっとオブラートに包むでしょ!」

 

 好意を寄せている相手にこんな事言われて慌ててしまう真由美。

 

 「だって明らかに普通じゃ無かったし、明言してるようなものじゃん」

 「そうだけど!少しは女心察しなさいよ!」

 

 色々とツッコミを入れて興奮して息が上がってしまった。顔も少し赤みを帯びている。しかし、彼女の表情は総司の一言で一変する。

 

 「悪いんだけどさ、俺…あんたと付き合えないから。次からああいうのは辞めてくれないかな?」

 「え?」

 「いつまでもハッキリしないのは悪いと思ってさ、丁度魔術の事とかでタイミング良かったし」

 

 真由美は言葉を失った。そんな真由美を置き去りにして総司の口から付き合えない理由がどんどんと飛び出して来る。

 

 「まぁ魔術使ってる奴と付き合える訳無いしな。話が合わないのに付き合える訳無いじゃんって感じ。付き合っても破局するの目に見えてるし。その時点で恋愛対象としては論外。第一あんたの他人の迷惑を考えないで自分だけの事しか考えない感じが全然俺のタイプじゃないし。あんただって魔法も使えない俺と付き合える立場じゃ無いでしょ、七草家の御令嬢なんだから」

 

 真由美から言葉が出ない。その代わりに涙がポロポロとこぼれ落ちる。それを見ても総司は謝る事をしない。これで慰めて変に気を持たせるくらいなら、いち早く自分への想いを忘れて欲しかった。それが彼女の為にもなるのだから。

 

 「別にあんたの事を誰かにバラしたりしないから安心しな。所詮、俺とあんたでは住む世界が違う。あんたはさっさと俺の事なんて忘れて、新しい恋を見つけな」

 

 じゃあなと言って総司は生徒会室を後にする。真由美は誰もいなくなった部屋で静かに崩れ落ちるのであった。

 

 

 





 ご愛読ありがとうございました。

 真由美、初めての失恋です。総司は敢えて突き放す。何故なら絶対に叶わない恋なのだから。

 では次回もお楽しみに。またね
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