皆さんお久しぶりです。元気にしてますか?
今回は少し文字数がいつもより多いです。勘弁して下さい。そしてオープン戦、佐藤の4号が炸裂しました。マジでパワーやばいです。それこそ大谷に匹敵する飛距離だと思います。あの広い甲子園で逆方向にポンポン放り込むなんて。
さて小話はここまで!本編どうぞ!
会長達が立ち去った後、女子達はケーキ屋さんでお茶でもする約束をする。達也も総司を誘うが用事があると言って断り、その日はそれで解散となった。
翌日、総司は昨日の反省を生かし、今度は早過ぎず、どちらかと言うと遅めに登校した。昨日の内に顔合わせを済ませた生徒も多いようで、既に教室のそこかしらで雑談の小集団が形成されていた。その中には勿論達也達も含まれている。自分の席を確認した後、自分も彼らに混ざる。
「おはよう、3人とも」
「総司か」
「おはようございます」
「オハヨ〜」
「3人とももしかして席近くなのか?」
「違う、違う。達也君と美月が隣で私は真ん中の1番後ろ」
「へぇ、そっか。俺は窓側の1番後ろだから達也と柴田さん以外離れてるんだな」
「そ、だから仲間はずれ?って話してたとこ」
「それを俺が仲間はずれにするのは難しそうだと考えていたところだ」
「確かにエリカを仲間はずれにするのは難しいだろうな」
あっさりした声と口調で達也はそう言った。わざわざ総司が来た事でそれを答える必要がなくなったと言うのにこの男はお構いなしにエリカに言い放った。しかもそれに総司も続く。それを聞いたエリカはジト目で2人を睨む。
「……2人とも、それはどういう意味かな?」
「俺は勿論、社交性に豊んでいるって意味だよ」
「俺は仲間はずれにしたくてもお構いなしに絡んでくるって意味だよ」
「なんだと〜!」
総司に掴みかかるエリカとそれを見て笑いを溢す美月。まだ日は浅いのにこの2人の言い合いは恒例となりつつある。そんな3人を横目に達也は端末にIDカードをセットし、インフォメーションのチェックを始めた。規則から学校行事、カリキュラムまで、高速でスクロールしながら頭に叩き込み、キーボードオンリーの操作で受講登録を一気に打ち込む。その速さにエリカと美月は凄いと驚嘆の声を上げ、総司は過去の失敗を思い出していた。
(キーボード入力、懐かしいな。あれはまだ中学入学した頃。一体どれくらい速く打ち込めるかに挑戦した時。強く叩き過ぎてキーボード壊して父さんに怒られたっけ。『視線ポインタや、脳波アシストに比べると安めだが、それでも決して安い訳じゃないんだぞ』って。あの頃は若かったな)
そんな爺みたいな思い出に浸っている横で自分を前の席から目を丸くして手元を覗き込んでいる男子生徒と達也は目が合った。
「……別に見られても困りはしないがなんか用か?」
「あ、悪い。珍しいもんでつい見入っまった」
「珍しいか?」
「珍しいと思うぜ。今時キーボードオンリーで入力する奴なんて初めてみた」
「慣れればこっちの方が速い」
「すげースピードだったな。それで食っていけそうだぜ。おっと、自己紹介がまだだったな。西城レオンハルト。親父がハーフでお袋がクォーターなんだ。得意術式は収束系の硬化魔法だ。レオでいいぜ」
達也も自己紹介してお互いに目指している職種も話した。レオが山岳警備隊みたいな身体を動かす系で達也が魔工技師。それを聞いたエリカが会話に乱入。その後エリカとレオが総司とエリカの言い合いみたいな事を繰り返し、それを達也と美月が宥める事で事態は収束する。
「総司の得意魔法はなんだ?」
ここで話は終わるかと思いきやまさかの総司に振られてしまった。自分にも火の粉が降りかかり彼の心拍数は急激に上昇する。ここでいざ適当な事を言ったとしても今後見せてくれてと言われたら一貫のおしまいだ。だからと言って魔法など使えないと言えば生徒達にこの学校からつまみ出されるのは確実。頭を高速に回転させてこの場を乗り切る策を練る。
「お、俺か?…俺も実技は苦手でな(苦手どころか0点です)。……派遣社員を目指してる。便利屋みたいな困った人を助ける仕事にな」
必死に思いついた策は自分の仕事を言い方を変えて乗り切る作戦だった。魔法科高校に進学して希望職種が便利屋と、かなりツッコミどころ満載な案。しかし総司に咄嗟に思いつくのはこれで精一杯だった。もしツッコまれたらどうしようと頭を巡らせる総司。
「便利屋か……面白そうだな!それじゃもし俺が困った事あったら仕事頼みに行くぜ」
「あ、ああ。いつでも待ってるよ」
「その時はしっかり、まけてくれよな」スリスリ
レオが疑り深い性格でなく助かった総司。もし依頼する時は値段をまけてくれと指をスリスリさせるがそこはしっかり通常料金と良いガッカリするレオがいた。笑いが生まれて危機は去ったと思っている総司だが1人だけ笑わず、総司の言葉を素直に信じられない男がいた。
(この学校に入ってなりたい職種が便利屋?いくらなんでもあり得ないだろう。それではこの学校を受ける意味が薄い。総司、テスト結果と言いお前は一体、何を隠しているんだ?)
その後、オンラインガイダンスの前にカウンセラーの人が挨拶に来た。この学校はそういう面でも充実しているらしい。各学年1クラス男女ペアで担当する。男性が柳沢、クラスに挨拶に来た女性が小野遥という名前だ。特にカウンセリングを利用しようと思ってない総司は小野先生の話は右から左へ聞き流す。総司に悩みが出来たとしても原因を話せるとは思えないからだ。
ガイダンスが終わった後、昼まで時間があるのでどうやって時間を潰すかみんなで話していた。専門課程に馴染みの薄い新入生の戸惑いを少しでも緩和する為に、実際に行われている授業を見学する時間が今日と明日に設けられてる。その何処かを見学しないかと今話している。
「工房に行ってみねぇ?」
レオが達也と総司に質問する。それに対して達也はこう答えた。
「闘技場じゃないのか?」
そう答えるとレオはニンマリ笑う。そして達也の質問に答えようとするがそれ以上に速く反応した者がいた。
「闘技場があるのか⁈」
総司だった。完全に武闘派な彼は闘技場と聞いてとても興奮していた。この学校なんて所詮魔術さえあればなんでも解決できると思ってる世間知らずの坊ちゃんお嬢様の集まりだと思っていた。しかしあったのだ。自分好みの場所が。
「うぉ⁈すげー食いつきだな」
総司の勢いに驚くレオ。
「当たり前だ。闘技場だぜ、一体どんな戦いが繰り広げられているか楽しみじゃねぇか!お前だってそうだろレオ!」
「まぁ、分からなくもないが俺は工房を見学してぇ。俺の硬化魔法と武器を手にした時、最大限に効果を発揮するんだよ。自分で使う武器の手入れくらい、自分で出来る様になりてぇ。悪いけどな」
「あ、そうか。それじゃしょうがねぇな」
自分と同じ様に闘技場って聞いただけで興奮する同志かと思いきや、意外としっかり未来を見据えている事に感心と少しの落胆を覚える総司。その後、達也も美月もみんな工房を見に行くとの事で寂しさを感じる。仲良くなったとしても考え方、趣味、それら全てが必ずしも一緒とは限らない。それでも彼等には共通の物、魔法がある。1番大きな物、それが繋がっている。しかし総司にはそれがない。分かっていた。所詮、自分は孤独の存在。ここに相応しい人物ではないと。
「ん〜、私も一緒に闘技場に行っていい?
「え、」
しかしそんな彼に声をかけたのはエリカだった。1人置いていかれている総司を後ろから眺めていたエリカは彼を元気付けたいと思ったのだ。周りと違う境遇にいる気持ちは痛い程分かるから。幸い闘技場なら自分も興味あるし、一石二鳥だ。
「エリカ、」
「ほら、早く行こうよ。時間無くなっちゃうよ。みんなも急いだ方が良いよ!」
「ちょっ⁈エリカ!」
エリカは総司の手を引っ張り強制連行した。
「なぁエリカ、良かったのか?」
「ん?何が?」
「ほら、みんなと一緒じゃなくて」
「ん〜別に1人じゃないし気にしないかな」
「でも柴田さんと一緒の方がお前的にも良かったんじゃ」
「もう!うじうじ煩いよ!乙女か!私がこっちが良いって言ったんだから良いの!それとも私と一緒は嫌だって言うの?」
エリカはいつまでもテンション低い総司に一言ガツンと言う。言われた総司は怒られる事に嬉しさを感じた。別に彼はそう言う性癖の持ち主ではない。友達がいなかった彼を叱ってくれる人は決まって家族だけ。だからこそ、自分を叱ってくれる友がいる事の有り難みを肌で感じたのだ。
「エリカ………ありがとう」
「ん」
「でも闘技場に興味あるってなんかやってるのか?」
「剣術をちょっとね」
「剣か」
感謝を言われたエリカは優しく微笑む。2人の距離は一段と近付いた。闘技場では組手が行われていた。組手で繰り広げられる攻防を見て、2人は互いの意見をぶつけ合う。あそこは躱すのではなく捌いた方が次の攻撃がしやすくなる、攻撃動作の作りが遅いなど、互いに武に道を置く者だからこそ対等に意見し合う事が出来た。その時間は2人にとってただの時間潰しなどではなく、とても充実した時間だった。
昼食は食堂で済ませる事にした。見学で別れた二組は食堂前で待ち合わせ、みんなで食事を取る事にした。
「総司よぉ、お前いっぱい食うな。俺だって食べる方だと思うけどお前はそれ以上だぜ」
プレートに山盛りによそられている料理を見てレオが驚愕する。
「やっぱり人は食わなきゃデカくならないんだよ。そうじゃなきゃ力が出ない。デカいのに越した事はないからな」
半分程食べ終わった頃(レオは既に食べ終え、みんなももう少しで食べ終える)、男子女子両方のクラスメイトに囲まれた深雪が達也を見つけて急ぎ足でこちらに寄ってきた。達也と一緒に食べようとする深雪。しかしこのテーブルに座れるのは後1人、つまり深雪以外は入れない。だが深雪の最優先すべき相手は達也である。天秤にかける気もなく深雪は達也と食べる事を選んだ。しかし深雪のクラスメイト、特に男子はそれを良しとしなかった。最初は狭いとか、邪魔しちゃ悪いかそれなりにオブラートに包んだ表現だったのが、段々口が悪くなり、2科生と相席するのは相応しくないだの、1科と2科のけじめだの挙げ句の果てに食べ終わったレオに席を空けろと言い出す者まで出る始末。言いたい放題言われてエリカとレオの怒りがそろそろ爆発しかけていた時、それよりも速く物申す者がいた。
「あのさ、静かにしてくんない?食事中なんだけど」
言い合いを聞いてイラついた総司はそう言った。
「なんだと?」
「聞こえなかった?静かにして欲しいんだけど。さっきからどうでもいい話を続けてんじゃねぇよ。彼女がどこで誰と食おうが彼女の勝手だろ。なんで赤の他人であるお前らに指図されなきゃなんねぇんだよ。そしてここは食堂。飯を楽しむ場所であって言い争う場所じゃないの。分かる?争い事を持ち込まないでくれ。そんな事も分からねぇ奴はここを使う資格はねぇ。分かったら今すぐ立ち去ってくれ。邪魔だ」
総司の言葉を聞いてレオとエリカは内心よく言ったと喜ぶ。しかし達也は彼の行動に疑問しか残らなかった。
(確かに総司の言う事は正しい。だが何故お前はこうも相手に嫌われる行為を平然とやる。黙って我慢していれば済む話じゃないか。なのにどうして)
総司は黙々とおかずを口に運ぶ。1科生のみんなは自分達のスペアである2科生にここまで大きな態度を取られてプライドが刺激されたのか拳をプルプルと震わせる。今にも総司に殴りかかろうとしていた。
「貴様、言わせておけば…」
達也はまずいと席を立ち、1科生に自分が謝る事でこの場を引いてもらおうとしたがそれより前に総司が口を開く。しかしその内容は1科生どころか達也ですら予想する事は出来なかった。
「早く立ち去ってくれないかな?深雪含め1科生の諸君」
「え?」
深雪は思わぬ総司の発言に声が漏れた。自分も言われるとは思いもしなかったのだろう。深雪を彼等から解放しよう総司が発言していたと思っていたがまさかの逆。深雪もこの場から立ち去る様に総司は言った。これには1科生のみんなも声が出なかった。
「総司、何故深雪もなんだ?」
思わず達也は総司に質問した。聞かずにはいられなかったのだ。兄として妹が邪魔と言われて黙っている訳にはいかない。総司は口の中に残っている物を急いで飲み込み、言った。
「当たり前だろ。この原因は全て深雪じゃねぇか」
「何?」
「だってそうだろ。こいつは他人に嫌われたくないのかハッキリ断らないからこの事態に発展したんだろ。そもそも達也と食べる気ならなんでここに他の奴らを連れてきた?迷惑なら迷惑ってハッキリ言えや。挙句には兄であるお前になんとかしてもらおうとさっきからチラチラお前を見ている。厄介ごとをこっちに持ち込むんじゃねぇよ。八方美人なんかして、万人から好かれようととしてるからこうなったんだろうが。それを困った風にしやがって。被害者ぶってんじゃねぇよ!」
総司は残りの料理を掻き込み席を立つ。
「チッ!折角の飯時が最悪になったじゃねぇか」
「悠木君!言い過ぎです!」
「そうよ!」
「総司!」
流石にこの言い分には1科生や達也だけでなく美月やエリカ、レオ達ですらすら怒っていた。しかしそんな言葉に言い返す気もないのか総司は立ち去る。そんな総司を達也は彼の手首を握りしめた。総司は振り返るといつもと対して表情は変わらないが心の中から激しい怒りを感じる達也がいた。
「総司、深雪に謝れ」
「いいんです……お兄様」
「だが……⁈」
達也が振り返り深雪を見ると彼女は下を向いていた。よっぽど悲しかったのだろう。そんな時、どこからか雫が溢れる音がする。そしてそれが彼女からと気付くのに時間はかからなかった。それを見た達也は激怒して総司に殴りかかる。九重寺で鍛えられたスピードは生半可なものではない。その鍛えた力を全て総司に叩き込もうとする。しかもこの距離。大抵の者は反応すら出来ずになす術なし。しかし総司は達也の拳をいとも容易く最小限の動きで避け、カウンターのアイアンクローを決めて床に叩きつける。
「ぐはぁ‼︎」
「お兄様⁈」
「達也さん⁈」
「達也⁈」
「達也君⁈…悠木君!!」
「達也、怒りで攻撃が単調すぎるぞ。あんなのカウンターを打ち込んで下さいと言ってる様なもんだぞ」
「ぐっ‼︎」
達也は総司のアイアンクローから逃れようとするが出来ない。その場でジタバタするのみ。怒りで自分の奥の手を使おうとしたその時、
「止めなさい!」
聞き覚えのあるこの透き通る声。それはこの学校の生徒会長、七草真由美の声だった。
ご愛読ありがとうございました。
やっちまった総司。前半エリカと言い感じだったのをぶち壊すこのクオリティ。深雪も泣かせ、それに激怒した達也ともやりあう。全て悪循環ですね。おのれ1科生ども。しかも怒りに任せて分解まで使おうとしてしまう。七草会長がいなければどうなっていたのか。
七草会長はこの状況をどうやって収めるのか。そして総司はみんなと、達也と仲直り出来るのか。
次回もお楽しみに!またね