種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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消えゆく灯火

ブルートが出撃した数分後…キラはリニアカタパルトの上に乗ったストライクに搭乗していた。装備は背部に大型可変翼と高出力スラスターを搭載したストライカーパック「エールストライカー」だ

 

『キラくん、敵はナスカ級1隻の他に3隻のローラシア級がいるわ。ゲイリーさんがイージスとジンの相手をしている間に先遣艦隊の援護をお願い』

「分かりました」

(アスラン…)

 

マリューの指示に同意する。現在攻撃を受けている地球連合軍第8艦隊。その旗艦にはフレイの父、ジョージ・アルスター事務次官が乗っている

 

『「エールストライカー」を装備します!』

 

憧れと好意を抱く少女から父を助けてと頼まれたキラは、それをなんとか叶えてやりたいと思った。彼女に頼まれたという理由もあるが、人が殺されるのを黙って見ていたくはなかった

 

それでも、1番の親友と面倒見の良い上官が命をかけて戦っている状況を聞いたキラは、味方のゲイリーや敵であるアスランにも生き残ってくれと願った

 

『ストライカーパックを装着!システム、オールグリーン!ストライク、どうぞ!』

「キラ・ヤマト!ストライク、行きます!!」

 

リニアカタパルトの加速に乗って、トリコロールカラーに染まっていくガンダムがアークエンジェルから射出される

 

眼前の宇宙で光の粒が瞬き、流星のように流れる。それら全てがMSやMA、戦艦が動き、そして散っていく命の輝きだ

 

「くっ、旗艦はどこだ!?」

 

デブリベルトなのかと疑うほど戦艦とMAの残骸が散らばる宇宙で、ストライクはスラスターとブースターを吹かせて必死に光の方向へ向かう

 

辿り着いた先は地獄だった。ジンとローラシア級のビームやミサイルを機体に叩きつけられたメビウスが次々と爆沈していき、人だった物体が全身を炭の塊に変えて宇宙に放り出される。これを地獄と呼ばずなんと言うか

 

「やめろぉぉぉ!!」

 

今まさにドレイク級戦艦を撃沈させようとするジンにストライクのビームが直撃する。命が簡単に消えていく様子にキラの心は悲鳴を上げたかったが、フレイとの約束を守りたいという必死さのあまり、人を殺したという実感さえ気にする暇もなかった

 

近くにいるジンに近づきビームサーベルを抜く。こちらの存在に気づいたジンが重斬刀を構えるが、高出力の刀身は切れ味の良い重斬刀ごとジンを真っ二つにし、爆炎でパイロットごと焼き尽くす

 

背後を取ったジンが重突撃機銃でストライクを撃とうとしてくるのを、2方向から飛んできたビームがジンに穴を空けて破壊する

 

「ムウさん!!」

『キラ、後詰めの部隊が来るぞ!!通常のジンしかいないのが幸いか!』

 

助けてくれた攻撃の正体はメビウス・ゼロの有線式オールレンジ攻撃兵装“ガンバレル”によるものだ。ブルートのファングと同じように多角的に攻撃できる兵装だ。相違点を挙げるとすれば、有線式な事と遠距離攻撃ができる点か

 

ムウの言う通り、敵陣の後方に控えているローラシア級から新しいジンがどんどん出撃する

 

「ハアアアアア!!」

 

敵の密集地点にストライクとメビウス・ゼロがビームライフルとリニアガンを放つ。それぞれ1機ずつ命中し、暗黒の宇宙(そら)に花火を咲かせる

 

「ジンの残りの数は…1…2…………7!?そんな、予想以上に数が多い!?」

 

先ほど倒した5機にブルートが戦闘している機体も合わせればジン15機に加えてイージス1機

 

MS1機がMA5機以上の戦力とされている以上、地球連合軍の兵器で考えればMA60機分に相当する大戦力。そこに『G』も存在するのだから、先遣艦隊相手には過剰とも言える戦力だった

 

「くそぉ!!」

 

必死にジンを墜とそうとビームライフルを撃つストライク。だが、ジンが1機減るごとにそれ以上のMAがザフトの手によって減らされる

 

ギュィン!

 

旗艦を守るどころか探す暇すらない…そう思っていた時だった。視界の端にいたジンの銃を持つ腕が両断されたのは

 

「今のは…ファング!?ゲイリーさんか!」

 

援護攻撃の正体はブルートの遠隔武器だった。縦横無尽に動き回るファングは増援としてやってきた複数のジンを相手に、たった1機で腕や脚、スラスターを破壊して消えていく

 

(今あの人はアスランと戦っているというのに…!ありがとうございます、ゲイリーさん!!)

『頼りになるじゃないのあいつ!キラ!ここは俺に任せて、お前は旗艦の援護に行け!!』

「分かりました!気をつけてくださいムウさん!」

 

この数のMSをメビウス・ゼロ1機に任せる事に不安がないわけでもないが、ムウさんは歴戦のエースパイロットだし、ファングの援護で敵は大幅に弱体化している

 

この戦域を2人に任せて、まだ戦艦が集まっている方に向かってストライクを動かす

 

「!! 見つけた!あれか!」

 

そしてキラはようやく、ジョージが乗る先遣隊旗艦ネルソン級“モントゴメリ”の元へ辿り着くことができたのだ。外から見えるブリッジにはフレイの父親、その隣にはモントゴメリ艦長であるコープマン大佐がいる

 

回線を繋げると、キラはモントゴメリに向かって話しかけた

 

「こちらアークエンジェル所属、キラ・ヤマト!!先遣隊の人たち、聞こえていますか!?」

『識別反応確認!“GAT-X-105 ストライク”です!』

『子供だと!?』

 

絶体絶命の中、突如現れたストライクに驚きの声に包まれるモントゴメリのブリッジ

 

「聞こえていますか!?返事をしてください!」

『こちら、地球連合軍第8艦隊“モントゴメリ”艦長、コープマン大佐だ。君は民間人なのか?』

「繋がった…!そうです!もうこの宙域は危険です!早くここから離脱してください!!」

 

生き残ってほしい想いを言葉に込めて通信を送るが、コープマンから返ってきたのは拒否の返答だ

 

『残念だがそれはできない。我々が逃げれば敵艦隊はアークエンジェルに狙いを定めるだろう。そうなれば、地球連合軍最後の希望を失う事になる。ただちにアークエンジェルに帰還し、この宙域から離脱せよ』

「そんな…!考え直してください!脱出艇だってその艦にもあるはずです!!」

『脱出艇は用意されている区画ごと攻撃を受けて破壊された。我々に脱出の手段はない』

「そちらには軍人ではない人もいるんでしょう!?その人も死なせるつもりですか!?」

『アルスター事務次官殿もこの艦に乗った時点で覚悟の上だ』

「でも!!」

『良い加減にしろ!!これは命令だ!!早くアークエンジェルに帰還しろッ!!』

「僕は軍人じゃないッ!!」

 

軍人の怒号を押し退ける。キラは懇願するように、切実な気持ちで呟く

 

「お願いします…逃げてください…」

『………』

「フレイに頼まれたんです。「パパを助けて」って…でも僕は、フレイのお父さんだけじゃなくて、あなたたち全員に生きてほしいんです…ムウさんとゲイリーさんのおかげでここまで来られたのに、あなたたちを見捨てて逃げるなんて嫌なんです…!」

『フレイが、そう言ったのか?』

 

通信の声が変わる。口ぶりからして父親のジョージ・アルスターだろうか

 

「そうです…」

『モビルスーツに乗っているということは、君はコーディネイターなのかね?』

「…はい…」

『そうか…全てのコーディネイターが君のような人間ならば、こんな戦争など起きなかったかもしれんのにな…』

 

感慨深くジョージは言う

 

ジョージは穏健派とはいえブルーコスモスだ。本来ならばコーディネイターという自然の摂理に反した種族は消えゆくべきだと考えている。それでも思うのだ。それは今すぐであるべきなのか?もっとゆっくり…それこそ後世まで時間を掛けても良いのではないかと…

 

悪いコーディネイターが悪いのだ。全てのコーディネイターが悪なわけではない。目の前のMSに乗る、優しい少年のような──

 

『前方に敵艦の接近を確認!ナスカ級です!』

 

だが、現実は無情であり、何度もアークエンジェルを襲ったヴェサリウスがモントゴメリに砲撃を開始する

 

『タダではやらせん!面舵20!回避ィ!!』

『主砲、次弾装填!撃──ぐおお!?』

 

ヴェサリウスの砲撃が側面に直撃する。艦内の人間を吹き飛ばし、炎で包み込む

 

『13番ブロックから34番ブロック被弾!!』

『14番から33番ブロック閉鎖!!消火活動、急げ!!』

『第二砲撃、来ます!!』

 

モントゴメリの全員が手一杯の状況であり、追い討ちの如く撃ち込まれた極太のビームはブリッジの眼前まで迫り

 

「やらせるかぁぁぁっ!!」

 

──それをストライクのシールドが防いだ

 

『なっ、ストライク!?』

 

 

ヴェサリウス内部の白服(指揮官に与えられる軍服)を着る仮面の男…ラウ・ル・クルーゼはその光景を見て薄い笑みを浮かべる

 

「ほう?死に損ないの艦を守るというのか…ちょうど良い。部下(アスラン)の為にも、我々でストライクを墜とすとしよう!!」

 

 

砲撃はより一層激しくなり、ブリッジを守る為にビームの嵐を一身に受けるストライク。いかにビーム兵器への耐性を有する盾といえど、戦艦クラスの砲撃を何度も受ければ、ダメージは蓄積されていき、その表面はドロドロに溶けていく

 

それでも、キラはコックピットに響いてくる衝撃に歯噛みしながらも耐え続け、モントゴメリの盾として立ち塞がる

 

「ぐう、うううっ!!」

『よせキラ!!それ以上はストライクが持たないぞ!』

「ムウ…さん…!は、やく…早く、か、んの人、たちを…!」

『馬鹿野郎!!自分の命を優先しろ!!』

「それでも…それでも僕は!!」

 

しかし、現実は残酷だ。やがてシールドは上半分が消し飛び、左腕がボロボロに損壊して、胸部が融解

 

コックピット内のモニターやヘルメットのガラスが弾け飛んだ破片、漏れた電流がキラの顔面を襲う

 

「う”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!」

 

キラ・ヤマトにとって初めてといえる激痛は喉からつぶれた声を上げさせた。ジャリジャリと音が鳴る嫌な感触が堪らなく気持ち悪い

 

『クソッ!』

 

ようやくジンの編隊を片付けてモントゴメリまで辿り着いたメビウス・ゼロがガンバレルを動かすと、有線式であることを利用して半壊したストライクに絡みつき、すれ違いざまにストライクを回収する

 

ヴェサリウスの砲撃を、ストライクを抱えつつ上下左右前後に動きまくりながら、メビウス・ゼロはアークエンジェルに向かう

 

「ダメだ…!艦が…みんなが…!」

『キラ・ヤマトくん』

 

モントゴメリの通信から、ジョージの優しげな声が流れる

 

『君のおかげで、最期にフレイと話すことができた…ありがとう』

「そんな…そんな…!!」

『娘をよろしく頼むよ』

 

その言葉を最期に

 

ヴェサリウスのビームがブリッジを貫き…キラの視界の中で、モントゴメリは爆散した

 

「あ、ああ…ああああ…ッ」

 

悲鳴のような、嗚咽のような声を吐く

 

顔の痛みも、コックピットの中での息苦しさも、絶え間なく色んな方向から掛かる強いGも、全てがキラの体を蝕む

 

だが、意識が徐々に暗闇に埋れていく中、キラが最も苦しんでいたのは肉体のどの苦痛でもなく…

 

「みんなを…約束を…守れなか──」

 

ただ1つ、心の痛みだけだった




悲しいけどこれガンダムSEEDなのよね
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