種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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悪意の矛先

『青き清浄なる世界のためにィィィィィィ!!!』

 

ドカァァァァン!!

 

ラクス・クラインの引き渡し。それを行われる直前、突如特攻を仕掛けたメビウスはイージスに密着しながら、そのひしゃげた機体を自ら爆発させた

 

『ぐわあああああああ!!?』

 

いかにPS装甲で爆破のダメージを抑えられるとはいえ、間近で爆発を受けたアスランは、衝撃によって大きく揺れるコックピットの中で苦痛の声を上げる

 

『アスラン!!』

『アイツ、自爆だと!?』

 

離れた位置でそれを見ていたイザークとニコルだが、ダメージを受けたイージスに視線が釘付けになってしまい、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『青き清浄なる世界のために!!』

『青き清浄なる世界のために!!』

『青き清浄なる世界のために!!』

 

自爆したメビウスに続くように、2機3機と他のメビウスもザフトのMSに特攻する

 

『た、たいちょ──』

『うわああああああああ──』

『おのれェ、ナチュラ──』

 

ドォン! ドォン! ドォン!

 

3機のメビウスがジン2機、シグー1機を道連れに自爆し、MS特有の桃色の花火が宇宙(そら)を色付ける

 

味方機が次々と爆散していく姿に、ザフトの兵士たちは混乱し、そして徐々に殺気立っていく

 

『マイクッ……ちくしょう!!』

『ナチュラル共め!よくもこんな事をぉー!』

『奴らを許すな!皆殺しにしろッ!!』

 

ジン、ジン・ハイマニューバ、シグーがそれぞれ武器を構え、第8艦隊とアークエンジェルに向けて攻撃を開始する

 

 

 

敵の照準がアークエンジェルをロックしたアラートがブリッジの中で一際大きく響く

 

「状況確認!!」

「ザフト軍のモビルスーツと戦艦が攻撃を開始!Nジャマーさらに拡大中!」

「フレイ!ねえフレイ!返事をして!」

 

マリューの命令にサイが大きな声で返し、反対にミリアリアは強いノイズが走る通信に向かって必死に呼び掛けを行っている

 

連合が不意打ちする形(ザフトから見た場合)で戦闘が始まり、憎悪と怒りの雄叫びを上げるジンやシグーが連合艦隊のMAや戦艦を次々と墜としていく

 

そんな中、ブリッジのモニターからノイズ混じりのゲイリーの怒鳴り声がクルーの耳を(つんざ)

 

『オイ!!こいつはどういう事だ!なんで連合の方が交渉中に奇襲を仕掛けてやがんだよ!!』

「私にも分からないわよ!!」

 

そう、本当に分からないのだ。ゲイリーの独断専行を危惧して、マリューはブルートをアークエンジェルの直近で護衛させ、さらにムウにブルートを見張らせていたのだが、結果はゲイリーが何かをするどころか連合側の行動に憤るというごく普通の反応を見せるのみ

 

ハルバートン提督は善良で良識のある人間だ。かつてのマリューの上司だったからこそ、その認識に間違いはなく、あのハルバートン提督に限ってこの様な卑劣な策を考え、ましてや実行するなど有り得ないと感じていた

 

ならばこれは末端の兵士の独断行動…しかし何故このタイミングで?しかも自らの命を犠牲にしてまでの特攻など、正気とは思えない。何か裏があるようにマリューは感じてならない

 

「ジン4機、ジン・ハイマニューバ2機、シグー2機が接近中!!」

 

だが、余計な考え事をしている暇はマリューにはないのだ。艦長である自分が率先して動かなければ、この艦に存在する全員が危機に晒されるのだから

 

「ッ!これよりザフト軍の迎撃を開始、第8艦隊の援護を行います!“ゴットフリート”“イーゲルシュテルン”照準!!」

 

艦首両舷に1基ずつ装備されている225cm連装高エネルギー収束火線砲「ゴットフリートMk.71」が格納状態からせり上がるように登場し、同時に大型のイーゲルシュテルンがMSを狙う

 

「“ゴットフリート”“イーゲルシュテルン”てェーっ!!」

 

ナタルの号令により、ビームと実弾の弾幕がジンたちの行先を阻む。無理に攻撃を仕掛けようと突入を試みたジン1機が、緑色の光線にエンジンを貫かれて爆散する

 

同じように敵を迎撃する中、ゲイリーはムウのメビウス・ゼロに近付いて通信を送る

 

『ムウ、お前さんは嬢ちゃんがアークエンジェルに帰還出来るように援護しに行け!俺は第8艦隊の方に行く!』

『待てよ!先に2人でフレイを助けに行った方が確実に帰還させられるだろ!』

『ンな悠長にしてたら第8艦隊が全滅するだろうが!!』

『けどなぁ!!』

『…せめてハルバートン提督だけでも、だ』

 

絞り出すようにゲイリーは言う。それだけハルバートンだけでもどうにかしたいという強い気持ちがあるとムウは感じた

 

『ゲイリー、お前…』

『安心しな。ちゃっちゃと終わらせてすぐに戻ってくる。それまでに嬢ちゃんを死なせんじゃねえぞ』

『……死ぬなよ!!』

『おうよ!!』

 

ブルートはバーニアを噴かせて遥か彼方の第8艦隊の方へ向かい、メビウス・ゼロは戦場の中心に突き進んでいく

 

 

 

「バカなッ!何故このような事が!?」

 

一方、メネラオスブリッジ内にて、ハルバートンは混乱の極みにあった。今までザフトが相手だろうと冷静に戦い抜いてきた部下が4人も自爆特攻を敢行したのだ。無理はなかった

 

ハルバートンはそんな状態でいながらも、冷静な部分で何が原因なのかを理解していた

 

「ゲイリー・ビアッジ…!人の命をなんだと思っているのだ!!」

 

近くのコンソールに握りこぶしを叩き込む。いつ彼らを唆したのか、どうやったのかはまるで見当もつかないが、間違いなくあの男が原因だという事は分かった

 

「やむを得ん!各艦、応戦開始!メビウスを発進させよ!リベラ二等兵、Nジャマー散布状況は!?」

「前方のナスカ級1隻、ローラシア級3隻より高濃度Nジャマーの散布を確認!アークエンジェル、複数の味方艦との通信が取れません!」

「クッ、やはりか…!!」

 

苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる

 

Nジャマーには核分裂反応抑止の他に強力な電波妨害を引き起こす。その状況下では通信はもちろん、レーダー索敵やミサイル等の誘導兵器も無力と化す

 

本来地球圏外である宇宙空間までは地球に撃ち込まれたNジャマーの効果は届かないのだが、その場合はザフトが戦艦に搭載されたNジャマーを発動させMSを使用した有視界戦闘を有利に進める

 

Nジャマーが散布された戦場では、高度な通信技術を持つザフトですらも通信に多少のノイズが入るものだ。これが連合側、さらに複数のNジャマーによる電波妨害が起きればどうなるか?

 

今の状況を端的に言えば、アークエンジェルは疎かそれよりも近い戦艦とすら通信が出来なくなる

 

「アークエンジェルは我々の希望だ!!ザフトの攻撃を迎撃しつつアークエンジェルに接近!彼らの地球降下を援護しろ!」

 

クルーたちに指示を飛ばすハルバートンだが、アークエンジェルに近寄る事には当然もう1つの思惑があった

 

(ゲイリー・ビアッジの…あの男の脅威を、何としても彼らに伝えねば…!!)

 

発進させたメビウスがジンによって容易く撃墜され、周囲の戦艦も撃沈していく中、それでもアークエンジェルと同じ“ゴットフリート”や対空機関砲を駆使してMSを迎撃していく

 

少しずつアークエンジェルとの距離も狭まっていく

 

ドォォォン!!

 

だが、現実は残酷…否、『残虐』なものだ

 

「ぐう……!何事だ!!」

「第1、第2メインエンジン被弾、大破しました!!航行不能です!!」

「バカな!?我々の背後には、味方も敵もいないのだぞ!!」

 

メインエンジンが大破したとなっては、戦艦の移動に必要な大きな推進力を失い、実質メネラオスは動けなくなった

 

だが、そこでさらに追い打ちがやってくる

 

ドォン! ドォン! ドォン!

 

「周辺のモビルアーマー、戦艦、次々と破壊されて…ッ、高速で接近してくるモビルスーツを確認!!こ、これはッ」

 

連合軍を次々と壊滅させていく敵を確認していたオペレーターの顔が驚愕に染まる。その理由を問う暇もなく、ブリッジの前にMSが──ブルートが姿を現す

 

「ブルート、だと…!」

 

完全に孤立したメネラオスのブリッジに向かって、左手のビームハンドガンを突きつける

 

「何を…!」

『よお、アズラエルの大将に邪魔な()()を消してくれって頼まれててな』

 

そして急に接続された通信からサーシェスの声が流れ…冥土の土産にとハルバートンに教える

 

『すまねえなぁハルバートンさんよ………アンタを殺させてもらう』

 

「アズラエルの大将」「頼まれた」「自分も知らぬ『G』」「ガルシアの殺害」「急変した部下」……「()()()()()()()()()()()()

 

最後にハルバートンは1つの答えに辿り着いた。アズラエルに私兵として雇われたと噂される、とある『傭兵』の存在に

 

「貴様ッ…アリー・アル───」

 

しかし、気付くのにあまりに遅過ぎたその代償を

 

ドビュゥ!!

 

ハルバートンと第8艦隊全ての命でもって、強制的に支払わされるのであった

 

轟沈したメネラオスの爆炎が広がる中、ブルートが振り返ってみると怯むような挙動を見せるザフトのMSがこちらを見ていた。パイロットの動揺が丸わかりなその様子に、サーシェスは喉を鳴らすようにくつくつと笑う

 

『残念だが、目撃者は生かしておけねえんでな。てなわけでよ…』

 

目の前にいるのは雑魚ばかりだが、今頃逃げ回ってるフレイを追いかけ回してるガンダム(メインディッシュ)を相手する前の準備運動だとでも思って、ヘルメットの中で殺意を漲らせる

 

『破壊して蹂躙して、殲滅してやらァ!!』

 

背面にジョイントされた重斬刀を手に、ザフト軍を鏖殺すべくブルートは敵陣に斬り込んだ

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