種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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暗躍

コーディネイターは生まれつき強靭な肉体、明晰な頭脳、端麗な容姿を持って生まれた新人類であり、しかしその存在を認めない、遺伝子操作を受けずに生まれた天然の人種「ナチュラル」と何度も衝突していた

 

ナチュラルの地球連合軍とコーディネイターのプラント…両勢力が小競り合いを続ける中、ついにその対立を決定的にする事態が起こる

 

プラントの農業用コロニー「ユニウスセブン」が連合の核ミサイルによって壊滅し、24万3721名もの住民が虐殺される事件…のちに「血のバレンタイン」と名付けられる事件が起こったのだ

 

そして、プラントは核兵器への対抗手段として“ニュートロンジャマー”(核分裂の抑制、電波伝達の阻害を目的とした装置)を開発。C.E.70年4月1日に「血のバレンタイン事件」の報復として「オペレーション・ウロボロス」を発動。無数のNジャマーを地球全土に撃ち込んだ

 

これにより、地球連合国家に未曾有のエネルギー危機と情報網の寸断が引き起こされ、およそ10億人の餓死者、凍死者が発生した。「エイプリルフール・クライシス」と呼ばれる出来事である

 

両事件によって地球とプラントの武力衝突は本格化。地球全土を巻き込んだ大戦争の幕が上がったのであった

 

 

 

とある豪邸…そこにある大きな一室に、金髪のキザな雰囲気を醸し出す男がいた

 

その男の名はムルタ・アズラエル。国防産業連合理事、アズラエル財団経営者、そして反コーディネイター・反プラント主義を掲げる組織“ブルーコスモス”の盟主たる人物である

 

そんなアズラエルの元に通信が届く

 

「なんですか?」

『お客様がお見えになっておられます』

「ああ、彼が来たのですか。通してください」

 

通信を終えて数分後、部屋の扉が開く

 

扉の先には案内役の使用人、そして赤い髪を後ろで纏め、黒いスーツを着込んだ戦争屋…サーシェスが立っていた

 

「失礼します」

 

サーシェスがそう言い入室すると、使用人は一礼してから扉を閉める。部屋の中にいるのはサーシェスとアズラエルの2人だけとなった

 

アズラエル以外誰もいない…気配で確信したサーシェスは扉の鍵を閉めると来客用のソファーに近づき、遠慮することなくドカリと座り込んだ

 

「急な呼び出しに応じてくれて感謝しますよ、サーシェス」

「クライアントの要望だ。それに、アンタには何かと世話になってるからな、アズラエルの大将」

 

巨大な組織のトップに対する態度とは思えない様子で話すサーシェス

 

しかしそれを咎める気がアズラエルには一切ない。それほどまでに、サーシェスとアズラエルの間には深い深い…()()()()()があった

 

「今回、君を呼び出した要件は2つです」

 

アズラエルは話を始める

 

「1つ目はアークエンジェル、そしてG兵器を地球に輸送する際の護衛を頼みたいのですよ」

「護衛? ということはヘリオポリスに?」

 

アークエンジェル、G兵器。これらはオーブ連合首長国のモルゲンレーテ社と大西洋連邦が共同開発の元、開発された物であり、前者は宇宙戦艦、後者はMSである

 

どちらも対MSを想定した新兵器であり、特に新型MS…通称『G』の方は実弾などの物理攻撃を無効化するPS(フェイズシフト)装甲やビーム兵器の搭載など、その性能はザフト製のMSの性能を軽く凌駕する

 

ちなみにヘリオポリスとはL3宙域にあるスペースコロニーの名で、先に挙げた中立国オーブに所属するスペースコロニーでもある

 

「ええ。一応ヘリオポリスにはかの“エンデュミオンの鷹”もいますが、いかに彼が優秀なパイロットでも君の強さには及びません。ナチュラルでありながら数少ない()()()()()()()()()()()君には…ね」

「へっ、過分な褒め言葉だこって…」

 

アズラエルの賞賛を笑って受け流すサーシェス

 

「しかし、ヘリオポリスまで行くとなると足が必要になるが、何を用意してあんだ?」

 

地球から宇宙(そら)に上がるまではいい。しかしそこからヘリオポリスに向かうまでが面倒だ

 

サーシェス1人をヘリオポリスに運ぶために戦艦を動かすことはできない。かと言って一般の宇宙艇を使うのもアウト。万が一でもザフト軍に見つかれば、ナチュラル憎しと攻撃を仕掛けてくる可能性が大だ。そうなれば何もできずにお陀仏だ

 

どうするのか…?そんなサーシェスの問いかけに対して、アズラエルは笑いながら指を2本立てる

 

「そこで2つ目の要件です…『例の物』が完成しましたよ」

「何!?」

 

それを聞いたサーシェスは思わずソファーから立ち上がる

 

『例の物』。それはアズラエルが権力を使って建造させたMSであり、サーシェスが待ち望んでいたものに他ならない

 

「君がジンをほぼ無傷で鹵獲してくれたおかげですよ。おかげで量子通信技術が飛躍的に向上したし、それを利用した兵器の開発にも成功しました。初期GAT-Xシリーズのデータを元に開発しているMS開発も順調…完成、随分早かったでしょ?」

「…ようやく戦争ができるのか…へへへ、堪んねえぜ」

 

口の端が吊り上がっていくのが止められない。凶暴な笑みを浮かべて戦争を望むその姿はまさしく戦争中毒と言って間違いないだろう

 

引き出しから1つの封書を取り出すと、アズラエルはそれをデスクの上に置く。サーシェスは封書を手に取ると開けて、その中にある用紙の内容を流し読みする

 

「ビクトリアのマスドライバーにモビルスーツを積んだシャトルを用意してあります。最短ルートを通れば10日ほどでヘリオポリスに到着するはずです」

「──分かりました」

 

アズラエルの通達を聞いたサーシェスは、先ほどまで剥き出しにしていた獣のような本性を瞬時に隠し、封書を片手に敬礼する

 

「大西洋連邦、第4独立連合騎兵連隊、ゲイリー・ビアッジ大尉。ただいまを持って、極秘任務の遂行に着手します」

「頼みますよ…ビアッジ大尉」

 

側から見れば、軍務を全うすべく宣言する盟主と軍人のやり取り

 

その裏には、饒舌し難いほどのコーディネイターへの憎悪、そして戦争への狂気が渦巻いていた

 

 

 

マスドライバーから宇宙に上がって1週間が経過した。すでにヘリオポリスとの距離はかなり近づき、このまま1日ほど待てばヘリオポリスに到着する予定……()()()()()()

 

「ヘリオポリスがザフトの襲撃を受けただと!?」

 

地球連合軍から送られてきた情報はまさに寝耳に水だった。しかも実際にヘリオポリスが襲撃を受けてから1日経過していることも判明したのだ

 

これはサーシェスの乗る宇宙艇の連絡手段が限られていたゆえに地球連合からしか情報が得られなかったこと、ヘリオポリスから地球連合、地球連合からサーシェスへと、情報伝達が回り道してしまったことが原因と言えるだろう

 

(マズイな…アークエンジェルや『G』を破壊されるのもそうだが、最悪なのがザフトに鹵獲された場合だ。だがまだヘリオポリス付近にザフト軍が駐留しているという情報もあった。つまりアークエンジェルは生き延びていて、必死に逃げてる最中ってとこか。それにヘリオポリスは崩壊したとの情報もあった。なら全ての『G』は鹵獲されてないはずだ。全部の『G』が鹵獲されたなら、コロニー1つが壊れるほどの戦闘は起きねえからな…)

 

頭の中で情報を整理し、その果てにサーシェスが出した答えが…

 

(そして、もし俺がザフトから逃げるとするなら、逃げ先に選ぶのは…)

「“傘のアルテミス”、ユーラシア連邦の軍事要塞か…」

 

面倒なことになったとサーシェスは悟るが、どちらにせよアークエンジェルを拠点にできなければMSを補給させることもできない

 

だからサーシェスはシャトルをデブリの一部に紛れ込ませると、後部の格納庫に移動する

 

そこにあったのは横に倒れている灰色のMS。V字のアンテナ、2つ目などG系のMSに共通する特徴があるが、最大の特徴が腰部に取り付けられたサイドアーマー。ここにこの機体特有の特殊兵装が収納されているのだ

 

サーシェスはコックピットに乗り込んで電源を入れる。すると装甲に電流が流れてPS装甲が発動、メタリックグレーの機体色を深い藍色に染め上げていく

 

General

Unilateral

Neuro-link

Dispersive

Autonomic

Maneuver

(Synthesis System)

 

GUNDAM(ガンダム)…?」

 

浮かび上がるOSの文字羅列、その頭文字を思わず読み上げる。“ガンダム”…不思議なことにサーシェスにはその言葉がしっくり来ると感じたのだ

 

「まっ、なんだっていい。戦争ができりゃあな!」

 

シャトルが出てきたガンダム。そのツインアイを不気味に光らせながら、サーシェスは動き出す。他ならぬ戦争を楽しむために

 

「さあ、楽しい楽しい戦争の幕開けだぜ…!」

 

その言葉と共に、サーシェスは青いMS…「brute(ブルート)」に搭乗してアルテミスを目指すのであった

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