種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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ようやく低軌道会戦終わった…書きたいことあったからってダラダラと書きすぎちゃったな


成層圏の攻防

エールストライカーの推進剤を目一杯消費させてアークエンジェルの元に急ぐキラ

 

地球に向かって前進するアークエンジェルの周囲には、第8艦隊と戦闘していたMS部隊が激しい攻撃を行っていた

 

「やめろ!それ以上彼女を傷つけるなぁぁー!!」

 

最悪のビジョンを想像したキラが喉を震わせて咆哮する。こちらに気がついて撃ち放たれるビームやマシンガンを最小限の動きで回避し、右手のビームサーベルでジンの胴体を焼き斬る

 

『い、いやだッ!死にたくな──』

 

ドォォォン!

 

「死にたくないなら、どうして出てきたんだ!!」

 

接触回線から伝わってくる断末魔がガラスのように砕け散り、破片がキラの心に突き刺さる。心の流血も厭わず、キラはアークエンジェルに近づきながら次の標的を狙う

 

「ゲイリーさんは既にアークエンジェルの中か…? ッ! そこ!!」

 

アークエンジェルに回り込み、陰に隠れていたジンをビームライフルで撃ち抜く。若干離れていたのが幸いしたのか、機体の爆発による損傷がアークエンジェルにはなかった

 

キラはストライクを甲板に着地させる。周辺には“ゴットフリート”や“イーゲルシュテルン”で撃墜されたザフト製MSの残骸が散らばっていて、中には焦げたパイロットスーツに包まれた炭の塊のようなものも発見した

 

「うっ…!」

 

思わず込み上げてきた吐き気を必死に抑え込む

 

この程度の苦しみ、フレイの痛みに比べれば、彼女の辛さに比べれば…そう思い込みながら自身の心を抑制する

 

しかし、それにより周囲の警戒を怠った代償を…

 

ドビュア!

 

ドオオン!!

 

「な、何ィ!?」

 

キラは、即座に支払う事になった

 

 

 

「第2メインエンジン、被弾!!」

「ビーム兵器による攻撃と思われます!」

「バカな!?ナスカ級の砲撃の射程には入っていないはずだ!!」

 

大気に触れつつあるアークエンジェル。揺れるブリッジの中で慌ただしくクルーが報告を上げるとナタルは不可解な攻撃に疑問を抱く

 

ノイマンが必死に舵を取ることで何とかアラスカへの航路を維持しながら地球へ降下するアークエンジェルだが、もし2度目の攻撃で更にメインエンジンが破壊されれば、航行能力が大きく低下してアラスカの直上まで辿り着けない。最悪摩擦熱でエンジンが全壊し、着地地点で立ち往生する羽目になる

 

レーダーによる探知でヴェサリウスの位置を確認し…そしてその過程である事実が判明する

 

「ナスカ級の前方にモビルスーツ…いえ、モビルアーマーを視認しました!これは、イージスです!」

「イージス…!確かにあれの高速強襲形態なら、この艦に近寄れる速さもエンジンを破壊したビームの火力も説明できる…!」

「ええいッ、ストライクは何をしている!?」

 

口ではそう言うナタルだったが、彼女は自分が思っている以上にキラに対する怒りを抱いていない。キラはつい先程まで昏睡していたのだ。むしろ良くここまで状況を維持したと褒めてやりたいくらいだ

 

そもそもの話、いくらストライクで幾度と戦果を上げたコーディネイターと言えど、寝たきりで重度の怪我人だった者を戦場に送るなど人道を無視した行動と言えよう

 

しかし、だとしてもストライクを出さねばならぬほどアークエンジェルは追い詰められているのだ。アークエンジェルが墜とされればストライクもキラを含めたクルー達も揃って宇宙の藻屑と化す。だからマリューを黙らせて(無論説得して)でもナタルはキラを出撃させた

 

「多少降下地点がズレても構わない!回避を優先しろ!」

「ッ! イージス、来ます!!」

 

だが、その決断も無駄だったのかもしれない

 

そう思わせる程イージスの行動は迅速で、スキュラも的確にエンジンに飛んで行き──

 

「ストライク!?」

 

しかし、ストライクが捨て身の盾となり、イージスとアークエンジェルの間に割って入ってきた

 

 

 

攻撃は正確だった。エンジン部のみの破壊だから足付きのクルーの被害も殆どないだろう。大気圏突入時特有の赤い膜も見える以上、下手に動く事もできない

 

作戦は順調だった…ストライクが割り込まなければ

 

「キラ!?」

 

イージスの装甲がフェイズシフトダウンしていく中アスランは目を見開いてその光景を見ていた

 

スキュラの火力に押し負けた盾は表面が飴細工の様に溶けており、そのせいでビームの衝撃を抑えきれなかったのかストライクも地球方面に吹き飛ばされていて…やがて重力が可視化したかの様に赤い膜がストライクに取り付く

 

脳内に『焼死』というワードが浮かんだ

 

「くそぉ!」

 

助けに行きたい。助けに行きたかった

 

しかしイージスのバッテリーはもはや枯渇寸前で、そんな状態で助けに向かっても黒焦げの死体が1つ増えるだけ。やるせない気持ちでコンソールに握り拳を叩きつける

 

「お、俺は……」

 

それでも助けに行くべきだというのだろうか。例え死ぬと分かっていても助けようとするのが親友なのではないのか。俺はキラを所詮その程度の関係だと思っていたのか?

 

気付けば、背後からヴェサリウスが近づいていた。通信が開き、仮面をつけた男が映る

 

『まさかこのような結果になるとはな…()()()()()アスラン』

「え…?」

『あれを見たまえ』

 

クルーゼに促されるまま、メインカメラでアークエンジェルの方を見る

 

「あれは…」

 

見れば、地球の重力に引っ張られるストライクに向かってアークエンジェルが前進し、保護壁になるように真下に移動してストライクを受け止めている様子が見えた

 

『報告ではストライクは様々な装備に換装する事が出来ると聞く。その有用性を考えば、ストライクを失う事は連合にとっても大きな痛手になるといったところか…』

 

しかし、おかげでこちら側にもチャンスが生まれたとクルーゼはほくそ笑む

 

『だが、その為にアラスカまでの航路を捨てたのは失敗だったな。少なくとも連合軍本部に直接降下されなければやりようは幾らでもある……アスラン、ヴェサリウスに帰投しろ』

「…分かりました」

 

結局ラクスを取り戻す事は出来なかった

 

しかし、キラが生きているかもしれないという事実は素直に嬉しかった。例え敵でも、例え刃を向けられても、やはり俺には墜とすことなどできる気がしなかった…

 

「死ぬなよ、キラ…」

 

親友が生きている幸運に祈る

 

それだけが、今のアスランがキラにしてやれる唯一の事だった

 

 

 

時は少し遡る

 

『テメェ、自分が何言ってんのか分かってんのか!?』

「落ち着いてください、ビアッジ大尉!」

『これが落ち着いていられるか!!』

 

ブリッジのマリューに向けて怒声が飛ぶ。ナタルが必死に宥めるも落ち着く様子もなく、画面越しにブルートの中で待機中のゲイリー(を演じるサーシェス)はマリューを必死に問い詰める()()をする

 

想像以上に熱量の籠った声は学生組を始めとする多くのクルー達を怯えさせ、マードックすらも直接ブルートから響いてくる声には萎縮せざるを得ない

 

()()()()()1()()()()にアラスカの降下を捨てるたァ正気か!?万が一ザフトの勢力圏内に落ちてみろ!ストライクどころかブルートやアークエンジェルも失う事にもなるだろうが!!』

 

そう、それが今、サーシェスが大音量で声を荒らげてる原因である

 

ストライクが艦のメインエンジンを守って地球に落ちたとアナウンスで聞いた時、サーシェスの脳裏にあったのはストライクを失った時の損失、その計算であった。本来MS単機での地球降下など自殺行為に等しい。MSの装甲では摩擦熱による摩耗に耐え切れず30秒と経たずドカンだが、『G』のPS装甲は高熱の摩耗『だけは』防いでくれる

 

摩耗だけ…つまりパイロットであるキラの事は一切気にかけていないのだ。機体が無事だろうと間違いなくコックピットは灼熱で焼かれ、良くて熱中症、最悪焦げた肉の塊と化すだろう

 

サーシェスにとって重要なのは自分の安全と依頼の遂行であり、そう考えるとこの状況はサーシェスにとっても決断を迫られるのだ。即ち、ストライクを見捨てて最短距離でアラスカに行く(ローリスク・ローリターン)か、回り道をしてでもストライクを助けに行く(ハイリスク・ハイリターン)か、だ

 

しかしだ。仮にストライクを助けに行き、降下先でアラスカに向かうまでにアークエンジェルとストライクを失ったら?ブルートさえあれば自分だけ逃げ延びる事など簡単だが、結果的に依頼は失敗となるだろう。もしそれでスポンサー(アズラエル)の機嫌を損ねれば最悪ブルートを取られかねない。流石のサーシェスもMS1機の為にアズラエル財団や連合を敵に回すのは避けたい

 

だからこそサーシェスからすれば、ストライクとガキ1人を助けに行くより、確実にアークエンジェルをアラスカに送り届けたいわけだったのだが…

 

「艦長命令です。ビアッジ大尉」

『ンなこたぁ分かってるっ!だがな、お前さんも艦長だっつうんならリスクとリターンを考えろ!ガキ1人とモビルスーツ1機、クルー全員とアークエンジェルに付け加えてラクス・クライン、どっちを取るべきか考えるまでもねえだろ!!』

「っ!!キラを見捨てろって言うんですか!?」

 

あんまりな物言いにサイが怒りの声を上げるが、サーシェスはハッキリと言い返す

 

『そうだ!!』

「なっ…!?」

『ストライクのガキもモビルスーツに乗った以上こうなる事は承知の上だろうが!それともなんだ!?俺達の為に戦った、ハルバートン提督や第8艦隊の犠牲を無駄にしろってのか!!』

「……ッ!」

 

それを聞いたマリューは「ビアッジ大尉はハルバートン提督達の死を目の当たりにしたからこそ、何としても犠牲に報いようとしているだけ」なのだと悟った。1度そう考えてしまうと、ビアッジ大尉を一方的に責めることは出来ない。いや、むしろ自分の考えの方が甘過ぎるだけなのだろう

 

マリューは小さく目を閉じて、かつての恩師(ハルバートン)の姿を思い浮かべる

 

「ビアッジ大尉…あなたの考えは分かりました…」

 

そして次に目を開けた時には…覚悟が決まっていた

 

「しかし、それでも私はキラくんを助けに行くことを選びます」

『何…!?』

「艦長!!」

 

その言葉を聞いたクルー、特に学生組の面子は眩いばかりの笑顔で喜んだ

 

「もしここに座っているのがハルバートン提督ならば、迷わずキラくんを助けるべく動くはず…だから私も、艦長として自分に恥じない決断をするまでです」

『ッ……! 勝手にしろ!!』

 

プツリとブルートからの通信が切れる。嵐が去ったかのように全員がホッと息を吐いた

 

「ラミアス艦長、ありがとうございます!!」

「お礼は後にしてちょうだい。…これよりアークエンジェルは航路を変更しつつストライクを回収!その後、地球圏への降下を開始する!」

「航路変更!大気圏突入に備え、耐熱ジェルの準備を進めよ!」

 

そして、アークエンジェルはストライクの真下に移動し、甲板でストライクを受け止める。ストライクが固定した事を確認すると、ナタルが指示を出す

 

「耐熱ジェル、展開!!」

 

艦底部から気化性の耐熱用融除材ジェルが飛び出しアークエンジェルの下部を包む

 

艦体の温度上昇を防ぎながら、大天使は母なる大地に向かって消えていった

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