種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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明けの砂漠

結論から言えば、敵の迎撃は成功した

 

敵モビルスーツ、戦闘機を墜とした後、スカイグラスパーが砲撃の方向から敵の陸上戦艦“レセップス”

を確認。そのままザフト軍は撤退していった

 

敵母艦の確認を通信で聞いたサーシェスは、動けないブルートの中で(くつろ)ぎながら小さく呟く

 

「“砂漠の虎”アンドリュー・バルトフェルドか……いきなりとんでもねえ大物が仕掛けてきたもんだなぁ」

 

そうやって呑気にMSの回収班を待っていると、遠くから砂塵を巻き上げてこちらにやってくる小さな影を見つける

 

屋根のない大型のバギーカーが影の正体であり、そこには武装した集団が乗っていた

 

「ありゃあ、レジスタンスか?」

 

集団の正体にサーシェスは当たりをつける

 

そして、バギーに乗っているゴーグルを着けた金髪の子供の姿を見つけて、サーシェスは言う

 

「こいつァ使えるかもしれねぇな…」

 

アークエンジェルに向かって声を出している連中の様子を見て、妙案と言わんばかりに笑みを深めた

 

 

 

アークエンジェルは現在、岩山で出来た谷間のような場所に身を隠していた。狭いが故に戦艦を隠すのには少し難があるが、だからこそザフトから逃れるのにはピッタリだった

 

そしてストライクやブルートがMSでなければ運べない物を動かしている中、マリュー、ムウ、ナタルの3人は峡谷に隠されたレジスタンス『明けの砂漠』の前線基地に招待されていた

 

「ひゃ〜、こんなとこで暮らしてるのかぁ…」

 

岩と石と砂、そして少々の文明機器に囲まれた隠れ家の内部を見てムウが感嘆の声を零す

 

俺じゃ我慢できんね、と思っていたところを頭に緑色のバンダナを巻いている明けの砂漠のリーダー“サイーブ”が、顔半分ほどが隠れる髭を撫でながら言う

 

「ここは前線基地だ。皆家は街にある…まだ焼かれてなけりゃな」

「街?」

「タッシル、ムーラン、バナディーヤから来てる奴も居る。俺達は、そんな街の有志の一団だ。コーヒーは?」

 

そう言って湯気が立ち込めるカップを3つ、木製机の上に置く

 

「ありがとう」

「好きなの使いな」

「ぁ……(ふね)のことも、助かりました」

 

礼を言うマリューの姿にサイーブも頷く。そして皆の視線は、部屋の角の壁に背中を預けた、明らかに不機嫌な顔と雰囲気をした金髪の少女に集まった

 

「彼女は?」

「…俺達の勝利の女神」

「へぇ〜…で、名前は?」

「……」

 

ムウが問い掛けるが、サイーブは黙りこくる

 

「ん?女神様じゃあな、知らなきゃ悪いだろ」

「…彼女は…」

「カガリだ」

 

サイーブの言葉を遮って少女…カガリが答える。その鋭い目付きが連合軍の3人を捉えて、少しするとまた不機嫌な顔でそっぽを向く

 

初対面の相手にしてはあんまりな態度に、思わずムウが聞く

 

「…俺達、なんかしちゃった感じ?」

「いや、あんた達というより…あの蒼いモビルスーツを見てから急に機嫌が悪くなってな」

「ブルートを?」

 

疑問符を浮かべる3人の態度は当然と言えるだろう。ストライクを含めたMSそのものならばともかく、ブルートだけピンポイントに悪感情を抱くなど訳が分からないのだから

 

「よお、悪ぃな、遅れちまって」

 

そう考える中、アリの巣のように広がるいくつもの通路の内の1つからサーシェスが姿を現す

 

「噂をすればなんとやらか」

「あん?」

「なんでもない。それより随分遅かったな」

「あぁ、フレイの嬢ちゃんに使わせるモビルスーツを拾ってたら遅れてな。ストライクが墜としたバクゥも傷が少ないから修理に手間は…」

「ちょっと待て」

 

サーシェスが遅れた経緯を話していると、そっぽを向いていたカガリがいきなり話しかける

 

「使わせるモビルスーツだって?まさか敵が使っていた兵器をそっくりそのまま使うのか!」

「そうだが、それが何か問題か?」

「あるに決まってるだろ!虎の使っていた武器を使うなんて、自分達では勝てないと言っているようなもんだ!そんな方法で勝って本当に虎に勝ったって言えるのかよ!」

 

マリュー達は一瞬何を怒られているのか分からなかったが、要約すればカガリは連合やレジスタンス(比重は後者が圧倒的に多いが)の仇とも言える敵MSを平然と自軍に加えようとするサーシェスの態度が気に食わなかったらしい

 

しかし、サーシェスからすればカガリの言い分は理想論ですらない幼稚な言い掛かりに過ぎない。どれだけ生き汚かろうと最後の最後まで生き延びて相手を殺せば勝ちだ

 

勝てば官軍、負ければ賊軍。死んで負けた奴は死後も弄ばれるのがこの世の真理なのだから

 

「やめろカガリ、大事な客人だぞ」

「けどサイーブ!!」

 

サイーブが言い聞かせようと注意するが、少女は聞く耳を持たない。ため息をつきながらサイーブは前に出ようとして、しかしサーシェスの行動がそれを遮る

 

「お前さんの言い分はよぉく分かった。けどよ、それを言い出したらキリがないぜ?アンタらも同じことをしてるんだからな」

「ふざけるな!我々はモビルスーツを使ってなんか」

「そのアサルトライフル」

 

指を指した先にあるのはカガリが携行している短身の銃器

 

「そいつァプラントの軍需企業“プレアデス”が開発した携行型突撃銃“P22A3 Alcyone(アルキオネ)”だ。1年程前にモビルスーツが主要兵器になり始めてからプレアデスを含む多くの軍需企業が合併・吸収され、製造された武器の多くが裏ルートでばら撒かれた…」

「あ、有り得ない!そんな、そんなバカな話が!」

「大事なお国を奪っていった連中が造った武器を片手に、お前さんらはレジスタンスに勤しんでた事になる」

 

サーシェスの話を聞いたカガリは全力で否定する

 

だが、かつてヘリオポリスで見た、()()()()()()()()()()()()が連合と共同して開発していたMS(ガンダム)の存在がカガリの中で強い猜疑心を生み出していた。もしかして、まさかだが有り得るのではないか?という疑念が脳裏に過ぎる

 

それでも、そんな馬鹿げた現実から目を背けるように、カガリは大声で叫ぶ

 

「嘘だ…!そんな話、嘘に決まってるッ!!」

「ああ、嘘だぜ」

「デタラメな事───え?」

 

しかし、その叫びをあっさり覆す事を口にするサーシェス

 

カガリは一瞬訳が分からないといった表情で硬直し…そしてある程度時間が経つと、サーシェスにからかわれたのだと理解して顔を真っ赤に怒り出す

 

「お、お前ぇ!!」

「フハハ!こんな分かりやすい嘘をあっさり信じるたァからかいがいのねえ嬢ちゃんだな!」

「このッ!」

 

追い打ちをかけるように言い放つサーシェスにカガリは掴みかかろうとするが、上体を反らすだけの動きでサーシェスは容易く躱し、次々やってくる華奢な手を指先ひとつ掠めることなく回避し切る

 

「躱すな!!」

「殴られるって分かってて躱さねえわけねェだろ?そらそら、ここだここ」

「〜〜〜〜〜ッ!!」

 

煽られてより猪突猛進気味になるカガリを翻弄し続けるサーシェス

 

最低限の動きだけで、しかも周囲の備品に欠片も触れさせず動き続けるサーシェスは息切れ1つしておらず、逆に終始追い掛けているカガリは息も絶え絶えといった様子になっていた

 

「カガリ!!いい加減にしろ!」

「うっ…!」

「ビアッジ少佐も煽らないで!!」

「っと、これ以上はマズイか」

 

そんな2人にサイーブとマリューが叱責の声を上げる。一方は怯んで、もう一方は自主的に止まる

 

しかし行動を止めたからといってカガリの怒りはちっとも収まらない。真正面からサーシェスを睨みながら、カガリはハッキリとした口調で言い切る

 

「お前みたいな人を騙す大人、大ッキライだ!!」

「そいつァ残念だな…俺はガキが好きだぜ?」

「ほざけよ!!」

 

捨て台詞を吐いてカガリはその場から去っていった

 

そんな少女の背を見ながら、サーシェスは心の中で言葉の続きを紡ぐ

 

(飯の種になるからなァ…)

 

 

(なぁ?カガリ・()()()()()()さんよ)

 

その時のサーシェスの顔は、面白いおもちゃを見つけた子供のように、いっそ残酷と言えるほど笑っていた




正直、自分でもカガリが怒ってる理由があまりにもめちゃくちゃなんじゃないかと思ってて書きました。やっぱり繋ぎの話は考えるのが大変だなぁ…
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