種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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獣と牙

キラ・ヤマトは焦燥する

 

崩壊したヘリオポリスから脱出したアークエンジェルは、数少ない軍人と民間人、そして“メビウス・ゼロ”というモビルアーマー(非人型の起動兵器)と、唯一奪取されなかった新型MS“ストライク”と共に要塞アルテミスを目指していた

 

だが、アルテミスまで一歩手前のところで襲撃してきたザフトの追撃を受けたのだ。ナスカ級とローラシア級の戦艦が1隻ずつ…そして、ザフトに強奪されてしまった4機の『G』系MSの強襲だ

 

ゆえに、民間人でありながらコーディネイターであるためにキラだけが動かせるストライクと、“エンデュミオンの鷹”の異名を轟かせるムウ・ラ・フラガのメビウス・ゼロが戦闘を行うことになった

 

作戦は至ってシンプル

 

ストライクが4機の『G』の足止めをし、その隙にメビウス・ゼロが前方にいるナスカ級を奇襲。その後にアークエンジェルで追撃を仕掛け、それで生まれた隙をついてアルテミスに逃げるという方法だった

 

しかし、ムウが奇襲を仕掛けている間に『G』と交戦していたストライクは数に押されて拘束され、そのままキラごと捕獲されようとしていた

 

『キラ、ザフトに来い!連合はお前を利用しているだけに過ぎない!』

「アークエンジェルには、僕の友達がいるんだ!」

『このままお前を連れて行かせてもらう…!』

「アスラン!!」

 

キラは、焦燥する

 

攻撃してきたザフトの中にかつての親友がいた。その親友は、赤い可変機のMS“イージス”でこちらのストライクの動きを止めている。周囲にはそれぞれ汎用性の高い“デュエル”、砲撃型の“バスター”、ステルス能力を持つ“ブリッツ”が存在して、抵抗すればすぐさま攻撃してくるだろう

 

逃げられない…!このままじゃ…!

 

『キラ!!しっかりして、キラ!!』

 

ミリアリアから回線を通して呼び掛けが聞こえてくるが、返事を返す猶予すら惜しかった

 

サイが、トールが、カズイが、ミリアリアが、フレイが、マリューさんが、ナタルさんが、アークエンジェルにいるみんなが死んでしまう!

 

「クソッ!!どうすれば…!」

 

 

『任せろやぁ!』

 

 

「え…?」

 

もはやどうしようもない絶体絶命の状況の中…連合の回線から男の声が響く。アークエンジェルの方にも聞こえてきたのか、ざわつく声が聞こえる

 

するとキラから見て右側前方の方角から、デブリに紛れていた青い影が緑光を放ちながら急接近する

 

 

 

「青いモビルスーツだと!?」

「あれは一体!?」

 

アークエンジェル艦長のマリュー・ラミアス大尉と副長のナタル・バジルール少尉が叫ぶ。そしてオペレーターがコンソールを操作し、報告をする

 

「識別反応確認!“GAT-X-001 ブルート”…地球軍のモビルスーツです!!」

「“X-001”!?そんなモビルスーツを、一体どこで…!?」

 

技術士官としてPS装甲の開発に携わっていたからこそ、マリューの驚きはその場の誰よりも大きかった

 

 

 

一方、唐突に現れて攻撃してきた新しいMSの登場に、MSに搭乗していたザフトのパイロットたちも驚愕していた

 

『新手!?』

『6機目のモビルスーツ…!?』

 

“アスラン・ザラ”とブリッツに乗る“ニコル・アマルフィ”がそれぞれ呟く。新手のMSは地球連合軍、しかも自分たちが乗る『G』と同じく新型の機体だ。当然性能も五分五分と言えるだろう

 

だからこそ2人はビームを回避しながら警戒心を強めたのだが、デュエルの“イザーク・ジュール”とバスターの“ディアッカ・エルスマン”は逆に闘争心を燃やす

 

『まだ隠していたのか!!』

『新型っつっても、所詮ナチュラルだろッ!!』

 

憤怒するイザークと慢心するディアッカは、それぞれ高エネルギービームライフルと高エネルギー収束火線ライフルを撃ち放った

 

だがブルートは、迫る二条の光に対して軽く機体を傾け、当たるか当たらないかスレスレのタイミングで回避を行ってみせた

 

『何ィ!?避けただと!?』

『マグレだろ!?』

 

回避で崩れた姿勢を、その場で回転することで元に戻すと、サーシェスはブルートのサイドアーマーに隠された『牙』を解き放つ

 

 

『行けよォ!『ファング』ゥァ!!』

 

 

サイドアーマーの左右それぞれから射出された2つの物体がデュエルとバスターに突撃する。それを小型ミサイルと判断した2人は、デュエルは頭部の対空バルカン“イーゲルシュテルン”を、バスターは“350mmガンランチャー”で迎撃をする

 

グィン! グィン!

 

『なっ!?』

『曲がった!?』

 

だが、ミサイルと思ったそれは弾丸やミサイル、ビームなどでは不可能な軌道を描いて攻撃を回避し、2機に迫る

 

そして物体は一定距離まで近づくと…その先端から小型のビームサーベルを形成し、デュエルとバスターを蹂躙し始める

 

『うわッ!』

 

手始めに両機のビームライフルを真っ二つにし

 

『ミサイルじゃない…ビームサーベルだとぉ!?』

 

バスターの左腕を肩まで切断し

 

『ヤ、ヤベェぞイザーク!!』

『分かっている!…ぐおお!?』

 

デュエルの右脚を半ばから断ち切り

 

『なんてデタラメな軌道だ!!それに数も多い!』

『撃ち落とせない…!』

 

イージスとブリッツの援護射撃を全て回避し

 

『クソォ!!』

 

デュエルとバスターを分断したところで

 

『なっ──』

 

ズガァ!

 

『ぐああああああ!!!』

『ディ、ディアッカァ───!!』

 

バスターのコックピットに牙が喰い込んだ

 

突き刺さったファングが抜けると、先ほどまで動き回っていた3機のファングと一緒にブルートの元に集い、サイドアーマーに収納される

 

『こいつは便利な武器だぜ』

『キッサマアァァァァァッ!!よくもディアッカをぉぉぉぉぉぉ!!』

 

目の前で仲間が殺られたという状況に、イザークの怒りの沸点が一気に臨界点を超える。マニピュレーターでビームサーベルを握り、一気にバーニアを吹かそうとしたところでアスランが静止の声を上げる

 

『やめろイザーク!!それより早く撤退するぞ!』

『なんだとぉ…!?』

 

それを聞いたイザークは激昂する

 

『アスラン貴様ァ!!ディアッカが殺られたというのにおめおめと逃げろと言うのか!?このッ腰抜けがぁ!!』

『ディアッカはまだ生きている!!』

『何!?』

 

が、アスランから告げられた言葉を聞いたイザークは操縦桿を強く握る

 

『本当か!?』

『コックピットから僅かにズレている!だがこのままではディアッカの命が危ないかもしれない!ここは引くんだ!!』

『ぐっ…!!』

 

イザークは砕けそうなほど歯を強く噛み締める

 

本当ならば今すぐあのMSのパイロットを八つ裂きにしてやりたい。しかしここで引かなければディアッカの命が助からない可能性があることを考えれば引くしか手がなかった

 

デュエルのメインカメラがブルートを映す。藍色のガンダムは左腕に装着されたハンドガンを構えもせずにただこちらを見下ろすだけだ。ナメられてると理解して感情が爆発しそうになるが、必死に抑え込むと言葉に変えて口から吐き出す

 

『貴様は、貴様だけはこの俺の手で墜としてやる!必ずだッ!!』

 

言いたいことを言うと、デュエルはバスターを抱える。それを守るようにイージス、ブリッツが共に後退し、4機は撤退していった

 

「アスラン!!」

 

拘束から解放されたキラは思わずストライクで追いかけようとするが、目の前にブルートが現れたことで停止する

 

『やめときな、今のお前さんじゃあ追いかけても返り討ちに遭うだけだ。ここは大人しく引いたほうが身のためだぜ』

「あなたは…一体…?」

『キラくん、聞こえる!?』

「マ、マリューさん…」

『キラ、大丈夫!?返事をして!』

「ミリアリア…僕は大丈夫だよ」

 

キラは思わず安堵する。どうやらアークエンジェルは無事なようだ

 

次にナタルの声が、ストライクとブルートを繋ぐ回線に混ざる

 

『こちらアークエンジェル副長ナタル・バジルール少尉!!そこのモビルスーツ、所属と目的を述べよ!!』

『バジルール少尉、あなた!?』

『繰り返す!所属と目的を述べよ!!』

 

繰り返し指示を述べるナタル

 

そこにナスカ級に奇襲をかけて戻ってきたムウのメビウス・ゼロ。敵MSとはすれ違った様子だ

 

『おいおい、敵艦が追撃をやめて、モビルスーツも撤退していったと思ったら…どういう状況だ、これは?』

「ムウさん!」

 

ストライク、メビウス・ゼロ、アークエンジェルにそれぞれ見られている中…

 

『こちら、大西洋連邦第4独立連合騎兵連隊、ゲイリー・ビアッジ大尉。上層部の特命により、アークエンジェル護衛の任務を遂行させてもらいます』

 

サーシェスは獰猛な笑みを引っ込めて、「ゲイリー・ビアッジ」としての表情でそう告げた




GAT-X-001 ブルート
装備
・75mm対空自動バルカン砲塔システム イーゲルシュテルン×2
・対装甲コンバットナイフ・アーマーシュナイダー×2
・51mm高エネルギービームハンドガン
・ビームサーベル×2
・ファング×6
搭乗者
アリー・アル・サーシェス
 
アリー・アル・サーシェスが鹵獲したジンが大きく「G計画」を進めたことによって早期に開発された全てのG兵器のプロトタイプにあたる機体。通称「ブルート」
 
元々G兵器の標準装備であるPS(フェイズシフト)装甲やビーム兵器が実用段階の域を出なかったため廃棄予定の機体だったはずが、ムルタ・アズラエルがサーシェスを私兵として動きやすくするために機体フレームを回収し、独自に開発させたもの
 
MSそのものが開発途中な段階だったことにより、後に開発されるどのG兵器とも違う独特のフレーム「X0番台フレーム」のMSとなっている
 
名前の由来は「獣(brute(ブルート))」。ファング(牙)を装備していることからつけられた
 
試作型無線式オールレンジ兵装「ファング」
元々は量子通信技術を応用した無線式ガンバレルを開発目的とされていたが、ただでさえ有線でも大きなガンバレルは無線化するとさらに兵装が大きくなってしまう。MS、MAの機動力が低下する恐れがあることから開発は難航したが、これをビームサーベルに置き換えることで、出力は少し下がるものの大きな軽量化に成功
 
同時に兵装のコンセプトを「撹乱、陽動」に変更して開発が進められた結果、小型でありながら獣の牙のように敵に喰らいつく特殊兵装「ファング」が完成した
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