やっぱり繋ぎの話は整合性とかを考えないといけないから書くのが大変です
「キラ君達が戻ってこない?」
明けの砂漠でカガリの付き人をしている壮年の男性
“レドニル・キサカ”の言葉にマリューはそう返す
「ああ…時間を過ぎても現れない。サイーブ達はそちらに戻ったか?」
キラ、フレイ、カガリの回収には、“明けの砂漠”リーダーであるサイーブと同行しているナタルに任せている。今頃キラ達とは別ルートを使った物資の補給を行っている手筈だ
「いえ、まだよ」
「電波状態が悪くて彼らと直接連絡が取れない。連絡が付いたら何人か戻るように言ってくれ。市街でブルーコスモスのテロがあったのだ。だが、何をするのにも手が足りん」
「パル伍長!バジルール中尉を呼び出して!」
「はい!」
“ロメロ・パル”伍長にそう指示を出すと、マリューは眉間を揉みながら先程格納庫で起きた事件を思い返す
「全く、どうしてこう立て続けに…」
苦労を滲ませる声音で彼女はボソリと呟いた
そんなやり取りを陰で見張っている者がいる
(連中からの連絡は来ねえ…)
ザザー……と不快なノイズが手元のトランシーバーから響く
(まあ、ストライクのガキが死んだって別に構わねえ。そんときゃァまた別のモンを使えりゃいいさ)
駒はいくらだってあるんだからな──
周囲を確認してから通信機を踏み潰すと、それを砂の中に軽く埋めてからサーシェスはその場を去る
砂の山は砂塵ですぐに埋め尽くされ、証拠とサーシェスを結びつける繋がりは砂のように消え去った
一方、バルトフェルドによって自らのホームに案内されたキラ達は、それぞれの対応という形で歓迎を受けていた。フレイは汚れた服や体を入浴で綺麗にして新しい服を着せられ、カガリはそれに加えて肩の治療をされている
そしてキラは、ソファーに座りながら机を挟んで対面する名将バルトフェルドからコーヒーをご馳走になっていた
「落ち着いたかね?」
「はい…ありがとうございます。助けてくれて…」
「礼はいらんよ。むしろこっちは謝るべき立場だ。敵とはいえ君達のような子供を無関係な事柄に巻き込んでしまったのだからな」
「はぁ…」
そう言いながら「ンン〜♪」と実に機嫌が良さそうにカップに注がれたコーヒーの匂いを楽しみ、それに舌鼓を打つバルトフェルド
「このコクのある風味…コロンビアを6%足したのは正解だったね。しかしちょいと苦味が強いな……もう少しグァテマラを加えてみるかな?」
「ええっと…」
「どうした?遠慮しないで飲みたまえ」
「い、いただきます」
敵地にご招待された状態で喉が通るとは思えなかったが、そう促されたキラは恐る恐る、コーヒーを口にする
「うっ!」
しかし、口いっぱいに広がる苦味とそれがいつまでも続く感覚に思わずしかめっ面になる。感想も言わずそのままカップを置いたキラを見て、バルトフェルドは大口を開けて笑う
「ハハハ!君には大人の味は少し早かったかな?」
「アンディ」
そう時間が経っている間に、バルトフェルドに話しかける女性が現れた
黒く艶やかな髪を腰まで伸ばした不思議な雰囲気を醸し出す彼女は、他の女性より高い声音でバルトフェルドを愛称で呼びながら微笑む
「治療と着付けが終わったわ」
そう言うと、後ろから見知った2人が現れる
1人は翡翠のドレスを身につけた金髪の少女、カガリだ。不機嫌そうにバルトフェルドを睨んでいる
露出した左肩に巻かれた包帯が痛々しかったが、ちぐはぐながらも綺麗な所作を感じさせるカガリの姿に、思わずキラは「本当に女の子だったんだ…」などと結構失礼なことを考えていた
そして、キラはもう1人の少女の方に視線を向けて
「───」
瞬間、世界が止まったような感覚に陥った
鮮やかな紅色のセミロングは後ろで団子状に纏めていて、たったそれだけの違いなのに普段の彼女とは違って見えた
そして着ているものはカガリのドレスのような意匠が施されてない簡素なブラックドレスであり、しかしそれがフレイの白い肌や赤い髪の美しさを大きく引き立てていた
時間にして数秒も満たない僅かな間だったが、その間キラはずっと、息をすることも忘れてしまうほどその可憐な乙女に心奪われていた
「ちょっと…いつまで見てるのよ」
「あ……ご、ごめん!」
顔を横に向けてフレイを視界から外すと、次に映ったのはニヤニヤと笑うバルトフェルドの表情
「いやぁ〜似合ってるじゃないか〜。特に
「…コーディネイターなんかに褒められたってちっとも嬉しくないわ」
それは敵地のど真ん中に連れてこられたフレイの、バルトフェルド達ザフトに対する精一杯の強がりだった
当然バルトフェルドはその虚勢を見抜いているが、キラはその言葉を『キラを含めたコーディネイター全員に対して言った言葉』と捉えた
(バカか、僕は。僕はフレイを守るって約束してるのに…彼女をそんな風な目で見る資格なんて、僕にはないのにッ)
邪な感情でフレイを見てしまった嫌悪感が胸中で渦巻く
キラが必死に自分の中の煩悩や欲望を押しとどめていく中、黙りこくっていたカガリが口を開く
「お前、一体なんのつもりだ…?」
「なんのつもり、ねぇ…一体『何』のことかな?」
「
「口を開かなきゃ可愛いお嬢さんのままなんだがねえ…」
大声で捲したてるカガリだがそこに迫力はなく、バルトフェルドも飄々とした態度を崩さない
「あと見下してるとは穏やかじゃない。もし見下されてると感じているなら、それは君たちが見下されるほど弱いのを自覚していることにほかならない…だろう?」
「お前…!」
「事実
ナチュラルを軽視した発言に脳が沸き上がりそうになるフレイだが、それ以上に過剰な反応を見せるカガリの姿に少し冷静になり、掴みかからんとするカガリを抑える
「離せよ、オイ!」
「この前、私たちに返り討ちにされたくせに随分な言い草ね」
ここで暴れれば確実に自分たちは殺され、コーディネイターへの復讐など出来なくなる
サーシェスの過酷な訓練とラクスとの対話で耐え忍ぶ事を覚えたフレイは、衝動を皮肉に変換して、バルトフェルドに吐きつけた
「ハッハハハハ、言われちゃったな〜。でも、あれだけで勝ったと思うのは些か早計じゃないかな?」
「何を…」
「この戦争のことだよ」
バルトフェルドの目が真剣なものになる。先程までのおちゃらけた雰囲気は霧散し、歴戦の指揮官足り得る男がそこにいた
「アークエンジェルは新型なだけあって凄まじい戦艦だし、パイロットの
「どうして僕がパイロットだと…」
「モビルスーツの操縦には必ずナチュラルとコーディネイターで大きな差がつく。バーサーカーと言わんばかりのストライクの戦闘は間違いなくコーディネイター、それも戦闘中にモビルスーツのOSを対砂地用に書き換えるなど、相当能力が高いコーディネイターでないとできない。そしてさっき君が外で見せてくれた反応速度に射撃…これだけ判断材料が揃えば誰だって分かる」
3人はバルトフェルドの観察力と洞察力に舌を巻いた。そしてキラとフレイは、1週間にも満たない期間でそれだけ自分たちの情報を集めたバルトフェルドの諜報能力に恐ろしさすら感じていた
「話を戻そう。要するにどれだけの武力を持とうとただ相手を倒すだけでは戦争は終わらない」
淡々とそう述べるバルトフェルド。だがその言葉は、父親の仇討ちを望んでいるフレイからすれば到底許容できる話ではない
「だから戦うなって…話し合えとでも言いたいわけ!?ふざけないで!!私はパパを殺したコーディネイターを絶対に許さな──」
チャキ…
「!?」
「なら……殺し合うかね?どちらかが滅びるまで」
しかし、バルトフェルドが懐から拳銃を取り出してフレイに突きつけたことで、彼女の燃え上がった怒りが一気に冷え込む
「やめろ!!」
それを見たキラの行動は早く、キラもすぐさま拳銃を取り出すとフレイとカガリを庇うよう前に出て、バルトフェルドに銃を向ける
「この戦争はね…狂ってるよ。両方のトップが敵を滅ぼせば全て解決すると考えているのだからな。戦争はそんな単純なものじゃない」
「………」
「片やプラントの独立と貿易の自由、片や理事国所有のコロニーの返還と独立の否認…これらの要求を通させるか互いに納得できる妥協点を見つける、それがこの戦争の本来の目的であり、この為に私たちは命を懸けて戦っているのだ」
「目的の為なら戦争していいって言うんですか!?嫌なのに戦争に巻き込まれた人達だっているのに、それでも戦うんですか!?」
「間違えるな、戦争というのは本来最終手段に過ぎん。例え一方的に勝てたところで、勝った方も大きく疲弊せざるを得なくなるのだからな」
「…ッ…!」
我々も全員望んで戦っている訳ではない。言外にそう言われたキラは口を
そのバルトフェルドの言葉に、ずっと黙っていたカガリが言い返す
「なら、なんでこの国に
「カガリ…」
あの時、あの場所で、直接悲劇を見て悲鳴を聞いたカガリは徐々に勢いが弱くなりながらも言い切るがバルトフェルドは忽然とした態度を崩さず告げる
「この国を、ひいてはプラントを守る為だ」
「そんな事!!」
「…これ以上は平行線だな…」
バルトフェルドは拳銃を先に下ろす。自分の強さと勝利を疑う者ではまず行えない行動だった
そのまま部下を呼び出すとキラ達に視線を向けて、仲間たちの所に帰るように促す
「よく考えることだ。何故私たちがこの国に居るのか、私たちが居なくなればこの国がどうなるのか…それを考えた上で戦うというのであれば、相手をしてやろう」
「戦う…」
「偉そうに…!!」
その横では、アイシャがフレイ達の着替えが入った鞄を手渡す
「これ、あなた達の服よ。血もちゃんと落ちるように洗ったわ」
「…礼なんて言わないわよ」
キラ達は部下に着いて行くように部屋を出ようとするが、最後にバルトフェルドが質問をする
「ああっとそうだった!最後に聞いておきたいんだが…」
「アリー・アル・サーシェスという名前の男に心当たりはないか?」
「アリー……アル…?」
「…私は知らないわ…アンタは?」
「知るか!知っていても教えるもんか!」
怒った少女の言葉を締めに、3人は完全に去っていった
あまりに予想通りの反応(特にカガリ)に思わずため息を吐くバルトフェルドを見て、アイシャが問う
「アンディ、そのアリー・アル・サーシェスという人、一体誰なの?」
「アイシャ、僕はねえ、ずっと引っかかってる事があるんだ」
その質問をすぐには答えずに、バルトフェルドは恋人に言い聞かせるように告げる
「ストライクの強さはパイロットがコーディネイターの彼で、動きにもムラがあったから納得できる…ならばもう一体の方は?青い方の『G』は純粋な戦闘力に加え、明らかに老獪な動きを見せていた。あの動きは戦闘用に調整された若いコーディネイターにはできない…かと言って第1世代コーディネイターの能力じゃ、というか第2世代コーディネイターですら極一部の者にしかできない反応速度だ」
「そんな事をできる人が、その人なの?」
バルトフェルドは考える。ストライクを倒し、あの
「答えようアイシャ。アリー・アル・サーシェスはおそらく最強のナチュラルであり…そして紛うことなき、最低最悪の戦争屋だ」