種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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心の矛盾

『滅殺!!』

 

砂漠の戦場に現れた乱入者…イージスと同じく、変形機構を持つ黒い『G』であるレイダーはパイロットの殺意と衝動に合わせて動き、破砕球“ミョルニル”を振り回す

 

『速い───』

『ぎゃああ───』

『このお───』

 

ドグシャァ!

 

ワイヤーと繋がっている質量兵器が振り子のように弧を描いて動き、進路上にいた3機のMSを纏めて粉砕する

 

『新型だとぉ!?』

『ナチュラル共め!性懲りもなく!』

 

それでも相当数残っているバクゥやザウートが反撃を行う。実弾とミサイルの弾幕がレイダーに迫るが、レイダーは瞬時に空中で回転しながら高速変形し、MA形態の機動力を活かして攻撃を掻い潜り、振り切る

 

『なんであんな動きがナ、ナチュラルに出来るんだ!?』

『まさかあれにもコーディネイターが…!』

『食らえっ!』

 

機首に格納された大型機関砲が火を噴く。“M417 80mm機関砲”から飛び出した弾丸がザウート達を正確に捉え、それに乗っていたコーディネイターの疑問は答えられることなく火と一緒に吹き飛んだ

 

そのままアークエンジェルを狙い済ましていたピートリー級まで肉薄し、クロトはレバーのスイッチに指を押し込む

 

『抹殺!!』

 

MA時に正面を向いた機首であるガンダムの頭部、レイダーの顔面の口にあたる部位には今までのXシリーズにはなかった砲口“100mmエネルギー砲 ツォーン”が取り付けられている

 

ドオオオン!!

 

その邪悪な面構えから撃たれた高出力ビームが砂色の厚い装甲を容易く貫き、陸上艦を火の海に変える

 

『さあ、どんどんやっちゃうよ〜!』

 

クロトの胸中に人を殺した罪悪感など欠片も存在しない。まるでシューティングゲームをするかのような気軽さで、次のターゲットに狙いをつけた

 

レイダーの蹂躙劇、それをスカイグラスパーの中で見ていたムウは唖然としながら呟く

 

「なんだよあれは…」

 

G兵器に似た外見とザフトを蹂躙し回っている事から、ブルートと同じように秘匿された連合の新型MSなのだろうと予想はできる。だが、コーディネイターが乗ってたとしてもあまりにめちゃくちゃな機動と残虐性を感じさせる容赦のなさに、ムウは味方ながら戦慄していた

 

ゲイリーが担っていた敵戦艦の破壊を黒いガンダムも共に実行していることで、敵の戦線は崩壊しつつある。しかし、だからといってアークエンジェル側の危機が去ったかと言えばそういう訳ではない

 

「アークエンジェルはフレイがいるからまだ大丈夫だが、ストライクが戦っているのは……ありゃラゴゥか!?」

 

現状、最も危険なのは、フェイズシフトダウンを起こして右腕をもがれているストライクだった。ストライクの前にはオレンジの機体色、頭部から一本角が伸びたバクゥの指揮官機“ラゴゥ”が存在していて背部のターレットに取り付けられた2連ビーム砲から飛び出すビームでストライクを狙い撃つ

 

「まずい!!」

 

このままではキラが殺される!そんな未来を幻視したムウは己が直感を信じて対峙する2機に近づく。そしてポッドから吐き出したミサイルで新型機を牽制すると、下部のランチャーパックをパージしながらストライクに通信を飛ばす

 

「キラ!受け取れ!!」

『ッ…!!』

 

返事はない。しかしこちらの意思は伝わったのか、隙を見たストライクは落下するアグニをキャッチして、左肩でコンボウェポンポッドを受け止め、接続する

 

僅かに電力が回復したのか、グレーの装甲を見慣れたトリコロールカラーに染め上げていくストライクだが、あまりに左に重心が偏り過ぎてる為か大きく左によろける

 

それを見た橙色のMSが、犬が骨を咥えてるように頭部に装備された両刃型のビームサーベルでストライクに斬り掛かる。迫る脅威にキラは即座にアグニを捨ててから右膝をついてバランスを取り、左腕に残った対ビームシールドでラゴゥの奇襲をすんでのところで防ぐ

 

「なんとかなったか!しかし…」

 

こんな事は所詮時間稼ぎでしかない。元々ムウがスカイグラスパーで使っていたのだ、電力の残量もミサイルの残弾も僅かにしかない。10分…いや3分も経てば先の状況を繰り返すだけに過ぎない

 

「キラ、生きろ!!どうにかする!」

 

結局子供に頼るしかない自分に嫌気をさしながらもムウは速度を上げて母艦に向かうのだった

 

 

 

一方、大天使の戦艦も地獄の(ふち)に立たされていた

 

「近寄らないでっ!コーディネイター!!」

 

イーゲルシュテルンやゴットフリートでアジャイルの迎撃をしているアークエンジェルの上では、フレイが2機のバクゥに向かってミサイルを放っていた

 

ロックしたMSを自動的に追尾するが、内1機のバクゥが砲塔から電磁力を利用した弾を撃ち、危なげなくミサイルを迎撃する

 

「また…!?もうミサイルの残弾も少ないのに!」

 

ブルートの不意打ちを受けたバクゥ部隊は2機生き延びており、アークエンジェルへの攻撃を継続していた

 

隊長機が追い掛けてくるミサイルをレールガンで正確に撃ち落とし、追随するバクゥがミサイルでアークエンジェルを狙うというコンビプレーにより、フレイ達は未だ予断の許さない状況だった

 

『あのバクゥ、さっきから邪魔だぞ!』

 

しびれを切らしたザフト兵はフレイ機のバクゥに向かってミサイルを撃つ

 

「あ、い、イヤッ」

 

新兵のフレイにミサイルでミサイルを迎撃するなどという的確な判断は下せない。追尾から逃れる為にフレイは思わず艦上から飛び出し、直後ミサイルはバクゥが先程までいた場所に直撃した

 

「キャアアア!」

 

高い位置から着地した衝撃でフレイは悲鳴を上げる。もし地面が砂地以外で且つ衝撃を分散できる四脚のバクゥでなければ、彼女は悲鳴を上げる事もできずスクラップと化した機体の中で即死していただろう

 

「くっ、ぅう……!」

 

手首や首が痛むのをフレイは精神力で捩じ伏せ、即座にバクゥの状態を確認

 

ハイドロ(冷却水)は無事っ、駆動システムも生きてる!…ハッ!」

 

そして回避。着弾地点で砂が巻き上がる

 

眼前にはレールガン装備のバクゥ機、背後には損傷したアークエンジェル、甘ったれていた箱入り娘はコックピットの中で覚悟を固めた

 

「やらせない…!!アークエンジェルも、()()()も…!」

『墜ちろよナチュラル!!』

「私は…!私はあああぁぁぁっ!!」

 

音速の弾丸が発射される。しかしフレイはレールガンの銃口の向きから狙いを無意識に予測し、四脚による動きで躱しながら敵機との距離を詰める。あの凄まじいシミュレーターで何度も訓練していたが故の動きだった

 

隊長機は何度もレールガンを撃つが、どれだけ距離が近づこうとフレイ機のバクゥに着弾出来なかった

 

『こいつ、さっきまでと動きがッ!』

「ヘナチョコなのよ!あの人(ゲイリー)と比べたらぁ!!」

『隊長!!…あ!?うわぁ!?』

 

ドォォン…!

 

苦戦を強いられるオリヴァーに助け舟を出そうとするが、迎撃担当が居なくなったことで密度を取り戻したアークエンジェルの弾幕に飲み込まれて、名も知らぬパイロットは砂漠で散った

 

『ジャック!? なっ!?』

 

その動揺が死神を呼び寄せた。十分に接近したフレイは下から突き上げるように相手のバクゥにタックルし、ひっくり返ったバクゥの上に脚を乗せる

 

『しまった!!』

「死ねェ!!コーディネイターアアッ!!」

 

ズガァン!

 

…そして躊躇ないスタンプがコックピットの出入り口に深く突き刺さり、身動ぎひとつなく敵のバクゥは沈黙した

 

「はぁ、はぁ、はぁ…やった…やったわ…!」

 

敵がいなくなった戦場で、フレイは暗い箱の中でぽつりと呟く

 

「パパ…ママ…!私…コーディネイターを殺せるようになったわ…!本当に頑張ったよ…!褒めてくれる…?安心してくれる…?」

 

闇のように深い疑問に答えは返ってこない。少女が愛する父親も、母親も、既にこの世にはいないのだから…

 

それでも確かな充足感を得ながら、フレイは周囲の様子をモニターで確認する。少なくとも今すぐ襲ってくる敵はいない。1番近い敵は…

 

「キラ…そうだわ。キラは大丈夫なの?」

 

ヘルメットを取り、滝のように流れる汗を軽く拭いながら、疲弊した体でバクゥを操作して音のする方向へ脚裏のキャタピラーを動かす

 

砂漠の向こうから立ち上る黒煙を尻目に移動して、辿り着いたフレイが見たのは

 

 

 

覆い被さってくる形でのしかかるラゴゥのコックピットに、ビームサーベルを突き刺しているトリコロールカラーのMSの姿だった

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