種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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アークエンジェル

アークエンジェルの格納庫内で鎮座する2機のMS。どちらもPS装甲が起動していないことで、くすんだ灰色の機体色になっている

 

1機はこの艦と共にヘリオポリスから脱出したキラの搭乗機“ストライク”

 

もう1機はザフトの追撃時に突如乱入してきたサーシェスのワンオフ機“ブルート”である

 

並んで立ち尽くすMSを見上げながら、整備長である“コジロー・マードック”軍曹は感嘆を息を吐く

 

「まさか連合が秘密裏に、もう1機モビルスーツを開発していたとはなぁ…」

「しかも乗ってるパイロットがヤマト少尉と違ってナチュラル、それでバスターを損壊させて撃退したって話だから凄いっスよね」

 

マードックの言葉を整備クルーが返す

 

「そのパイロット殿も、今頃艦長たちと話している頃か…」

 

 

 

アークエンジェルのブリーフィングルームにて、ゲイリー・ビアッジを騙るサーシェスは艦長を含めたクルーたちと情報交換を行なっていた

 

「──つまり…オーブとの開発データを元に建造されたのが、あのモビルスーツということ?」

「ええ、アズラエル財団傘下の国防連合企業体が秘密裏に建造した連合のモビルスーツです。本当ならばヘリオポリスに到着してから説明を行った後、かの“エンデュミオンの鷹”と共にこのアークエンジェルと『G』の護衛を務めるはずだったのですが、まさかザフトの襲撃で出港時間が早まってしまうとは…ゆえに、道中のデブリ帯でブルートに乗り換え、ここまで最短時間で突っ切ってきたわけです」

「いいのか?秘密裏のことを話しちゃって」

「秘密裏にしたのは、同じく軍の最重要機密であるアークエンジェルと『G』の存在を隠すためです。しかしイージス、デュエル、バスター、ブリッツの4機の『G』が強奪されてしまった以上、すでにプラントに情報が漏れてしまったと考えるべきです。ならばもっとも重要なのは、唯一残った“ストライク”

と“アークエンジェル”を守ることです」

 

地球連合軍の軍服を身に纏ったサーシェスはマリュー、ナタル、ムウにあのMSと、それに乗ってきた経緯を話す

 

そしてある程度話し終えると、サーシェスは3人に頭を下げる。驚く気配が感じられた

 

「我々の対応が遅れたばかりに、本来のアークエンジェルのクルーを死なせるばかりか無関係の民間人にモビルスーツの戦闘を強要させる事態にしてしまうなど…本当に、申し訳ありません」

「あ、頭を上げてください!ビアッジ大尉!」

「そうだぜ。G計画がザフトに漏れてるなんて誰も想定してなかったんだ。それに、坊主に戦うよう促したのは俺たちの責任だ。アンタが悪いわけじゃない」

「…ありがとうございます」

 

そう例を言うと、3人が纏っていた硬い雰囲気が和らいだように感じた。少しは心が打ち解けたのだろう…サーシェスは内心ほくそ笑んだ

 

さっきサーシェスが述べた謝罪は全て嘘だ。他人が死のうが知ったことではないし、むしろ『G』が奪われたことで、ザフトとの戦争のやり甲斐が増すと楽しんでいるくらいである

 

だが、その素性と本性に誰も気づかない。戦争を楽しむためならば自分の欲求を抑えつけて社会に溶け込んでみせる…だからこそサーシェスは戦争狂なのである

 

「ま、そういうわけだ。アンタもその()()()()()()を止めていいんだぜ、ゲイリー大尉殿」

「!」

 

しかし、ムウのその言葉にサーシェスは驚愕する

 

「どう言う意味だ、フラガ大尉?」

「どうって、単純に無理してる喋り方なんじゃないかって思ったんだよ」

 

「それに」とムウはサーシェスの顔をジッと見つめながら、言葉を吐く

 

「コーディネイターが操る『G』4機を迎撃するなんて並の実力じゃないし…軍の中でそういう(戦闘狂の)人間を()()()()()()()()()()。だから分かるんだよね、そういうの」

 

サーシェスは認識を改めた。ただ連合のプロパガンダに利用されて祭り上げられただけの男と思っていたが、ここまで生き残るだけの何かはあるらしい…と感じた

 

どれだけ隠そうとこの男の前には通用しない。だからサーシェスは観念したように手を上げ、「本性」だけを隠すことに決めた

 

「へっ…さすがは“エンデュミオンの鷹”と言ったところか。ただの祭り上げられただけの英雄じゃねえってわけか」

「おいおい、その名前で呼ぶのだけは勘弁してくれよ。どいつもこいつも好き勝手言いやがって…迷惑極まりねえぜ」

(ちげ)えねぇ」

 

唐突に口調も雰囲気も変わったゲイリー・ビアッジの姿にマリューとナタルは驚きを隠せないでいた

 

「ビ、ビアッジ大尉、あなた…」

「すまねえなぁ、ラミアスさんにバジルールさんよ。ご覧の通り俺の中身は清廉潔白な軍人とは程遠いからな、せめて外面だけでもって思ってああ言う態度を取らせてもらったんだ」

「い、いえ、自分は問題ありません、ビアッジ大尉」

 

気軽な口調…悪く言えば粗暴な口調になったにも関わらず、目上の立場の人間だからと堅苦しい態度を崩さないナタルの様子に、扱いやすそうな女だと嘲笑う

 

「とはいえ、情報交換も終えた以上、これからどうやって連合の本隊と合流するかを考えねえとな」

「ええ…そうね」

「しかし、ビアッジ大尉がザフトを追い払ってくれたおかげでアルテミスに辿り着くことができました。あとは武器・弾薬等の補給を終えてから地球に向かえばいいだけでは?」

 

普通に考えればそうだろう。だがそれは、ナタルの考える真っ当な軍人がアルテミスの司令官を務めていたらであり、サーシェスが考え得る限りそれはあり得ない

 

「いいや、アルテミスの司令官のジェラード・ガルシア少将は横暴で俗な人物と聞く。しかも(やっこ)さんはユーラシア連邦に属する軍人ときた。そんな奴のところに大西洋連邦の新兵器であるモビルスーツを積んだこの艦が、軍の識別コード抜きで入港してみろ、間違いなく自分の手柄にすべく拿捕してくるぜ」

「バカな!!そんな事が罷り通るとでもっ」

「するね、口封じに俺たちを消してな。アルテミスは最前線だ。ザフトの連中に殺されたとでも言えばいくらでも誤魔化しは利く」

 

キッパリと断言するサーシェスに閉口するナタル。それでも彼女は言葉を紡ぐ

 

「しかし…アルテミスで補給を行わなければ、間違いなく地球に辿り着くまでにこの艦の物資や弾薬は枯渇します。それにヘリオポリスの避難民も乗せている以上、食料や特に水の補給は必要不可欠です」

「分かってるよ。ようは識別コード抜きで入港して、あちらさんに主導権を握られるのがマズいんだ。…ならそれを逆手に取ればいい」

「何?」

 

何を言いたいのかいまいち理解できない3人が疑問符を浮かべる中、サーシェスは愉快そうに喉を鳴らして笑った

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