種芽吹く世界を戦争屋は駆る   作:ジャギィ

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前回、あまりブリッツと関係なかったので、サブタイトルをこっちに移しました


電撃(ブリッツ)

アルテミスを囲うように配置されている全方位光波防御帯発生装置…それが次々と爆散していき、アルテミスの鉄壁の防御をボロボロにしていく

 

その出来事の元凶の正体は、漆黒のボディカラーと右腕の大きな武器が特徴のMS“ブリッツ”だ

 

ブリッツの最大の特徴。それはミラージュコロイドと呼ばれる特殊粒子を機体の表面に定着させることで、可視光線と電磁波を偏向し、視覚・電波・赤外線による探知から逃れられることができるステルス能力を持つことだ

 

PS装甲と併用できない、スラスターの熱源探知は可能、使用中は電力消費が著しいなど欠点もあるが、それを加味しても見えない敵という脅威的な機能を持つMSである

 

つまり、本来ならば襲来してくる敵に対して『傘』を張ることでザフトの攻撃を凌いできたアルテミス。だが今回はミラージュコロイド・ステルスで探知できないブリッツが接近してきたため、『傘』を張る前に侵入を許してしまった…これが今回の襲撃の全貌である

 

「よし、これでアルテミスの傘を発生させることはもうできない」

 

防御帯発生装置を軒並み破壊したニコルは、アルテミスに接近するヴェサリウスとガモフを確認する

 

「足付きが動き出す前に、アスランたちと合流しないと」

 

 

『ところがぎっちょん!!』

 

 

直後、ビームサーベルを構えたブルートが背後からブリッツを襲撃する

 

「うわっ!?」

 

突然の奇襲にも関わらず、コーディネイターとしての高い反射神経でビームサーベルを躱すブリッツ

 

ガァン!

 

しかし不意打ちのビームサーベルを回避されてもサーシェスは微塵も動揺せず、即座に膝蹴りをコックピットに叩き込む

 

いかにPS装甲によって物理攻撃に対しては絶対的な防御力を持つ『G』と言えど、その衝撃まで防ぐことはできない。それにPS装甲は物理攻撃を無効化するたびに電力を大きく消費する

 

アズラエルから提供された『G』の資料でそれを知っていたからこそ、サーシェスは武器のみならず素手での攻撃も行う。もっとも、サーシェス自身、白兵戦を好んでいるという理由もあるが

 

「ぐう!!…コ、コイツゥ!」

 

コックピットを思いっきりシェイクされたことで、吐き気が込み上げてくるのを抑えながら、複合武装“トリケロス”のビームライフルをブルートに向かって撃つニコル

 

至近距離の射撃。これをブルートは仰向けに倒れて宙に浮くことでビームが当たる面積を減らし、なんなく回避する

 

「躱した!?それに、この青いモビルスーツ…!」

 

───ディアッカを倒した奴!!こんな時に出会(でくわ)すなんて!!

 

ニコルの思考に迷いが生じる

 

ザラ隊(アスランを隊長とした4人の赤服部隊)は未だにブルートのファングへの対抗策が思いついておらず、そもそもブリッツの隠密に気づいたとしても足付きが追われていることを考えればそちらの護衛を優先すると思ったのだ

 

(それが真っ先にこちらに向かってくるなんて!)

 

姿勢を整えたブルートのツインアイがブリッツを捉える

 

このまま相手をするのは作戦上良くない…そう思ったニコルはミラージュコロイドで宇宙の闇に溶け込み、アルテミスから離れようと行動する

 

『逃がすかぁ!』

 

だが、サーシェスはそれを逃がさない。ブリッツが消えた場所に前進しながら、その方向一帯に頭部の対空自動バルカン“イーゲルシュテルン”をばら撒く

 

本来ならばMSやミサイルの迎撃用に組み込まれた砲塔システムであり、PS装甲を持つG系統のMS相手にはダメージを与えることすらできないのだが、ミラージュコロイドを纏っているブリッツなら話は別だ

 

「弾幕を!」

 

ニコルはブリッツのステルスをすぐに解除してPS装甲を起動、間一髪バルカンの雨を防御する

 

『そこかぁ!』

 

そして姿を見せたブリッツを逃すサーシェスではない。再び姿を消される前にイーゲルシュテルンでブリッツを釘付けにし、サイドアーマー外側に収納された対装甲コンバットナイフ“アーマーシュナイダー”を手に急加速する

 

「このォ!」

 

迫る青い獣に対して距離を取りながら3連装超高速運動体貫徹弾“ランサーダート”やビームライフルを撃ち放つも、三次元的な機動で全て避けられる

 

「これも避けるのか!」

『オラァ!』

 

ギャリィィィ!

 

超振動の刃がコックピットの装甲に突き刺さり火花を散らす。PS装甲がなければ、とヒヤリとしながらも左腕の“グレイプニール”をブルートに向け、内部の有線式ロケットアンカーでクローを射出する

 

『チョイサー!』

 

ガギャァン!

 

しかし素早い動きでブルートは飛んでくるクローを蹴りつけ、明後日の方向に吹き飛ばす

 

「蹴り飛ばした!?」

『オイオイ、ガンダムに乗っててもこの程度か?えぇ!コーディネイターさんよぉ!!』

 

接触回線から期待外れだと言わんばかりの声がブリッツの内部に響く

 

機体性能は互角のはずなのに、まるでライオンが兎を嬲るように、ブルートはブリッツ相手に一方的な戦いを繰り広げていた

 

しかも、相手のブルートが握っているのは物理武器のアーマーシュナイダーなのだ。もしこれがビームサーベルだったとするならば…さっきコックピットを突き刺された時点でニコルがどうなっていたかは想像に容易い

 

それに、バスターを容易く損壊させたあの飛来するビームサーベルを出す気配もない…完全に弄ばれていると気づくと、普段温厚なニコルも頭に血が上る

 

「接近戦ばかりでビームサーベルも使わないなんて…遊んでいるのか!?」

『バッテリー切れまで持たせてみろよ!コーディネイターのガキィ!』

 

ガギィン!

 

足のつま先がブリッツの頭部に激突する。両機の距離が開くと同時にイーゲルシュテルンがブリッツの機体に満遍なく命中し、強制的に発動させられるPS装甲が内部バッテリーをどんどん消費させる

 

ビームライフルで狙いをつけるもブルートには掠りもしない。無駄撃ちをすれば電力の消費量が増すばかりだ

 

「逃げられない…!こ、このままじゃ…!」

 

ピー!ピー!

 

赤いデッドラインに近づいていくコンソールのバッテリー残量表示が、ニコルには死のカウントダウンに見えた

 

まさに狩人に追われる獲物の如く、徐々に死に追い詰められていく状況はニコルの判断力を奪う

 

「う、うわあああああっ!!」

 

デタラメに近づいてビームサーベルを振るうが、躱し、往なし、確実にアーマーシュナイダーを当ててブリッツのPS装甲を発動させる

 

ピ───ッ!

 

「ハッ!?」

 

そして…ついにブリッツのバッテリー残量に限界が訪れた。持っていた光の刃は消失し、機体の黒色が鈍い灰色に変わっていく

 

「しまったっ!!バッテリーが!」

『なんだよ、もうお(しめ)えかぁ?』

 

それを見たサーシェスはつまらなさそうに鼻で笑うと、ビームサーベルを取り出してブリッツのコックピットを狙う

 

『ハッハ、あばよ!!』

 

迫る剣先、暗い操縦席。ニコル・アマルフィが死を覚悟した…その時だ

 

ビュァ!

 

赤い高出力ビームがブルートの頭上から降ってきた

 

『何!?』

 

攻撃を察知したサーシェスはブルートを大きく後退させる。続けて降り注ぐビームの雨

 

「今のは…」

『ニコル!!大丈夫か!?』

『この野郎っ!よくもー!!』

 

高出力ビームを放ったのはMA形態に変形したイージスの複列位相エネルギー砲“スキュラ”によるもので、ブルートにビームを撃っているのは右脚の修理を完了させたデュエルだ

 

4本指の手のようなMA形態からMS形態になると、イージスもデュエルと共にブルートを狙い撃つ

 

『増援か…ムッ?』

 

攻撃を掻い潜りながらどう相手すべきか考えていると、別方向から高出力のビームがイージスとデュエルに飛んでいく。攻撃を止めて回避する2機

 

『別方向からの攻撃!?』

『足付きとストライクか!』

 

そう、アルテミスから出港したアークエンジェル、その甲板の上にいるランチャーストライクの狙撃によるビームだった

 

『ゲイリーさん!今のうちに!』

『やるじゃねえか、ストライクの坊主!』

 

まだ全速力で移動していないうちにアークエンジェルに戻ろうとサーシェスはブルートのスラスターを強く吹かせる

 

『キラ…!』

『ちょうどいい!お前たちもまとめて墜としてやる!』

 

迷いを見せるアスランとは逆に、感情を昂らせてデュエルでビームライフルを構えるイザーク

 

『行けよォ!』

 

それを見たサーシェスはファングで2機のガンダムに牽制をかける

 

『この攻撃!回避に専念しろイザーク!!』

『分かっている!!』

 

さすがはコーディネイターというべきか、アスランとイザークは2度目のファング攻撃を避け続ける

 

『アンチビーム爆雷装填!!てェー!!』

 

そんな中、アークエンジェルブリッジ内にナタルの命令が飛び、多目的射出機から“アンチビーム爆雷”がブルートとすれ違う形で発射される

 

アークエンジェルとイージス、デュエルの間の宇宙空間で爆発したアンチビーム爆雷がビームを減衰させる特殊粒子を散布し、アークエンジェルに対するビーム攻撃を無効化する

 

それを確認したサーシェスはファングを呼び戻し、ストライクの真横に着艦した

 

『クソッ!』

『逃がしたか…!ニコル、無事か!?』

「え、ええ…なんとか…」

 

アスランの呼びかけに疲労困憊といった様子で返事をするニコル

 

「ありがとうございます2人とも…危うく死ぬところでした…」

『貴様、みんなで倒すと抜かしておきながら1人で戦うとはどういう了見だ!!』

『そう言うなイザーク、ニコルも必死だったんだ。動けるか、ニコル?』

「いえ、バッテリーに限界が…すみませんが手伝ってください」

『全く、世話の焼ける奴だ!!』

 

デュエルがブリッツに肩を貸しガモフまで移動する

 

そんな中、ブリッツのコックピットの中で、ニコルはブルートとの戦闘を思い返していた

 

 

『オイオイ、ガンダムに乗っててもこの程度か?えぇ!コーディネイターさんよぉ!!』

 

 

「ブルートのパイロット…あの強さで、本当にナチュラルだとでもいうのですか…?」

 

信じ難い事実に、薄ら寒さを覚えるニコルだった

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