憑依先がありえない!   作:石ノ心

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初めまして、石ノ心と申します。初投稿なので、至らぬ点が多々あると思います。
ご指摘いただければ幸いです!



P.S. 2015年2月6日、多少の書き直しをさせて頂きましたが流れは全く変わってません、ご了承ください。筋肉っていいよね!!


旧校舎のディアボロス
第一話 憑依


 

――――目が覚めた。間違いなく俺の目は開いて、自分の部屋の天井を見上げているはずだ。なのにこれはどういうことだろう?目に映る天井は見慣れたものじゃない。完全に他人の部屋だ。こういう時に言うべきセリフがあった様な気もするけど、寝起きだからか混乱していて全く思い出せない。

辺りを見渡してみても、部屋の内装もまるで知らないものばかり。壁に大量に魔法少女のポスターが貼ってあり、同じくそういった類のフィギュアもあちこちに飾られてある。他に特筆する点は……まあ部屋が魔法少女グッズで一色である事くらいだ。

 

オタクと呼ばれる友人の部屋はこんな感じだったような気がするけど……俺はあいつに拉致でもされたんだろうか。いや、それだと理由がさっぱり分からない。

よく見ると見たことないキャラクターのポスターやフィギュアだし、部屋の感じも何か違う。友人じゃなくて全く赤の他人(オタク)が俺を拉致…?一体どういう状況だそれ。

 

とりあえずいつまでも寝転がっているままじゃ何も進まない。

とにかくまずは現状の把握だけでもしようと体を起こし……ここでふと自分の体に違和感を覚えた。視点を下に向ける。

 

「な、なんだこれ!?」

 

ありえない。――――俺は絶叫するしかなかった。

 

 

 

 

俺は普通の人間だった(・・・)。至極普通の高校に通い、友人達とよく遊び、テストがある度頭を悩ませ、終わった瞬間から何もかも忘れたように遊び、テスト返却時に絶望する。そんな、どこにでも居るただの学生だった。

頭のデキは普通…だった、うん。体の方はどうかと聞かれれば、体育の授業や部活以外は余った時間で多少の護身術を学んでいただけ。

筋肉は多少ついていたけれど、それにしたって平均程度だろう。

 

が、今の俺の体を見てそれを信じられる奴はいないに違いない。腕や脚、首回りなんかは丸太みたいに太い。寝間着は分厚い胸板により引き伸ばされ、今にも破けてしまいそう。てか動いたらミチミチと繊維が悲鳴を上げるのが聞こえる。無茶に動いたら即破けるなコレ。

一晩寝たらなぜかそんな状況。正直言って息苦しい。いくら運動や筋トレをしたとしてたった一日でこんなボディービルダー的ゴリマッチョになれるわけがない。

完全に危険なお薬でドーピングしてみましたとかそういうレベルだが……勿論俺はそんなもんを飲んだ記憶などまるでない。となると寝ている間に何かされたのか?

もしかするとこの部屋はオタクの住居に見せかけた秘密結社の人体実験部屋か何かなのかもしれない。ショッカー的な。……ないな、それはない。

 

結局起きただけじゃ何があったのか全く把握できなかったが、いつまでもこんな苦しい恰好ではいられない。とりあえず着替えようとすぐ傍にあったタンスを開けた。

ここで、何故かもう一つの問題にぶち当たる。

 

「――――ない」

 

いや、正確に言えば服はあった。だけど、これは……

 

「――――コスプレ衣装しかない、だと!?」

 

そう、そこにあったほぼ全ての服は所謂コスプレ衣装だった。

その他の服にしたって全てに魔法少女がプリントされてるビックリ仕様。アンダーシャツ数枚だけが無地と言うありさまだ。

もはやツッコミをいれないという選択肢など今の俺の頭には無い。たとえ、反応する人間など周りにいなくとも。

わけの分からない状況が続き俺の頭の許容量の限界を超え、完全にパニックに陥った。

 

「なんで普通の私服よりコスプレの方が数が多いんだ!?てかこんなの誰が着るんだ、俺か!?明らかにサイズが小さいぞ、罰ゲームか!そもそもこの体は何だ!?なんで突然こんなゴリマッチョになってんだ!!ここはどこだ!!そもそも状況が掴めない!!誰か説明しろォ!!」

 

あらためて口にするとツッコミどころが多すぎる!とにかく何か手掛かりになるような物でもないかと俺は周りにあった物を次々ひっくり返してみる。

タンスにしまってあった衣装を片っ端から引きずり出し、家具をひっくり返し、ポスターを引きはがし、フィギュアを次々と投げ捨て……ふと、視界に裏返ってる鏡が入った。

そういえば今の自分の姿をはっきりと見てなかった。ゴリマッチョになってるのは分かったが全体像は一体どうなってるんだろうか、気になるな。

まあこんな(ナリ)だ、当然顔も変わってるんだろうさ。半ばやけくそで鏡をひっくり返して覗き込む。

 

 

「―――――――――え?」

 

 

熱くなっていた頭が一瞬で冷えた。いや、パニクりまくった結果脳が考えることを放棄した。この体からして顔もどこかごつく変わってしまってるんだろうという予想は当然あった。

だが、ただ顔の一部が変わっていたり、普通の強面になっていただけならばここまでの驚愕を覚えなかったに違いない。

鏡に映った顔は今までの俺とは全く違う物になっていた。筋肉が付いたとかではなく、完全な別物。他人の顔だ。

そして、その顔に何故か見覚えがあった。知っているものより少し、なんとなく若い気もするけれど。

本来ならそんなことはありえない。ありえてはならない。

何故ならそれは――――

 

「ミルたん………だと…?」

 

創作上の人物なのだから。

 

 

 

『ハイスクールD×D』。

ライトノベルの一つで、俺は友人から薦められ少しだが読んだことがある。

人間の他に聖書に書かれている悪魔や天使、堕天使、さらには妖怪や他の神話の神様なんてのが登場し、どの種族も人間より遥かに強く設定されている。

各陣営で戦争だー、和平だー、テロリストだー、とぶっちゃけ現代における人間とほぼ同じような事をやってたと記憶している。規模とか内容は段違いだったけど。

「ミルたん」とはその作品の登場人物。

ただの人間のはずなのに関わらず異世界に自力で行くことが可能だったり、原作中でも強キャラである主人公のライバルにも接近する気配を悟られなかったりと、割と謎の多い存在だった。

何よりもそのキャラを特徴付けているのはその格好、そして語尾。

気弱な人間が一目見れば気絶するんじゃないかというほどの巨漢にもかかわらず、常に魔法少女のコスプレ衣装を纏い、なんと語尾に「にょ」をつける。

その異常とも言えるインパクトの強さや圧倒的存在感から、登場回数もそれほど多くなく、ストーリーの大筋には関わらないサブキャラなのにも関わらず、記憶にはっきりと存在するキャラクターだ。

もしかしたら下手なメインキャラより印象が強いかもしれない。

 

ありえない。信じられない。だが、身の回りの状況がそれが真実だと訴えてくる。

あのタンスいっぱいのコスプレ衣装や、部屋に散らかっている魔法少女グッズ。

そして、このやたらとガタイのいい体。

さらには今駒王学園なる学校が存在していることが手元のタウンマップで確認できた。俺のいた日本に、いや世界には駒王学園なんてものは存在しなかったハズ。

そもそも今こうしてこの体でいること自体が夢じゃないかと頭をドアにたたきつけてぶち破ってみたところ、全く痛くなかったとはいえ衝撃を感じた。

夢じゃないのだろう、多分。

 

―――つまり、今この時点で自分は今までと全く別の世界に生きていて、全く異なる存在となっていると認めざるを得ないという事か。

なぜ自分がこうなったのか、なぜ憑依先がミルたんだったのか、そもなぜ憑依したのか、それとも誰かに憑依させられたのか。

もしかしたら俺の元の体にミルたんが入ってて大変な事になってるんじゃないかなど、疑問は多々あるが答えなど全く出やしない。

 

その内俺は考えることを完全に放棄した。どうせ誰が答えを教えてくれるわけでもない。そもそも誰も答えなんぞ持ってないだろう。

だったら自由にさせてもらおうじゃあないかと開き直って目標を立てる事にした。 

突然とは言えこんな体になったんだ。前の俺じゃ決してできなかった事をやってみたい。となると、そうだ。やっぱり―――――

 

「――――――俺はこの筋肉ボディで、世界最強を目指す!!」

 

男なら誰もが一度は憧れる『世界最強』。せっかくだから目指してみようじゃあないか。この世界だけじゃない、この体だからこそ行ける異世界とやらを含めて最強になってやる!

 

 

 

 

 

―――――――これが(ミルたん)の始まり。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

あれから五年もの年月が流れた。え、流すな?原作がいつ始まるとか全然と言っていいほど知らなかったから仕方がない。

原作に関わればまず間違いなくこの世界最強の存在……『無限』や『夢幻』に会える。戦うことだってできるだろう。関わらないという選択肢は既に俺の中には無い。

 

 

この五年間は色々と異世界を回り修行した。この世界は裏側に足を突っ込まない限りは基本元の世界と変わらない。それこそ紛争地帯にでも行けば話は別だろうが、そうでもない限り実戦を経験する機会なんて無いに等しい。その点異世界には年中異能の力で世界規模でドンパチやってるところが多々ある。当然平和な世界だって多いわけだが…。

どうやって異世界へ行ったかは簡単、気合と根性だ。

異世界へ移動するとかどうすればいいか分からなかったから取り敢えず全力で叫んでみたらワープゾーンみたいなのが開いた。

つまり世界の境界線とは「気合と根性そして筋肉」の三つで構成されていると言って過言ではない!!

いや、実際はもっと複雑なんだろうが俺は気合で開けるから他は別にどうでもいい。

 

 

俺が最近訪れた世界と言えば、核の炎に包まれた世紀末な世界。

携帯獣を育てて戦わせる世界。

黄金やら銀やら青銅やらの鎧をきて暴れまわる小宇宙(コスモ)な世界。

科学と魔術が交差してる世界。

「僕と契約して魔法少女に(ry」な世界。

人々に忘れ去られたとかいう幻想の世界。

魔法使いの少年が教師をやってる世界。

呼吸法で太陽の力が練れたり霊体っぽいなにかが出てくるオラオラな世界。

人型ロボで一年戦争やってる世界。

スーパーな野菜人の世界。

飯を食っただけなのに老人の口から『うーまーいーぞー!』とか怪光線が口から飛び出る世界。

 

実際にはまだまだ逝った世界はたくさんある。字が違う?気にするな。このチートボディでも最初の頃はたまに死にかけることはあったんだ。超新星爆発が起きた時とか世界そのものが終わるような攻撃に巻き込まれたりしたときとか……まあ滅多に無かったけどな!

 

 

この世界巡り珍道中で俺は格段に強くなれた。とことん筋肉を鍛え上げた結果星すら砕くことができるようにもなった。…だけど、ここまで物理技を鍛えると唐突に魔法が使いたくなってきたんだ。

原作ミルたんも魔法の力が欲しいと言っていた。―――まあこの場合は本当の意味で魔法少女に成りたかっただけだろうけどな。

 

俺の場合、20km位離れてる距離の敵ならまだ音速を突破してソニックブームを飛ばすなりなんなりすればいいが、それ以上になると色々面倒だ。

特に宇宙空間からの攻撃は感知するまで撃ち落とすこともできない。それが惑星破壊規模の一撃ならもう終わりだ。死にはしないと思うけど……。

 

だから、極大の砲撃…かめ〇め波とか、スターなんたらブレイカーとかそういう魔法が欲しかった。遠距離の広域殲滅技とかな。

が、どうやら残念なことに俺は魔力や気といったものを体外に放出できない体質らしく、せいぜい身体能力(主に筋力)強化がいいところだ。

 

あからさまにガッカリした俺に赤い少女が、

 

「第二魔法の領域に手を出しといて何言ってるの」

 

とジト目で言ってきたのは記憶に新しい。どうやら光速を超えて物理で殴るしかないようです。

 

 

ちなみにコスプレ衣装やフィギュア、ポスターなんかはミルたんの友人にあげました。自分と同じようなゴリマッチョが魔法少女のフィギュアやポスター、DVDを抱えながら泣いて喜ぶのを見てちょっと引いたのはここだけの話。

 

 

現状報告はこんなもんだ。さて、五年もたってようやく原作が始まったらしい。悪魔召喚のビラ貰ったから間違いはないはずだ。

既に日は沈み、辺りは深い闇に包まれている。

夜。それはどの世界でも悪魔が動き出す時間帯…。

 

 

 

 

―――――さあ、始めようじゃないか。最強への挑戦(原作介入)を!

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

この俺、おっぱい大好き転生悪魔こと兵藤一誠の契約取りの仕事も今日で二回目。

仕事の度に自転車で突撃しないとならないとか自分でも情けないと思う。いや、納得できないけど理解はしたさ、何故か俺は赤子もビックリな程魔力が無い。だから転移魔法陣を使う事が出来ない。

俺も魔方陣でワープとかしたいんだよ!誰だって一度はしたいよな空間転移とか瞬間移動とか!?ロマンだろうが!!……と叫んだところでどうにかなるはずもないけどさ。

まあいいや、とりあえずは仕事に集中しよう。部長に叱られるのは怖い。

……怒ってる部長もかわいいからある意味ご褒美だけど。

 

前回は残念なことにいろいろ不備があったせいで契約できなかったんだよな。まあ、おっぱい談義やらドラグソボール談義やらで盛り上がったから結構楽しかったんだけどさ!

やっぱりおっぱいは最高だぜ!!

今回は絶対契約を取ってやる!

部長のため、俺の出世のため、おっぱいのため、そして夢のハーレムのために!!

 

 

 

 

……って、意気込んでたのがついさっきまでの話。

 

今俺は契約のために呼ばれたアパートのとある一室の手前で立ち止まっていた。

 

 

正直嫌な予感がする。俺の直感がここはヤバい、とにかくヤバいと告げている…!

具体的な事はさっぱり分かんないけど、ドアの前に立ってるだけで冷や汗が止まらねえ……!!

 

向こう側にはいったい何があるっていうんだよ…?

 

 

ここはいったん引き返して部長に連絡を………。

 

――――いや、逃げちゃダメだ。出世街道を行くには危険な道の一つや二つ、命を賭けて通り抜けなきゃいけないこともあるさ!

 

それに俺は契約を取りに来ただけだ、何も疾しいことはないはず!

どうか美人で胸がデカいお姉さんでありますように!!

 

 

覚悟を決め手を伸ばし、ドアに手をかけ――――る前にいきなり開いて倒れそうになった。

倒れ掛かったところで誰かに肩を支えられる。

あ、やべ。謝らないと……と顔を上げた瞬間、俺の体はまるで金縛りにあったかのように硬直し、意識も吹っ飛んだ。

 

 

「―――――お前が悪魔か?」

 

 

「イイエ、チガイマス」

 

 

 

これが美人のお姉さん?とんでもない。

それは、もはや恐怖の代名詞。鋼の様な筋肉を身に纏う、世紀末の覇者の様な姿。至る所に傷を作りがっしりと構える姿はまさに益荒男。

その上謎のオーラが彼の体を覆っていた。正直あのオーラに触れただけで俺蒸発するんじゃないか?ってくらいの力を感じる。

この御方が今回の依頼者で間違いない…んだよな。

 

湧き出る感情は、恐怖か畏怖か憧れか。

 

ただ、思考停止した俺は即答で間違えた回答をしてしまったらしい。

 

 

部長、今回の契約もちょっと無理そうです。というか、命も危ない。さらば、出世街道………さらば、男の夢………そしてさらば俺の命。

 

 

 

 

 

―――――――これが、俺と後に俺が師と仰ぐ最強の漢との出会いだった。

 

 

 

 

 

これも少し後の話。ミルたんと自称するあの人の本名が地味に気になった。本人に聞いても「俺はミルたんだ」としか答えてくれないから余計にだ。

 

だから、部長に頼んで戸籍を調べてもらったんだ。この駒王町に住んでるなら町そのものを管理している部長に調べられないわけがない。

次の日には教えてもらえることになった。

 

 

―――――『魅屡(ミル) (たん)』だったらしい。その戸籍明らかに偽造だろ!?

 

 




第一話、いかがでしたでしょうか。
どこかの文章が読みにくいなどの指摘はいつでも大歓迎です。
執筆初心者なので頑張って勉強していきます!
では今回はこの辺で。



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