憑依先がありえない!   作:石ノ心

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第十三話です!!


前回のあらすじ

リアス「滅びのバーストストリーム!!」
イッセー「筋肉!筋肉!!」
ライザー「ぬわーーーーーーーっ!」

大体こんな感じ。



第十三話 試合:終幕

この俺、イッセーこと兵藤一誠はいたって普通の人間だった。

一般の家系に生まれて、特別なにか才能に恵まれていたわけじゃない。

実は英雄の子孫でした、なんて大層な裏設定があったわけでもない。

堕天使に殺され悪魔に転生する最近まで、おっぱいを連呼し学校にエロ本やAVの類を持ち込み、挙句の果てには覗きや女子更衣室の侵入まで行いしばかれるといった青春を追い求める男子高校生として普通で健全な生活を送っていた。

 

 

そんなただの一般人だった俺がどこぞの漫画や小説、アニメのみたいな力を手に入れちまった。「強さ」を求めようにも力のつけ方なんて碌に分からず、手に入れた力もどう使えばいいのかまるで分からない。どうすればいいのかと迷い、自分ながらに答えを出した。

 

 

―――自分が強いと思うもの、信じるものを真似ればいいんだ。

 

 

俺には心の底から「強い」と確信できる存在が()()いた。

一人は当然ミルたん。人間なのに今まで出会ったどんな悪魔や堕天使と比べても圧倒的な強さを誇っている漢。俺の神器の中にいる世界最強の龍の一角に数えられるっていうドライグですらまるで歯が立たない、正真正銘の化け物。キング・オブ・ナゾセイブツ。コレが弱かったら周りの実力はみんなゴミ以下だ。

 

そしてもう一人。漫画『ドラグ・ソボール』の主人公、「空孫悟」。

漫画のキャラを出すのはおかしいのかもしれない。でも俺が憧れてるからってのもあるとはいえ、俺の中では間違いなく最強だ。コレは譲れない。

むしろ二次元肉弾戦最強筆頭とまともに戦えそうなミルたんって一体……。

 

 

片や二次元、片や謎生物。随分とアレな面々だけど、それぞれ目標にして模倣するには十分すぎる強さを持ってたんだ。

 

俺は模倣する上でとにかく考えた。まず俺じゃ模倣しきれず、不完全すぎるものになるのは間違いなかったからな。完全とはいかなくてもそれに近づけるにはどうすればいいのか…彼らが共通して持っているもので俺にないものは何なのかと。

 

 

気合?これは違う、理由はともかく今回は俺も十分気合に満ち溢れてる。第一それだけで強くなれたら誰も苦労しない。仮にそれだけで強くなれるなら俺達も地獄の特訓何ざ経験してなかっただろうし。

 

頭を使う事?間違いじゃないかもしれないけど、多分これでもない。ミルたんは「ある程度は考えて動いたりするけど、本当の戦いになったら勘に頼る事も多い」ってかなり感覚的だった。俺が求めてるのはそういう強さだ。

 

パワー…そう、パワーだ。俺にはパワーが足りないんだって確信した。

所有者の力を何度も倍加させ、いずれは神すら倒すことができるようになる赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)。その規格外な力をもってして、彼らの足元にも届かない。

倍加の元となる俺自身の力があまりに非力だったからだ。

 

 

ここで、さらに深く考える。何故今の俺の力は彼らとここまで開きがあるのか。俺が強くなるために何が足りていないのか。

 

 

考えて考えて考え抜いて――――――遂に、閃いた。

 

 

 

 

“何だ、筋肉が無いからじゃないか!!”

 

 

 

 

「でも、それに気付いたところで間に合わない。なにせ元々の期間が十日しかなかったし、気づいた時には残り四日だったからな。

そんな簡単にあそこまでマッチョマンになれるわけがねえ。

…けど、俺とドライグはこう考えた。『間に合わなくたって構わない、一時的にでも身体を強化できればいいんだ』ってな!」

 

 

「なるほどわからん。が、その訳の分からない無茶苦茶な思考の結果がその姿という事は分かった。筋肉の倍加……それがその姿の正体なわけだ」

 

 

ライザーの言う通り、今の俺の姿はさっきまでの姿とは大きく変わっている。

『ミルたんⅡ世』って言ったら伝わりやすいかもしれない。

 

 

俺が今まで上半身に纏っていた学生服は膨れ上がった筋肉に耐えきれず破れてボロ布に。ズボンは所々破け、パンパンになってる(ベルトは千切れてはじけ飛んだ)。

170cmだった身長は一気に20cmは大きくなっていて、左腕の赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)も筋肉により一回り大きくなった腕に合わせて巨大化。あと声もなんか少し太くなってる気がする。

自分では感じられないけど発している威圧感がミルたん程とは言わないまでも、今までの俺と比べれば天と地ほどの差があるに違いない。

 

 

これなら誰だってライザーみたくこの能力を筋肉の倍加だと思うだろうな。

さっきの話から繋がったら俺だってそう思う。

だけど、それだけじゃないんだぜ?

 

 

 

「惜しいけど間違いだ。これは筋肉だけじゃなく骨や内臓、神経組織その他諸々も細胞レベルで強化する能力。

―――――――その名も、『筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)』だ!」

 

 

 

色々と強化されてるハズなのに、名前に筋肉だけがしっかり入ってくるのは俺のこだわり。見た目的に問題は無いから大丈夫。ミルたんからも「シンプルでいい。筋肉が素晴らしい」って褒められたからな!!

…逆に言えば名前に「筋肉」が入ってれば何でもよかったのかもしれないけど。

 

 

『俺は筋肉以外のその他諸々の強化も含めて最強身体の赤龍帝(パーフェクトボディ・マッスルドラゴン)にすべきだと提案したんだが……』

 

 

「なんかラノベのタイトルみたいな名前だから却下した」

 

 

「誰もそんな事は聞いて『ライザー・フェニックスさまの「女王」、リタイヤ』なッ!!?」

 

 

どうでもいい俺とドライグの名前談義にツッコミを入れようとするライザーの声を、グレイフィアさんのアナウンスが遮る。

 

 

おお、朱乃さんが勝った!こんな短時間で相手の女王を倒すなんて…流石だ。

ミルたんのせいでドSに磨きがかかってたからなー。敵ながら同情するぜ。

 

 

「ユーベルーナが負けた…?チッ、これは余計に時間をかけていられなくなったな…!

おしゃべりは終わりだ、そろそろ片を付けさせてもらう!」

 

 

ライザーの叫びと共に、さっきからライザーの周りを舞っていた青白い炎の勢いが目に見えて強くなる。

そういえば赤い炎より青白い炎の方が高温とか習ったような気が……どれくらい高温だったかは思い出せないけど。

フェニックスの炎なんだから普通のガスバーナーなんかよりはよっぽど熱いんだろう。

それこそ生身で触れれば本当に焼け死んでしまうくらいには。

 

 

だけど、その程度で怯んでたら到底ミルたんには追いつけない。

ミルたんならこんな炎、間違いなく息を吹きかけただけで消し飛ばすしな!火事になっても大丈夫なように吹き消せるように肺活量鍛えたとか、鍛える理由からしておかしいだろ!!

 

俺はそんなミルたんに面と向かって師匠越え発言しちまったんだ。今は無理でもいつか俺も息だけでこんな炎消せるように…消せるように……なれる、のか?

 

 

いや、なれる。なってやる!

だからまず部長のために、コイツを全力でぶっ倒す!!

この『筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)』状態の時しか繰り出せない、ミルたん直伝体術で……!!

 

 

「望むところだ!見せてやるよ、これが魅屡嘆(ミルたん)流だ!!」

 

『Boost!!』

 

こっからが正念場だ!部長は絶対渡さねえ!!

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「―――イッセー君がアレを使ったみたいだね。ここからでも気配が読み取れるって……ホントにだんだんミルたん先生に似てきたなぁ。ツッコミ役が減ってボケ役が増えたりしたら僕もうやってられなくなるんだけど……」

 

最近小猫ちゃんも大分毒されてたし、イッセー君までそっちに回っちゃったら深刻な常識人不足になってしまう。……手遅れかな。

 

 

僕の相手は『戦車』と『騎士』の二人。相手二人は最初の一撃で大きく傷を負っていて動きが鈍い。超音速で動くミルたん先生を特訓の間ずっと見てきた僕にとってはスローモーションで動いてるようにしか見えない。

見切り、躱し、回り込み、斬る。特訓の成果か最小限の動きでコレを繰り返し、今のところほぼ圧倒できていると言っていい。

 

そんな状況で、イッセー君の気配が恐ろしく膨れ上がったのを感じ一度剣を振るう腕を止める。

相手二人もそれに気付いたのか動きを止めた。

 

 

「これは……グレモリー家の『兵士』か?まるで気配が違うぞ」

 

「とっておきの隠し玉、というわけか」

 

 

普段のスケベなイッセー君からは大した脅威は感じられない。ある程度鍛えられたおかげで確かに「素人より遥かにマシ」程度にはなったけど、赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)がなければそこまで大した存在じゃない、というのがライザーさま側の認識だったんだろう。

 

 

その認識ははっきり言って大間違い。この十日間で僕たちの中で一番化け物(ミルたん)に近づいたのがイッセー君だ。

とりわけあの力は正真正銘の規格外。今や彼はミルたん先生によって強化された僕たちグレモリー眷属の中でも最終兵器(リーサルウェポン)となる程に成長したんだ。

 

 

 

「アレはイッセー君の隠し玉…というか切り札だよ。神器の力を最大限に引き出すことのできる新しい力さ」

 

「最大限に引き出すだと?」

 

 

まあ、当然いきなりあんな変貌を遂げたら誰だって聞きたくなるよね。

僕も一回凄くテキトーで投げやりな説明を受けただけなんだけど……僕なりの解釈で説明しようか。

 

 

「まず赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)本来の能力は十秒毎に力を倍にするって事は知ってるよね。この能力は神滅具(ロンギヌス)だけあって倍加に上限がないなんていう無茶苦茶な仕様なんだけど、唯一弱点があるんだ」

 

神滅具(ロンギヌス)に、弱点……?」

 

「過ぎた力は身を滅ぼすって事さ。いくら神滅具(ロンギヌス)の力でも、所有者の身体の限界を超える倍加は出来ない。仮にイッセー君の元々の力を1、彼の体が倍加の力に耐えられる限界が128だとする。

この場合だと八回以上倍加してしまうとバースト……彼の体が倍加する力に耐えられなくなるんだ。ちょうど、風船に限界以上の空気を送り込むと破裂して萎んでしまうみたいにね」

 

破裂した風船は当然空気を取り入れる事も出来ず、宙に浮かぶことは無い。バーストしてしまう事は即ち戦闘不能になる事と同義。

 

ここまではある程度神器を調べれば誰でもわかる話だね。神滅具(ロンギヌス)の中でも三大勢力と衝突した二天龍の魂を宿している二つの神器は、あまりにも有名すぎるから。多分どこの陣営だろうとその程度の情報なら簡単に手に入る。

 

本番はここから。今イッセー君が使っている、歴代赤龍帝の誰とも違った進化の形。彼の中の赤龍帝ドライグ曰く、「極端な発想(マッスル)が生み出した怪物」。

 

 

「『筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)』。アレは力を『倍加』するのではなく、ためた倍加の力で肉体そのものを『超強化』する能力なんだ。

元々の力が上がるだけじゃなく、身体の限界値まで引き上げることすらできる。

 

さっきの風船の例えの場合、『筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)』で強化されるのは中身である空気(ちから)じゃなくて外側の風船(からだ)の方。さらに多くの空気が入るようにより大きく、より強靭に強化する。

 

あの能力を使う前に128倍まで力をためておくと、使ってからのイッセー君の元々の力は1から128に。耐えられる限界は128の二乗16384に……いや、それ以上に跳ね上がるって寸法さ。代償として能力が解けた後で死ぬほど苦しい筋肉痛が襲ってくるらしいけどね」

 

 

僕の説明で納得したらしく、二人ともなるほどと頷く。その直後、見ていて面白くなるくらい二人同時に硬直した。

 

理解したらしいね、この能力がどれほど恐ろしいものなのか。僕はさっき説明の前に『筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)』は「神器の力を最大限に引き出すことができる」と言った。

赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)―――神滅具(ロンギヌス)の力を引き出すということ。それは、つまり。

 

 

「イッセー君は筋肉痛なんていうバカげたデメリット一つで、十分間だけとはいえ神の領域に足を踏み入れる事さえ可能なんだ」

 

 

『神殺しの力』を手に入れるということ。

 

 

イッセー君の倍加の限界は本来、決して七回なんかじゃない。128と言う数字はあくまでたとえだ。今回のゲームでは最初の一撃のため大きく力を倍加させそのまま譲渡、体に相当な負担をかけているからそれ位までしか倍加できてないかもしれないけど……もし最初から限界まで倍加し、全力の状態で『筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)』を使っていたら?

 

―――十分間という制限付きだけど、かつての二天龍と同格の存在が現れる事になったに違いない。尤も、『筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)』を使えば倍加した力はリセットされてしまうらしいから、最初の内数分間は『普通の怪物』程度の実力だそうだけど。

 

 

神を滅ぼす程の力を手に入れられるからこそ、数多あるの神器の内、強力なものから数え十三個は神滅具(ロンギヌス)と呼ばれてる。

だけど実際にそれを宿した存在が本当に神を越える事が出来た実例はあまりに少ない。いや、どちらかと言えば皆無にも等しい。

今でこそ転生悪魔という例外が存在するけれど、本来神器を宿すことができるのは人間のみ。その人間の身体や力は悪魔や天使、堕天使と比べるとあまりに脆弱だ。

いくら神滅具(ロンギヌス)を得たとして、余程特殊な例でない限り使いこなすことはとても難しい。

 

だがそんな中イレギュラーが今、この場にいる。転生悪魔になる事で人間より遥かに強靭な体を手に入れ、生み出した能力により神を越える事すら可能とした化け物の『卵』が。

しかもそれはまだまだ発展途上の下級悪魔。成長してその殻を突き破った時どうなるのかなんて、誰にも想像できはしない。さすがあの赤龍帝が怪物と称しただけのことはあるね。

 

 

 

「リアス・グレモリーはとんでもない眷属を手に入れたようだな…」

 

「それに、いい教師もいるしね。色々規格外だけど。心の底から自重して欲しい程化け物だけど」

 

 

そうか、とイザベラが拳を、カーラマインが炎を纏った剣を構える。

 

イッセー君についての疑問は聞き終わったから戦闘を再開しようって事かな。

 

 

「さて、向こうの決着がつく前にこちらも終わらせるとしよう。中途半端は好きじゃあないんだ」

 

「同じくだ。勝たせてもらうぞ…!!」

 

とても傷ついているようには思えない気迫を僕にぶつける二人。

 

同時、ある二つの気配を感じて思わず頬が緩む。

 

「僕も負けるわけにはいかなくてね。ここからは三対二だ」

 

「…?何を言ってrグハッ!?」

 

「イザベラッ!?……ガァアアア!!」

 

一対二のままだろうという疑問を僕に投げかけようとしたイザベラは、言い切る前に見えない何かに殴られ横に吹き飛ばされた。

それを心配したカーラマインは天から降り注いだ雷撃に身を焼かれる。

 

見えない打撃と強烈な雷撃。当然それを放ったのは―――

 

「……『戦車』対『戦車』、『騎士』対『騎士』で一対一じゃないですか?」

 

「あらあら、それだと『女王』の私の出番はないですわね」

 

「「ッ!?」」

 

 

小猫ちゃんと朱乃さんだ。

 

 

「あはは…いいじゃないですか、僕も出番は欲しいですし。それにしても朱乃さんはともかく、小猫ちゃんは随分と早かったね?」

 

「…森まで吹き飛ばして、罠にかけただけでしたから」

 

あっさりと言ってのけるが、本来ならそんな簡単な事じゃない。

小猫ちゃんの相手は『僧侶』のレイヴェル・フェニックス……ライザーさまの妹だ。小猫ちゃんみたいな近接格闘型は基本的にフェニックスの纏う炎とは相性が悪い。殴るために近づくだけでどうしてもダメージを負ってしまうから。

 

 

…だけど、それは特訓前までの話。拳圧が飛ばせるようになった小猫ちゃんは近づく必要なんてなく遠距離から殴ればいいわけで……ミルたん先生の特訓によりさらに昇華されたそれはマシンガンの如く連撃する事すら可能になっている。

只管打ち続け、フェニックスの炎を打ち消し、そのまま殴り飛ばしたんだろう。

 

――――ほら、やっぱり小猫ちゃんもミルたん先生に毒されてるよ。

 

「バカな、あの子もフェニックスだぞ!?」

 

「それにまだ撃破されたとアナウンスされてもいない!」

 

「…言いましたよね、罠にかけただけって」

 

そう、ゲーム開始直後に部長の作戦で僕らは本陣近くにあった森に罠を仕掛けている。

第二段階での小猫ちゃんの作戦の役割は、分断させた敵…相手の『王』と同じフェニックスである『僧侶』をそこに放り込むことだった。

 

 

「だが、ただの罠ならいずれ抜け出してこちらへ向かってくるだろう。それまでに我々二人を倒すつもりか」

 

「…いえ、あの人はもうこのゲームからリタイヤです」

 

「何だと?」

 

「…今頃幻術と霧に惑わされて、グルグルと同じところを回ってるはずですから」

 

 

これは朱乃さんが仕掛けた罠。霧により視界を悪くした上で幻術を使っていて、森を抜けだそうとすると方向感覚を狂され、木で出来た迷路で彷徨う事になる。

森をすっぽり覆うように霧をかけ、霧の中全てが幻術の範囲内だ。普通の相手ならこれで永久に森からは脱出不可能。ゲーム脱落だ。

 

が、相手はフェニックス。当然その程度で「罠にかけた」なんて油断はできない。だから、色々と手は打ってある。

 

 

「さっきも言ったがあの子はフェニックスだ。風を使えば霧は晴らせるし、炎を使えば森は燃やせる。その程度では一瞬の時間稼ぎにしかならない。普通の悪魔と同じにするなよ?」

 

「うふふ、残念ながらそのどちらも対策済みですわ」

 

「仮に霧が晴れたり空を飛んだりした場合、その瞬間小猫ちゃんが仕掛けた罠……イッセー君作、『洋服破壊罠(ドレスブレイク・トラップ)』が発動するんだ。

これは範囲内の女性の服を完全崩壊させる…イッセー君らしいスケベな魔力の使い方だよね。でもそうなったらまず森の外へは出てこられないだろう?

で、森を燃やそうとした場合はコレ」

 

 

僕は空いている左手に刀身が氷でできた剣を創る。

 

「僕の神器は『魔剣創造(ソード・バース)』…色々な魔剣を任意に創りだせるのさ。

今創ったこの剣は炎凍剣(フレイム・デリート)。この剣はどんな炎でも打ち消せる力を持っていてね。コレを森に大量に設置しておいたんだ」

 

「炎は広がらずに全部祐斗先輩の剣が消火します」

 

 

部長が言うにはこの作戦の標的は正直誰でもよかったらしいけどね。ライザーさまの眷属は全員女性。女性である以上『洋服破壊罠(ドレスブレイク・トラップ)』を発動させてしまえば誰でもリタイアだったから。

 

この『洋服破壊罠(ドレスブレイク・トラップ)』を見てたら「ああ、イッセー君はどこまで行ってもイッセー君なんだなあ」って安心できたんだけど何故だろう。最近イッセー君がミルたん先生と「筋肉、筋肉!」としか言ってないのを見たからかな。

 

 

 

「なるほど…こちらの事をよく研究している。そちらの『王』は怖いな」

 

「…これも全部ミルたん先生の特訓のせいです」

 

「そこは「先生の指導の御陰」ではないのか…?」

 

「うん、とても感謝はしてるんだけどね。それ以上に常識を返してくださいって思いの方が強いから、僕ら」

 

「私は色々と雷の扱い方をご教授していただいたので満足していますわ。今回もそれで倒せましたし」

 

 

ああ、アレか。コントロールに集中して自分が隙だらけになる大きなデメリットを抱える代わりに、雷がどんな距離や場所、どんな状況でも敵を追尾する鬼畜仕様に変化するっていう…。雷が相手を追尾するとか速すぎてとてもじゃないけど避けられないんですけど。何教えたんですかミルたん先生……。

 

 

「アレ、そういえば今回使う予定の技は魔力コントロールが最小限でいいから楽だとか言ってましたよね。どんな倒し方を?」

 

「魔力を変化させた雷をいろんな場所に留めておいて、目標に魔力で作った簡易避雷針をセット。あとは一斉に発射すれば、勝手に上手に焼けましたわ。動かなくなったので後五回ほど雷を落としてからこちらに引きずってこようと思ったのですが……先に転送されてしまって」

 

残念です、とのたまう朱乃さん。

動かなくなった相手に追撃した上で引きずるって……なんというか、怖いッ!

それだけ雷に直撃したら相手の女王もう炭化してたんじゃないですか!?

ヤバい、この人までミルたんの影響を……いや、この人の場合は元からこうかな。

 

 

「…多分それじゃこんがり肉じゃなくてコゲ肉になってます……残念」

 

「いやいやいや、いくらなんでも食べられないからね小猫ちゃん!!?」

 

「……頑張れば何でも食べられるという事を特訓で覚えました。ダークリーチャー美味しかったです」

 

「アレ食べちゃったの!?」

 

 

瘴気ダダ漏れだったあの肉を!?とてもじゃないけど美味しかったなんて信じられない…見た目からしてヤバかったのに。リヴァイアサンのステーキとバハムートの唐揚げなんかは凄く美味しかったけど(料理されても存在感が凄かった)。逆にアザトース焼き(たこ焼き風)やアザトースリング(イカリング風)は食べるどころか箸でつかんだだけで発狂しそうになったっけ……。

 

今更ながらなんてものを食べてたんだろう、僕ら。毎日食べてる食事がこんなに素晴らしいものだったなんて、みたいなことを言う日が来るとは思わなかったよ…。こんな体験どんなお偉方でもしてないんじゃないかな。全ッ然嬉しくないけどね!!

 

 

 

「真に恐ろしいのはそちらの師だという事はよく分かった……いやホントに、十分すぎる程分かった。もういい。頭が痛くなってきた」

 

「僕らが体験した地獄の千分の一も分かってないと思うんだけど」

 

「…千分の一も分からせないのに相手にあそこまで頭痛を引き起こさせるミルたん先生がおかしいだけです」

 

「あははは、それもそうだ。――――さて、もうそろそろいいかな。雑談はホントにここまでにしよう、終わらなくなるから」

 

 

僕は再び右手の剣を中段に構えた。小猫ちゃんは拳を振り上げ、朱乃さんは後ろに下がり援護の姿勢を取る。

 

 

「さっきも言ったけど三対二……悪いけど、速攻で終わらせる。万が一、億が一でもイッセー君が負けたら僕らで代わりを務めなきゃいけないからね!!」

 

 

僕が言い終わると同時、僕らは敵に向かって駆け出した。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

『ライザー・フェニックスさまの「戦車」一名、「騎士」一名、リタイヤ』

 

 

「流石!!皆仕事が早いな!!」

 

「バカなッ、レイヴェルは何をやっている!」

 

 

俺とライザーが激しくぶつかり合う最中、聞こえてくるアナウンス。

たぶん金髪縦ロールお嬢様……相手の『僧侶』は小猫ちゃんが森の罠にかけて実質リタイヤなハズ。つまりあと残っているのは『(ライザー)』だけ。

 

 

 

「どうした?大分再生する速度が落ちてるんじゃないか」

 

「ハッ、言ってろ。お前だって全身俺の炎の熱で焼けただれてるじゃないか……それより!もっと真面目に戦いやがれ!!」

 

 

なんだなんだ、ライザーのヤツいきなりキレたぞ?いや、誰がどう見ても真面目だろうが。

周り見てみろよ。まるでミルたんが作ったような出来のクレーターが量産されていて、どこもかしこも炭化して真っ黒だ。死闘を演じていた証だろ。

 

 

「俺のどこが真面目じゃないって言うんだ、魅屡嘆(ミルたん)流の技いくつか見せただろ?魅屡嘆(ミルたん)流奥義其の参『M・A(ミルたんアタック)』改め『D・T・A(ドラゴンテイルアタック)』、魅屡嘆(ミルたん)流奥義其の伍『M・M(ミルたんメテオ)』改め『D・M(ドラゴンメテオ)』、俺流必殺技ドラゴンレーザー!!お前全部直撃して再生してたじゃねーか」

 

「前から順にただのケツアタック、ヒップドロップ、目からビームだろうが!それに最後のは魅屡嘆(ミルたん)流とかいうのですらないし、そも体術でも何でもないだろう!?それに足と尻しか使ってないのに体術も糞もねえよ!その筋肉は飾りか!!!」

 

「失礼だな!威力は申し分ねえし、他の技にはしっかり腕を使った攻撃もある!それに少なくとも足と尻使ってる分マシだろうが!バ〇キンマンなんかア〇パンマン倒すために毎日筋トレしてるくせにいざ戦うとなると全部メカなんだぞ!?」

 

「知るか!!!!!」

 

 

下らない言い争いをしてるけど、その間も俺達の動きは止まらない。

 

戦況としては、只管攻め続ける俺と耐え続けるライザーってとこだ。

俺はライザーを倒し続けて精神を折らなきゃいけないから攻め続ける。対してライザーは自分から攻めても当たらないと割り切ったのか、体に纏う炎で殴りつける俺を着々と傷つけ、俺に倒されないように耐え続けてる。

 

 

 

「埒が明かないな!」

 

「同感だくそったれ!」

 

 

予想以上によく耐えやがる……!!最初の一撃に加えて、今の山をも崩す俺の攻撃を何度も受けてるのにそれでも倒れない。百回は顔面吹っ飛ばしたり潰したりしたってのに、フェニックスの不死は本当に厄介だな!そのせいで膠着状態だ。俺も全身大火傷で体中痛え…とくに尻が酷い。

音速突破ケツアタックD・T・A(ドラゴンテイルアタック)と超高度からの必中ヒップドロップD・M(ドラゴンメテオ)を乱発したからだな、間違いない。

 

力の倍加が最大限までいけば押し切って勝てるかもしれないけど、そこまでまだ時間がかかっちまう。

 

 

…実はこの『筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)』の状態にはまだ俺とミルたん、そして今戦っているライザー以外知らないデメリットがもう一つあるんだ。

それは体の強化に能力の処理を割いている弊害か、一回の力の倍加にかかる時間が長くなってしまう事。正確に言うなら一分に一回。つまり、いくら上限が無くても今の十分しか持たねえ俺じゃ十回倍加したら終わりってわけだ。

それでも相当な力は出るけど、如何せん時間がかかり過ぎるのが困り者。こういう火力が欲しい場合だと特にそこを意識してしまう。無い物ねだりってわかってるのにな…。

 

 

 

 

だが、一つ。たった一つだけ、この膠着状態を打破して俺が勝利する方法がある。

この一分に一回しか倍加できないというデメリットを消すことのできる『禁じられた忌々しい外法』が。

 

禁手(バランス・ブレイク)』。神器の能力を極限まで開放する神器の進化とも呼べる力だ。赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)禁手化(バランス・ブレイカー)は『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』っていう赤い鎧らしい。発動した瞬間から一気に力を倍加させることができる、まさしく赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の進化型と呼ぶにふさわしい能力を持ってると、ドライグに教えてもらった。

 

 

ドライグが言うには「実力を見れば既にその域に達している」らしいけど、残念なことに俺はまだその力を発現できていない。俺の実力が足りないわけでもなければ筋肉に対する渇望が足りないとかそういうわけでもないらしい。だからどうすれば『禁手(バランス・ブレイク)』できるようになるかも分からない。

 

 

 

―――――正規の方法では、だけどな。

 

 

 

『いいのか、相棒?一生元の肉体には戻らないぞ?それにこの状態じゃわずか十秒しかもたない』

 

いいんだよ。十秒ありゃ必殺の一撃ブチ込むのには十分だ。俺の()()くれてやらあ!!

 

 

 

強大な力にはそれに見合った対価が必要となる。『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』だけならともかく、『筋肉質な赤龍帝《マッスル・ブースター》』と掛け合わせてそれを発動させるには、片腕では到底足りないんだと。両腕差し出してようやく十秒……文句の一つも言いたくなるけど、俺の修行不足が原因って言われたらな。

 

 

 

―――いや待て、あの地獄だけじゃ足りないってどんだけだよ!!

 

 

『十日等と言う期間は、悪魔の永い生においては微々たるものにすぎん。何十年も繰り返すことに意味がある……俺としてはこの後もしばらくあれを繰り返すであろう相棒たちには同情するがな!!』

 

畜生、他人ごとだと思いやがって!!……いや、ミルたんは何故か俺の精神世界に来れるんだし、ここはドライグも巻き込むべきだろ。俺からミルたんに提案しといてやるぜ!誠心誠意感謝しろよ!!

 

 

『おいバカヤメロ!』

 

あーあーライザーの出してる爆炎がうるさくて何言ってるかわからねーなー。

 

『……(俺が巻き込まれる=特訓の難易度も上がるという事になぜ気づかないんだ…あ、バカだからか)』

 

とにかく今はライザーをぶっ飛ばす!

 

 

「おいライザー!!」

 

「……なんだ赤龍帝。負けを認める気にでもなったか」

 

「何言ってんだ、誰がどう見ても俺のが優勢だ!!―――今から俺はありったけの力を込めた一撃をお前に撃ちこむ。それを耐えられたらお前の勝ち、お前がぶっ倒れたら俺の勝ちだ。シンプルでいいだろ?」

 

 

倒し切れなかったら俺は間違いなく力尽きちまうからな。そのままリタイヤだろう。

アーシアに治してもらったとして、俺自身の体力が戻るのはいつになるやら…。

逆に倒せばゲーム自体が俺達の勝ちで終了する。

ぜってー負けらんねえ!!

 

 

「ただ攻撃を受けろとでも言うのか?やっぱりバカだろうお前」

 

「いや、もちろん迎撃位しても構わねえ。できるならの話だけどな!」

 

そりゃ俺だって試合で一方的に殴らせろなんて理不尽なことは言わねえよ。そういう神器持ってんならそれでもいいのかもしれないけど。

 

「大層な自信じゃないか。お前が化け物みたいな力を持っているのは身を以って理解した。だが時間をかけて力を倍加させていくならともかく、今の力で俺を一撃で倒せるとでも思ってるのか?笑わせるな!!」

 

『…確かにお前のいう事は真理だ。この状態でも体力を消耗している今の相棒ままじゃフェニックスを倒すのは難しい。―――だがな、あまりドラゴンを嘗めるなよ!!!』

 

「今から俺は一気に力を倍加する。そして俺が使う技は魅屡嘆(ミルたん)流対人奥義の中で最も危険な技だ!!ミルたん曰く『究極の禁忌』。魔法少女ミルたん曰く『死の物理魔法』。仲間曰く『一撃滅殺』。そう簡単に耐えられると思うなよ」

 

「なに!?」

 

 

やるぜ、ドライグ!

 

『応ッ!!』

 

 

俺の両腕が徐々に全く別の物へと塗り替えられていくのが分かる。

体の底から不思議と力が湧きあがる……これなら、いけるッ!!

 

 

「うおぉぉぉぉぉッッ!!オーバーブーストォォッ!!!」

 

Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) over(オーバー) muscle(マッスル) booster(ブースター)!!!!』

 

 

 

籠手の宝玉から溢れた赤く輝く膨大な光が、フィールドを明るく照らし出す。強靭な筋肉を纏った俺の体を、さらに真紅のオーラが包み込む。

 

 

光が収まり俺の体は赤い龍の鎧で武装されて………ない?あり?とんでもない力は湧き上がって来るのに、両腕がドラゴンになったこと以外さっきまでと見た目全く変わってねえぞ!なんでだ!!?

 

 

『…ハハハハハッ!コレは凄い、凄いぞ相棒!!想像以上だッ!!』

 

笑ってないで説明しろ!!どういう事だよ!

 

『いやなに、筋肉質な赤龍帝(マッスル・ブースター)と混ざったせいか面白い進化をしたってだけだ。安心しろ、今の相棒に鎧なんて必要ない。お前の筋肉が鎧を吸収しやがった!!』

 

 

 

…………パードゥン?

 

 

 

『お前の体がドラゴンそのものの強度と力を得たって事だよ。『赤龍帝の筋肉鎧(ブーステッドギア・マッスルメイル)』ってところか……ホントどうなってるんだお前の筋肉』

 

そんなもん俺が知りてえよ!!

 

 

(テン)

 

 

…おっと、カウント開始か。

 

疑問は後だ。今は目の前の敵を倒すことだけを考えよう。

 

 

「な、なんだ。何なんだその力は!!」

 

俺が一歩踏み出す度、ライザーは一歩ずつ下がっていく。

俺の身体からにじみ出てる気迫から力の総量を察したのか、不死であるはずのフェニックスが怯えている。

 

 

(ナイン)

 

 

「木場が言っていた。視野を広げて相手だけじゃなく周囲も見ろと」

 

周囲を見渡す。ここは最初の一撃で吹き飛んだ本校舎跡地。更地になっていて罠はなく、敵は皆が倒してくれた。皆は俺たちの戦いを後ろの方で見守ってくれてる。当然俺たちの攻撃の範囲外で、皆に危害が及ぶようなことは絶対に無い。問題なしだ。

 

 

(エイト)

 

 

「アーシアが言っていた。悪魔は十字架と聖水が苦手だって。俺の弱点でもあるけどドラゴンの肉体になった腕なら触れても平気だ。でも、純粋な悪魔のお前はそうもいかないだろ?」

 

持ち込んだ聖水を右拳にふりかけ、十字架をしっかりと握った。レーティングゲームに使用アイテムとして十字架と聖水を持ち込むことは別に禁止されてない。そもそもそれらを忌避する俺達悪魔がこれを使う、なんて思ってなかったからだろうな。だから今回はアーシアが持ってた中でも最高の純度の物を譲ってもらった。元シスターのアーシアにとって大切なもののハズなのに快諾してくれたことはいくら感謝しても足りない。

 

 

(セブン)

 

 

「朱乃さんが言っていた。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集める。意識を集中させて、魔力の波動を感じればいいと」

 

禁手(バランス・ブレイク)』したからか、今までぼんやりとしか分からなかった魔力の波動って言うのもしっかり感じられた。

体中のオーラ全てを右拳へと集中させ、さらにドラゴンの力で聖水や十字架の聖なる力を魔力ごと倍加する。今の俺の拳は、神をも殺せる。

 

 

(シックス)

 

 

「小猫ちゃんが言っていた。打撃は体の中心線を狙い、的確かつ抉り込むように打つんだと」

 

それを極めた結果小猫ちゃんはミルたんの拳圧飛ばしも習得できたんだろう。それがどれ程の威力を持っていたか、俺は身を以って知っている。それは体の芯を揺さぶる、相手の意識を奪う一撃となる。

 

 

(ファイブ)

 

 

「そして、ミルたんが言っていた!恥と誇り、情けを捨てろと!(あと筋肉をつけろと)」

 

それが数々のイロモノ技を使う魅屡嘆(ミルたん)流の条件だから。その修行の過程で嫌でも捨てなければいけなくなるけどな。しかも今回使うのは禁忌とされる技だ。

通常の魅屡嘆(ミルたん)流の技には必ず(ミルたん)の字が入り、その後に続くのもイニシャル表記だ。そのせいでまるで違う技なのにイニシャル上は名前が同じ(M・M(ミルたんメテオ)M・M(ミルたんマグナム)など)になったりしている。紛らわしくて仕方ない。―――けど、その中に数個だけ(ミルたん)の字が入らない、イニシャルでもない名を持つ技がある。完全に情けを捨てて放たれるそれらはあのミルたんをして冷や汗ものらしく、裏奥義として認定されている。

 

圧倒的なパワーと速度で放たれる神をも殺す魅屡嘆(ミルたん)流裏奥義。たかがフェニックス風情が、防げる道理なんてありはしない!

 

 

(フォー)

 

 

「ま、まて!!この婚約は悪魔の未来のために必要で大切なものなんだぞ!?」

 

ライザーが訴えてくる。…けど、悪魔の未来とか俺には関係ねぇ!!そんなことよりよっぽど部長の方が大切だ!!

 

 

(スリー)

 

 

「知らねぇよ、んなもん!!部長は家の事なんて関係ない恋愛をするのが自分の小さな夢って言ってたんだ。俺はそれを叶えたい!!てめぇをぶっ飛ばす理由なんてそれで十分だッッ!!!!」

 

拳を固く、これ以上なく固く握る。飛び出すために、体を前へ傾ける。―――――行くぜ。

 

 

(ツー)

 

 

魅屡嘆(ミルたん)流裏奥義、其の壱――――――――――」

 

「ちくしょうが!負けてたまるかぁぁぁァッ!!!」

 

俺の構えが完成すると同時、背中から炎の翼を広げ、自分自身が火の鳥と化したライザーが突っ込んできた。だけど、遅い。

 

特訓で何度も走馬灯を見た時の様に、周りの時間だけがゆっくりと流れていく様な、そんな錯覚。戦闘の余波で舞う砂や煙も、目の前から青い炎の鳥となり迫ってくるライザーも、俺のずっと後ろで見守ってくれてる仲間たちも。全ての動きが手に取るようにわかる。

極限まで集中するってのはこんな感じのことを言うんだろうな。ミルたんが俺に率先して身につけさせようとした境地が、今ここに在った。

 

 

全てがスローモーションで流れる中、その意識を更にライザーのみに集中する……!

 

 

 

――――――視えた!

 

 

(ワン)

 

 

軸足となる左足から思い切り前に踏みだして上半身を軽く捻り、ためを作る。俺の全力をため込んだ右拳は腰の横に。直後、右足で踏み込みバネをはじくように体を回転させ、勢いを全く殺さずに衝撃をただ一点へと収束させる―――――!

 

これが、筋力と技術をふんだんに使った情け容赦ない非道の一撃……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――『再起不能(エターナル・インポテンツ・ショット)』ォ!!!」

 

「」

 

 

……メキッ、と何かがへし折れる音がした。メキャッ、と何かが潰れた音がした。ゴキィッ、と骨が砕ける音がした。ジュワッ、と全てが聖なる力で焼かれる音がした。

 

 

 

―――そして、ライザーは音もなく灰になった。

 

 

 

 

「俺の、俺たちの勝ちだ……!!」

 

 

Reset(リセット)

 

体が一気に縮む。脱力感に耐えきれず、地面へと倒れ込んだ。

 

『ラ、ライザー・フェニックスさま、リタイヤ……よってこのゲーム、リアス・グレモリーさまの勝利です』

 

 

グレイフィアさんのどこか引いたようなゲーム終了宣言を聞き、皆が笑顔でこっちに走り寄ってくるのを見て……俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「やはり、君の言った通りになったね。しかも終わってみれば脱落者ゼロのパーフェクトゲーム……大番狂わせにも程がある。いっその事悪魔全員育ててもらえないかな?」

 

「冗談はよせよ、あいつらで手一杯だ。――――で、この試合を見てグレモリー家とフェニックス家がどう思ったのか……総意を聞かせてもらおうか」

 

「ふむ。それは魔王の私から言った方がいいのかな。それとも現当主たちから?」

 

「どっちでも一緒だろうよ」

 

「ハハハ、違いない。じゃあ言わせてもらおうかな。私たちの総意は―――――」

 

 

 

 

――――――これはひどい。

 

 




アーシア「……出番が無いです(´;ω;`)」

…ま、まあこの後大火傷した上、死ぬほど痛い筋肉痛に襲われるイッセーを治療するんですけどね!!描写はカット。エロくないよ?


次からの予定としましては、一話か二話か幕間や番外編を挟んでから三巻『月光校庭のエクスカリバー』に移ると思います。

さあ、かつてミルたんにぶっ飛ばされたフリード君再登場!!どうなることやら(プロット皆無)

あと暇を見て最初の方の話をストーリーの大筋はそのままにいくらか書き換えようかなー、とか思ってます。後で見たら「なにこれ恥ずかしい」ってなることよくありますよね。え?俺だけ?そうですか…。
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