憑依先がありえない!   作:石ノ心

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 お久しぶりです!!

 夏休みのほうが忙しいってどういうことなの……

 まあとりあえず。第七話、どうぞ。

 


第七話 幕間:交代

  最近ありえない事が身の回りで起きすぎている気がする今日この頃。悪魔や天使、神様なんてのが実在して自分がその悪魔になり、全校生徒憧れの部長の眷属になったり。

俺に何かスゲエ神器(ちから)があったり。

ただの人間なのに世界滅ぼせそうな男と契約して、協力してもらって可愛い女の子助けたり。そして今日、まさか魔法少女がトラウマになる日が来るとは思わなかったぜ…。 

 

 未だに慣れない俺達の常識を粉みじんにしていく体育の時間。この授業だけで新駒王学園七不思議が成立する程非常識だ。

 

新駒王学園七不思議、通称『Mシリーズ』。七不思議って言っても別にオカルトチックな現象を並べてるわけじゃない。…いやまあ色々ありえない事並べてるって意味では合ってるけどな。それにとっくに七つなんて超えて二桁に突入してるし。そのうち百八式とか言いそうな勢いで増えてるし。

 

 話を戻す。後世に残っていくであろうこの不思議の数々には、その名に必ず『M』の字が入る。例をあげるなら、『増殖するM』『輝くM』『降り注ぐM』『忍び寄るM』等…名前を聞いただけならまず意味不明な状態だ。Mはマッチョやマッスル、もしくは魔王なんて呼ばれる様になるだろう(マゾとかいれたら色々やばいから自重)。けど、俺達は知っている。このMは固有名詞だと。たった一人の男の名を示しているのだと。

 

 

 そう。()なんだ。この不思議(りふじん)を振りまいてるのは男なんだ。今俺達の目の前で相変わらずの非常識っぷりを披露してるのも男のハズなんだ。世紀末を生き抜いてきたかのような威圧感を持つ男。その名も、我らが(グレート)(ティーチャー)(ミルたん)

 

 だけど今のミルたんはどうだ。鍛えられ鋼の様に固く厚いその身体に纏うは、今にも引きちぎれそうな『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』に出てくる魔法少女の衣装(コスプレ)。勿論手には無駄に完成度の高い魔法のステッキが。いつもは切りそろえられてたハズの髪は何故か伸びていてツインテールに。頭には猫耳まで着用していて、語尾に「にょ」をつける謎のこだわり。

 

 どう見ても俺達の心をバッキバキに折りに来たバケモノです本当にありがとうございました。

 

 「……誰得だよ!!なんでそんな服持ってるんだ!?趣味か!?仮に趣味だとしてなんでそれを職場に着て来れるんだ!!」

 

 「禁則事項ですにょ」

 

 「無理に『にょ』つけないでいいから!!むしろもう喋らないで下さいお願いします!!」

 

 「「……………………」」

 

 「オイ兵藤!!松田と元浜が血吐いて真っ白になって死んでるぞ!どうにかならないか!?」

 

 「いや、そいつらだけじゃねえ!他にも何人か沈んでる!グラウンドが血で真っ赤だ!」

 

 敬語忘れて素でツッコんじまったけどしょーがないよな?いくらなんでも限度ってあるもんな?俺たちは数少ない体育の授業を通してこの人と関わる以上『常識は投げ捨てるもの』の精神で行くしかないと学んできたんだ。それでも足りないってどういうことだよ…?台風が近づいているらしく雲に覆われた空が今の俺の心境を表している様だった。

 

 

 

 ―――――――俺たちがミルたんの授業に慣れるのは、まだまだ先のことになりそうだ。

 

 

 

 

 さて、この授業で俺達が見せられた魔法少女ミルたんの魔法を二つ紹介しとこう。

 

 まず最初に、発声魔法。授業の初めの礼で発動したこの魔法は圧倒的肺活量により周囲の空気を一気に吸い込み、音をのせて発射する超空気砲だった。

 

 「よろしくお願いしますにょ!!!」

 

 「「「「「「「「「「「うわあああああ!!!?」」」」」」」」」」」

 

 始動ワード「よろしくお願いします」と共にミルたんが礼をしたため下方向へと射出された空気は運動場に半径5mくらいのクレーターを作り、間近にいた俺達は20mほど吹き飛ばされた。被害はそれだけに収まらない。放出された音が辺りに伝播し、運動場に面している校舎の窓全てを粉々に破壊した。正直至近距離にいた俺達の鼓膜が無事なのが謎だ。俺達より校舎のダメージの方がデカいのはどういう原理かさっぱり分からねえ。

 

 

 

 二つ目は魔力弾。弾は野球ボールでもテニスボールでもハンドボールでも何でもいい。恐らくボールでなくそこらの道端に落ちてる石でも構わない。ミルたんの腕力で投げられたそれらは全て赤熱化し、目視できないスピードで飛行した後燃え尽きる。遠目から見たら確かに赤い魔力の弾が飛んでる様にも見えなくもない。一瞬で消えるからむしろレーザーっぽいな。真っ暗な曇り空が雲一つない晴天に変わる恐ろしい勢いだったけどな!あんなの実戦で投げられたら対処の仕様がねえよ!!ミルたんとは絶対敵対したくない。気が付いたらあの世とか嫌すぎる。

 

 

 アレ?今更だけど俺達がやってんの体育じゃなくね?兵器の試運転とかそんな感じじゃないか?クリーンな核実験とかそんな感じじゃ……一応校舎とかに被害出てるからクリーンじゃないな。というかそこら辺に落ちてる石投げるだけで国一つ…いや、世界を滅ぼせそうなミルたんの方が核兵器なんかよりずっと怖い。ついでに今はビジュアル的にも最恐……なんだコレ。

 

 

 

 

 

 

 およそ30分後。運動場が目も当てられない地獄絵図になってきたころ、ようやく授業終了のチャイムが鳴り響いた。チャイムの音が天使の歌声に聞こえてくる程ヤバかった。ほんとに天使の歌声なら悪魔の俺はヤバいのかもしれないけど。

 

 何にせよ、やっと地獄から解放された!最後まで耐えられたのは奇跡以外の何物でもない。

 

 コレでやっと部室に…いや、ちょっと待てよ?あまりにも凶悪な見た目のせいですっかり頭から抜けてたけど、なんでミルたんはあんな格好になってるんだ。いくら常識が通用しないような人とは言え、職場にコスプレしてくるってのはやっぱり変だ。知り合ってからあんまり時間は経ってないけど、そんな人じゃないのは分かる。

 

 さっき考えた通りの趣味?確かに契約の時の品はプレミアのついてる魔法少女フィギュアだったけど、それにしてはポンと渡してきたしなー…。多分違うだろう。仮に俺がそういうの集めてるならもっと別の物渡してたはずだし。実際必死に集めた聖典やお宝映像なんかは絶対誰にも渡さない。強いて言うなら同志たちに貸す位で。…気後れするけど聞いてみるか。

 

 「ミルたん先生、なんで急にそんな服装してきたんですか?」

 

 「?ミルたんは昔からこの衣装にょ」

 

 「………ハ?」

 

 「お疲れ様だにょー」

 

 理解出来ない。遠ざかっていくミルたんを見て、俺は思考を捨てた。

 

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

  

 誰だって…というのは誤りかもしれない。だがかなり大勢の人がこう考えたことがあるんじゃないだろうか。「もう一人自分がいれば」と。

 

 普通なら馬鹿にされて終わりの考えだ。荒唐無稽にも程がある。世界には三人似た顔の人間がいるとかそういう話ではなく、自分と全く同じ存在が世界に二人と存在するはずがないのだから。そう、ありえない。

 

 だが仮に。仮に異世界ならどうだろう。自分と同じ存在がいて、自分と似たようで違う人生を送ってる。そんな平行世界(パラレルワールド)が存在するならどうだろう。連れてくることだってできるんじゃないだろうか。

 

 所詮妄想。これもまた一笑に付されて終わり。しかし、その異世界に手が届いてしまう存在が本当にいたなら?

 

 

 ―――――――――とある世界に、第二魔法と呼ばれる奇跡が存在する。この魔法は『平行世界の運営』を可能とする。その全容が分からずともいくらかの想像がつくだろう。異世界移動くらいなら簡単にできてしまう。ぶっちゃけ常人の手には余る代物だ。限定的に使える例外はあれど、実質この魔法を使えるのは宝石翁ただ一人。

 

 だが、全く別の世界に第二魔法の領域に足を踏み入れた者が現れた。運営などと大それたことはできないが、なんとただの気合だけで世界を軽々と移動できてしまう男が。

 

 誰であろう、(ミルたん)である。ミルたんは色々な世界を回り実力をつけていった。だが、ある時行き詰る。宇宙すら軽々あぼーんできるヤツらがいるのに、自分はせいぜい星ひとつ砕くくらいしかできない。強くなるためには自分と同じくらいの実力を持った者と戦う必要があるのに、星ひとつと宇宙破壊じゃ実力の差がありすぎて修行どころか殺される。とは言え、そもそも星ひとつ砕く程の実力者などそう多くはない。

 

 さてどうするかと頭を抱えた時、閃いた。異世界ばかりに気を取られていたが、平行世界だってあるはずだと。つまり彼と同じ、ミルたんに憑依し最強を目指す男がいる。ソイツと闘えば自分は更に強くなれるに違いないと確信したミルたんは早速行動を開始。いつも通り世界の壁を気合でこじ開け通り抜ける。

 

 

 

 その先で出会ったのが、最強の魔法少女を目指す自分(ミルたん)だった。

 

 

 

 原作(オリジナル)ミルたんのロールプレイにハマり、より強い物理魔法を研究して「真のミルたん道を極めるにょ!!」との事。つまり修行。当然この魔法少女ミルたんも異世界に渡る気合があり、異世界で研究を進めていた。ミルたん (以下ミルたんA)と物理魔法少女ミルたん(以下ミルたんB)が戦闘したところ、結局はどちらも物理技で実力はほぼ拮抗。互いに実力を認め合った。

 

 昨日のアーシア救出の後修行のため再びこの魔法少女(漢)に会いに行き、今教師をしている事を話したことが今回の事件の発端である。ミルたんBがミルたんAに自分も教師をしたいと発言した事から攻防が始まった。

 

 

 「ミルたんも先生ってやってみたいにょ!」

 

 「いや、俺無免許だから。持ってるこれ偽造だから。魔王の権力と趣味の象徴だから。バレたら国家権力のお世話にならなきゃいけないぞ?逃げようと思えばいくらでも逃げられるけど」

 

 「それでもやってみたいにょ!!」

 

 「…いや、そもそもお前教師になって何するんだ。体育教師だから頭の方はそこまで関係ないが」

 

 「ミルたんの魔法を見てもらうにょ!!!」

 

 「こっちの駒王学園滅亡フラグが立ったな。というかそれじゃダメだろ、生徒が皆殺しだ」

 

 「威力が飛び切り弱いの使うから大丈夫にょ。一日だけ変わってほしいにょ!!」

 

 「ダメだ。こっちとしても予定を組んでやってるからな。下手に崩したら後がつらい。まだそこまで慣れてないし」

 

 「授業内容にあった魔法使うから大丈夫にょ!」

 

 「それでもダメだ。同一人物とはいえここまで性格が変わればさすがに怪しまれるだろう?」

 

 「一日くらいなら気の迷いで何とかなるにょ!!」

 

 「ならねえよ!?無茶苦茶いうな!」

 

 「ミルたんやってる時点で無茶苦茶だと思うにょ」

 

 「……確かに」

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 「おっとこんな所にプロテインがあるにょ」

 

 「!」

 

 「こっちにも。あらこっちにもあったにょ」

 

 「く…貴様……!」

 

 「さあプロテイン全部合わせて3kg!どうするにょ?」

 

 「ふ、俺を買収するには足り「もう1kg追加入りましたにょ」いいだろう」

 

 

 攻防終了。ミルたんBの勝利!…昨日こんなことがありました。

 

 いきなりミルたんが魔法少女になったのはこの会話があって入れ替わっていたからだ。

 

 

 

 

 結果粉々に散った窓ガラスや運動場にできたクレーターや大量の血痕等のまるで殺害現場のような状況は悪魔たちの尽力で一日で元通りになり、ミルたんは二重人格者扱いされるだけで済んだ。被害といえば、一部男子生徒が魔法少女という単語を聞くたびに拒絶反応が出るところだけである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに、全く同一の存在が同じ世界にいることで世界の修正力が働いたには働いたのだが。偉大なるギャグ補正の壁により阻まれた事をここに記しておく。

 

 




 ニュース「本日15時30分頃、接近していた台風が太平洋上にて何かに吹き飛ばされるように消滅したという前代未聞の情報が気象庁より公開されました。原因は未だ不明。調査を続けているとのことです」

 生徒たち「ああ、ミルたんだ」

 ミルたんA「ああ、俺(B)だ」
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