転生したら『大賢者』持ってたからヒーローを目指すことにした件 作:茶々丸さん
Ⅰ 転生したら朝チュンされた件
35歳、独身、童貞。
この3つが揃えば男は魔法使い、いや、賢者へと魂の位が昇格するのだ。
そしてまさに死にゆこうとしている俺はその人生を賢者のまま終えようとしている。
つまり、これは大賢者になったと言っても差し支えないだろう。
【大賢者を獲得しました。】
てかクソ熱かったのにめっちゃ寒くなってきたんだけど……死ぬ時ってこんな訳わかんない状態になんの?
……ん?大賢者?
【熱変動耐性を獲得しました。】
熱いのは雷に打たれたからか……。
てか落雷で死ぬってどんな確率だよ。
落雷受けてここまで思考出来てるって俺さり気凄くない?
【電流耐性を獲得しました。】
【付属して麻痺耐性を獲得しました。】
さっきから頭に響いてるこれはなんぞ……?
この状況の既視感……。
あぁ、思い出した、転スラだ。
詳しい内容は覚えてないけどスライムに転生した主人公が俺TUEEEEする話だったよな。
てことは俺転スラ世界に転生すんの!?
って『大賢者』いるとかチートじゃん!
でも、スライムに転生は嫌だなぁ。
てかリムルだったか……と同じ力になっていってるな。
スライムになるよりかは主人公と居たドラゴンみたいになりたい……あ、でも人間サイズがいいな。
居場所なくなるし、怖がられるし。
【暴風之王を獲得しました。】
暴風……?
あぁ、あのドラゴン暴風竜とかだっけ。
てか大賢者ってチートじゃん。
欲しいと思ったらなんでも手に入るじゃん。
物知りでこんだけ能力くれるって神じゃん。
あ、やべ、もう意識保ってらんねぇわ。
いや、よく持った方だよな……。
来世は俺に優しい世界でありますように!
死亡フラグマシマシな世界はやだからね!!
終始この調子で馬鹿なことを考えながら俺は意識が途切れるまで来世がイージーモードである事を願い続けたのだった。
やぁ、みんな久しぶり。
みんな朝チュンってご存知?
男ならみんな憧れるよね。
大賢者に上り詰めた俺も憧れはあったんだけどさ、約30年越しに願いは叶ったと思ったわけよ。
朝目が覚めて隣には俺を愛おしそうに見つめる女性。
目覚める前の記憶が死ぬ前だというムードもへったくれも無い状況だけどさ。
けどさ……そこで気付いたのさ……俺の身体縮んでんだわ。
ほんとなんでだよ……。
綺麗な女性、我が母上である龍崎 景子は正真正銘人間だ。
そして俺の住む家は正真正銘、俺が前世で生まれ育った現代家屋だ。
転スラ世界ってこんなに現代チックだったかな……?
【解、現在は西暦20××年です。】
うお、もしかして大賢者?
てか時代までドンピシャなのな……。
もしかしてここって転スラ世界じゃないの?
【解、マスターの記憶する世界とは異なる世界に居ます。】
やっぱりかぁ……。
ここどういう世界なん……。
とりあえず、自分の事から整理していこう。
大賢者さん、俺のステータスとかわかる?
【告、
個体名『龍崎 賢人』、
種族『人間』、
年齢『3歳』、
身長『』
個性『大賢者』、『暴風之王』、『熱変動耐性』、『電流耐性』、『麻痺耐性』
】
ちょ、個性……?
え、ここって、え、まさかのヒロアカ世界……?
人生イージーモードどころかハードモードじゃん。
大賢者いる時点でかなりのヒーロー向きの個性だけどさ……。
まぁ、仕方ない、よく考えたら転スラ世界の方がハードモードだろうしね。
とまぁ、この世界で生きていくことを決意し(生きていくしかない)自身の個性を訓練することに力を注いだ。
さて、あれから十数年が経過した。
俺も中学生になり進路を考え始める時期がやってきた。
「えーお前らも三年という事で本格的に将来を考えていく時期だ!」
進路かぁ、中学生活もそうだが随分懐かしい響だ。
「今から進路希望のプリントを配るが皆!!」
「だいたいヒーロー科志望だよね」
先生は進路希望の紙を乱雑に放り投げるとそう声を上げた。
『ハーイ』
その先生の言葉に対してクラスメイト全員が個性を発動して同意を示す。
「うんうん、皆良い個性だ。でも校内で個性発動は原則禁止な。」
すると同じクラスメイトであり幼馴染である爆豪勝己が立ち上がり自身の方が格上だと高らかに宣言を始めた。
「せんせえー「皆」とか一緒くたにすんなよ!俺はこんな没個性共となかよく底辺なんざ行かねー」
「おいおいそりゃあねぇよカツキ!」
「あー確かに爆豪は『雄英高』志望だったな」
この言葉にクラス中が驚きの色を見せる。
しかし、先生はここで勝己が激昂するに足りうる爆弾を投下した。
「そういや緑谷と龍崎も雄英志望だったな」
ふふふ、ついに知られてしまったようだな。
ならば高らかに宣言するしかあるまいよ!
「クアハハハハ!!当然であろう!我が行かずに誰が雄英に行くという!?」
「いや、爆豪と緑谷も行くって言っただろ」
「む、そうだったか?ならばライバルだな!よろしく頼むぞ勝己、出久!!」
勝己は何故かピクピクしながら青筋を浮かべていた。
あいつなんであんなに怒ってんだ……?
対して出久は戸惑ったような表情を浮かべていた。
「なんだ出久?」
「いや、けんちゃんは笑わないんだなぁーって」
「なぜ笑うんだ?」
「え、いや、だって僕無個性だし……」
おかしなことを言う奴だな。
難しいかも知れないけど能力は頑張ったら得られるのに。
【告、この世界においてマスター以外は入手不可です。】
え、そなん。
あぁ、まぁ、頑張ればなんとかなんじゃないかな!?
てか、たしかこいつオールマイトから能力貰ってたよな!?
「クアハハ!そんなもの努力次第でどうとでもなるわ!!楽しみにしているぞ出久!!」
この後、相手にされずフル無視をかまされた勝己の大噴火によってその場は解散したのだった。
放課後。
姉上の指示により商店街まで買い出しに来ていた。
個性の特訓と姉上とのスパーリングをしたかったが母上の指示に逆らう事も出来ずこうして商店街まで来ていたのだが……
BOOOOOOOM!!!!!!
なぜ、こうなる。
小さい頃から何故か事件事故に巻き込まれる。
ホントにいい加減にして欲しい。
てかあのベタベタ爆発してるけど中にいるのは勝己か……?
あいつあんなとこで何してんだ?
そういう趣味か?
「おいガキ!!何突っ立ってんだ!?死にてぇならこの個性で燃やしてやろうか?」
さて、この状況どうしたものか……。
「君!!早く逃げるんだ!!」
「私、2車線以上は無理ぃ」
「クッ、相性のいいヒーローは居ないのか!?」
ん?あいつらは何言ってるんだ?
相性が悪かったら何もしないのか?
なんだそれは……本当にヒーローか?
「チッ、特訓の邪魔をされた憂さ晴らしは貴様で晴らさせてもらうぞ……!」
勝己を乗っ取ったヘドロヴィランからすれば完全にとばっちりである。哀れ。
【魔法】を使ってしまうと殺してしまうかも知れない為、拳に魔素……魔力を込めヘドロヴィランに打ち込もうとした時だった。
俺の顔の横を鞄が横切りヴィランの目に突き刺さった。
「けんちゃん!かっちゃん!!」
「出久……?」
「なん……ッで!!」
「君が、助けを求めてる顔してた!!」
「!!」
「けんちゃん!手伝って!!」
出久は至って真面目な眼差しで俺にそう言い放った。
無個性でなんの力もない弱者たる出久から放たれた英雄の輝きを見た。
「く、くく、クアハハハハ!!良いだろう!!捕まっておけよ!!」
俺は出久と勝己を掴むとヘドロヴィランから無理やり剥ぎ取る。
ヘドロヴィランは慌てたようにヘドロ状の触手を勝己に伸ばした。
「おい、俺達を相手にしてていいのか?」
「は?」
「不甲斐ない!!……ヒーローはいつでも命懸けッッッッ!!!!」
ヘドロヴィラン、憐れなり。
最後はオールマイトの放った拳圧から生じた暴風に吹き飛ばされてしまった。
しかし、人間でありながら拳1つでこの威力とは……。
しかし、今はそんな事より大事なことがある。
説教の為にやってきたヒーロー達をチラッと見ると出久を抱き抱え……。
「出久、口を閉じていろよ。」
「え?ってええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?」
盛大に走り出した俺はヒーローから逃げ出したのであった。
因みに出久はというと……盛大に舌を噛んだようである。
辺りをオレンジ色に染める夕暮れをバックに砂浜で俺は出久に向き合っていた。
「いひゃい…………それでけんちゃんどうしたの……?」
「ん?おぉ、そうであったな。出久よ。我と友にならないか。」
「え、友って友達ですら無かったの……?」
目に見えて肩を落として落ち込む出久に俺は言い方を誤ったと反省する。
「そうでは無い。出久よ我と魂で繋がった盟友とならないか?」
「魂で……?」
「出久よ。ヒーローになりたいと強く思ってはいるが貴様諦めているだろう。」
「ッ!」
「言い返せないか。まぁいい。出久、お前には確かに力は無い。しかし、力を得る資格はあると思っている。」
「資格……?」
「どうして先程のヴィランの前に飛び出した?」
「それは……かっちゃんの顔を見たら身体が勝手に……」
「クアハハハハ!!分かっているではないか!!」
「え?」
「お前も聞いたことはあるだろう。トップヒーローは学生時代から逸話を残している。その多くが『身体が勝手に動いていた』とな……」
「あ、うぁ、」
「出久、お前はヒーローになれる!!我が保証してやろう!」
出久は胸を抑え大粒の涙を流しながら膝から崩れ落ちた。
そんなに嬉しかったのか。
さて大賢者さんや。
【はい。】
名付け、出来るよな?
【解、現在のマスターの魔素量ならば問題ないでしょう。】
よし来た。
「出久。今からお前に名をやる。」
「名前……?」
「この名付けがお前のヒーローへの道の手助けとなるだろう。」
「……分かった。頑張るよ!」
「いい返事だ!!お前には『テンペスト』の名を授ける!!」
「テンペスト……!!」
出久に名付けをした時だった。
出久は自身の身体に何かの異変を感じたようだ。
「今日の所は帰って休んでおけ。」
「分かった……ありがとう!けんちゃん!!」
「クアハハハハ!!気にすることは無い!!お前が自身で勝ち取った力だ!!」
出久とその場を別れた俺は初めての名付けで油断したせいかいつの間にか意識を失っていた。
そして目覚めると恐ろしい表情を浮かべた姉2人による朝チュン(恐)を迎えることとなったのだった。
ご感想待っとります。