もう一つの四つ葉の魔導書
「487……488……489……」
森の中、木の枝にぶら下がりながら腹筋をする少年が居た。銀色の髪で整った顔を持つ少年だ。彼は日課のトレーニングの一つをこなしていたのだ。
「496……497……498……499……500!!!」
腹筋が終わるとそのまま地面に降り立ち、呼吸を整える。
「今日の肉体のトレーニングのノルマはこなしたな……じゃあ魔法の方やるか……」
氷の魔力を手に集め刀を作り出す。そしてそれを振り鍛錬を開始する。同時に空中に氷の刃を展開し木に撃ち込み、貫いていた。
「こんなものでいいか。あんまり遅くなると母さんがうるさいからな……」
薪を何個か拾い上げて少年は町に戻る。住んでいるところは城下町のキッカである。少年は、城下町から森までいつも走って通っていたのだ。
「いよいよ明日だな、魔法騎士団入団試験。俺の魔法はどこまで通用するか楽しみだな……!」
期待に胸をふくらませながら走る。魔力で身体能力を強化して走る。尋常ではない速度で森の木々を避けながら
「楽しみなんだけど……問題起こしたら入れないよなぁ。貴族がいちゃもんつけてこなければいいんだけどな」
一人でボヤきながら明日の試験についてぼやく。何を言っても仕方ないがボヤくしかない。ボヤかないと気が済まないとばかりに愚痴る。
城下町が見えてきたところで魔力を解き、ブレーキをかけて減速する。砂埃を立てながら完全に止まり、また歩き出す。
「やることはやって来た。あとは全て明日の俺に任せるしかねぇよな。にしても……」
自身の
「四つ葉か……。これであの人に追いつくんだ。俺の命の恩人に……」
茜色に染まる空を見上げながらそう呟く。
―――――――――――
「ただいま」
「おかえりなさい。いよいよ明日ね、リオン」
「まぁな。やることはやったし。俺は言うほど緊張はしてない」
リオンと呼ばれた少年は肩をすくめながら言う。
「そう、それはよかったわ。じゃあ夕飯にしましょう。今日はご馳走にしたわ!」
張り切っている母親に苦笑いをしながら、美味しくご飯を食べる。
「でも、本当にすごいわね。四つ葉の魔導書なんて。最果ての街でも四つ葉の魔導書に選ばれた子がいるらしいわよ」
「そうなのか」
パンを口に入れながら、スープで流し込むディラン。
「それほど興味があるようには見えないけど?」
「いいや、興味はある!俺以外にも四つ葉の魔導書だぜ?どんなやつかあってみてぇよ!」
大袈裟に反応してみせる。母親は目を丸くしたあと大笑いする。
「ハッハハハハ!!!そんなふうに言わなくてもいいのに。もう、そんな反応しなくて面白い子ね。ほら、今日もトレーニングしてきたんでしょ?明日は本番なんだからお風呂入って寝なさい」
「分かったよ」
言われるままリオンは風呂に入ったあと、自身の布団に入って思い返す。
7年前の出来事を。魔法騎士を目指すきっかけになった出来事。
一人で森へ遊びに行った時の事だった。帰り道が分からず三日間森の中を彷徨うことになってしまった。そして、その挙句尋常ではないイノシシに襲われそうになったところ。黒い外套をつけて煙草を吹かせている男に救われた。
『あ?何だ坊主?家出中か?』
『ううん、迷子』
『あ?迷子かよ?森の熊さんに食べられても知りませんよっと』
『助けてくれないの?』
『助かりたかったら自分で助かろうとしろ坊主。待ってても誰も助けてくれないだろ』
そして、その魔法騎士について行き最終的には町にたどり着いた。その間、弱音も吐かず、ただ必死について行った。
『小さい癖に中々根性あるな』
それがリオンが魔法騎士を目指す切っ掛けになった。そして、リオンは小遣いを貯めて作ってもらった武器を手に持ち眺める。一つ鍔の部分に竜のデザインがされている刀
刀はその魔法騎士に憧れて選んだ武器である。リオンは試験のことを考えて期待に胸をふくらませるのであった。
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