現れた魔法生命体は三体。リオンと同属性の氷であるのは見てわかる情報である。
「『氷魔法 "郡氷零牙"』!』
氷の魔弾を撃ち出し攻撃をする。あの日より無意識の加減が無くなったため、威力は以前使った時よりも上がってはいるが、同じ属性である魔法生命体にはあまり効果が見られない。
「牽制みたいな攻撃じゃ効果がまるで無いな……。なら、こっちで行くしかないな……!」
刀を抜き、魔導書のページを捲る。
「『氷創成魔法 "氷刃・十華"』」
リオンの背後には花びらのように十本の氷剣が創り出される。
「よし、行くぞ!」
三本ずつ魔法生命体にぶつけ、最後の一本を手に持ち、一体に切りかかる。魔法生命体は腕でガードしたりするが、展開されている氷剣がガード外から切りかかる。魔法生命体の体を徐々にだが、確実に削り取る。そしてリオンの剣技はさらにそれを加速させる。
振るわれる腕を躱し、刀で切り裂く。そしてその後隙を氷剣でカバーしながら切りつける。
「そら!まだまだ行くぞ!」
氷剣を9本を操りながら、同時に三体相手している。しかし、直接的に見ると、氷剣がほか2体を牽制しているため、1体1で戦うことができている形となっている。
しかし、決め手に欠いていた。ジリジリと削ってはいるが、生半可な攻撃では魔法生命体を打倒するには至らない。今の調子で責め立てていたらかなりの時間を要してしまうだろう。それはリオンにとっても望むべきものでは無い。
「これ以上手間かけるは得策じゃないな……!」
リオンは氷剣と共に一度距離を取り、魔法を唱える。リオンが持ちうる高威力の魔法を
「これでぶっ飛ばしてやる!『氷魔法 "氷纏・氷竜戦空"』!!!」
刀と氷剣を振るい、氷の竜を魔法生命体に放つ。二体の氷の竜は魔法生命体を貫き、凍らせ木っ端微塵に砕く。残りは一体の魔法生命体のみである。
「続けていくぞ!『氷魔法 "郡氷零牙・氷刃"』!!」
従える氷剣を残りの一体に向けて放つ。傷つける程度だった氷剣だが、"郡氷零牙"の弾丸として打ち出すことによって威力と貫通力が大幅にアップしたものとなり、魔法生命体の体を穿ち倒すことに成功する。
「ふぅ……。とりあえず片付いたか」
刀を鞘に収め探索を続ける。マナスキンを緩めず、戦闘を行え、今の環境にも耐えれているところを見るに来た甲斐は十二分にあっただろう。しかし、魔宮に入ってまだ1時間も経って居ない。制覇するつもりでかからないと、ここまで来た意味が無いだろう。
「魔宮だから宝とかあるよな……?まぁ、宝の為に来たわけじゃないんだけど……」
持ち込んでいたパンを齧りつく。冷え固まったパンはとても食べれたものでは無い。しかし…、捨てるのは惜しく感じ袋に戻す。
「とりあえず、奥に進むか。最深部は前人未到……それを踏破して少しでも強くなるんだ。彼奴らに負けねえためにも」
刀を手に握りながら先に進む。前に任務で赴いた
「マナスキンをしているから、何とかなっているけど、氷属性を使うオレですら凍えて仕方なねぇな」
息を吸うだけで肺が凍りそうと思いながら足を進めていく。濃い氷属性の魔は空間を凍てつかせる。マナスキンを緩める事を許さない厳しい環境である。
「一人で来て正解だった。こんな氷の地獄に誰も来ないよな……」
道にそって歩いていると再び魔法生物が出てくる。リオンは刀と魔導書を構えて……
「いいぜ、来いよ!オレは修行のつもりで来たんだ、遠慮なく来てもらわないと……来た意味が半分以上無くなるだろうがっ!」
魔法生物に対して叫びながら攻撃を仕掛ける。最深部を目指すため、強くなる為に、魔法を使い刀を振るう……。殆どが同じ属性、それ故にリオンの攻撃の殆どは効果は少ない。だが、止まる訳には行かない。ここで引き返すつもりも無い。何かを掴むまでは。
「……っと言っても、こうも似たような奴が相手なら、攻略法の一つや二つ思いつくよな。なんせ、相手に事欠かないわけだしな」
魔法生物から刺していた刀を抜き納刀する。あれから時間は経ち、連戦に次ぐ連戦、そして寒さによる体力消耗とマナスキンの魔力制御は確実にリオンの体力を奪い去って行く。が、疲労困憊にはまだ幾分かの余裕があり、尚且つ攻略法を編み出したリオン相手では魔法生物はもう相手になっていなかった。
「と言うか今どの辺だよ……まだ、序盤?それとも中盤か?個人的には終盤だと思いたいがどうなんだろう……な?」
リオンは足を止める。先程まで迷いながらでも歩いていたリオンが足を止めたのだ。何かを感じ取ったように、誰かに言うように
「そっちに行けばいいんだな?」
独りでに呟き、導かれるように歩き出す。罠なのかどうかはリオンにはわからないが、不思議と、その通りに向かえば良いと思った。理屈なんてものは無く、強いて何かを言うならば、本能に近い何かだ。確証のないモノに導かれて歩く。しばらく歩いていると気になる事が出てきた。
「魔がさらに濃くなってきたが……魔法生物があれから一体も出て来ない……どうなっているんだ?」
そう、魔が先程歩いていた所よりも更に濃いモノになっているのだ。ここまで濃い魔となると強魔地帯と何ら遜色無い程である。それに伴って、更に凍てつく冷気が場を支配しているのだが……他の場所と異なり、魔法生物の影も形も無いのだ。先程まで襲いかかって来てい魔法生物が何かに導かれるように歩くようになってからは遭遇することが無くなったのだ。
遭遇しないように導かれているか、それとも、今歩いているエリアには姿を出さないのかは不明である。だけど、リオンにとっては、マナスキンに集中できるし、戦闘で消耗する体力と魔力を抑えることが出来て悪いことは無い。
「でも、何だろうな……この感覚は……不思議と逆らう気も起き無いし、なんだろうな……気にしたって仕方ないか」
考えるのを1度やめ、歩く事に専念する。勿論、魔法生物が今の所でないだけで警戒しない理由にはならないので必要最低限の警戒をするが……。
しばらく歩いていると大きな扉に辿り着いた。その扉は、以前に任務で入った魔宮の宝物庫の入口に似ていると感じた。つまり先は宝物庫だと考えるのが当然だろう。しかし、扉は閉ざされている。
「あの時はアスタの反魔法の剣で切り裂いて入ったが……。今回はどうすればいいんだ?」
仕掛けを解除する物も無ければ、扉には鍵穴何て物も存在しない。魔法をぶつけても扉が壊せる保証は無いが、リオンはとりあえず試してみることにした。
「『氷創成魔法 "流氷の槍"』!」
氷の巨大な槍を作り出し放つ。扉に命中するが……傷が着いた程度で開く気配はない。
「この程度じゃダメか!それなりの一撃のはずなんだがな!なら……全力で……やってやる!」
魔導書のページが捲れる。そしてその魔法は、今のリオンの最大の魔法でもある。
「『氷創成魔法 "百氷雪剣"』!」
即座に百に及ぶ氷剣を創り出し待機させる。更に刀を抜き、構える。そこから放たれるのは
「『氷魔法 "氷纏・氷竜戦空 九頭龍"』!!!」
放たれるのは氷剣で形を成した九頭龍。扉に目掛けて突撃していく。現状のリオンが持ちうる最大の魔法でもある。
「いっけえええええ!!!」
九頭龍は同時にその顎を扉に叩きつける。凄まじい轟音と共に目の前の景色が、冷気の煙で白く染められる。リオンは最大の魔法を放ったことで少し疲労を見せるが、
「どうだ!?」
扉の様子を伺う。煙が晴れその姿が現れる。扉は見事に破壊されており、中へ続く道が開かれていた。
それを確認し、歩き出す。再度、導かれるように中に入る。中は、前回の魔宮よりも宝は全然無く、気持ち程度の金塊と台座にスクロールが置かれていた。そのスクロールからは、凍てつく鋭い魔力が放たれていた。しかし、それと同時に、自分を導いていたモノがこれでは無いかとも思った。そう思ったリオンはスクロールの前に立つ。
「お前が……オレを呼んだんだな」
リオンは一度目を閉じて、全ての感覚を使ってスクロールから放たれるのは魔力を感じ取る。目の裏に浮かんだ姿は足に枷をつけられたグレーとも白銀とも取れる体毛と、グレシャーブルーの爪を持つ、大きい狼が浮かんだ。その狼はリオンを見下ろしていた。冷気は止むことなく、ブリザードの如く吹き荒れる。前に進むのも困難なレベルの吹雪だ。それは、相手を拒絶するものではなく、試している様に感じるものだった。
「試している……って言うわけか……!」
勢いは更に強まり、立っている事すらままならない程の勢いとかす。だが、リオンは一歩、また一歩と踏み出す。
「オレは……オレは……強くなるんだ!あの人の背中に憧れたんだ……あの人と並びたい……あの人の様になりたいと思ったんだ……!」
吹雪を従える大狼に確実に迫る。あの日の憧れ、目指してきた者。そんなありふれた目標。それは魔法騎士団に入り仲間と出会い、形を変え、ある意味で本当の夢を形作る。
「――――そして、超えるんだ……!あの人を超えて……!最強の魔法騎士団長になる!これは―――」
目の前に居る大狼に向かい右手を伸ばして宣言して言い放つ。
「オレが選んだ道だ!!!」
それと同時に、リオンは目を開き目の前のスクロールに触れる。それと同時にスクロールは光り輝く、リオンの魔導書も同じように輝く。スクロールは開かれ、文字が書かれていたが、輝きが収まると文字は消えていた。その代わり、魔導書には新たなページが刻まれていた。そしてリオンは感じていた、自身の中に新たな力を。
「これは……さっきの……」
そして、その正体は頭の中に浮かんだ。
「氷の精霊……フェンリル……」
その名を呟いた時、狼の咆哮が聞こえた気がした……。
修業編は短いですが終わりです。次回からまた、原作に戻ります!
オリジナル精霊(氷精霊)について
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サポート重視の氷精霊フラウ
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単独戦闘能力も高い氷精霊フェンリル