「それで、特訓って何ンだ?」
特訓を申し出たリオンに付き添い、マグナは海辺まで来ていた。リオンは振り返りながらに説明する。
「オレがするのは氣とマナスキンの合わせたものです。発想の段階ですけど、試さない理由は無いので……それに、足を引っ張っていると感じるのはあの夜だけで十分なので」
その執念にも似たその言葉を聞きながら、マグナはニヤリと笑う。
「いい心意気じゃねェか!それでオレに何を手伝って欲しいんだ?」
マグナはリオンに聞く。リオンは答える。
「今からオレが自分の魔力……氷の魔力を体の内と外に巡らせます。氣で自分の体を把握し、体内の頭の先から手、足先まで循環させます。そして、並行して体外ではマナスキンを行う。フェンリルにもサポートはしてもらいます。そこで、マグナ先輩に手伝って貰いたいのは、オレの体温管理です」
「体温管理だぁ?」
マグナの疑問にリオンは答える。
「体温内に氷の魔力を巡らせる以上、体温が低下して、使い物にならなくなり、特訓どころじゃなくなります。ですが、マグナ先輩の炎魔法があれば、それが解消されます」
説明するリオン。マグナは頷き親指を立てて言う。
「任せろリオン!後輩の頼みだ!ノエルが新しい魔法を完成させるより早くやるぞ!」
「はいっ!」
マグナの掛け声とリオンの返事で特訓が始まる。リオンは目を瞑り、自身の氷の魔力を巡らせる。フェンリルが側につき、繊細なコントロールの補助を行う。それと同時併用でマナスキンも発動する。
「……!」
変化はすぐに訪れる。リオンの体に霜が降りる。吐く息は白く染まり、髪は逆立ち、銀が深まる。魔力は荒れ狂うように迸る。だが、リオンはすぐに解除する。
「リオンどうし……!?」
身体中から冷気による蒸気が上り、震え、言葉すら話せない状態になっていた。
『いかん。マグナとやら、リオンに炎魔法を!』
フェンリルが慌てたように、マグナに指示を出す。マグナは言われるままリオンに炎の魔力を当てる。
「これが、さっき言ってた使い物にならなくなるってか……。そんな生ぬるいもんじゃねェ……かなり覚悟と集中力がいるやつじゃねぇか……!!」
炎の魔力を当てると、音を立てて蒸気が昇る。それほどまでにリオンの体温が下がりきっているということである。それだけではなく、体内に氷の魔力を巡らせるということは、命の危機に晒しているということもでもある。
しばらく、マグナの炎の魔力を浴び続けることで、体温や体が元通りの状態に戻る。深刻なダメージになっていないのは、リオンが氷の精霊に選ばれた氷の魔導士だからこそともいえる。
「ありがとうございます……マグナ先輩、もう一度行きます……!」
リオンはもう一度目を瞑り、集中力を高める。氣の感知を自身に向け、頭の先から足の先まで把握し、氷の魔力を循環させる。全てが底上げされていくのを感じると同時に芯から冷えていくのを感じる。
(巡らせるのは……そうだけど、求めている所はここじゃない……!もう一つ上の段階……!そして……)
同時にマナスキンも使用する。自身の魔力を内と外で制御する。フェンリルがサポートしていると言えど、同時となると相応の精度が求められる。
マナスキンと同時に発動後、呼応するようにリオンと接地している地面が凍り始める。マナスキンも通常であれば不安定になることなく制御できているが、現状は試みようとしている状況下では上手く制御出来ない。
再び解除してマグナに炎の魔力を当ててもらう。それを繰り返す。そして思考を巡らせる。何がいけないのか、どうすれば上手くいくのか、そもそも無茶な事なのかと。だが、こんな無茶に付き合ってくれている先輩がいて、同期がそれぞれ頑張っているのを知って、自分が足踏みしている訳には行かない。
「限界を超えろ……それが団長の言葉だもんなぁ……!」
一週間の期限がある中、毎晩マグナに付き合ってもらい特訓を続ける。昼間は、暑いこともあり一人で行うこともできた。しかし、上手くいかない。似たような事の繰り返し、消耗が積み重なっていくが、諦めない。
(クソっ……ダメだ……どうしても上手くいかねぇ……!)
4日目の夜。リオンはマグナに体温を戻してもらいながらに両膝をついて座り込む。
「大丈夫かよ、リオン。おめぇ、昼間もやってんだろ?ノエルもそうだが、休まねぇといざと言う時動けねぇぞ?」
「分かっているんです、けど、上手くいかなくて……」
幾分か焦りも出る。一朝一夕で出来るとはもとより思っていないが、それでも前進しなければ焦りすら出てくる。マグナは頭を掻きながら
「焦る気持ちも分かるけどよぉ。出来ることからするしかねぇぞ?確か、ヤミ団長やアスタがやっている氣ってやつで内側を把握して魔力を循環させて、マナスキンで外側を強化するんだろ?なんて言うかやることが多いんじゃねぇのか?」
そう言われたリオンは工程を思い返してみる。
1. 氣による身体把握
氣の感知を自分自身に向け、頭から手足の先まで身体の状態を把握する。
2. 氷の魔力による内側へ魔力の循環開始
把握した身体の内側に氷の魔力を循環させ、強化を図る。
3. 内部強化の制御
体温の低下や身体への負荷、魔力制御を行う。
4. マナスキンによる外部強化
内部強化を維持したままマナスキンを展開し、身体能力をさらに引き上げる。
5. 内外の魔力運用の統合
氣による身体把握を続けながら、内部の氷の魔力と外部のマナスキンを同時に制御する。
細かいところを除いても5つある。実際に運用できるようになったとしても、5つの工程を瞬時に行うというのは高難度な話とも言える。
(やる事を減らせば、それは閃いた案を捨てる事になる。……それも、一つの方法だが……それじゃあ、らしくないし、アスタや同じ四葉のアイツに負けた気がして何か納得できねぇ……!第一)
リオンは深呼吸し、頬を叩き気合いを入れ直す。
(最強の魔法騎士団長になれる訳がねぇ……!)
笑みを浮かべながら息を吐く。表情が良くなった事に気づいたマグナも笑みを浮かべて
「さっきより良い顔になったじゃねぇか!」
背中を叩きながら激励する。いくら切り替えても、状況は好転してはいない。以前として問題は残っている。だが、今背中を叩かれた事でふと思いついた。
(背中痛かった。痛みは、分散する……。魔力を巡らせる時、いつも一気にしていた。……勢いよく、循環開始するスタート地点を決めていたら、行けるんじゃないか?)
リオンは手に魔力を集約させる。それは片手ほどの氷の刃となる。
(外部の魔力を体内へ流し込む起点を作る……! そこから循環経路を形成すれば、一気に全身へ巡らせる必要はない。あとは内部の流れに合わせて、外側のマナスキンを展開する……!)
「リオンどうしたんだ?そんな氷の刃なんて作ってよ?」
マグナが質問を投げる。リオンは頷きながら
「少し試したいことがあります。自暴自棄になった訳じゃないんで、止めないでくださいね。フェンリル、サポートは頼んだ」
『ああ、任せろ』
フェンリルは横に顕現する。そして、リオンは手に持つ氷の刃を自身の突き立てる。
「何やってんだ!!リオン!」
マグナが慌てて叫び、近づこうとするが、様子が変である。血は出ず、刃は深く、同化する様に、リオンの身体に入り込む。そして、髪は逆立ち、銀がより深くなる。身体に霜が降りることなく、立ち上り魔力も穏やかに、凍てつく鋭さを放っていた。吐く息は白いが、身体を動かすことが出来ていた。
「――――辿り着いた」
直ぐさま解除される。解除と同時に、負荷により座り込み、体温低下で震えが起こるが、今までとは結果が異なっていた。マグナに炎の魔力で温めてもらいながらに言う。
「マグナ先輩……!掴みました!やりましたよ!」
「たく、信じられねぇ新人だぜ」
マグナは冷や汗を流しながらに言う。残りの日数も特訓を続ける。そして、満月の前日、ノエルも魔法を完成させ、海底神殿に向かうことになった。
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イメージする元ネタはあります。それをブラクロ風に落とし込んでいます!