小さい頃、鈴という人物がいた。
特段怖いというわけではないが、少し不気味な体験をしたのでここに記そうと思う。

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【短編一話完結】偽物

ホラー 何度も聞いたはず

 鈴という人物がいた。

 

 小学四年生の頃、初めて同じクラスになったことをきっかけに知り合った。なんというか、彼女はそこそこ色物だったと思う。

 そこそこ気の強い性格で、まあ、結構人とか殴ってたんだけど、僕とか男子はそれを面白がって揶揄って追いかけ回されることがよくあった。

 けど別にお互い嫌なことがあったわけじゃなくて、たまたま席が近くなったことを転機に彼女とはよく話す縁になった。

 当時の僕は、彼女はお金持ちなんだなぐらいにしか思ってなかったけど、お嬢様だったみたいで。お嬢様と言うとなんだか洋風のお城を思い浮かべてしまうがどちらかというと彼女の家柄は和風という感じだった。

 

 歳をとるにつれて、中学生になったあたり。中学受験をするとかしないとかいう話をしたことを覚えているから、多分そのぐらいの時期から。彼女の細い体付きも相まって男勝りな性格から凛とした、着物が似合うような性格へと変わっていった。

 つまり、彼女は一足早く大人になった。

 と言っても、女性は男性よりも性徴期が早く来るし精神的にも先に成熟するのは当たり前の話だと思う。

 それで、中学一年生の頃以外は同じクラスにならなかったのもあってあまり話さなくなった。

 みんな高校受験を意識するほどの年齢になって携帯を持ち始めても、メールアドレスの交換すらしなかった。

 別に、理由はなくて、たまたま話す機会がなくてメールアドレスも交換しなかっただけなんだけど。

 

 これが、彼女と僕の縁というか慣れ染と言うかプロフィールというか。

 僕も高校三年生になって、大学受験もあるから、勉強してたんだ。それで、ふらっと散歩をしたくなって外を歩いてたら、着物をつけた女性がいた。

 この話をするということは、勿論その女性こそ鈴なんだけど、細い体付きや少ない口数という点はあまり変わっていなかったし、平日から着物をつけるなんて奇怪な人はそうそういない。

 だから、「久しぶり。中学生以来?」と声をかける他なかった。

 

 久々に会話をして、気まずさを抱えながらも彼女は早々に近くのカフェへ行こうと提案をした。

 別に断る理由はなかったけど、なんだか彼女が不審に見えた。というのも、まずテンション、表情が明らかに明るいものではなかった。

 別に暗いかと言われたらそうでもないけど、明るくはなかった。

 それで、カフェについて早々に病気について悩んでるという話を持ち出された。でも、彼女の家は裕福だし、お金で解決しない問題だろうということから重い病気なのだろうと悟った。

 だから、どういう風に反応すべきか考えていたんだけど、話していくうちにそれとは少しずれていることが明るみに出た。

 なんというか、彼女の言うことをそのまま表現すると、幻覚が見えるらしい。

 いないはずの人とか、ここにはいないはずの友達。

 死んだ人とかが見えるわけではなくて、話しかけられたと思ったら誰もいなかったし、逆に会話が弾んでも後から居なかったと気づくこともあったらしい。

 だから、あれ、この話もうしたよね、とか、解釈がずれることが多々あったと言う。

 

 けど、その奇怪な点を除けば彼女のおかしな点というのは特になかった。精神科に行くことをお勧めしたいのは山々なのだが、もう既にいってると思うし、何より失礼だと思う。

 だから、何も言えなかった。

 何より、彼女が一番辛そうにしていることは、自分がおかしいのか世界がおかしいのかが分からないのだ。だから、もう高校にも行けてない話も聞いた。

 

 そんなこんなで彼女の現状について色々聞いたわけだけど、それでも不審な点というのは拭えなかった。

 この話をするためだけに、カフェに連れ出すのはなんだか、別に嫌と言うわけではないけど、どこかしら違和感を感じせざるを得ない。

 ちょうど家を出て二時間が経って、そろそろ帰る話をどう切り出すべきか悩んでいた頃だった。

 彼女は突然、こう言い放った。

 

 「この話、初めて聞くんだよね。」

 

 僕はその時、気づいた。自分もその例外ではないと。

 けど、まあ、それは当たり前か。

 そういおうと思ったら、彼女は僕を遮るようにこう口を紡いだ。

 「私、この話は特に君はもう何回もしてるんだよ。他の人は、一、二回ずれることはあったけど。君だけは、何度も何度も何度も何度も。」

 

 その瞬間、なんだか僕は心が窮屈になった。

 そして、視界が狭まるような感覚を覚えて、僕は息を呑んだ。というか、息の飲み方をわすれてしまうような気さえした。

 そうか、彼女は大抵相手のことを本物と思って話すわけだけど、僕の場合は例外違う。

 彼女は僕のことを「偽物」と思って会話をしているんだな。

 そう悟った。




どう?シンプルでしょ。

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