小説版バンドリのPoppin’Partyが、香澄の家でご飯を食べる話。

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バンドリの日おめでとう!(フライング)

バンドリの日用のショートショートです。


香澄の家でポピパがご飯を食べるお話

「かすみんセンパイ、今のどうだったっすか!」

「うん! とってもビリビリしたよたえちゃん!」

 

 まるで、犬とその飼い主のようなやり取りを見せる2人は、花園たえと戸山香澄。そんな2人を、穏やかな様子で眺める3人を合わせたPoppin’Partyは、夢の蔵(ドリーム・ガレージ)でワイワイと練習をしていた。

 

「うーん! 今日はなかなか上手くいったわね。新曲も今のところ問題ないし、セトリ決めも衣装も決まってるし!」

「そうだね! 今回はだいぶ余裕があるかなぁ」

 

 有咲と沙綾がそんなことを言う。近々、CiRCLEで開催されるライブに参加をするPoppin’Partyだったが、その準備もバッチリ、仕上げているようだった。

 

「……ふむ、ふむ。なるほど」

 

 そんな中、りみは最近買ったスマホを真剣に眺めている。ライブをこなしたり、色々活動していくうちに、お金に余裕が出てきた為購入したと。本人は話していた。

 そんなピンク色のスマートフォンを眺め、下から上にスクロールしている。

 

「……どうしたのあんた。珍しく真剣な顔して」

 

 何時もとは違う、違和感のある真剣な表情をしたりみに、有咲が絡む。

 ちょっと眉を上げ、有咲を一瞥したりみは、スマホの画面を見せながら言った。

 

「ベンケー殿。この記事を読んで欲しい」

 

 ぐいと、スマホを近づける。びっしりと細かく書かれた文字群に、有咲は目を通し始める。

 

「なになに……。"チームワークを高めるには、同じ時間を共有することが大切! 相手が何を求めているのか分かるようになれば、チーム力アップ間違いなし!"……なにこれ」

 

 ネットの記事がなにかだろうか……? 有咲は首を傾げた。

 興味を持った香澄とたえも、その記事を見ようとスマホを覗き込む。

 

「えっと、……"チームワークを高める3つの方法"?」

「うむ! もっと日本一になるにはどうしたらいいか考えていた所、このようなものを見つけたのだ」

 

 ドヤ顔で語るりみ。カシャと揺れるピンクの髪留めがドヤ顔を強調するように揺れる。

 

「同じ時間ねぇ……。私達、結構一緒に居ると思うんだけど」

「……足りなーい!」

「うわぁ!? いきなり大声出さないで欲しいっす!」

 

 何事かと思った。りみが声を上げることで、有咲たちの思考を断ち切った。

 声を上げた勢いのまま、りみは何故か香澄を指さす。

 

「という事で師匠! 今日は師匠の家に皆で行くぞ!」

「へ? うぇぇ!?」

 

 思わず変な声が出る。香澄は、みんなに見つめられながらただただ驚いていた。

 

 

✩✩✩✩✩

 

「えっと、その……うん。あがっていいよ?」

 

 その日の夜。"他人を自分の家にあげる"という経験が、かなり欠如している香澄は、ドキドキしながらみんなを家に招待した。

 かなり急な訪問だったにも関わらず、親に許可を撮ってみたところ、何故か快諾。何故だろか不思議な香澄だった。

 初めての皆での時間に香澄はドキドキしている。幸い金曜日ということもあり、沙綾も含め夜遅くまで居ることができるので、そのドキドキは一層強くなっていた。

 

「お、お邪魔します……」

「おおっ! ここが師匠の隠れ家か!」

「へぇ……」

「あはは……。お邪魔します」

 

 有咲は陣地から出た関係上声が小さくなっているし、りみとたえはキョロキョロと当たりを見回している。まともな反応をしているのは、唯一経験がありそうな沙綾だけだった。

 

「あら、いらっしゃい……」

 

 ーーあ、お母さん。

 声を聞いたのか、香澄の母親が奥の廊下から現れた。だが、なんだろう。私と、皆を見て固まってるような……?

 

「……あ、あんたあの話し本当だったの!?」

「なんの事!?」

 

 いきなり肩を掴まれた。母親は、ぎゅっと香澄の肩に力を入れながら信じられないと言った顔をしている。

 

「……いえ、最近明るくなったと思ったら、そういう事だったのね。ごめんね、香澄」

 

 何故かぎゅっと抱き締められる。強く熱く抱きしめられている事実と、それをみんなに見られている事に香澄は恥ずかしくなっていった。

 

「ちょっと、お母さん。みんな見てるし……」

「香澄、成長したわね……」

「お、お母さん恥ずかしい……」

「……」

「……お母さん?」

 

 急に黙り込み、何故か抱きついたまま動かなくなった母親。終いには体重まで香澄に預け始めたので、流石にふらつきそうになる。

 

「よっと。……大師匠殿、大丈夫か?」

「あ、ありがとう。えっと……」

「りみだ。牛込りみ。師匠の弟子だ」

「弟子……? と、とにかくありがとうね、りみちゃん」

 

 りみに支えられて、香澄から離れる母親。何故かフラフラとしながらりみに支えられていたものの、少しすると座り込んでしまった。

 

「あはは……。香澄がお友達を連れてくるだなんて思わなくって、腰抜けちゃった……」

「……」

 

 なんと言うか、絶句だった。確かに私も、バンドを始めるまでこうなるだなんて思わなかったけど……。

 

「あんた、母親にどれだけ心配さているのよ……」

「なんと言うか、笑いずらいっすね……」

 

 有咲とたえが、なんとも言えない表情をしている。何も話さない沙綾に至っては、なんとも暖かい表情を香澄に向けていた。

 

「……と、とりあえず私の部屋行こっか」

 

 香澄は、母親を解放しながら自分の部屋に向かう。

 

 

 

 

✩✩✩✩✩

 

「えっと、なんだか恥ずかしいね……」

 

 自分の部屋に招き入れた香澄は、自分からメンバーを招いたにもかかわらず赤面していた。自分の裏側を見られているような感覚に陥っている香澄は、頬に手を当てながらくねくねと悶えていた。

 

「ちょっとかすみん。変な動きしないでよ」

 

 我先にと確保した座布団に座りながら言う。ほかの三人は、ベットに座ったり、床に座ったり、キョロキョロと香澄の部屋を見回していた。

 

「しかし、師匠の部屋は星が多いな。カラフルに彩られている」

「赤青黄色……紫と、ピンク? かすみんセンパイ、センス良いっす!」

 

 部屋に飾られた、5色の星を見ながら言う。部屋にあるベットが着いた側面、その壁に天井から吊るされた星のアクセサリーは、香澄にとって大切なものだ。

 

「ほんと、香澄ちゃんは星が好きだね」

 

 壁にも掛かる星の1つを手に取る。黄色いその星は、少しだけきらりと光ったようにも、香澄には見えた。

 

「……そうだ。みんな、夕飯はどうするか決まってる?」

 

 香澄が皆に聞く。

 

「んー、あたしは特に」

「自分も特に決まってないっすね」

「ウチは食べるものがない!」

「りみりん……。あ、私も特にかなー」

 

 とりあえず、りみは今度何か持っていってあげようと決めた。

 皆の予定を聞いたところ、特に決まっていってない様子。

 

「それじゃあ、うちでみんな食べていく? 私達で作ることにはなるけど……」

 

 香澄が立ち上がりながら言う。「何故?」という風に首を傾げる中、代表してたえが声を上げる。

 

「それはありがたいっすけど、私達で作っていいっすか?」

「うん。料理が出来る、お姉ちゃん達、大学生で家居ないし。後、その。……お母さん、まだ腰抜けちゃってるみたいで」

 

 4人は、納得したように「あー…」と声を上げた。

 

 その後すぐに、1回の台所に降りていった。香澄の母親はまだソファで横になっており、腰が抜けているようだ。

 香澄達は、冷蔵庫を眺めて作れるものを確認した。

 

「えっと、人参、玉ねぎ、じゃがいも……豚肉と牛肉もあるし。カレーとか出来そうだね」

 

 普段から料理をしている沙綾が、冷蔵庫の中を見る。作れるものを確認して、人数分の材料を冷蔵庫出していく。

 

「……うん。付け合せのサラダとかも作れそうだね! それじゃあ、やっちゃおうか!」

 

 いつの間にか沙綾主導で料理が決まっていった。

 たえ、りみははサラダ担当。香澄と有咲でカレーを作り、沙綾が総監督となった。

 

「……うさぎ殿! 見よ、この包丁捌きを!」

「うおお!? 切ってる手が見えないっす! 凄すぎるっす!」

「そうだろう! きゅうりもう一本追加やで!」

 

 猛烈な勢いできゅうりを輪切りにしていくりみ。飛び散っていくきゅうりを回収していくたえ。ひとつも下に落としていないあたり、とんでもないことをしているのがわかる。

 

「えっと……」

「香澄ちゃん。包丁はこう持って、逆の手は猫の手だよー」

「沙綾、人参はこのくらいの大きさでいいの?」

「そうだね! じゃがいも同じくらいでお願い!」

 

 なんと、包丁をあまり使ったことがない香澄に対して、有咲は器用に包丁を扱っていた。ちょっとショックを受けている香澄だった。

 

「ふふん、料理のゲームならいくつかやったからね」

 

 ドヤ顔で語る有咲。料理のゲームをするだけで、こんなに差が出るものなのだろうか……。

 そんことを考えているうちに、下準備はどんどん進んでいった。

 

「沙綾、野菜の準備できたよ」

「おっけー。そうしたら、全部入れて煮込んじゃおうか!」

 

 香澄と有咲は、順当にカレー作りを進めていく。具材を鍋に入れ、軽く炒めたあとに水を入れる。煮込んで沸騰してしばらく経ったら、カレーのルーを入れた。

 

「……いい匂い」

 

 スパイスの効いたいい香りがしてくる。既に、自分のお腹がなっているような気がした。

 

「ここで隠し味に……」

 

 沙綾は、冷蔵庫からマヨネーズを取りだした。

 小鉢に小さじ1杯分位取りだし、溶け残りがないように加えていく。

 

「マヨネーズを入れるのね」

「うん! 意外とコクがでて、おいしくなるんだよ!」

 

 沙綾は楽しそうに、マヨネーズを加えていく。マヨネーズのクリーム色と、カレーの茶色がグルグルと混ざるカレーを見て、カレーを食べたい欲がふつふつと湧き上がってくる。カレー、カレー、カレー……。

 

「白米の準備もバッチリだぞ!」

「いつの間に用意したっすか!?」

 

 サラダを作る片手間に、りみはお得意の白米を用意していたようだ。ホカホカに炊いてある白米もいい香りが、台所中に拡がっていく。

 香澄は、白い皿を6人分取りだしてりみに手渡した。りみがしゃもじで手際よくついでいく。

 それを受け取った沙綾は、お玉でカレーを掬う。端に固められたご飯と対になるようにカレーを注いだ。

 さらに盛られたカレーを、残りの4人でテーブルに配膳していく。付け合せのサラダもつけ、夕食の準備を整えた。

 

「あら、美味しそうな匂い……」

「すいません、台所お借りしちゃって」

「良いのよ良いのよ、腰を抜かした私が悪いんだから。むしろ助かっちゃったわ」

 母親が、匂いに釣られたように現れる。全員揃った所で、香澄達は席に着いた。

 皆食前の「いただきます」をして、食べ始める。初めて皆で作った料理は、カレーは、とても食欲をそそる匂いをしていた。

 一口。ご飯とルーを半々にスプーンで掬い、口に持っていく。

 

「……おいしい!」

「久しぶりに食べたわ、こんなカレー」

 

 香澄とありさが、各々感想を言い合う。ちょうどいい塩梅にコクがあり、ルーもジャバジャバしていなく、"家庭の味"というのが一番しっくりくる。

 

「うまい! うまい!」

「こ、こんなカレー初めてっす! 涙が出ちゃうっす!」

 

 りみとたえは、物凄い勢いでカレーを食べていた。ただ、そうしてしまう理由も分かるくらい、皆で作ったカレーは美味しかった。

 

「んー、美味しい! 沙綾ちゃんのおかげね!」

「いやぁ、そんな事ないですよ。皆で作ったから……」

「そんな謙遜しなくても良いのよ。……あ、そうだ。沙綾ちゃん、ウチに来ない? ご飯作ってくれたら、助かるわー」

「ゴホッ!?」

「かすみん!?」

 

 変なことを言う母親。その発言を理解した途端に、香澄はカレーが変なところに入って咳き込んでしまった。

 ……毎日って、毎日沙綾ちゃんがいてくれるってこと……? ……味噌汁作ってくれたり、目玉焼き作ってくれたりするってこと……? ……行ってらっしゃいって言ってくれるってこと……?

 

「か、かすみん大丈夫!? み、水!」

 

 有咲がドタバタと水を取りに行く。りみとたえも、急に起きた事でアワアワとどうしたらいいか分からない様子。沙綾に至ってはすごい赤面しており、原因である母親は、「あらあら」と笑顔だった。

 

 

 

 

 

 ……そんなドタバタがあったものの、香澄達は無事夕食を楽しむことが出来た。後片付けをして、テレビを見て笑ったりした。りみがボケたり、たえがつっこんだりする。有咲とりみのやり取りで、場が盛りあがったりもする。そんな日常のワンシーンが、夜のこと時間まで続いてるだなんて、非日常の中にいるようだった。

 ーー楽しい! 最高! みんなで同じ景色見て楽しんでいるようで、言葉を交わさずとも相手の思っていることが分かるような気持ちになった。

 これからPoppin’Partyとして歩んでいく未来が、皆の未来が溶け合ったような気がした。融解し、混ざり合い、共有される。悲しいことも、嬉しいことも、楽しいことも、辛いことも。全部、全部、共鳴し、分かりあっているよう。

 "バンドは運命共同体"という意味が、またひとつ理解出来たような気がした。こうやってなんでもない日常を共有して、楽しむことで、よりバンドどとして昇華できるような気がした。

 遠い夢、遠い音楽。眩しい光が満ちるステージへ、上がっていける。そんな確信があった。

 

「……それじゃあ、そろそろ帰るわね」

 

 有咲のその一言で、ぞろぞろと玄関へと向かう。騒がしい時間が終わりを迎え、寂しい時間帯となる。

 

「……なんか、寂しくなっちゃうね」

 

 ちょっとだけ、空白が増えた自宅が寂しかった。その思いを、隠すことなく香澄は吐露する。

 

「また明日も会えるっすから。それまで、それまで……。ぐすっ」

「うさぎ殿、ここで泣いたら師匠どのにメンツが……ぐすっ」

「たえちゃん……、りみりん……!」

「な、3人で何泣いてるのよ……」

 

 学校ではおなじみ。ただ、今回は1人多く。涙混じりに、香澄とりみ、たえが手を取り合う。

 その光景を見て、沙綾は面白そうに笑っている。

 

「あはは! ……それじゃあ遅くなっちゃうし、またあしたね、香澄ちゃん」

「それじゃあね」

 

 沙綾と有咲が手を振ってくる。香澄は、「うん! またあした!」と言ってそれに答える。

 

「師匠、またあした! 大師匠殿も!」

「かすみんセンパイ、お邪魔しましたっす!」

 

 りみとたえが、2人を追うように駆けていく。香澄は「またあした!」と、声を張り上げて答えた。

 その様子を、香澄の母親は暖かな目で見守っている。

 

「……香澄」

「なぁに、お母さん?」

 

 後ろから声をかけられる。小さくなっていく4人を見つめながら、香澄は答える。

 

「香澄、今楽しい?」

「……うん! すっごく楽しい!」

 

 それは、もう昔の面影などなかった。母親が知る香澄は、いい意味で成長を遂げていたのだった。

 今日、話には聞いていたバンドメンバーを見て。5人で繰り広げる会話を見て、母親はそれを確信した。

 

「……良かった。お友達を、大事にね」

「……うん!」

 

 星瞬く夜。星降る夜。キラキラと輝く五芒星が、香澄達を優しく照らしていた。

 

 

 

 

 

 

 


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