何処までやるか分からないけど、それは仕方ないよな?このすばはアニメ勢であり、進撃は原作勢ってやつだ。ライナー、お前と同じだよ。
「俺が鎧の巨人で、コイツが超大型巨人ってやつだ」
呼び止めたエレンにそう告げる。ベルトルトはなにやら焦っている様子だが、俺は構わず話を進める。
「エレン、お前が一緒に来てくれれば俺たちはもう、壁を壊さなくてもいいんだ……分かるだろ?」
「ちょっと待て⁈ 全然分かんねえぞ!」
ここに来てからもう三年ほどが経つが、俺たちは遂に任務を達成する道筋を見つけた。その道筋こそがエレンだ。おそらくコイツは座標──つまり始祖の巨人の力を持っている。なぜエレンが持っているのかは分からないが、エレンさえマーレに連れ帰れば任務は完遂出来る。
「ライナーお前さぁ……疲れてんだよ。なぁベルトルト、こうなっても仕方ないぐらい大変だったんだろ?」
エレンの回答が思っていたものと違う。エレンならすぐに理解してくれると思ったんだがな。これ以上壁が壊されずに、巨人の脅威に怯えなくてもいいんだ。こんなに分かりやすい話はないだろう。
「そもそもお前が人類を殺しまくった鎧の巨人なら、なんでそんな相談を俺にしなくちゃなんねえんだ?」
……人類を……殺しまくった、鎧の巨人?俺が?違うぞ、俺は人類を救う為に……
「そんなこと言われて、はい行きますって頷くわけねえだろ?」
ああそうか……そう……だったな。俺はなにを考えていたんだ?俺は戦士でコイツは兵士だ。コイツは巨人から自由を取り戻す為に、俺は悪魔の末裔を殺し、人類を救う為に戦っていたんじゃないか。
三年間もここに居たせいだ。こんな奴らに囲まれて、頼られて、尊敬されて、俺はいつしか戦士ではなく……兵士になってしまっていたんだな。いや正確には兵士にすらなれていなかった。兵士にも、戦士にもなりきれなかった俺はどうすればいい?もうエレンには正体をバラしてしまった。もう……引き返せない。
「俺にはもう何が正しいことなのか分からん!ただ……俺のすべきことは、自分の行いや選択に対し──戦士として、最後まで責任を果たす事だ!」
「ライナーやるんだな……いま!ここで‼︎ 」
──ああ‼︎ 勝負は今、ここで決める‼︎ ──
眩しい光が瞼を透き通り、意識が覚醒する。重たい身体をなんとか動かし、起き上がりゆっくりと瞼を持ち上げる。
「ここは……何処だ……」
辺りの景色を見渡すが身に覚えがない。俺の上から降り注ぐ光以外はただただ暗闇が広がる。何とか記憶の蓋を開け、ここまでの経緯を思い出そうと試みる。ダメだ……記憶が飛んでいる、俺に一体何があったんだ。状況が分からない。
戸惑いながらも立ち上がると、少し離れた場所に一脚の椅子を見つけた。その椅子に歩み寄ると、俺を照らしていた光が椅子への移される。座れという事なのだろうか、と考えるが罠の可能性もある。周囲に何もない事を確認し、ゆっくりと腰を下ろす。
──そこまで警戒しないでください。
突然目の前から女性の声が聞こえて来た。何者かと目を凝らすと、一人の女性がこちらに歩いてくる。暗くてよく見えないが、シルエットは長髪の女性に見える。俺が見ている事に気がついた様子の彼女は、指を鳴らし自らを照らし出す。彼女の後ろから椅子が現れ、それに腰掛けると彼女は自身の名を口にする。
「私の名はアクア。アクシズ教徒達の信奉の対象、水の女神アクア」
長い青髪が白く澄んだ指先から零れる。顔立ちはまさに彼女の言う通り、女神のような美しく、包み込む様な青い瞳をしている。
思わず見惚れてしまっていたが我に帰ると俺は自分の名を口にし、ここが何処なのか尋ねる。
「俺は……ライナー・ブラウン。アクアさん?と言ったか、ここは何処なのか教えてくれないか」
「此処は神界と現世の狭間のような場所。本来は命を落とした人が訪れる場所です」
シンカイ?ウツシヨ?いったい何のことを言っているのかさっぱり分からないが、命を落とした者が訪れるということはつまり、死後の世界といったところか。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!まさか……俺は死んだのか?ここに来るまでの記憶がないんだ」
「いえ、貴方は命を落としてはいません。私にも分からないのですが、突如としてここにあなたは現れました」
どうやら目の前のアクアさんも俺の置かれている状況は、理解していないようだ。いったいここからどうすれば元の場所に戻れるのだろう。いや、そもそも元の場所に戻れるのかさえ分からない。
「ライナー・ブラウンさん、貴方が一体どの世界から来たのかは分かりませんが、貴方には選択してもらわなければなりません」
「選択……とは?」
「輪廻の理に従い、その魂を浄化する。もしくは新たな世界へと降り立つかです」
彼女の言っている事が完全に理解出来たわけではないが、前者はおそらく死者として対応を受けるという事だろう。そして後者は、未知の場所で生きていくことになるのだろう。
正直に言えば、終われるのなら終わりたい。しかし俺にはまだ、ガビやファルコ、ウドにゾフィア、他にも沢山の大切な人が……仲間がいる。そんな奴らを置いて自分だけが楽になるなど、そんな事は絶対に出来ない。
「俺が元々いた場所には戻らないんですか?大切な奴らがいるんです。アイツらを捨て置くことなんて俺には出来ない」
「……一つ提案が有ります。ここにずっと居ることは出来ませんので、一先ず貴方をとある世界に転移させそこで暮らして貰います。そしてその間に私が貴方の元いた世界を探すという案です」
その提案は悪くはない。確証がないというのは分かっているが、少しでも可能性があるのならやってみるべきだろう。それに彼女は自らを女神だと言った。そんな存在が本当にいるとは到底思えないが、その現実離れした容姿や雰囲気は普通の人間とは明らかに違う。
「分かりました……その提案を受けましょう。可能性があるのなら、俺はただ進み続けるだけです」
俺がそう言うと彼女は一冊の本を懐から取り出し、とあるページを開いて俺に手渡す。そこには見たことのない文字が羅列されていた。俺は首を傾げて彼女に目線を戻した。
「アクアさん、俺にはこの文字が読めない。何と書いてあるんだ?」
「え?あーそう言えばその通りね──ですね」
「ん?」
何か違和感を感じたが、彼女が本の内容を話し出した事で違和感は頭の隅に追いやられた。
俺が今から行く世界は魔王という存在が、その世界に住む人々を脅かしているようだ。そして冒険者と言われる者達は日々研鑽を積み、技能を会得しているらしい。文明自体はマーレよりも遅れていると言ってもいいが、どうやら魔法という概念が存在するようで、物理現象を書き換えることが出来るようだ。にわかには信じられないが、俺の持つ巨人の力も何処からともなく血や肉が送られて来る。それと似たようなものだろうか。
「あなたが降り立つ街の名前は【アクセル】。その世界の最も安全な町です。降り立った後はまず始めにギルドという施設に向かって下さい」
「分かりました。何から何まで有難うございます」
「いえ、女神として人を導くのは当然の事ですから」
優しく微笑みながらそう言う彼女に、俺は思わず動悸が早くなる。まるでクリスタと話している時のようだ。
「それでは最後に一つ、この中からお好きな物を選んでください。選んだ紙に書かれている物を持っていくことができます」
「一つだけとなると、なかなかに危険のある世界のようだからな……これにするか」
「それは【仕込み指輪】ですね。指輪の中に小さな刃が入っているという物ですが、本当にそれで?もっと他にも剣や鎧なども有りますが」
「いえ、俺にはこれ一つで十分ですよ」
俺が指輪の紙を手に取るとそれは風に吹かれた砂のように散り、それらが俺の手の中に集まって指輪となった。
これで準備は整ったとアクアは立ち上がり指を鳴らす。すると俺の足元に紋様が光を放ち浮かびあがり、俺の体はふわりと宙に浮く。やがて光に包まれてその眩しさに瞼を閉じる。収まったかとゆっくり瞼を持ち上げるとそこはもうアクセルの街だった。