主人公の能力は【えっちなことするとレベルが上がる美少女サキュバスになる能力(常時発動)】です。
#ランダム能力杯 https://shindanmaker.com/1042910
よろしくお願いします。
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死んで異世界に転生をした。
神様にも会った。
「世界を救ってくれ」と頼まれた。
ヒーローみたいに活躍したいという欲求もあった。
二つ返事で了承した。
特典も貰った、お約束のステータスの開示だって出来る。
冒険者の街についてそれを確認し、僕は今……
『えっちなことするとレベルが上がる美少女サキュバスになる能力(常時発動)』
「な゛ん゛で゛た゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」
心の底から後悔している。
「ぐすっ、泣いてばかりじゃしょうがない……。とにかく、一つずつ状況を確認しないと……」
つらい、あまりにもつらい。
いくら僕がメカクレ陰キャだからと言って、こんな仕打ちはあんまりじゃなかろうか。
特典は強力だが完全にランダムである。
それを適当に聞き流して転生を選んだ過去の僕をぶっ飛ばしてやりたい。
「今の僕は駆け出し冒険者のステータス……にかなり劣る程度……」
それらは軒並み低ステータスと呼んで差し支えなく、道行く冒険者達はおろか、八百屋のおじさんよりも低かった。
この世界では一般的な冒険者でも、生きるために鍛えてきて冒険者となった彼ら。
今まで武器はおろか、農具だって持ったことの無い現代っ子。
なるほど確かに、劣るのも当然と言える。
初級も初級とはいえ、魔法が使えるのは不幸中の幸いだ。
「この世界では魔物を倒し、それにより発生する魔素を摂取。これが一定以上溜まると強くなれる。これは『経験値』と『レベルアップ』みたいなものかな」
「冒険者は魔物の盗伐数に応じた報酬。名前や称号付きの強力な魔物は別途報酬もつく。まぁ今の僕には縁がない話」
魔素の摂取、と聞くと悪いことのように聞こえるが、それはどうやら違うようだ。
魔素とはこの世界の力の源、自然の権化でもある。
現代の知識に当てはめるならマナとも呼ばれるものに近い。
この力が凝縮され、意志や形を持ったもの、あるいはそれが宿ったものが魔物と呼ばれる……らしい。
「この世界には魔王がいて、この世界を形作る魔素を我が物にし、世界の支配を目論んでいる」
この世界はつくづく、王道RPGのような世界だ。
だが目標が分かりやすいのはいいことだ。
当面の最終目標は『魔王を倒す』こととする。
「資金は神様のお陰で当面大丈夫。……が、甘い考えはしない方がいいか」
餞別は50Gなんてことは無く、半年は生活できるお金をもらっている。
が、収入が無い状態なら出費は極力避けるべきだ。
幸いなことにこの街は治安が良く、盗難や強盗の心配は少ない。
なるべく早いうちに有効な使い方と、収入が欲しい。
「……そして……これ……」
ステータスの下、煌々と金色に輝くスキル名。
『えっちなことするとレベルが上がる美少女サキュバスになる能力(常時発動)』
「………………………………」
冷静に、考えてみよう。
まず今の僕は男だ。
確かにあまり男らしい顔つき、体つきではないが、確かに男だ。
つまり、このスキルは常時発動と書いてはあるが、使用することで発動すると思われる。
内容から察するに、『使用後は常時発動』ということだろうか。
「……つ、使わなきゃいいだけだよねっ!そもそも魔物と戦うことでレベルアップできるんならこのスキルは死にスキルもいいとこっ!そうに決まってるっ!!」
「そうと決まれば今日は休もう!明日からレベル上げで忙しくなるぞーっ!」
この時、僕は大きな誤解をしていた。
ここは紛れもなく現実で、ゲームでいう所の『勇者』の様に飲まず食わず、休まずに戦うことなどできはしない。
さらに言うなら、現代で獣を狩る経験すら無かったひ弱な人間がどうして魔物を狩れるというのか。
それを、痛い程思い知ることになったのは、そう遠くなかった。
「無理だ──────ッ!!!!」
1週間後の夜、同じ宿屋の一室で枕に顔を埋めて叫ぶ憐れな僕がいた。
「無理無理無理無理っ!!ゴブリンとかレッドキャップがあんなに強いなんて聞いてないっ!!やだやだ戦いたくないっ!怖いっ!!」
意気揚々と受けたのは近隣の街道に現れた低級魔物の盗伐。
そこで待っていたのは残酷な、自分の無力を晒すだけの無惨な結果だけだった。
そもそも考えてみて欲しい。
子供サイズとはいえ、棍棒を持って悪意を滲ませた小鬼の脅威を。
口元からダラダラ涎を垂らし、今すぐにでもお前を殺してやるぞ、と言わんばかりに手斧を持って襲い掛かる小人のなんと恐ろしい事か。
パーティを組んでいなかったら、僕は間違いなくあそこで死んでいただろう。
「斧掠ったのすごく痛かったしゴブリン怖いし全然役に立てなかったし……もうやだぁ……戦いたくないよぉ……」
大怪我はもちろん、小さな怪我だって稀な時代で生きた僕にとって、武器を振り回して襲い掛かる化物の存在は未知の恐怖だ。
初めて味わった腕が切れてしまいそうな痛みは、筆舌に尽くしがたい苦痛だった。
しかも残酷なことに、ゴブリン一匹狩って手に入る魔素は非常に微々たる物。
数十、数百倒して次のレベルに行けるだろうか、という程度の物であり、その頃には僕の身体か心が死んでしまうのは想像に難くない。
ギルドの事務員に「必ずパーティを組みなさい」と言われたことをこれほどまでに感謝することになろうとは思わなかった。
「……でも、かっこよかったなぁ……」
思い起こすのは僕がレッドキャップの手斧投擲を腕に受け、痛みに腰を抜かした時に動き出したあの人の姿。
僕が動けなくなったと見るや否や盾を持った彼が即座に僕の前に立ち、魔物を退けてくれた。
そこに寄ってくる魔物から僕をカバーし、凄まじい気迫で守り通してくれたのだ。
【はじめまして、今日はよろしくね】
彼、セオローさんは金髪にヒスイ色の目をした、優男と呼ぶのが相応しいような、正直言ってどこか頼りなさそうな顔だった。
けれど、騎士盾と長剣を持って僕を護るときの表情は精悍な戦士の顔で、そして悔し気にこう言った。
【すまないッ!大事無いかッ!?】
僕が傷ついたのは僕のせいではなく、守りに入るのが間に合わなかったセオローの落ち度だと言うのだ。
僕が戦えないことなど百も承知で、それでも護り切ると決めていたんだそうな。
守られることしか出来なかった僕に向けて、彼は罵倒や文句を言うことは無かった。
何度謝っても「命が無事で本当によかった」と告げた。
───憧れた。
───盾として立ちふさがり、僕を護るその背中は輝いて見えた。
その後すぐ、彼が治癒(彼曰く『祈り』と呼ぶらしく、魔法ではないらしい)を使ってくれたことにより僕の腕はちゃんと繋がり、事なきを得た。
「……かっこ、よかったなぁ……助けてもらったし、お礼しないとなぁ……」
僕もいつか、セオローさんのようになれるだろうか。
……無理だ、傷つくのが怖い僕には到底無理だ。
このまま僕はレベルアップできず、この街で腐っていくのだろうか……
「……お礼」
その時、僕に魔が差した。
「……いやいやいやいや流石にそれはない。それはないだろ僕。お礼って、いやお礼ってそういうものじゃないだろ。もっと感謝の気持ちとかそういうものであるべきで」
唐突だがこの世界、非常に娯楽が少ない。
科学技術が発展していないのだから当然だが、遊び道具にも幅が狭いのだ。
だからこそ『そういうお店』の需要が非常に高いのだ。
小耳に挟んだ情報から判断するに、街に一か所は必ずあり、明日をも知れない冒険者の利用客は後を絶たない。
それだけ冒険者は『飢えている』と言える。
それはセオローさんも例外ではない……はず。
「……うん、お礼だから。これはお礼。能力の確認ついでだから……仕方ないよね……」
折角持っているスキルだし、一度は使っておかないと勿体ない。
いざという時、必要になるかもしれない能力の詳細を知らないのは命取りになるかもしれない。
そう考えると、これも合理的な選択と言える……はずだ。
誓って言うが、僕に同性愛の気はない。
……が、不思議なことに、今からしようとしていることに忌避感は然程ない。
自分の無力さに投げやりになっているのかもしれない。
だが、未知への興味と罪悪感を免罪符に、事に及ぼうとしていることだけは自覚していた。
「スキルは……念じればいいのかな……ぅあ!」
眼を閉じて念じようとすると、その変化はすぐに表れた。
女児向け変身ヒロインの変身シーンのように光に包まれたかと思えば、それもすぐに止む。
「わわわわ……な、何が起きて……っ!?」
自分の喉から発される声はやや幼げで高く、贔屓目にしても男性の声ではなかった。
焦って部屋にかかった鏡を見る。
そこにいたのは正しく「美少女」だった。
元々目元まで隠れる程長い前髪はそのままに、後ろ髪はさらに伸びて腰まで届く程長く。
背は少し縮み、その胸には背丈に似つかわしくない程大きな『夢』が詰まっていた。
肩から腰にかけてのラインは美しく、肌にはシミ一つない。
形のいいお尻、細い脚。
背中には一対の小さな翼、お尻の付け根にはゆらゆら動く尻尾。
極めつけは、それらを惜しげもなく晒す服装。
上下ともに危ない所は黒いピッチリとした下着?水着?のようなもので覆われている。
にも関わらず、
脚には膝よりやや上まで届くソックスのみ。
が、それだけだ。それ以外には何もない。
何も、体を隠す物が無い。
「うっ、うあぁ……!?」
何かを言おうにも言葉が出てこない。
──────熱い
──────体が、熱い
「い、行かなきゃ……い、急がないとマズい……!」
「セッ、セオ、ロー……さん……♡」
ドアを開ける億劫さがもどかしく、窓を開けてそのまま飛び立つ。
どうしようもない程の火照りをその身に宿したまま、あの人の匂いの元へ───
「はぁ……」
依頼を終え、宿のベッドに寝転がってため息をつく。
思い返すのは、先の戦闘の不手際だ。
「なんて不甲斐ないんだ僕は……立派な盾は飾りじゃないんだぞ……ッ!!」
先の依頼では魔物の注意を引く盾の役割を務めさせてもらったが、僕は盾としての役割を全うできなかった。
共にパーティを組んだイツキという少年に敵の攻撃を通してしまった。
確かに、イツキの動きも拙かった。
魔法の消費を温存するためとはいえ、構えたショートソードには腰が入ってなかった。
敵との距離の取り方も慣れていないようだったし、恐らく冒険者になって日が浅く、初めての依頼であったことは想像に難くない。
「───だからどうしたというんだ」
ならばどうして僕はそれを護りきらなかったッ!
戦うのに不慣れと知っていたのならよりいっそう注意を払うべきだったッ!
なにより、どうして遠方にいたレッドキャップの斧投擲を予期して彼の前に立たなかったッ!
「僕は未熟だ……ッ」
仲間達の前に立ち、率先して脅威と立ち向かうのが盾の役目だ
なのに、油断と慢心からこの体たらく。
その結果彼の腕は斬られ、負担を増やす結果となってしまった。
不甲斐ない、不甲斐ない、不甲斐ない。
倒すだけでなく、誰かを守る力が欲しくて盾を持ったはずなのに……ッ!!
「彼もどこかに行ってしまったし、もやもやする……」
傷を負ったときにかなり錯乱していた彼も、依頼料を山分けした後すぐにどこかに行ってしまった。
あの時のイツキは酷く気落ちしていて、声を掛けようにも躊躇われる背中だった。
冒険者を始めたばかりの頃によくある症状だ。
自分の非力さや無力さ、そういうものに押しつぶされそうになって、やがてやめてしまう。
「彼ともう一度話をしなくては、な」
このままでは彼は、今回のことを気に病んでしまうかもしれない。
何より、彼を見捨てるのは僕の矜持に反する。
僕は弱気を助け、悪しきを挫く為に旅を続けているのだから。
「考えていも仕方ない。冒険者なら宿を取ってるだろうし、明日探して……ん?」
コン、コンと窓に何かが当たる音がする。
カーテン越しだから向こうに何があるかは分からないが、何かがいるのだろう。
「……なんだ?誰かいるのか?」
僕はそっとカーテンを開いた。
「……!!」
「イツキっ!?なんでこんなところにっ!?ちょ、ちょっと待ってくれ、今開ける!」
そこには鬼気迫る表情で窓を叩くイツキがいた。
何かに追われているような、急がないと大変なことになるような予感につられ、すぐさま動き出す。
窓の鍵を開け、室内に彼を招き入れる。
あまりのことに驚いたが、その時になってようやく彼の異変に気付く。
「イ、イツキ?か、髪がさっきとは……。それに、その服……!?」
前髪こそ変わってないが、後ろ髪が腰にかかる程伸びており、よもや別人ではないかと疑う程にその外見は変化している。
だが問題はそこではない!
その、服装が目のやり場にとても困る!
む、胸と尻とをピッチリとした下着とも呼べないような何かで隠しているだけで、他は何も着ていない!
背中にちらりと見える翼や尻尾も確かに気になるが、それを無視してしまいたくなるほどの色気を感じざるを得ない!
いやそもそも彼は男だったではないか!
髪も短く、体の起伏も無かったし、なにより彼自身男だと言っていたはずだっ!
と、ともかく話を聞かなくてはいけない!
今彼に何が起こってるのか……!
そう思った矢先、彼が僕の手を掴み、無理矢理ベッドに引きずり倒す。
「うわっ!イ、イツキ!何を……!」
「フーッ……♡フーッ……♡」
これは、ダメかもしれない。
眼にはハートの模様が浮かび、髪の隙間から除く瞳はあの時見えた黒目ではなく、桃色に光っていた。
その表情からは理性というものが全く浮かんでおらず、その表情は笑みこそ浮かべているが、獲物を見つけた獰猛な獣のようだった。
しかも今の彼は妙に力が強い!ふ、振りほどけないっ!
「ご、ごめんね、セオロさんー……!ちゃんと話すから、全部説明するから……!」
「そ、そうかっ。大丈夫なんだなっ!よし、落ち着いてまずはそこに座って───」
「動かないでくれれば、全部こっちでやるから……♡」
「───」
希望は、絶たれた。
「……ちょ、イツキ……それっ、ダメ……!」
「ふふっ、セオローさんつらそーです……♡」
「どうですか♡きもちーですか♡」
「やめっ、ぅあっ、それは……!」
「ねぇ、セオローさぁん……♡僕、切ないんですよぉ……♡」
「いっ、イツキ!僕は、僕はっ!!」
「だいじょーぶですよぉ……♡なーんにもきにしないで、きもちよくなっちゃいましょー……♡」
後から聞いた話だが、イツキは初めてなこともあって勝手が利かず。
僕は禁欲的な生活が長く、タガが外れてしまっていたのだと思う。
この結果を招いたのは……きっとどちらでもないのだろう。
「「最低だ……僕は……」」
翌朝、二人の嘆きが室内に零れた。
「えっと、事情を聴いてもいいかな……?」
「あっ、はい。分かりました」
昨晩、僕達は乱れに乱れた。
多大なご迷惑をかけたにも関わらず、こうして対話の機会を設けてくれたセオローさんには感謝しかない。
「……はい、以上となります。ご清聴ありがとうございました」
「理解が追い付かない」
一先ず部屋を片付け、椅子と机を用意して向かい合い、全て洗いざらいをオセローさんに話した。
流石に目に毒だと思ったのか、顔を赤くしたままローブを貸してくれたからそれを羽織っている。
「なんだそれ……前世の記憶?異世界?サキュバス?訳が分からない……!」
「ごもっともだと思います……」
オセローさんの綺麗な額に皺が寄る。
至極もっともだとすら思う。僕だったらこんな話をする奴イカれた奴だと思って距離を取る。
だが忘れるには昨晩の出来事はあまりにも刺激的すぎた。
「うん、この際異世界だの転生だのは僕の手に余るから置いておこう。そのスキルって、その、元に戻れるのかい?」
「……いえ、戻れません。恐らくですが、使用後は常にこの身体になるようです……」
『常時発動』ってこういうことだったのかー……。
一回発動したら死ぬまでサキュバスって、代償ってレベルじゃないっ!!
「今後はその羽根や尻尾は隠さないとだね。君自身の能力はどう変わったんだい?」
「……めちゃめちゃ強くなりました」
そこら辺のおじさんにも負けていた僕の能力値は、少なくとも数値上は冒険者としては一般的なくらいに向上していた。
決して強くはないが、それでもこの世界で生きるための大きな助力となるだろう。
「……確かに、昨晩までの君とは気配が違う。あくまで昨日と比較してだが、比べ物にならないと言ってもいい」
僕の眼を見るセオローさんの目はいたって真剣だ。
一つため息をつくとこちらをじっと見つめ、どこか慎重な面持ちで問いかける。
「君の目的は何だ?異世界から来たというなら、何の為に来たんだい?」
「魔王を、倒す為です。それが第二の生を受ける代価です」
仰々しく言ったけれど『チート使ってハーレム作るの夢見て異世界転生しました!』とはいくら何でも言えないね……
「……そっか。そういうことなら、僕と目指す先は同じだね」
「セオローさんも!?」
「僕は転生したわけじゃないけれどね」
どこか居心地悪そうに、彼はぽつりぽつりと零す。
「……ありきたりな話さ。僕のいた国は魔王に滅ぼされた。その復讐の旅さ」
翡翠色の目に憂愁の色を浮かべ、哀しそうに彼は呟いた。
「僕は必ず、魔王を倒す。その為に力を得たし、そのために僕は生きている。……そんな旅の中、君と出会ったわけで……」
気まずい視線が交錯し、どちらともなくそれが外れる。
互いに言いたいことがあるのに、お互いそれを切り出せないでいる。
「なぁ、イツキ」
「……なんでしょうか」
「非常に言いづらいんだけどね……このままだと僕はイツキ、君に依存してしまうだろう。それくらい……その……良かった」
「……僕もセオローさん以外とは……ちょっと、やだなって思いました」
「それは……喜んでいいのかな」
「多分……」
「……くくっ」
「……あははっ」
「なぁ、イツキ」
「はい、セオローさん」
「一緒に、旅をしないか?」
「……喜んでっ!」
僕達の旅は長く続いた。
二人旅は決して楽ではなかったけど、それでも幸福に満ち溢れていた。
「んー、さっきの村がここなら……あの山の位置から次の街までの距離は……」
「イツキ……地図読めたんだ……!」
「それどういう意味ですか!?そこまでポンコツじゃないですよぉ!!」
息の合った連携をするのが好きだった。
「イツキッ!とどめをッ!」
「はいっ!任せてくださいっ!」
彼に髪を梳いてもらうのが好きだった。
「んー……きもちいーです……」
「そうかい?……姉さん達にもよくやってたなぁ」
「……辛いときは泣いていーんですよ。どうせ、誰も見てないです」
「そういう察しの良い所、君は姉さんに似ているな……」
「もーっとお姉ちゃんに甘えてくれていいですよぉ♡」
「……それも、悪くない……かもしれない……」
「やったぁ♡」
共に過ごす雪の日も、暖かった。
「さぶいぃ……!」
「この地域はいつ来ても寒いからね。その分宿泊業も盛んだから、宿は保証されているのが救いかな」
「……そうだっ。一緒に寝ましょー♡」
「えっ。いや、幸いベッドは二つあるし……ちょっ、こらっ、そっちは僕のベッド!」
「ほらほらー♡温かいですよぉー?」
「うぐっ……し、仕方ないなぁ……」
思えば、スキルのことは理由付けでしかなかったような気がする。
「えへへー、セオローさんの腕枕……♡」
「……君は、本当に、底なしだね……」
「……んふふー、セオローさんだからですよ?」
「やめてくれ。本当に歯止めが利かなくなってしまう……」
ある日の夜だった。
二人で横に並んで座り、空を眺めていた。
「不思議なものだ」
「? なにがです?」
「僕が国から逃がされて、初めて息をついた時もこんな夜だった」
「……」
「共に旅をする人がいるだけで、こんなにも安心するのか、とね」
「……ふふっ」
「……くくっ」
目を瞑り、額を合わせる。
それだけなのに、お互いの何もかもが通じ合っているような錯覚を覚えた。
二人で過ごす時間が愛おしい物に変わるまで、そうかからなかった。
「───いろんなこと、ありましたねぇ」
「……懐かしい、なぁ」
「覚えてますか?あの強欲な王様の国。ほら、謁見のとき僕の体ばっかり見てたスケベ親父!」
「あぁ、覚えている、とも」
「あの時のセオローさんは視線で射殺さんばかりでしたよね!あとあとっ!炭鉱の町で飲んだお酒美味しかったですよねっ!」
「……あぁ、辛かった」
「僕あんなに強いお酒初めて飲みましたよっ!なんで炭鉱の人達ってあんなにお酒に強いんでしょう……。あっ、そういえば港町で結ばれたご夫婦!覚えてますか!?」
「……ぁぁ」
「僕はですねぇ、あの人達見た時から憧れちゃったんですよー……。このスキル使ってから体戻んなくなっちゃったし、僕もいつかは結婚して、ああやって綺麗なドレスを着て、お祝いとかするのかなーって……」
「……」
「その時はね、セオローさん」
「貴方に隣に立ってほしいなーって思ってたんですよ?」
「ねぇ、なんで」
「どうして、僕を庇ったんですか」
「僕、貴方と同じくらい強くなったんです」
「守られるばかりの僕じゃ、なくなったんですよ?」
「帰りましょうよ。一緒に……」
「……あなたのいない世界で」
「僕は、何の為に生きればいいんですか」
どうか、幸せに
生きて
「……ぁ」
「セオ、ローさ、ん……!」
「うあぁぁぁぁぁぁん……!!」
かつて、世界を恐慌の渦に陥れた魔王がいた。
世界が混沌に包まれる中、それを討つ者が現れた。
それは一人の王子と、一人の魔法使いであったと伝わっている。
魔王の城での激戦の中、辛くも二人は魔王を討つ。
しかし、それがどのようにして行われたのかは後世に伝わっていない。
その後すぐ調査が行われたが、そこには激戦の跡こそ見受けられるものの、誰の姿も無かったという。
今は既に廃墟となった亡国。
そこにはいくつもの墓がある。
誰が、いつ作ったかは誰も知らない。
それどころか、そこに墓があることすら知っている者は誰もいない。
たくさんの墓石が並ぶ中、そのうちの一つ。
ボロボロの剣と盾が飾られる一等目立つ墓。
そこに寄り添う誰かのことなど、誰も知らない。
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