【紅葉のわけ】 弦十郎×クリス
「あら、司令? どうしたんですか、その両頬のあとは?」
「む? …聞いてくれるか、友里。実は先日、クリスくんの買い物に付き合わされたわけだが…」
「あらあら、はいはい」
以下回想~
「…いいよなあ、ああいうの」
クリスの視線の先には、子供を連れた親子三人組。
両親の間に挟まれた子供は、左右の手をそれぞれ父親と母親に掴まれて、ぶら下がりっこをしたりしてはしゃいでいる。
「どうした、クリスくん?」
「い、いや、なんでもねえよ!? 全然羨ましいだなんて思ってねえぞッ!」
狼狽するクリスの視線の先を追い、納得の表情を浮かべる弦十郎。
「遠慮するな。ほら、手をつなぐぞ」
巨大な手が、クリスの小さな手をぎゅっと握ってくる。
「ッ!」
クリスは驚きはしたが、手を振り払おうとしない。
だが、弦十郎のもう一方の手もこちらの手を握ってきたことに、真っ赤な顔に怪訝そうな表情を浮かべてしまう。
結果として、クリスは背後から弦十郎に両手を掴まれる格好に。
「…おっさん。こりゃ一体なんの真似だ?」
「ははは、何も恥ずかしがることはないぞ、クリスくん」
そのままクリスの両手を持ち上げる形で、ぶらんぶらんと彼女の身体を宙に浮かせる弦十郎。
「うわああッ!? 怖いって! 降ろせ離せッ!」
~回想終了
「…とまあ、降ろした直後に一発貰ったのがこれだ」
と自分の左頬を指さして見せる弦十郎。
「…では、右の頬は?」
「そのあと入ったファミレスで、お子様ランチをご馳走してやろうと思ったら殴られた」
「………」
「どうした、友里。なんで泣いている?」
「雪音さんが不憫すぎるからですよ!」
「…そうだ、な。あいつはきっと両親との思い出と愛情に飢えているだろうからな…」
「ッ!!」
弦十郎の頬に、新たな紅葉のあとが追加されたそうな。
【初めての…】 藤尭×切歌
その日、S.O.N.G.本部に来るまでに、月読調は軽い頭痛を覚えていた。
「…訓練まで時間はまだあるし、ちょっと休も…」
呟いて向かった先は医務室。
当直の医師に薬を貰い、一番奥のベッドに横になる。
カーテンを張り巡らせた半個室のようなスペースで、どれくらい眠っただろうか?
調は、馴染みのある声を耳に目を覚ます。
「そ、それじゃ、よろしくお願いしますデス!」
…切ちゃん?
「けど、本当、オレなんかでいいの?」
藤尭さん!?
「でも、こんなの藤尭さんくらいにしか頼めないデスよ!」
「あのさ。オレはこんな外見だけど、別にそういう経験が豊富ってわけじゃないんだぜ?」
「いいからお願いするデス! 調に、アタシは大人だってところをアピールしたいんデスよ!」
「…わかった。でも、決して無理しちゃ駄目だからね?」
只ならぬ雰囲気の会話に、調はゴクリと唾を飲み込む。
即座に飛び出すべきだったかも知れないが、完全に機を逸した彼女は、黒髪の上に毛布を被り、それでもじっと耳をそばだてる。
「それじゃあ、準備が出来たらいってくれ」
「はいデス! …できましたデス! よろしくお願いしますデス!」
「って、切歌ちゃん近い近いッ!」
「っと、すみませんデス…」
「うん、切歌ちゃん、綺麗な肌だね」
「あんッ、そんな揉んじゃ…!!」
「ご、ごめんごめん。それじゃ、一気に行くよ?」
「………」
「やっぱり怖いよね? 今回はやめておく?」
「いいえ! 一気にお願いするデス!」
「…分かった。ちょっと痛いかも知れないよ?」
「大丈夫デス! 覚悟完了デェスッ!」
「それじゃあ…」
「ッ!!」
「だ、大丈夫? 痛かった?」
「い、いえ、最初だけデス、大丈夫デス…!」
「あちゃあ、やっぱり血が出ちゃったねえ。確かここらに薬が…」
「切ちゃん!!」
毛布を跳ねのけて、ベッドから飛び出す調。
カーテンの向こうには、目を丸くする藤尭と切歌が。
調の予想に反し、二人とも服は着たまま。
「し、調ちゃん?」
「どうしたですか、調ぇ!?」
「え!? いや、あの二人こそ何をやっていたんですか!?」
「あ、ほらほら見るデスよ、調ッ♪」
髪をかき上げて耳を剥き出しにしてくる切歌。
そんな彼女の耳たぶには、イヤリングが輝いている。
「えへへッ! 藤尭さんに開けてもらったんデスよ! どうデス!? 大人っぽいデスよね?」
「大人だったらオレに頼まないで自分で開けられるようにしなって…」
「調? なんで顔真っ赤にしているんデス? ひょっとして熱があるんデスか?」
後日談
「あれ? 切歌ちゃん、せっかくつけたピアス取っちゃったの?」
「聞いて下さいデスよ藤尭さん! マリアにも見せたら『…うちの切歌が不良になっちゃった…ッ』っておいおい泣かれて…」
「おかんかッ」
【愛しているって言ってみるゲーム】
「第一回、みんなに愛しているっていってみるゲーム~!!」
「別にするなっては言わねえけどよ、なんであたしんちなんだ?」
「まあまあ、クリスちゃん。ほら、まずはくじ引きくじ引き♪」
切歌×調
「調! 愛しているデスよッ!」
「切ちゃん! 私も愛しているよ!」
「………」
「………」
「あまり恥ずかしくないデスね?」
「うん。そうだね」
「まあ、切歌ちゃんと調ちゃんの組み合わせは鉄板だよね! 次、行ってみよ~!」
マリア×翼
「翼、愛しているわ」
「おう。マリア。私も愛しているぞ」
「あら? 意外と動じないのね、あなたは?」
「ふふ、わが心は常在戦場。この程度で狼狽えていては、護国の剣たる資格なしッ」
「…う~ん、思ったより二人とも動揺してないな~。やっぱり大人だからかな~」
「でも翼さんが今口に入れてもぐもぐ噛んでいるの、チョコレートじゃなくて銀紙包装紙の方ですよ?」
翼×クリス
「雪音ッ! 愛しているぞッ!」
「う、あ、うううううッ」
「どうした雪音! 愛していると言ってくれッ!」
「う、先輩、あたしは先輩のことを…」
「うむッ!」
「あ、あ、あいし…がーッ! やっぱ駄目だ勘弁してくれッッ!!」
「キターッ!! これこれこれ! これですよ! この反応が欲しかったんですよ!
このきゃわいいクリスちゃんの反応は永久保存版で…!」
「―――言っておくが、今すぐその動画を削除しねえと、生きてこの場から返すつもりはねえぞ?」
マリア×クリス
「クリスッ! 愛しているわッ!」
「う、あ、ううううッ」
以下略
「…ぜーぜー。次でラストにしようぜ。これ以上、あたしの身が持たねえよッ!」
「え~? 仕方ないな~。それじゃあ最後は」
おおとり
「未来! 愛しているッ!」
「響! 私も!」
「ううん! 未来が思っているより、わたしはもっともっと未来を愛しているよ!」
「その十倍、私は響を愛している!」
「だったらわたしはその十兆倍だぁああ!」
「…これってゲームデスよね?」
「本気度が凄い…」
「そーゆーことは本当に家でやれ……ッ!!」
そして真実
「…良かった! だーれもあのバカ相手のくじを引かずに、本当に良かった…!」
「未来さん、ずーっと笑顔だったけれど、最後の最後まで目が笑っていませんでしたよ…」