ピーターパンしてたら世界が変わってた 作:霧丹
「ここがアラバスタか…」
「突然ピーターが来るなんて連絡があったからビックリしましたよ。一体どうしたんです?」
「いや、何か確信があって来る事にしたわけじゃないんだ。ちょっと気になるというか、モヤモヤしたものがあってね」
アラバスタへと到着した俺たちは、この国に住む仲間に迎えられていた。
反乱だとか物騒な単語を聞いていたから国中が殺伐とした雰囲気に包まれているのかと思っていたが、思っていたよりも町は賑わっているようだ。
無関心というわけではないだろうが、そこまで国王などを敵視しているようにも見えない。
お店で食事をしながら働く人たちに話を聞いてみても「あの国王様がそんな事をするのかねぇ?」などと半信半疑といった具合だった。
そういった話を聞いてみるだけでも、国王が権力を振りかざしたり悪政を敷いたりしていないことがわかる。
これでもし雨を奪ったのが事実なのであれば、恐らくだが国王が脅されたりしている可能性が高いのかもしれない。
食事と情報収集を終えて、新しい報告もあるからとこの国に長くいる仲間の家に招待されたので向かい報告を聞いていく。
ちなみにこういう場合でも
「ピーター。どうやら仲間たちで調査した結果、いろいろと新しい情報が入ってきた」
「ああ、内容を聞かせてくれ。俺がわかっているのは国王が雨を奪い、物的証拠もある。それによって国民が反乱を起こし、そして七武海が旗頭になっているということだ」
「今この国で水面下で動いている集団がいることがわかった。規模などはわからんが、どうやら国王軍の中で裏切り工作をしたり国民を扇動したりしているらしい」
「それは確かなのか?」
「間違いない。俺たちの仲間にも勧誘があったようだ。船旅をしながら賞金稼ぎをしていた仲間に声がかかり、そしてアジトがこの国にあるということだった。そいつらが言うには、理想国家の建設がなんとかとか言ってたみたいだな」
「…それで?」
「その時は断ったらしいんだが、そんなに間を空けずにこの反乱騒ぎだろ?俺たちだって住んでいるこの国を荒らされたくない気持ちもある。だからそっちにも仲間を潜り込んで調査してもらっていたんだ」
仲間からの報告はまさかの内容だった。国王への不満や不信が原因で反乱が起こっているのも確かなんだろうが、そこに扇動する者たちがいるとは…
だが反乱軍へ参加するように扇動しているということは、当然反乱軍が勝ってほしいということだよな。
反乱軍が国王を打ち倒したとして、一体誰が得をするんだ?王制から民主制にしたいのか?
だが国王が善政を敷いている国で、わざわざ革命を起こしてまで民主制にする必要があるようには思えないんだが…
今革命軍がやっているような、国民を顧みないような君主を打ち倒すためなんだとしたら反乱軍が勝って欲しいために水面下で工作するのも頷ける。が、今回は当てはまらないはずだ。
だとしたら大臣みたいなのが国王の座を狙ってるとかもあり得るのか。
それか、俺の勝手な思い込みだから考えないようにしていたが、クロコダイルの立場ならそれもあり得るんだよな。
反乱軍が国王を倒したとして、次に国王に収まる可能性が高いのは旗頭であるクロコダイルだ。
海賊としてこの国を奪うために動いていたとしたら…まぁ考えても詮無きことか。
そこからしばらくは町を周って話を聞いたり、そこに住む子供たちに折り紙を教えたりしながら様子をみていたが、困窮したり泣いている子が少なかった。
そして年配の、といっても俺と同じくらい前後の年の国民には今もなお慕われていることがわかり、この国を治めるコブラ国王というのは賢王なのだなと実感したものだ。
「ピーター。どうやら仲間たちが突き止めたようだ。黒幕は七武海クロコダイルで確定だ」
ある日、いつも通り情報を集めたりしながら過ごしていた俺の元にそんな報告が入ってきた。
水面下で動いている集団、バロックワークスというらしいんだが、そこに潜入していた仲間がアラバスタの王女と出会ったらしい。
最初は否定していたらしいが「君もアラバスタの反乱に加担しているのか?」と聞いたところから態度が変わり、こちらの事情も説明しつつ話を聞いたら王女も潜入しているとの事だったそうだ。
そして黒幕を突き止めたはいいが、後はバレないように抜け出して国王に伝えるつもりが別の島に派遣されてしまったらしい。
今は潜入していた仲間に連れられて、一緒にこっちに向かっているということだった。
なんて危険な真似をする王女なんだ。俺たちの仲間のように身を守れるだけの力を持っているわけでもないだろうに…
これは年長者として少々お説教しておくべきかもしれないな。
「ピーター。王女をお連れしたよ。ビビ王女、こちらは我々の恩人であり育ての親といってもいいピーターです」
「初めましてビビ王女。俺は…そんな恩人なんて大袈裟なものではないが、ピーターと名乗っている」
「ええ、初めまして。ただ申し訳ないのだけど時間がないの。早くお父様に伝えないと…」
「落ち着いてくれ。君の父のところへは俺たちの仲間が君の連れの男と一緒に向かっている。少し君に話しておきたいことがあってね」
「話なら後にして!一刻も早く反乱軍を説得して本当の事を伝えないと手遅れになってしまうのよ!」
うーん…かなり焦っているみたいで王女は全然こちらの話を聞いてくれないな。
だが気持ちが昂ぶったのか、涙を流しながらの彼女の慟哭を聞いて、本当にこの国が好きで国民が大切なのだろうということが伝わってきた。
そのためには自分の危険も顧みない、献身的な思いが行動となって王女自ら潜入するなんて事までやってしまったのか。
よく見れば十代半ばくらいの、まだまだ少女じゃないか。こんな子が国民同士で争わないためにそこまでするとはな。
きっとこの子にとって国民がみんな平和で笑っていられる国が夢なのだろう。
ならば俺もこの子を救うために全力を尽くそうじゃないか。
「王女の想いはよくわかった。子供の夢を助けるのは大人の役目だ。みんな!子供の夢を助けるために少しばかり俺に手を貸してくれ!」
「「「「「もちろんだ!!」」」」」
「…え?手を貸してくれるの?」
「ああ、今の話を聞いて助けない理由などないさ。もう心配はいらない。さぁ、一緒にお城へ行こう」
俺たちだってただの革命や反乱だったり、王女の父親が愚王だったら足を突っ込んだりはしないだろう。
だが国を狙う明確な悪者がいて、その国を想う姫の涙を見てしまったら動かないわけにはいかない。
そう思ってしまうのは俺の中の異世界知識が原因なのか、それとも俺にも男としての何かがあるのだろうか。もういい年したおじさんだけど…
まぁネバーランドで子供たちに絵本や紙芝居を読んであげるときにそういう本も多かったからなぁ。
男の子はお姫様を守る騎士に、女の子はお姫様に夢見るという事でそれが根付いているんだろう。
そしてそれは、読み聞かせていた俺にもしっかり根付いていたようだ。
話を聞いていた仲間たちが一斉に動き出し、他の仲間たちにもその事を伝えていく。
もちろんあくまでも俺の個人的な思いでもあるので、無理に協力してもらおうとは思っていない。
争いになる可能性だってあるし、そういった戦うかもしれないという事も考慮した上で手伝ってくれるのならばという話だ。
とはいえ、今いる仲間たちは全員協力してくれるようだ。ありがたい話だな。
俺たちは王女と一緒にアルバーナのある王城を目指して移動していく。
だが思ったよりも距離があるため、移動するだけでも相当な時間を費やしてしまった。
砂漠の国というのは移動するだけでも体力を消費してしまうため、こまめに休息を取りながら数日かけて確実に王城へと近づいていった。
「クハハハハ。国王コブラよ!お前がこの国から雨を奪った事はわかっている。大人しく認めればその首1つで事は収まるんだ。後の事は俺がやっておいてやるから安心しろ」
「「「「「雨を奪うな!水を返せ!」」」」」
そして近くまで来た時には状況は俺が思っていたよりも早く動いていたようで、緊迫した雰囲気が反乱軍がいる城の外を包んでいた。
先頭にクロコダイルが立ち、後ろを反乱軍たちで固めて国王へと降伏勧告をしている。
それを受けて国王も側近だけを連れて城の前まで出て行き、反乱軍と対峙して己の無実を主張しているが反乱軍は聞く耳持たないといった感じであった。
俺たちが王女を連れて城に着いた時は、クロコダイルが今まさに国王に攻撃を加えようとした時だった。
「そこまでだ!!」
本当は生み出したカードとかをカッコよく投げて止めたかったところだが、そんな事を練習もせずできるはずもないので静止の声だけでクロコダイルを止める。
なんとか伝わったのか、クロコダイルのほうも俺の声を聞いて止まってくれたようだ。
「誰だてめぇ…俺の、いや反乱軍の邪魔をするとはどういうつもりだ?」
「お前の企みは既にわかっている!反乱軍たちよ!彼女の話をよく聞くんだ!」
ここからは俺の役目ではない。彼女の言葉だからこそ伝わるものがあるだろう。
国王や側近さえも王女の姿を見て安堵や驚きの表情をしていたが、王女の話を黙って聞くみたいだ。
王女が前に出て必死に自分が得た真実を伝えていく。国王は何もやっていない事、クロコダイルが国を乗っ取ろうとしている事、国民に不審の芽を植え付けて扇動した事などだ。
反乱軍の中にもざわめきが聞こえてくるが、クロコダイルはまったく動じていなかった。
「クハハハ!勝手に俺を黒幕に仕立て上げるのは結構だが、王族である王女がどれだけ無実を叫び言い逃れしたところで誰が納得できるというのだ。それに王宮でダンスパウダーが見つかっているのが何よりの証拠だ!」
「それもあなたの計画でしょう!あなたが作り上げたバロックワークスがこの国で暗躍していたのはわかっているのよ!」
「クハハ、随分とお転婆な王女様だな。だがそうだな、確かに俺は反乱軍に人が集まるように仕向けたさ。だがそれの何が悪い?俺と同じようにこの国を不審に思った人間を増やしただけだ。仲間を増やすのは当然の事だろう?」
「なっ!?あなたはこの国を乗っ取るために、自分に付き従う人間を増やしたかっただけじゃない!」
「…そこまで言うのならば明確な証拠があるんだろうな?王女の妄言に付き合ってやるほど、そしてそれを聞き流してやるほど俺は優しくはねぇぞ?」
「それは…………」
「クハッ、どうした王女様!俺にお前たちの罪を着せるのならば俺がやったという証拠を出せ」
証拠を出せと言われて言葉に詰まってしまう王女を見ながら、なんとか手はないかと考える。
確かに王女自ら潜入していたとはいえ、それが本当かどうかなんて反乱軍のみんなにはわからないだろう。
そして国王側はダンスパウダーとかいう物が王宮で見つかっているらしい。
王女が歯を食いしばり涙を流すまいと堪えているが、俺も仲間からの情報を聞いているからわかっているだけで証拠なんて持っていない。
反乱軍の面々も戸惑いから、どこか訝しむように王女を見つめている。
「あら、証拠ならここにあるわよ?」
「……ロビン?」
「ピーター。あなたが来ていると聞いて驚いたわ。それにまさか反乱を止めようとするとも思わなかったわよ?」
「少しばかり気がかりがあってね。この国にいる事は知っていたが、どうしてロビンがここに?」
「そうね、先にそっちの件を終わらせちゃいましょうか。じゃないとゆっくり話もできないわ」
何か方法はないかと思っていたら、思わぬところでロビンと再会した。
しかもロビンの手には紙束があり、この反乱の暗躍の証拠を持ってきたのだということだ。
どうして遺跡とか周ってたはずのロビンが?と思うが、そういった話は後だな。
ロビンは持っていた紙束を王女へ渡し、王女はクロコダイルの近くにいた薄いサングラスをかけた男性に声をかけて見せていた。
「クロコダイル!全部、全部お前の仕業だったのか!?俺たちは騙されていたのか!」
「クハハ、誰が騙したというんだ?国家転覆を企んだお前たちに手を貸してやっただけだろうが。今更人のせいにするとは見下げ果てたヤツだな」
「黙れ!お前さえ……」「コーザ!!」
「もう黙ってな。計画が成功すれば長生きできたものを。もうお前たちは用無しだ。俺が集めたバロックワークスの能力者たちだけでも十分にこの場にいる全員を黙らせることはできる」
その男もその紙に書かれている事を読んで理解したらしくクロコダイルに掴みかかっていったが、クロコダイルは話に取り合わずその男を左手のフックで突き刺し開き直ったようだ。
確かに踊らされたのかもしれないが、操られたわけでも脅されていたわけでもないし、あくまでも自分の意思で反乱軍に加わったのだろう。そのあたりについては俺には何も言えない。
どこからがクロコダイルの計画でどこまでが不幸な偶然だったのかわからないが、今明確にわかっているのはクロコダイルを止めないといけないことだ。
そして反乱軍の中から、同士だったはずの者たちを切り捨てて何人もの男たちがクロコダイルの元へと集まってきた。
…いや、中には女性もいるし、どっちかわからないのもいる。こいつらがクロコダイルが集めた能力者たちのようだな。
「クハハハハ!例え反乱軍の雑兵がいなくなったとしても、俺には能力者の部下たちと10万人のバロックワークス社員たちがいる。ここで国王も王女も殺して俺がこの国の王位を継いでやろう!」
そんな事を許すわけにはいかない。ここが正念場だな…