ピーターパンしてたら世界が変わってた   作:霧丹

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12.脅威のカケラ

 

 

 

「……………報告は以上です」

 

 

 

「ご苦労だった。下がれ」

 

世界政府の中枢、世界の動きを決めているとさえ言われている5人の老人たちが諜報員からの報告を受けていた。

 

世界政府が注視しているのは世界三大勢力、つまり「四皇」「王下七武海」「海軍本部」の均衡である。

この均衡があるからこそ世界は平穏を保たれているとさえ言われるほどだ。

三大勢力と呼ばれる者たちが世界の平穏に一役買っているのは間違いないのだが、だからといって平穏を望んでいる者ばかりではない。

 

だからこそ今回の報告は、その平穏に亀裂が入る可能性のある内容だった。

 

 

そしてそれとは別で警戒している者たちもいる。世界政府を直接打倒しようとしている「革命軍」と呼ばれる者たちだ。

革命軍は海賊や海軍を相手に行動を起こすわけではなく、あくまでも世界政府を打倒することを目的としている。

 

この連中は文字通りに世界政府加盟国で「革命」と称して民衆を操作し、治めている王族や貴族を倒している。

もちろんそんな国が増えれば世界政府としての影響力にも響いてくるため、政府の諜報員だけでなく海軍のほうでも動くように指示を出している。

 

 

 

しかし今、それらとはまったく別の極めて危険な者たちの存在がその姿を現したのだ。

 

 

 

「この報告が事実だとすれば、どう対応するべきか…」

 

「全てが事実だとすれば、もはやバスターコールなど何の意味もないだろう。下手をすれば手痛いなどと言っていられないほどのしっぺ返しをこちらがもらいかねない」

 

「うむ、迂闊に刺激してしまえば被害は計り知れないだろう。この地(マリージョア)ですら安全とは言えなくなる。…とはいえ静観するにも危険すぎる相手だがな」

 

「然り。相手の目的がわからぬ以上、安易に手出しはできぬが…かといって放置もできぬのがな」

 

「唯一積極的な動きがないのが救いだな。そやつらの動き次第で世界の平穏は一気に崩れるぞ」

 

 

その存在を知る事ができたきっかけはあったのだ。それは「天竜人の奴隷を何者かが連れ去った」という五老星にとっては些細な事件だ。

奴隷を奪われた天竜人からの指示で政府の諜報員たちも詳しく探ろうとしたが、努力の甲斐なくまったくその足取りを掴めなかった。

 

当時その天竜人の護衛として付き添っていた政府の役人の話では、政府の諜報員などが使用する「剃」のような感じだったらしい。

追いかけても仲間か協力者のような者に邪魔をされ捕まえる事ができず、既にその調査は打ち切りとなった。結局奴隷の行方はわからないままで終わっている。

 

その調査は成果の出ないまま終わってしまったが、得られるものがなかったわけではなかったのだ。

天竜人が奴隷を連れ去られたというその場には赤い紙が残されていたというのだから。

 

 

まるで昔話のように今でも世界中で語られる「あかがみに子供が連れ去られる」という話。

それはただの昔話ではなく、どうやら今も変わらず世界中で起きているというのだ。

 

世間的には四皇の一角、赤髪のシャンクスがその犯人だと思われているようだが、調査した結果違うとわかっている。

なぜならシャンクスが海賊になるよりも、もっとずっと前からそう言われていたらしいのだから。

もしかしたら「赤紙」を残す事で「赤髪」へと目を向けさせるミスリードの役目を持たせていたのかもしれない。

 

それが嘘か本当かもわからない。五老星、そして世界政府にとって取るに足らない、報告にも上がってきても気にもかけないような小さな小さな出来事。

当然、逃げた人物が六式の1つ「剃」を使用していた可能性を考えて、政府関係者なども探ってみたが浮かび上がるような人物はいなかったのだ。

 

その結果、天竜人の奴隷連れ去り事件はそんな昔話のような「あかがみの人さらい」と関連があるのではないかというのが当時の諜報員の報告だった。

 

そしてそれから何度も天竜人からだけでなく、ヒューマンショップからも奴隷を連れ去られたりしていたようだ。

連れ去られた奴隷がいた場所には赤い紙が置かれていた事からも間違いないだろう。

 

 

本来であれば聞くまでもないという反応で終わるような些事だったはずが、ここにきて「もっと詳細に調査をしておけばよかった」という後悔の原因になっている。

 

というのも、確定ではないがその連れ去った者たちが世界政府の脅威となっている可能性が出てきたのだ。

 

 

今回の報告では世界政府に加盟する、最初の20人の末裔がいるアラバスタ王国。

そこで王下七武海の一角を担っていたクロコダイルが国家転覆を企み、そして敗れて逃げ出したということだった。

そこまでならばクロコダイルの穴埋めをして、違う者を新たな七武海へと選出すればいい。

 

だがクロコダイルの企みを打ち破った存在こそが、五老星ですら頭を痛めるほどの存在()()だった。

 

個人で強力な力を持った者が現れたのならばまだいい。政府や海軍で抱えてもいいし、仮に海賊などになったとしてもその動向を警戒しておけばいいのだから。

だが諜報員がアラバスタの件を聞きつけて現地に向かった時には、すでにその者たちはいなかった。

 

そして国民たちに、特に反乱軍に加担してクロコダイルたちとの戦いを見ていた者に話を聞いてみれば、1人の強大な力ではなく集団で戦っていたらしいのだ。

更に詳しく聞けば曖昧な部分や不明点なども多々あるものの、使っている体術は政府関係者が使用している六式と同じか似たようなもののようで、それらを使う1万人近い集団だと言うではないか。

 

その報告と一緒に、六式のような体術を使う正体不明の者ということで、自分たちの犯行だと示すように置かれてあるはずの赤い紙があったわけではないが「天竜人やヒューマンショップの奴隷連れ去りの犯人」との何かしらの関連があるのではないかという疑いがあるとの事だった。

 

仮定の話ではあるが、もしその2つが繋がっていたとしたら、その連中は相手も場所も選ばずに長年に渡り人を集め、既に1万人以上の兵力がいながら更に数を増やし続けているのではないかという事になる。

 

 

 

世界政府にとって悪い話はこれだけではない。

 

 

 

その諜報員が集めた情報の中には、その集団がアラバスタのポーネグリフに接触した可能性すらあるとの事だったのだ。

しかもあのオハラの生き残りがその場にいたという可能性さえ浮上してきた。

 

これは確実な情報ではない。ただ可能性があるというだけだ。

 

クロコダイルの悪行の証拠を提示したのが「ロビン」という名の女だというのだ。

本人かどうかなど問題ではない。そんな事を言っていれば手遅れになりかねないのだから。

 

つまりその集団は「六式の体術を使う最低でも1万人規模の戦闘集団」かもしれず「古代文字を読める唯一の存在であるオハラの生き残り」を匿っているかもしれず更には「アラバスタのポーネグリフを読んで古代兵器(プルトン)を所持しているかもしれない」ということだ。

 

そして海賊などのように自らの名を世界に知らしめる事すらせずに、ある意味革命軍よりも更に水面下でその力を研ぎ続けているかもしれないのだ。

 

すべてが仮定の話であり、つまりまだ何も判明すらしていないが、仮に本拠地を見つけてバスターコールをかけたとしてもプルトンで返り討ちになる可能性さえもあるということだ。

 

「革命軍なんぞという連中よりもよほど厄介な相手だな。その集団を統率している人物さえわかれば犯罪者として扱う事もできるのだが…」

 

「だがそれすらも相手を刺激することになりかねんぞ。そやつらはまだ政府(我々)に対して刃を向けてはおらんのだ」

 

「しかし悠長な事を言っていられないかもしれん。今はまだ我々に鉾を向けていないだけかもしれんのだから…」

 

「今は最大級の警戒を持って当たるしかないだろう。連中の目的も首魁も何もわからぬでは対策の立てようがないのは事実だ」

 

「今までまったく動きを見せていなかった以上、その者たちが話のわかる相手である事を期待するしかあるまい。今はまずクロコダイルの後任を急がねばならんぞ。七武海の失墜は世界にヒビを入れかねないのだからな」

 

まだまだ連中の動きも目的も何もわからない以上、今方針を決める事はできない。

本拠地や統率者が判明すればそれらを探ることもできるだろうが、相手は古代兵器すら手中に収めている可能性がある以上迂闊な真似はできない。

 

 

 

 

しかし、この場にいる5人全員が報告を聞いたと同時に同じ懸念を抱いていた…

 

 

 

今回の1件は果たして1から10まで、全部がクロコダイルの計画だったのだろうか?と。

 

今までにアラバスタと同じように国が滅ぶような危機など、他の国でだっていくらでもあったのだ。

だがそんな国の危機があろうと、今までそのような連中の話など聞いた事がないのだ。

 

そしてそんな他の国とアラバスタ王国との違いといえば…考えるまでもない。ポーネグリフの有無だ。

 

つまり、この暗躍していた連中はクロコダイルから国を守ったように見せているが、本当の目的はそうではなく、ただクロコダイルの企みを利用してポーネグリフと()()()()()()()()を手中に収めようとしていたのではないかと。

 

あらかじめ情報を流してクロコダイルの欲を刺激し、アラバスタを荒らさせる事によってポーネグリフの…いや、古代兵器(プルトン)の在り処を知るために実は裏で操っていたのではないのかと。

 

連中にとってはポーネグリフの場所さえわかるなら、最初からクロコダイルに古代兵器をくれてやるつもりがない以上、クロコダイルが企んでいた計画が成功しようが失敗しようがどちらでも良かったのではないかと。

 

そうでなければ正体不明の連中がわざわざアラバスタだけを救うなど辻褄が合わない。

だがその連中の目的が古代兵器であればと考えると、クロコダイルの暗躍も、その場所がアラバスタであったことも、オハラの生き残りがポーネグリフに接触したかもしれない事も辻褄がピタリと合うのだ。

 

そして最後に政府の諜報員ですら不審に思わず、その後の事としてほんの少しだけ記載されている報告。

そこには短く「連中はアラバスタ国王軍がクロコダイル捕縛の後、クロコダイルの仕業によって砂で埋もれた町を復旧して去っていったとの事」と書かれている。

 

しかし、世界の平穏を担っていると自負する5人の最高権力者からしてみれば、これは「ポーネグリフを読み解いた後、連中はそのまま古代兵器を掘り出しに行った」と考えられるのだ。

1万人もの数の集団が何の目的もなく七武海を相手に国を救い、国の復興まで手伝って帰っていったなどと誰が信じるものか。

 

連中は「ポーネグリフを読み解いてプルトンを掘り起こして持ち帰る」ところまで計画してクロコダイルを泳がせていたのだろう。

 

 

だからこそ警戒しなければならない。しかしまだ今はこの事を表に出すわけにはいかない。

 

 

 

それになぜか下界では近年羽振りの良い者たちの行動が目につくとも聞いている。

ただ与えられた権力と天竜人であるというだけで何でも思い通りになると思っているバカどもが金を必要以上にバラまいているのだろう。

 

そういった者たちが欲をかかぬようにしておかねばならない。

 

 

 

 

 

こうして世界政府の最高権力者たちの話し合いが続いていった…

 

 

 

 

 




無理矢理感がありますが、主人公の存在を世界政府に少しだけ認識してもらいました。


現在の世界政府の持っている疑いは
・昔から子供などを拐って兵士としての教育を施し戦力に育てている
・1万人規模の殺人体術を使う集団を率いている
・オハラの生き残りを匿ってポーネグリフを狙っている
・アラバスタで古代兵器を探し出して所持している
ここまでです。


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