ピーターパンしてたら世界が変わってた 作:霧丹
「ピーターだ!」「ピーターが帰ってきた!」「おかえりピーター!」
「ただいまみんな。今日はこれからしばらくの間みんなのお世話をしてくれるお兄ちゃんを連れてきたよ。名前はエースだ」
「エース!」「よろしくエース!」「エースもピーターに助けてもらったの?」
「…ハハハ、こんなにいるのかよ」
ネバーランドに着いて気付いた子供たちが迎えてくれているが、まだまだ甘いぞエース。
ここにいるのは浜辺で遊んでいた子供だけだし50人くらいしかいない。
12才くらいの年長者から5才くらいの子までいて、走り回ったりしながら遊んでいたみたいだ。
現時点でこのネバーランドに何人の子供がいるのかなんて俺にもわからないけど、エースが驚くのはまだ早い。みんな集まったら10倍やそこらの話ではないのでもっと驚く事になるだろう。
せっかくだしこの子供たちの世話でもしてもらうか。
みんなに「今からエースが一緒に遊んでくれるぞ」と言ったら喜んでエースを連れて行ってしまった。
その間にもはやお城みたいに大きくなっているみんなの家に戻り、みんなに帰還の報告と白ひげ海賊団でお土産にもらった物などを仲間たちに渡しておく。
もちろん家庭を持っている者や仲の良い者同士で一緒に住んでいる者など、別々の家を建てて暮らしている者も多くいるが大半の子供たちはここで暮らしている。
エースにもしばらくここで暮らしてもらう予定のため、空いている部屋があればと思ったんだが生憎と空室はないようだった。
今もまだまだ世界中で争いや虐待などが起こり続けている。これからも俺だけじゃなく、世界中の仲間たちがそういった中で生きる術を知らない子供たちを救出していくだろう。
…つまり部屋が空くことはまだまだなさそうだ。エースには子供たちと相部屋で我慢してもらうか。
「どうだったエース。ネバーランドでの初日は?」
「まさか俺が振り回されるとはな…俺にも義兄弟がいるんだが、思ってたのと全然違って驚いたよ」
「はは、まだまだこれからだぞ。それにたまにはこういうのも悪くないものだろう?」
「…ああ、確かに悪くないな。てかピーターよ。なんであんなガキどもが覇気とか使えるんだよ?しかも追いかけっこで空中を移動するとかなんの冗談だと思ったぞ」
「この世界は戦いたくないからといって平和に過ごせるほど弱いものに優しくない。だから、せめて身を守れて逃げられるくらいの力はみんなに身に付けてもらいたいからね。それに辛く苦しい訓練よりも、なるべくなら楽しく遊びながら学べるほうがいいだろう?」
「なるほどな。油断してたとはいえ、まさかガキに遊びででも捕まるとは思わなかった。だが俺もまだまだ能力に頼ったりしてる部分が大きいと反省したぜ。オヤジがそこまで考えてたのかわからねぇが、この島にいれば俺はもっと強くなれる気がする」
「焦ることはないさ。白ひげ船長は何も力を付けるためにこの島へ寄越したわけじゃない。言っていたように怪我の療養だと思って子供たちと一緒に過ごすといいよ」
エースのネバーランド初日はなかなか驚く事のほうが多かったみたいだな。
俺考案の、見聞色の覇気で先読みしながら捕まえようと、そして捕まらないようにと工夫しつつ遊ぶ追いかけっこだ。
もちろん練度の差はあるので年長の子は多少手加減しつつ年少の子を楽しませたりもしているのだが、今回はエースがいたので普通にやったのだろう。
そこからはエースも一緒になって子供たちと遊んだり勉強したりしながらネバーランドに馴染んでいった。
「…………とまぁ、そんな感じでね。今はネバーランドで子供たちの世話をしてもらいながら過ごしているよ」
「…そうか、それならいいんだ。手間をかけさせてしまったみたいだな」
「別にシャンクスが気にする事ではないだろう?もしかして知り合いだったのかい?」
「ああ、一度会ったことがあるんだ。それでティーチが仲間殺しをしてエースが追いかけたっていうもんだから、嫌な予感がするんで白ひげにエースを止めるように言いに行ったんだが、こっちの忠告を聞いてくれなくてな。ピーターのところが動いてくれて良かったよ」
久しぶりにシャンクスから連絡が来たと思ったら、なぜかエースを助けた事を感謝されてしまった。
シャンクスたちもエースが飛び出した事を知っていたらしい。ネバーランドの仲間から聞いたのか別のところから聞いたのかまでは確認しなかったからわからないけど。
今はここで子供たちと過ごしているから近況を教えてあげたら安心したみたいだ。
呼んでこようか?と聞いたが「そこまでしなくていい」という事だったので、また気になったときにでも話をさせてあげればいいかと思いながら連絡を終えたら、またすぐに次の連絡が来たみたいだった。
今となっては世界中から連絡が入るので電伝虫が1匹では足りないため、ネバーランドにはかなりの数の電伝虫を置いてある。
そこで電話番をしている仲間もいるので、大体は連絡を受けて仲間から伝言や報告などを受けたりするのがほとんどだ。
今連絡をしてきているのは…革命軍にいるコアラのようだな。
「やぁコアラ。今日はどうしたんだい?」
「あ!ピーター!話は聞いてるよ。アラバスタ王国で大立ち回りしたんでしょ?」
「そこまでの事はしていないよ。ほとんど仲間たちの活躍だったからね」
「そうなの?ロビン姉さんとも少し話したんだけど、ピーターが来ててビックリしたって言ってたよ?」
「アラバスタでの話を聞いて少々気になる事があったんだよ。結果的に行って良かったと思うけどね」
まさかコアラにも話が伝わっているとは思わなかった。
別に聞かれて困る内容ではないけど、大立ち回りというほど大袈裟なものでもないと思うんだが…
コアラのほうも特に重要な用件があるわけじゃなく、よく連絡をしていると言っていたから世間話や軽い情報交換みたいなものなのだろう。
雑談をしながらネバーランドに今、白ひげ海賊団から療養兼子供たちの世話をしてくれている者がいるという話を教えてあげる。
「ピーター。ちょっといいか?」
「エースか。今話中だから少し待っててくれ」
噂をすればじゃないが、エースがちょうど部屋に入ってきた。そんな間もコアラの話は続いている。
「へぇ~。ピーターがアラバスタから戻ってきてからそんな事があったんだね。でもみんなの相手をするのって結構大変でしょ?私やサボくんだって面倒見てもらってた側から見る側になったとき思ったより大変だったもん」
「なっ!今サボって言ったか!?」
「えっ?なに?どうしたの?」
「落ち着けエース。突然大声出してどうしたんだ?コアラ、すまないが後で連絡しなおしてもいいかい?」
一旦コアラとの通信を終わらせて、何やら興奮しているエースを宥めて話を聞いてみることにした。
どうやらエースには小さい頃に杯を交わした義兄弟がいて、その2人のうち1人が死んでしまったらしい。で、その名前がサボというらしかった。
死んでしまったんなら別人じゃないのか?と思ったんだが、考えてみればサボは確か記憶を失っていたはずだ。
エースの知っているサボと同一人物かはわからないが、会わせてみればわかるか。
そうは言ってもサボのほうもドラゴンと一緒に出かけたりしているようだし、エースは早く会わせろと言うが空いた時間にネバーランドに来てもらうほうがいいだろう。
コアラにもう一度連絡を取り「もしかしたらだが、サボが記憶を失う前の事がわかるかもしれないからサボが戻ってきたらネバーランドに来るように伝えてくれ」と頼んでおいた。
後日、革命軍のほうからサボが戻ってきて伝言を伝えたら「ネバーランドに行ってくる!」と言って飛び出していったぞと連絡を受けた。
その事をエースに伝えたら、エースのほうもサボに会えると随分と喜んでいた。
エースよ、喜ぶのはまだ早いと思うぞ?エースの知っているサボと同一人物かわからない上にサボは記憶がないんだから…
それからのエースは、待ち人がまだかなまだかなとソワソワしながら毎日を過ごしていた。
子供たちの世話はしてくれているのだが、その間も何度も何度も何度も何度も海のほうを見ていたりしているのだ。
あまりにもあからさま過ぎる様子だったので、子供たちにもバレバレであり「エース、彼女でもできたの?」と勘違いされては否定しているのが見ていて面白かったくらいだ。
俺に聞いてきた子たちには「サボがエースと義兄弟かもしれないから来るのを待ってるんだよ」と教えてあげてあるが、サボが来るまでずっと誤解され続けるのだろうな。
今、エースとサボは仲良くいろんな事を話している。
俺もサボとエースの対面を見守りたかったんだが、ちょっと買い出しの手伝いに行っている間にサボが戻ってきたらしいのだ。
そのあたりはエースとサボが2人だけで話したみたいだから誰もわからないんだが、最後にはサボは記憶を取り戻すことができてエースの事も思い出したらしい。
つまりエースの言っていたサボは、ネバーランドで育ったサボと同一人物だったということだ。
「ピーター。エースと会わせてくれてありがとう。おかげで俺は全て思い出すことができたよ」
「そうか。それは良かった。まさかこんな繋がりがあるとは思ってもみなかったよ」
「はは、まったくだよな。まさかサボが助けられてこの島で生きてたなんてな」
サボを助けたのはドラゴンたちだから、俺は革命軍との約束通り受け皿として面倒を見ていただけに過ぎない。
だが、サボにとっては記憶を取り戻してもこの島は「出身ではないけど故郷だ」と言ってくれてたから嬉しくなり「義兄弟であるエースもなんならこの島を故郷と思ってくれてもいいぞ」と言っておいた。
もうこの島が故郷の仲間なんて世界中に数え切れないくらいいるんだ。今更1人増えたところでどうということはない。
「…本当に故郷と思ってもいいのか?」
「ああ、構わないよ。エースに故郷があるのなら無理にとは言わないが、このネバーランドをみんなで作り上げてもう50年近くになる。自慢じゃないがなかなか良い島だろう?」
「エース。この人はお前の事を否定したりはしない。てかこの人のほうがヤバいくらいだから大丈夫だ」
おいサボ。それは少し言い過ぎじゃないのか?なんだ俺のほうがヤバいって。
…まぁ確かに誘拐歴50年だもんな、考えてみたら大犯罪だな。だからといって止めないが。
エースは何か自分の中で葛藤しているようだが、ネバーランドはみんなの夢を否定したりなんてしない。
海軍に入りたい子は海軍に入り、冒険したい子は冒険家や海賊や賞金稼ぎになったりもしているし、サボたちのように世界政府を倒したいという子もいれば、ロビンのように歴史を知りたいという子もいる。
もちろん「コックになりたい」とか「お嫁さんになりたい」とかみんなの夢や目標は様々だが、余程の事がない限り一方的な否定はしないつもりだ。
というか、今までに否定するような夢を語った子がいないわけだが…
「…なぁピーター。前にさ、海賊王に子供がいたらって話をしただろ?」
「ああ、そんな話もあったな。それがどうかしたのか?もし子供がいたとしたらネバーランドにいる可能性は高いが、わざわざ調べるなんてしてないからわからないぞ」
「そうじゃねぇよ。俺がさ、その海賊王の子供だったって言ったらどうする?」
「エースが海賊王の子供だったのか。道理でこの島にいなかったわけだな。納得した」
「…それだけなのか?」
そう言われても俺は海賊王に会った事もないし、もしその子供をネバーランドで探せとか言われても世界中に散らばってる仲間に聞いて回るわけにもいかなかったからな。
特に孤児とかの場合は自分の生まれもわからないだろうし、そうなったらもうお手上げ状態だ。
「だから言っただろエース。この人はこんなもんだ。天竜人からでさえ奴隷にされている子供を奪うような人だからな。もしエースの事を俺たちが出会った子供の頃から知ってたとしても、ここに連れてこられてネバーランドで育ってたってだけだと思うぞ。もちろん俺たちも一緒にな」
「…こんな島があるんならもっと早く知りたかったな。まぁあそこも俺たちが杯を交わした場所だから思い出の場所ではあるんだが」
「今からでも遅くはないさ。すでに子供たちは君を慕っているだろう?手のかかる弟妹が増えたとでも思っておけばいいさ。それに君には白ひげ船長や船の仲間がいるだろうが、この島でも仲間が増えたと思えばいい。もうすでにネバーランドの仲間は君と一緒に冒険をしていたりしてるじゃないか」
エースが何を気にしていたのか結局わからなかったが、サボと再会できたことだし些細な事だろう。