ピーターパンしてたら世界が変わってた 作:霧丹
俺たちはネバーランドと名付けた島を拠点とし、人のいる島では食料や材料などを大量に買い揃え島を開拓する事に専念していった。
もちろんその間にも人助けという名の人攫いはずっと行っていた。
拐われたほうも最初は怖がっているが、周りがみんな同じ年齢に近い子供たちばかりなので仲良くなるのに時間はかからない。
そしてそんな子供たちから「虐められているところを助けてもらった」という全員が同じ状況のため俺と打ち解けてくれるのも早かった。
俺はこの海賊や山賊、更には一般人の大人たちまでもが大手を振って弱者を傷つける時代に「俺たちはあんな風にはなりたくない」という気持ちと、「そんなことをしようと思わない幸せな自分たちの国」を作り上げてやると燃えていた。
そうやってネバーランドがみんなの力でまともな住処へと変わっていき、人が増える度に改築してほったて小屋から家になり屋敷になり城のように大きくなった頃、最初に助けた俺と同じ年の頃の男の子たちも既に青年となっており俺に話があるということだった。
「ピーター、ネバーランドもみんなの頑張りで過ごしやすい場所になってきたな」
「あぁ、だが俺たちが行ったことのない町では俺たちと同じような目に遭っている子たちがまだまだいる」
「その通りだな。そこでなんだが、俺もピーターと同じようにそういった子たちを助けたい。このネバーランドに来ればもうあんな思いをしなくて済むということを教えてやりたい」
どうやら今まで一緒に行動してきた結果、この広い世界中の虐げられている子供たちを助けたいので二手に分かれようということだった。
どうやら海賊のロジャーという男が海賊王と言われ、処刑された際に何か煽るようなことを言ったせいで海賊が増加しているのだという。
そして海賊が増えたことによって、いろんな島でも海賊の被害に遭った結果拐われたり奴隷のように働かされている子供も増えていっているらしい。
俺は心配だったが、一応船に乗っているときも身体は鍛えていたし何かあれば逃げるからというので大人しく見送ることにした。
そしてこの青年が思わぬ先駆者となってしまった事で、連れてきた時には幼かった子たちが大きくなった時には「自分たちも同じような目に遭っている子をピーターのように助けたい」と言い出すのも必然だったのかもしれない。
そうやって助け出しては見送っていくうちに、気がついた時にはそんな子たちが世界中に散らばっていた。
男の子は「悲しい思いをしている子を助けるんだ」と自主的に集まって身体を鍛えたりしていたし、
女の子は料理や裁縫などを学びネバーランドで世話をする子と、直接助けられなくても見つけて他の子に伝えたりサポートをしたりできるからと諜報員のような事をする子までいた。
もちろん何もせずに生活できるわけではないので、料理の得意な子は食事処や酒場などで働きつつ客から噂話や情報を集めたりと何かしら働きながらではあったが。
確かに俺1人で世界中の島々を巡って助けていくなんて不可能だし、みんなの力を借りれば少しでも多くの人たちを助けられるかもしれない。
そしてなぜか俺以外のみんなも助けた子を連れてくる時には現地にレッドカードを置いてくるみたいで、変な慣習を作っちゃったなと1人でちょっとだけ反省したりもした。
毎年どこかで酷い目に遭っていた子がネバーランドに来る傍ら、毎年一人前となり「自分たちと同じような子を助けたい」と巣立っていく子がいる。
もちろん全員が全員そうなるわけではなく、中には冒険したいと冒険家や海賊になる子もいたし、逆に海賊がいるから悪いんだと海軍に入隊する子もいた。
だが、そんな風に様々な自分の道を歩き出した子たちも、自分では動けないからと「この島で子供が酷い目に遭っているから助けてやってくれ」と連絡はくれたりするのでネバーランドの事はちゃんと覚えていてくれているようだ。
最初は俺が自分と同じ目に遭っていた子供を助けたところから始まったし、決して褒められるような手段ではない事は間違いないが、それでも不幸なままの子が少しでも減ってくれたらと思う。
俺もみんなに任せてずっとネバーランドにいるわけではなく、世界中の島々を巡りながら同じように
そうやって町を回っているときに、赤い紙は子供を拐っていくという噂を聞くようになってきた。
それを聞いた他の人が子供を大事にしてくれればいいが…
レッドカードがちゃんと周囲への警告になってくれていればいいなと思うが、まだまだこの海賊が蔓延する世界では難しいのかもしれない。
これでもこの世界で役に立つとは言えないが、どこかの世界の知識が俺の頭の中には存在している。
だから子供たちの遊び道具としてこの世界にも存在するトランプやUNOといったカードを作って遊ばせているのだが、もしかしたらと期待を込めて
これで少しでも争いが減り、諍いがあればデュエルで決着をつける世界になればと期待したものだがまったく効果がなかった。
まぁ海賊が敵と出会って戦う時にカードゲームで決着をつけるという、そんな平和な大海賊時代は残念ながら到来することはなかったということだ。
それでも男の子や一部の大人には人気が出たからそれはそれで良かったかなという結果に終わった。
そんなこんなで幾人かの子供を保護しネバーランドへと連れて帰ってきたところに、どうやら俺に会いたいという人間がいるという連絡が入った。
モンキー・D・ドラゴンという男だそうで、俺と直接会って話をしたいのだそうだ。
なぜ俺と話したいのか、何の用件で話したいのか、何よりもどうして俺の事を知っているのか、疑問は尽きないが話さなければわからない。
少なくとも俺は『子供を助けるために勝手に拐っていき』『金を工面するために自身の能力で紙幣を生み出し』『誰にも見つからないのをいいことに島を1つ占拠している』
やっている事が犯罪だらけな以上あまり知らない人間と関わりたくはないが、どうやら伝え聞く限りでは捕まえるとかそういう話ではないということだ。
とはいえネバーランドに来てもらうというのは論外であり、別の島で日時を合わせて会うこととなった。
「わざわざ来てもらってすまないな。俺はドラゴンと言うものだ」
「あぁ、いろいろと聞いておきたいことはあるが、俺のことはピーターと呼んでくれ」
「聞きたいことはわかっている。その疑問の答えにもなると思うが、まず俺の話を聞いてくれ」
「…わかった。ドラゴンの用件を聞こう」
ドラゴンの話の最大の要件は世界政府打倒の協力要請だった。
どうやら結構前から世界中で子供が拐われているという事は知っていたようだ。
しかしその詳細を確認してみると、拐われているのは必ず虐げられたり酷使されたりと酷い目に遭っていると言う子供などばかりで、裕福ではなくても普通に暮らしている子供で拐われた者がいないという情報を得たという事だ。
そしてその行いが、ドラゴンたちがこれから活動していこうとしている事とも重なる部分があるので、なんとかネバーランドの仲間を探し出して話を聞いてもらい、お互いに協力できないかと俺に話を持ちかけたというわけだった。
「ふむ、どういった協力を求められているのかによるが、戦力という意味でなら断る。あの子たちは暴力に晒されて生きてきたところを、ようやく平穏を得たばかりなんだ」
「あぁ、それはこちらも把握している。よって戦いなどへの強制などはしない。協力してもらいたいのは情報と、あとは子供の世話だな。俺たちも政府によって被害を受けた子たちを救うこともある。その後の受け皿としてピーターのところで預かってもらえれば助かる」
なるほど、ドラゴンはこの世界政府があるから弱者は弱者のままの世界になると言いたいのか。
しかも世界政府の上に天竜人という人間たちがおり、日夜誰かを奴隷として拷問などを当たり前のように行っているということを教えてもらった。
そこに子供も大人も男女も関係なく、老若男女誰もが玩具として扱われているという。
まだまだ俺たちの知らないところでたくさんの人が苦しんでいるようだ。
それを教えてもらっただけでも今日会合の場を設けた甲斐はあるというものだ。
ドラゴンたちはまだ人数が少ないながらも同志たちを集めており、これからも志を同じくする者たちを増やしていくつもりのようだ。
そして今は水面下で力を蓄え、俺たちと同じく世界中に同志たちを置きたいのだという。
自分たちの集団を「革命軍」と名乗るつもりだというので、今の話で断る理由はなかった俺は情報の提供と被害者の受け皿としての要請を了承し、革命軍と協力関係を結ぶことにした。
ただ、向こうは情報を欲し政府の被害に遭った子供を保護してもらえるというメリットがあるのに対して、こちらは革命軍に求めるものが特にないというか考えていなかった。
そこで、ドラゴンに対し「ネバーランドの仲間たちが身を守れるようなこちらの知らない自衛手段などはないか?」と問うてみたところ、覇気というものがあるということを教えてもらった。
武装色の覇気、見聞色の覇気、覇王色の覇気という3種類のものがあり、才能に左右される覇王色の覇気は別として、あとの2つは身につければ役に立ちそうだ。
何か道具が必要なわけでもなく身1つで使用できる技術というのはとても助かるので、ドラゴンに頼んでこちらが情報を渡し子供の世話をする対価として仲間たちへの教導を頼むことにした。
ドラゴンもこれを了承してくれて、ネバーランドに1人覇気を使える者を常駐させるということで話は纏まった。
こちらは世界中に仲間が散らばっているとはいえ、革命軍が知りたいことをピンポイントで知らせる事ができるとも限らない。
なので具体的に何かを一緒に行動することはないままお互いがお互いに自分たちのやるべきことを行っていく中で、海軍に入っていた幾人かの仲間が久しぶりにネバーランドへと帰ってきた。
どうやら長期間の航海が終わり、少し長めの休みをもらったため俺たちが元気にしているのかと様子を見に帰ってきてくれたようだった。
俺たちはそれを歓迎し、そして新しくネバーランドに来た子たちを紹介したりしながら海軍の話を聞かせてもらったりしていた。
そこでわかったのは、海軍には六式という体術があるということだった。
会得するまでは厳しい修行が必要だが、習得してしまえば並の海賊や山賊なんて相手にならないほどに強力な力だという。
海軍に所属しているからその力を使えるのかと聞いてみたが、まだ修行中で全ては扱えないということだった。
だがそれでも使えればネバーランドの子たちを守る大きな力となることは間違いない。
今は革命軍の人間に覇気を教えてもらっているところだが、
俺はこの六式の情報と訓練の仕方などを詳しく教えてもらい、今まさにネバーランドで強くなろうと特訓している子や、既に成人し世界に散らばっている仲間たちにも教えていくことにした。
これで仲間たちが危ない目にあっても、逃げて少しでも生き残る確率が上がればと思ってのことだったが、直接降り掛かってくる火の粉を払う事ができるということもあり、みんなも学ぶことに積極的だった。
海軍に所属している仲間たちも覇気の練習をしながらも、休暇期間が終わるということで名残惜しそうに帰っていった。
次に会うときは覇気も六式も全部使えるようになってもっと強くなると言い残して。
ちなみに俺もみんなと一緒に学んでみたんだが、どうも覇気というものがよく理解できなくて難航している。疑わない事とか信じる事とか言われてもまったく理解できず、どうも俺の中にある余計な知識が覇気の習得を邪魔しているような感じだった。
周りの子供たちも徐々にいろんな技術を習得していってるのに、俺だけ足手まといになってるような気がして頑張ってるんだが、体術はともかく覇気は時間がかかりそうな気しかしない。
そうして俺が必死に六式や覇気をミミズのような速度で学んでいる中、ネバーランドにいる子だけでなく、巣立って世界中に飛び立っていった子たちも交代でここへと戻ってきては修行していくサイクルが出来上がり、もう全員が六式と覇気を程度の差こそあるが身につけていると言っても過言ではないという状態になっていた。
だが、どうやら誰も覇王色の覇気というものは扱えないようで、こればかりは生まれ持った才能だから仕方ないものらしい。
まぁそれができたからと言ってどうもないのだが、才能がないと言われるとちょっと悔しかったりもした。
とはいえ、革命軍から常駐で来ている人からは「全員が覇気使い、六式使いで世界中に仲間がいるなんて海賊や海軍にだってそこまでの事はできない」と言われたので、おそらくすごいことではあるんだろう。
俺からすればネバーランドの仲間たちが