ピーターパンしてたら世界が変わってた   作:霧丹

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4.大海賊は困っている

 

 

 

 

「一体どうなってんだこりゃ…」

 

 

 

 

 

世界三大勢力の1つ、四皇と呼ばれる海賊団の一角を担う赤髪海賊団。

 

その大頭である赤髪のシャンクスは今自分たちを取り巻く状況に困惑していた。

彼らは自ら島や町を荒らしたりはしない。酒を飲んだり食料を手に入れるのだってきちんと金を払い買い取っている。

 

もちろん海賊である以上、賞金首として悪名のほうが高い事は承知しているし海賊だというだけで怖がられるのだってある程度仕方ないことだ。

それでも島に停泊し補給したりするときはちゃんと島の住民に説明もしているし暴れたりしないよう部下たちには言いつけてある。

 

だが、いつからだっただろうか?段々と補給するときに立ち寄った村や町で恐れられ拒まれるようになったのは。

 

最初から違和感はあった。

 

まるで一部の住民から人さらいや極悪人のような目で見られることがあったのだ。

気の所為かとも思ったが離れたところで「子供を返せ!」なんて声と、それを必死で止めている声が聞こえたことも1回や2回じゃない。

 

しかしシャンクスにしてみればまったく身に覚えがない事であり、人さらいや人買いなどたった一度たりともやったことがない。

 

もちろん自分に黙って仲間たちが勝手にやったって事もないと言い切れるし、自分たちの船に子供が乗っていることもあり得ない。

 

これは自身が見聞色の覇気でも確認しており、副船長であるベン・ベックマンにも相談して聞いたもらったこともある。

しかし結論はやはり「赤髪海賊団の誰1人として子供を拐ったこともなければ、どこかに連れて行ったこともない」というもので、その結果にシャンクスは密かに安堵のため息を吐いたものだ。

 

だが事態はそう楽観的に考えるような状況でもないのが事実で、自身が旗揚げしてからあったこの問題は、段々と寄る島寄る島で同じような事を聞くようになってきた。

 

そして決定打となったのはシャンクスが四皇の一角として有名になった後だ。

 

ただの一海賊団だったのが世界三大勢力の一角を担う海賊団として世界中に認知された後、まるで世界最悪の海賊団が四皇となったとまで噂されたことがある。

 

これにはシャンクスをはじめとして、船員の誰もが首を傾げる事だった。

曰く、世界中の子供を攫いその島を間接的支配下に収めている

曰く、子供のいない者の場合は別の大切な者が拐われる

曰く、あかがみを見た時には既に手遅れになっている

曰く、あかがみは世界中に配下を置き、世界を支配しようとしている

曰く、曰く、曰く、

 

気がついた時にはこのような噂が世界中に広まっているのだ。

シャンクスたちは海賊だ。世界中の海を冒険するし、4つの海や偉大なる航路の前半後半すべてを股にかける海賊だ。

世間的に海賊は悪党であると思われているし、実際に島に上陸しては暴れていろんな物を奪っていく海賊だって存在するのは間違いない。

 

だが、赤髪海賊団からしてみれば、あまりにも事実無根な噂で住民から冷たい目で見られ一方的に嫌われているのも気分の良いものではない。

もちろんこの噂について否定し、なぜこんな噂が世界中に広がっているのか調べもした。

 

だが、わかっているのは「あかがみが子供を拐っていった」というだけで、他に何もわからなかったと言っていいだろう。

 

これについて海軍などに相談したりしていないのかと住民に聞いた事もあったが、その答えは「海軍は海賊の事件などを管轄するもので、陸での事件はその国の治安組織に報告しろ。また人さらいならば山賊の仕業も考えられるだろう。赤髪海賊団の仕業だと言うがその証拠がなければ断定はできない」というものだったという。

 

仲間たちだって最初は笑いながら「お頭の悪名が巡り巡って変な噂に行き着いたんだろう」とか「俺たちに恐れをなしてどっかの海賊団が評判を落とそうとしてやがるんだ」などと楽観視していた。

しかし、ここまで深刻な事態になると「誰かが俺たちを騙って人さらいをやってるんじゃないのか」や「うちの旗に泥を塗るようなヤツはとっ捕まえてやる!」とピリピリした雰囲気が一味の中で流れていくのも仕方ない事だった。

 

シャンクスはなるべく仲間が勝手に暴発したりしないように気を配りながら宥めていたが、もちろんこの噂で一番イライラしているのは本人であり、犯人は必ず捕まえてやると心に決めていた。

 

 

 

「お頭!やっと俺たちを騙る人さらい野郎の手がかりが手に入ったぜ!」

 

「…!?そりゃ本当か!?」「「「「「!?」」」」」

 

 

 

ある日、相変わらず悪い噂をなんとか説明し、停泊を渋る島民を説得して補給することができた赤髪海賊団に仲間の1人から思わぬ情報が入ってきた。

 

この港町でもやはり子供を赤髪海賊団に拐われたと喚き立てる人はいたが、自分たちは絶対にやっていない事、拐われたという時期にはこの島の近くにすらいなかった事をなんとか理解してもらって冤罪であることを証明したばかりだ。

 

嫌な気分を洗い流そうと気分一新して酒場で盛り上がっていたところに待ちに待った朗報が入ってきた。

これにはシャンクスだけでなく赤髪海賊団全員が食いついた。

相手は今まで自分たちに悪評を擦り付けて散々虚仮にしてくれたやつらだ。

ただで済ませるつもりはないとそれぞれが怒りを抑えて報告を待っていた。

 

「お頭!まだ敵の正体まではわかってねぇ。ただ、子供が拐われて連れて行かれるところを見たってやつがいて、大体の方向なんかがわかったって程度だ」

 

「…そうか。それでも今までに比べりゃ大分違う。なんとか捕まえてやりたいところだが…」

 

「ヤツらがどれくらいの規模の組織なのかも、なんで子供を攫うのかもわからない。俺たちの船に子供はいないから囮なんて事もできねぇしな」

 

「とにかく地道に探すしかないな。これからも情報を仕入れておいてくれ」

 

まだ手がかりというには薄い。連れ去られた方向だってそいつらの根城に向かっているかどうかもわからない。

とにかくシャンクスたちは子供を拐われたという情報を集めることにした。

そして噂を確かめていくと、自分たちが思っていた以上に拐われている子供の数が多かった事が判明した。

更に悪い情報として、子供だけかと思っていたら若い男や女も拐われたという話まで出てきた。

古い情報ならば10年前どころかもっと昔から女や子供が拐われたという話もあり、明らかに赤髪海賊団を結成するよりも前からそういった話があったようだ。

ただ、子供だから無作為に拐われているというわけでもないようで、同じ時期に子供だった住民に聞いてもなぜ自分が拐われなかったのかわからないと言っていた。

 

「同一犯なのかわからないが若い男女や子供を狙って攫う。でも攫う子供なんかはみんなではなく選んでいる。そして拐われた家では赤髪海賊団(おれたち)に拐われたと言っていた。なんなんだこりゃ…」

 

「お頭、あまり考えすぎるな。まずは情報をしっかりと集めてからだ。それに世界中でこの話が聞こえる以上ただ1つの海賊団にできるような代物じゃない。仮に他の四皇の海賊団とその傘下であっても不可能だ。それこそ世界政府や海軍と同じような規模の組織だって考えたほうが自然だぞ」

 

「確かに副船長の言う通りだな。しっかし本当に何が目的なんだ?俺たちよりも昔から動いてるやつらってことなのか…」

 

シャンクスが答えの出ない問題に悩んでいると、副船長であるベン・ベックマンは海賊が徒党を組んでどうにかなる問題ではないと指摘する。それも世界政府クラスの組織力が必要だとも。

 

だが、かつて海賊王となったロジャー海賊団に見習いとして乗船していたシャンクスにも聞いたことがない組織だ。

もしかしたらかつてロジャー海賊団の副船長でもあったシルバーズ・レイリーに聞けば何か知っているかもしれないとも思うが、今現在世界中の海を渡っている自分たちですら雲をつかむような話である以上、ひとところに居座っているかの元副船長が知っているかどうか…

 

 

 

 

 

そこからも赤髪海賊団の航海は海の上では順調で島に立ち寄ると嫌悪を隠さない態度の出迎えの繰り返しだった。

 

中には上陸すら拒否されることすらあった。

 

その島では港町の町長の子供が拐われたらしく、いつも通りにと説明しようとしたが「娘を返せこの犯罪者め!!」とまったく話を聞いてくれなかった。

だが、他の住民に聞いてみると「町長は娘さんにひどい事をしていて、止めても聞いてくれなかったから拐われて良かったかもしれない」なんて声を聞いたのが妙に印象に残っていた。

その話を聞いて町長に確認してみても、町長は認めず「儂は娘に何もひどい事などしていない!拐っていった海賊が今更言い逃れか!?」と赤髪海賊団が犯人だと決めつけていた。

その港町では町長があまりにも話が通じず、仕方なく別の港町へと船を回したところ、また別の情報を得る事ができた。

 

そこで得られたのは、やはりかなり昔から子供や娘が突然いなくなる事があったそうだ。

そして拐われた子供の親は「あかがみがきた。子供を拐われたのはあかがみの仕業だ!」と必ず言うということだった。

シャンクスは自分以外に昔からいた海賊で赤髪などいたか思い出してみるが、少なくとも手配書や自分の記憶では見たことはない。

 

珍しくイーストブルーのとある島で停泊したときはそこまで嫌悪されるような対応をされなかったので安堵したものだ。

思わぬ出会いと成り行きで片腕を失う事になってしまったが、それ自体は後悔していないし愛用の麦わら帽子を託してきたので今度は海賊として出会うことを楽しみにしている。

 

 

 

 

そうしていくつかの島を周り、自分たちの冒険をしつつも情報を集めていったシャンクスたち赤髪海賊団のクルーたちはついに重要な情報を手にすることができた。

 

 

それは赤髪海賊団の船員たちができる限り広範囲で本格的に情報を集めた事で信憑性のない噂から、直接拐われた家の人間までかなりの人数から聞いた内容を纏めたことでわかったことだった。

情報は多岐にわたり、今までに散々聞いた拐っていくという関係の悪い噂以外にもまるで教会の教えのように「親がいない子供や居場所のない子供、そして虐げられている者には救いの導きが必ず訪れる」などと言われていたりもするらしい。

 

そして場所はまだ正確ではないが、どうやら偉大なる航路にある1つの島では子供たちが楽しく暮らしているという話もちらほらと聞くことがあるようだった。

 

そこだけ聞けば誰かの庇護が必要な子供たちが集まって楽しく暮らしているだけだが、その話も本当かどうかもわからず、噂の大多数は赤髪海賊団が拐って行ったというものだった。

 

手がかりといえるものもそれしかないため、なんとかその島に行って真相を確認しようにも、前半の海なのか後半の海なのかもわからない。

だが、少しずつ情報が集まってきた。シャンクスは今までに集まった情報を頭の中で整理し、早急にこの問題を解決しようと決意した。

もしその島がハズレでもそれはそれで構わない。その時は少しばかり補給させてもらってまた手がかりを探すだけだ。

そう思いながらシャンクスたち赤髪海賊団は冒険と宴の日々を過ごしていった。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

「やっと見つけた…」

 

 

 

ついに赤髪海賊団は偉大なる航路にある1つの島へと降り立つ。

 

 

 

『ネバーランド』と呼ばれる島に。

 

 

 

 

 

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