ピーターパンしてたら世界が変わってた   作:霧丹

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9.動く時代と奇縁

 

 

 

ネバーネバーランドは本当にネバーランドによく似ていた。

 

 

似ていたというか、そりゃ第2のネバーランドとして作ったらしいから似ていて当然なんだが。

 

「ピーターだ!ピーターってみんなを助けてるすごい人なんでしょ?」

 

「いや、俺は全然すごくないよ。周りのみんなが俺を助けてくれたから、今こうやってみんなを助けることができているだけさ」

 

「ふーん、でもみんなピーターのおかげだって言ってるよ?」

 

「きっかけはそうでも今じゃ俺の力なんてちっぽけなものさ。でも、みんなで力を合わせれば1人じゃできない事だってできるんだ。君たちも仲間を大切にして、1人じゃ難しい事は仲間と協力するんだよ?そうすればできないことなんてないさ」

 

「「「「はーい」」」」

 

このネバーネバーランドの子供たちにも俺の事は教えているらしく、ピーターが来たと行ったらみんな集まって一斉に喋りだすから少々困ったりもしたが、知らないおじさんが来たというのにみんな友好的に接してくれていた。

 

ここまで作り上げるなんて大変だっただろう…その分ネバーランドより自給自足の部分に力を入れているらしいが、なんというか感慨深いものがあるな。

 

ここはネバーランドと同じ目的で、そしてネバーランドだけではカバーできない地域の子供たちを助けるという事のために作られている。

そしてやはり海賊などに見つからないように、通常のログでは辿れない島を利用することでネバーランドのように見つかりにくい島になっているようだ。

 

ネバーネバーランドはネバーランドよりも世界政府や海軍に近い場所にあるだけに、世界政府の被害を受けた子供を連れてきたりが多いらしかった。

 

そのため海賊などのわかりやすい脅威よりも、政府の諜報員などといった方に細心の注意を払っていると言っていた。

だが子供を連れて行かれるという事に対して政府の諜報員が調べたりするのか?とか思っていたが、世界政府や海軍本部などがある近くでは天竜人などといった権力者がたまに出歩いていたりするらしい。

 

過去に何度か協力者にも力を借りて奴隷を助けた事があったり、逆に協力者から頼まれて奴隷にされていた者を匿ったりしていたため、そういったところからも諜報員が調べたりしている事もあるようだ。

 

とは言ってもそのあたりの情報は全部教えてもらっているみたいで、その協力者の知り合いに情報通の人がいるらしい。

普段はぼったくりをしているバーをやっているらしいが、仲間の場合は情報交換したりが主のようだ。

 

そんなネバーネバーランドでしばらく子供たちや面倒を見ている仲間たちと一緒に過ごし、別れを惜しみながらもネバーランドへと帰ることにしたんだ。

 

そこで、なぜか俺にお礼を言いたいという女性がやってきた。

 

「ピーターさん。あなたのおかげで私たちは今生きていられています。私たち家族は以前この地へ来てとてもつらい目に遭いました。私自身も病でもはや幾ばくかの命だと思っていました。しかしあなたの作り上げたこの島のおかげで、私も夫も子供も生きていられるのです」

 

「いや、ここは確かに第2のネバーランドとして作られたのかもしれない。でも作り上げたのは俺の仲間たちだ。だからあなたもそんな事は気にせずこれからやってくるだろう子供たちを見守ってあげてほしい」

 

やはりこの人もひどい目に遭ったのだろう。今は見る限り病の様子も見られないし、元気になったのであれば何よりだ。

 

そんなお礼を受けるのは仲間たちだと思うが、その気持ちでこれからやってくる子供たちに接してくれれば何も言うことはない。

 

そのまま見送られつつネバーランドへと帰り、みんなに土産話としてネバーネバーランドの事やサボたちの事を話したりしつつ過ごしていた俺だったが、ここから少し慌ただしい事態へと進んでいくことになる。

 

 

 

 

 

以前海賊となりワノ国の事などを教えてくれた仲間から連絡がきた。

最初はいつも通り元気にしている連絡かと思っていたんだが、そういうわけではないようだ。

 

内容は俺たちに情報を提供してほしいという頼みだった。仲間からの頼みなら断る理由などないが、情報が欲しいのはその海賊団との事らしく俺たちの力を借りたいとの事だ。

 

「ピーター。突然の連絡ですまない。少しみんなの力を借りたい事態が起こってしまったんだ」

 

「ワノ国の事を教えてもらって以来だな。声を聞いたところ元気そうだが何かあったのかい?」

 

「ああ、ネバーランドの仲間たちに人探しをしてもらいたいんだ。ただ、俺たちが探している事は知られたら逃げられるかもしれないから、見つけたら教えてほしいんだよ」

 

「ふむ、迷子や船員探しといった類ではなさそうだな。事情を教えてくれないか?」

 

聞けばその海賊団で仲間殺しをして逃げたヤツがおり、そいつを追って意気投合して一緒に冒険することになった燃える船長が飛び出そうとしたが、それを仲間たちが止めたんだとか。

どこにいるのかもわからない相手を闇雲に追いかけても、相手は罠を張り待ち受ける可能性だって仲間を増やして多勢に無勢になる事だってあり得る。

 

そういう事を説明した上で、人を探すならば伝手があるからしばらく頭を冷やして待てと押し留めてあるのだとか。

船長が飛び出そうとしたのかと聞いてみたら、どうやらワノ国の後に別の海賊団に吸収されていたようで、今は白ひげ海賊団というところにいるということだった。

 

その時知ったそうだが、白ひげ海賊団にも、その傘下の海賊団にもネバーランドの仲間がいたらしい。

俺も誰がどこの海賊団にいるとか詳しい事までは知らない事が多いので初耳だったが、基本的にピースメインという種類の冒険したりする海賊には仲間がいたりするみたいだ。

 

そういう海賊は民間人を襲ったりしないから、安心して冒険を楽しんだりできているということだった。

白ひげ海賊団も仁義を重んじる白ひげ船長の影響か、そういう気質の船員が多いためネバーランドの仲間たちも溶け込みやすいようだな。

 

しかし白ひげか…その名前最近聞いた気がするな。あぁ、シャンクスから聞いたんだったか。

 

そして船長の白ひげに事情を説明した上で、俺たちに協力を求める事の許可をもらい連絡してきたそうだ。

 

ちなみに燃える船長は今は2番隊の隊長という役職についているらしい。

 

その仲間殺しをしたのが2番隊の隊員だったため許せずにそのまま飛び出そうとしたのだとか。

だが、仲間から見てもその燃える隊長は直情径行というか、思い込んだら突っ走るタイプなので危なっかしく心配だったため、白ひげにだけ俺たちとの関係を伝え相談したそうだ。

 

本来ならば普段から息子と呼んでいる船員を殺されて怒り狂うかと思いきや「嫌な予感がする」と慎重な姿勢だった白ひげ船長を見て、白ひげ海賊団に入った仲間のほうも念のため俺たちに協力を頼む事を決めたらしい。

 

話を聞いていけばその仲間殺しをした男は相当危険な男のようだ。

 

俺の仲間たちもその燃える隊長を心配して一緒に行く可能性が高いし、俺も念のため他の仲間たちに協力してもらうほうがいいな。

俺はその仲間殺しの男の名前や風体など詳しい情報を教えてもらい、世界中の仲間たちにその人物を見かけたら教えてくれるように頼んでいった。

 

その男に仲間がいるかもしれないから、もしいたらその仲間の情報も教えてもらうようにし、最後に「決して近づいてはいけない」と危険性も伝えてある。

 

これで人がいる場所ならばどこにいてもすぐに捕捉することができるだろう。

 

その事を教えてもらった白ひげ海賊団の電伝虫にかけて仲間に伝えておいた。

 

 

 

 

 

「…そうか、そっちは少し大変な事になっているようだね」

 

「ええ、ここで暮らしている仲間たちの話ではここ最近の間での出来事みたいだから、そんな豹変具合に戸惑っている国民のほうが多いみたいだわ」

 

「何か作為的なものを感じるな。くれぐれも気をつけるんだよ」

 

「また何かあれば連絡するわ。1人では行動しないから心配しないで」

 

ロビンから連絡が来たので話を聞くと、今はアラバスタという国にいるようだ。

仲間からの情報を元にいくつかの島を巡ってみたが得られるものはなかったようで、そのまま次の情報を元にアラバスタへ向かったと。

どうやらかなり歴史の古い国だということを仲間から聞いていたので、知りたい事があるかもとアラバスタにいる仲間を頼って行ったらしい。

 

そしてやはり渡しておいた紙ブローチは役に立ってくれたみたいだ。

 

元々折り紙を教えたりしているときに、女の子にはこうやって紙の装飾品を作ってあげたりしていた。

 

小さな女の子ならば別として、成人女性ならば普通なら貴金属の装飾品を付けるのに、わざわざ紙のブローチや髪飾りを付けているってだけで仲間たちは「もしかしたらネバーランドの仲間かな?」と俺たちとの関係を気づく事ができるのだろう。

 

特に俺の場合は色だって好きな色で紙を生み出すことができる。

つまり花びらの色が違う紙の花を作る事だってできるのだ。今の俺には後から詳細な部分だけを変えられないから最初の時点では複雑な色模様の紙にしか見えないんだが…

これを花にした時に花びらの部分の色が違うようにしておいたのだ。これに本当に苦労した。

 

アラバスタでは仲間とも無事合流することができ、ロビンは賞金首になってしまっているため変装などをしながら国や遺跡などを見て回ろうという予定だったのだとか。

 

だがその国は今随分と荒れているようで、三大勢力と言われる七武海という集団の中の1人がその国で起きている反乱の旗頭になっているらしいのだ。

なんでそんな人物が反乱の旗頭なんだ?と思ったら、その七武海はアラバスタを拠点に活動しており、長い期間ずっとアラバスタにやってきた海賊などを退治したりしていたという事だ。

 

そして国軍や、下手をすれば国王などよりも信頼を得ている男のため、国に不信感を持った人間たちはその男をトップに据えているという事だった。

そこにいる仲間の話では元々国王は善政を敷いていた平和な国だったのだが、砂漠の多い国で生命線となる雨が降らなくなり、そこに国に対する不信が募っていったとの事だ。

 

そこまではまだ反乱などという行いには至らなかったのだが、決定打として周囲の雨を奪うという物を国が保有していると判明した事で事態が大きく動いていったらしい。

 

だが仲間が言うには「そんな事をするような国王ではないはずだ」という事から、反乱組織の旗頭である海賊の調査などを行っていると言っていた。

 

それを聞いてまず思ったのが「今まで善政を敷いていたような国王が急に心変わりをするものなのか?」ということだ。

大体周囲の雨を奪うものなんてそんな狭い地域だけをピンポイントで雨を降らせたりできるものなんだろうか?

国王と話したことがあるわけじゃないけど、仲間がそこで生活していてそういうくらいだし何か事情がありそうだな。

 

反乱を起こしているのだって国民なわけだし、どういった経緯で反乱なんて言われるほどの事を起こすに至ったのかわからないが、善王なのであればさぞ心を痛めていることだろう。

 

今俺が話を聞いて考えられるのは、洗脳や脅迫といった類だな。

 

もし黒幕がいて、何かの目的のために国王にそれをやらせていたのであれば、突然国王が雨を奪うという愚行に及んだとしても納得できる答えだ。

誰か近しい人間を人質に取られたりしていれば、もしかしたら雨を奪う命令に逆らえなかったなどあるかもしれない。

 

 

それに、今アラバスタで行われている事は革命軍に似ているとも思えるが、どうにもきな臭い感じがする。

 

「ピーター?さっきロビンが連絡したと思ったんだが何かあったのか?」

 

「いや、少し気になる事があってな。今アラバスタで反乱の旗頭になっているという海賊について詳しく教えてほしいんだ」

 

「何から話せばいいんだろうな。ロビンから聞いた話もあるかもしれないが、俺たちがわかっているのは数年前くらいに王下七武海の一角であるクロコダイルがアラバスタを拠点にするようになったんだ。そしてそこからはアラバスタに来る海賊を退治したりして国を守るような行動をするようになった」

 

「それで?」

 

「最初は七武海なんて言われても元が海賊船の船長をしていたような賞金首だし何かあるんじゃないかと警戒していた国民も、国に近寄る海賊を片っ端から退治していくクロコダイルをやがて信用するようになり、今では国王や国軍よりも頼りにされているという声もが聞こえてきたりするな。だからこそ反乱軍なんて言われてる集団をまとめ上げるのにクロコダイルの名前は効果を発揮するんだろう」

 

「なるほどな。それだけ聞くと腰を据えた場所を荒らされないために動いているとも、国民のために動いているとも考えられるな。ちなみにそのクロコダイルはどんな風体のやつなんだ?」

 

「そうだな…顔の真ん中あたりに横に大きな縫い傷があり、葉巻を好んでいるのか咥えている事が多いな。まぁ顔は手配書なんかを見ればわかるだろう。あと大きな特徴として左手がフックになっているな」

 

「左手がフックだと…?それは間違いないのか?」

 

「ああ、俺も直接見たことがあるから間違いないな。俺たちはこの争いのどちらにも加担していないが、国が大きく乱れるようならまっさきに被害に遭うのは子どもたちだ。だからこの国にいるネバーランドの仲間は国王側と反乱軍側それぞれの近くにいて、危なくなれば避難させたりできるようにしてあるんだ。それがどうかしたのか?」

 

「いや、なんでもない。また何かわかったら教えてくれ」

 

少し気になってしまったのでその旗頭になっているという海賊の名前や風体などの情報を聞いてみたところ、俺の不安は一層大きくなっていった。

というもの、片腕がないというのはシャンクスもそうだったし何とも思わなかったのだが、その腕にフックを付けているらしいのだ。

 

片腕にフックをつけた海賊か…しかも今でこそ七武海とかいう立場で懸賞金も解除されているが、元々は海賊船の船長をしていたらしい。

 

俺がこの名前(ピーター)を名乗っているからなのか、子供を連れてきてネバーランドと名付けた島にいるからなのか、どこか奇妙な縁を感じる。

 

普段の俺ならばそれを聞いたからと言ってわざわざ向かうような事はしない。

そもそも、俺が勝手に異世界知識で片手にフックを付けた船長を怪しいと思っているだけで、クロコダイルという男は本当にアラバスタという国を想って反乱軍に力を貸している可能性だってあるのだ。

 

それに俺はなんちゃってピーターパンなだけのおじさんなので、七武海なんていう有名な相手をどうこうすることなんてできはしない。

だが聞いてしまった以上、心の奥にあるモヤモヤを解消するには直接行って見てみるのが一番だ。

 

取り越し苦労ならばいい。それなら争乱の中にあるアラバスタでいつも通り子供たちを救ったりしていくだけだ。

だが何が起こるかはわからないので、一応念には念を入れてから行動することにした。

 

 

 

各方面への連絡を行い、準備を整えた俺たちはそこにいる仲間のビブルカードを頼りに一路アラバスタへと向かった。

 

 

 

 




以下蛇足

現在の時間軸は原作開始1~2年前くらいです。

黒ひげが白ひげ海賊団4番隊隊長サッチを殺してヤミヤミの実を奪って逃亡し、各地で仲間を集めて原作にて登場したことから、新世界から逃亡しながら各地を回り楽園まで移動しているわけですし少なくとも1~2年はかかっていると考えています。

そして今後に必要なため少々強引ですが主人公にはアラバスタに向かってもらいました。

アラバスタは、ロビンがいない事で暗躍しつつも反乱軍を率いているクロコダイルということにしました。
原作ならば暗躍しながらも「あくまでも内乱だから」と無関係のようなスタンスでしたが、国王以上に支持を得ていて力もあるクロコダイルに反乱軍が協力を求めない理由はないはずなので、今作では旗頭として先頭に立ってもらいました。

決してフック船長なのに暗躍だけしているのが味気ないと思ったわけではありません。

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