ある春先のこと
リンゴ「よおミカン」
ミカン「やあリンゴ」
リンゴ「卒業おめでとう、お互いまだまだ青い果実だけど、これから社会人なんだな」
ミカン「おいおい、お前は父ちゃんも爺ちゃんも曾祖父ちゃんも、先祖代々青いまんまじゃなかいか」
リンゴ「お前のウチだって最後は親父もお袋も青くなってたろ」
ミカン「あれはカビだよ、それに爺ちゃんは最後は頭も白かったし」
リンゴ「それもカビじゃないの」
ミカン「まあまあ、そんなこと言って腐らせないでくれよ。お前はただでさえフィルムが無いと周りを駄目にするんだから」
リンゴ「お前が腐りやすいんだよ……ところで聞いたか、去年卒業した柿先輩のハナシ」
ミカン「干されてるらしいな」
リンゴ「シワシワだよ、渋い口当たりだとああなっちゃうんだな。でもその方が人気あるって不思議だよなあ。不思議と人が集まるらしいんだ」
ミカン「それに引き換え、メロンさんは売れっ子だけど周りに誰もいないんだって」
リンゴ「洋梨さんみたいにスタイルは良いけど傷つきやすいから近寄りにくいのさ。いつもマスクつけてるし、きっと高嶺の花ってやつだね」
ミカン「スイカは似たような見た目してるのに人当たりがいいって評判なのにな」
リンゴ「でも体を割って話してみると、たまに中身がスカスカだって悪口聞くぜ」
ミカン「当たり外れってやつさ、大根の野郎みたいにぎっしり詰まってるけど重たいよりはいいって人もいるだろ」
リンゴ「あいつカブみたいな柔らかい薄味に見えて、ぜんぜん違う固い辛口だったりするのに、見た目じゃ分からないって怖いよなあ」
ミカン「人気者のバナナだってそうさ、一皮むくと全然違うし」
リンゴ「あんにゃろう、自分はいいけどけっこう周りを滑らせてるのに責められないってずるくないか、山芋おじさんがよくそのことでしつこく擦り寄ってくるんだよ」
ミカン「あの人はその粘っこさで売ってるとこあるから仕方ないって。ところでマクワウリさんの親戚の菊まくわはどうしてるか知らないか? 美味しい立ち位置なんだけど、季節屋で地味だからぜんぜん話を聞かないんだよなあ」
リンゴ「知らないのか? 改名したんだって」
ミカン「改名、なんて名前に?」
リンゴ「菊メロン」
ミカン「菊メロン」
リンゴ「知り合ったバナナまくわにタイガーメロンって人たちと品種改良して再スタートするんだって」
ミカン「いろんな世界があるんだなあ」
リンゴ「俺たちはどんなところに務めるんだろう」
ミカン「箱を開けてみないとわからないって怖いね」
リンゴ「でも」
ミカン「自分の味が出せるところに行けたらいいなあ」
「すいません、ミックスフルーツゼリーくださーい」
人も色々、果物色々、行く先様々