「もうやだあいつらなんなの」

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こっそりチートを使って快適無双ライフを満喫したいと思います~トップ連中なんかより余裕で強くなれば俺の天下だろう~

「あれ、皆さんお揃いでどうされたんですか?」

 

 男は、下碑た笑いを浮かべながら、自身を取り囲む男女を見渡した。全員このゲームにおける有名人たちだ。

 

「取り囲みなんてマナー違反ですよ?」

 

 男の呼び掛けに答える者は一人もいなかった。おそらく、これから自分はチート行為の報復を受けるのだろう。だが、運営側からの修正を未だに受けていない自分のステータスは、上位ランカーたちの数値をはるかに上回る。だからこそ男は余裕綽々で続くことばを紡ごうとし、

 

「「「人誅」」」

 

 自身の首が舞った。しかし、無限増殖が可能な

 

「なんどでも、切る」

「は、ひゃ」

 

 一回、またもや復活し首がなかった。

 

 もう一度、復か、今度は刺された。

 

「嘘だ、そんなは」

 

 首が飛んだ。

 

「まだ、増えるのか」

「こんな!」

「うるさい」

 

 両断された。

 

「チートだ!」

「は?」

「お、お前たち卑怯だぞ!こんなの、絶対におかしい!」

「チート野郎が何を言ってるんだ」

「ば、化け物ども!」

 

 男は悟った。自分はとんでもない連中の尻尾を踏んでしまったのだと。

 

 男は走っていた。何とかあの化け物どもの包囲網から抜け出せたのだ。男は気づいていなかった。このゲームにおけるランカー集団が、チートに頼ってろくなプレイヤースキルもない男に逃げ出せる隙を与えるわけがないということに。自分が俎上の鯉だという事実に。

 

「よ、よし、このまま逃げ切れるぞ」

 

 男は、無限増殖チートと共に自身のステータスを操作していた。男の敏捷性は、このゲームにおける理論上の限界値まで引き上げられており、あの化け物集団では決して追いつけない、はずだ。

 

「ね、念には念を入れておこう」

 

 恐ろしくなった男は、無限増殖する自身のアバターの似姿に紛れ込んでおくことにした。

 

「よし、これで万が一追いつかれても、この中に紛れ込めば何とか逃げ切れるはずだ」

 

 キャラの性能で圧倒的に優位に立っているはずなのに、追いつめられる恐怖が消えることはなかった。

 男の今の目的は、このゲームからログアウト(逃げ出す)ことだ。つまり、人影のないところまで逃げ切れば良いだけなのだが。

 

「ひぃっ」

 

 空から矢が、花火が、銭が、刀が。男めがけて降り注ぐ。高速で移動しているはずなのに、正確に狙い打たれている。自分の周りを固めていた似姿たちは、一気に姿を消していく。

 刺さる、爆ぜる、はじける。無限に増殖するはずが、数が増える前に倒されていく。幸いなのは、まだ男自身にそれらの魔の手が及んでいないことだろう。

 どさり。

 

「ひぃぃぃぃぃぃ」

 

 すぐ隣にあったアバターがやられた。先ほどから、何度も見てきた光景だ。男に、ここで恐ろしい考えが芽生えた。

 

「ま、まさか、あえて俺だけ外しているのか……?」

 

 そんなことができるはずは、ない。だが、現にまた、自分の前に立っていたアバターが爆破された。

 

「くそくそくそ、ここには、怪物しかいないのか!」

 

 だが、男はまだこのゲームの本質を理解していなかった。先ほどから、男を恐慌させている存在が束になってようやく立ち向かえる、本当の理不尽がいるということに。

 ひたひたと、先ほどから足音が大きくなっている。ずっと気のせいだろうと思っていたのだが、無視できない大きさになっている。

 

「は、は、幻聴まで聞こえてきちまったか」

 

 きっと恐ろしさが生み出した不具合だ。だって、今の自分に追いつける存在なんているはずがない。だから、後ろを振り返っても、何もいるはずは。

 

「遅いね、遅い」

「はぐっ……な、なんで、どうやって、なんなんだよ、てめーら」

「君、いらない」

 

 男が最後に見たのは、光の一切を映さない黒々とした瞳だった。


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