こっそりチートを使って快適無双ライフを満喫したいと思います~トップ連中なんかより余裕で強くなれば俺の天下だろう~ 作:wanaza
原作:シャングリラ・フロンティア
タグ:R-15 残酷な描写 アンチ・ヘイト シャンフロ 幕末 辻斬・協奏曲:オンライン チーター死すべし慈悲はない ランカー
「あれ、皆さんお揃いでどうされたんですか?」
男は、下碑た笑いを浮かべながら、自身を取り囲む男女を見渡した。全員このゲームにおける有名人たちだ。
「取り囲みなんてマナー違反ですよ?」
男の呼び掛けに答える者は一人もいなかった。おそらく、これから自分はチート行為の報復を受けるのだろう。だが、運営側からの修正を未だに受けていない自分のステータスは、上位ランカーたちの数値をはるかに上回る。だからこそ男は余裕綽々で続くことばを紡ごうとし、
「「「人誅」」」
自身の首が舞った。しかし、無限増殖が可能な
「なんどでも、切る」
「は、ひゃ」
一回、またもや復活し首がなかった。
もう一度、復か、今度は刺された。
「嘘だ、そんなは」
首が飛んだ。
「まだ、増えるのか」
「こんな!」
「うるさい」
両断された。
「チートだ!」
「は?」
「お、お前たち卑怯だぞ!こんなの、絶対におかしい!」
「チート野郎が何を言ってるんだ」
「ば、化け物ども!」
男は悟った。自分はとんでもない連中の尻尾を踏んでしまったのだと。
◇
男は走っていた。何とかあの化け物どもの包囲網から抜け出せたのだ。男は気づいていなかった。このゲームにおけるランカー集団が、チートに頼ってろくなプレイヤースキルもない男に逃げ出せる隙を与えるわけがないということに。自分が俎上の鯉だという事実に。
「よ、よし、このまま逃げ切れるぞ」
男は、無限増殖チートと共に自身のステータスを操作していた。男の敏捷性は、このゲームにおける理論上の限界値まで引き上げられており、あの化け物集団では決して追いつけない、はずだ。
「ね、念には念を入れておこう」
恐ろしくなった男は、無限増殖する自身のアバターの似姿に紛れ込んでおくことにした。
「よし、これで万が一追いつかれても、この中に紛れ込めば何とか逃げ切れるはずだ」
キャラの性能で圧倒的に優位に立っているはずなのに、追いつめられる恐怖が消えることはなかった。
男の今の目的は、このゲームから
「ひぃっ」
空から矢が、花火が、銭が、刀が。男めがけて降り注ぐ。高速で移動しているはずなのに、正確に狙い打たれている。自分の周りを固めていた似姿たちは、一気に姿を消していく。
刺さる、爆ぜる、はじける。無限に増殖するはずが、数が増える前に倒されていく。幸いなのは、まだ男自身にそれらの魔の手が及んでいないことだろう。
どさり。
「ひぃぃぃぃぃぃ」
すぐ隣にあったアバターがやられた。先ほどから、何度も見てきた光景だ。男に、ここで恐ろしい考えが芽生えた。
「ま、まさか、あえて俺だけ外しているのか……?」
そんなことができるはずは、ない。だが、現にまた、自分の前に立っていたアバターが爆破された。
「くそくそくそ、ここには、怪物しかいないのか!」
だが、男はまだこのゲームの本質を理解していなかった。先ほどから、男を恐慌させている存在が束になってようやく立ち向かえる、本当の理不尽がいるということに。
ひたひたと、先ほどから足音が大きくなっている。ずっと気のせいだろうと思っていたのだが、無視できない大きさになっている。
「は、は、幻聴まで聞こえてきちまったか」
きっと恐ろしさが生み出した不具合だ。だって、今の自分に追いつける存在なんているはずがない。だから、後ろを振り返っても、何もいるはずは。
「遅いね、遅い」
「はぐっ……な、なんで、どうやって、なんなんだよ、てめーら」
「君、いらない」
男が最後に見たのは、光の一切を映さない黒々とした瞳だった。