ROMAN DE ドォォォォン!!   作:霧鈴

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「さて鉄槌よ。報告は上がってきているが、随分と暴れてきたようだな」

 

「ちゃんと元帥の考えていた通りになったんじゃないの?」

 

「いくら私でもそこまでやるとは考えていなかったよ。自分が何をしたのかわかっているのか?」

 

「七武海の同僚である女帝に挨拶と自己紹介をしただけだよ。あー、その後ちょっとお遊びに付き合ってあげたくらいかな」

 

()()()か…お前が何を考えているのかは知らんが、今回のような事はなるべく控えろ。いいな?」

 

海賊女帝との初対面は悪いものではなかったが、思ったよりも精神的に疲れるものだった。

なので帰りの船では船室のベッドでゴロゴロしながら過ごしてたわけだが、海軍本部へ到着早々元帥からお呼び出しがかかった。海兵がなんて報告したのか知らんが、勝手に暴れてる扱いは心外だぞ。

 

俺がやったことなんて、『自己紹介と力のアピールして、即席の演劇に参加させられた』だけだ。

 

きっと今頃女帝たちは「あの巨人は悪役にもってこいじゃな。これからは囚われの姫シリーズを増やすか」とか話してるんだろうな…まぁ歌劇としては王道ストーリーだしわからないではない。

少々島を破壊したことは事実だが、それに対して文句も言われてないし織り込み済みだったんだろう。

 

しかし元帥がわざわざ控えろとまで言うなんて、女帝の歌劇に参加したのは何か悪かったんだろうか?控えろって言われるようなことなんて……あー、しまった。そういうことか。

 

 

 

元帥が言いたかったのは『女だけの歌劇なんだから男が参加するな』ってことだ。

 

 

 

これは盲点だった。確かに元帥の言う通りだわ。そこまでやるとは思わなかったって言われても当然だ。いくらその場の流れで参加しちゃったとはいえ、そこはちゃんと反省しないとな。

 

「言いたいことは理解した。確かに元帥が正しいな」

 

「そうか…理解してくれたようで何よりだ」

 

「それじゃ俺は帰るとするよ。今回の船旅は少々気疲れしたからね」

 

元帥にちゃんと反省してることを伝え、海軍本部を出てシャボンディ諸島に戻っていく。

まさかこの世界にも女性歌劇文化が存在してるとは思わなかったが、更に飛び入りで参加することになるとはもっと思わなかったよ。

今日は疲れたからロビンに愚痴を聞いてもらおうっと。

 

 

 

……

………

 

 

 

「ただいまー!」

 

「おかえりなさい。随分と戻ってくるのが遅かったのね」

 

「そうなんだよ。ちょっと聞いてよ…」

 

シャボンディ諸島に戻ってから自分の船へと移動し、ロビンに海軍本部での出来事や海賊女帝とのやりとりなんかを聞いてもらう。

とはいえ愚痴ばっかり聞かされても楽しくないだろうから「ガープ中将との特訓で新しい能力の使い方が判明した」とか「海賊女帝がいた島は女の子しかいない島だったみたいだよ」とかそんな感じだ。

 

「女性だけの島なんてあるのね。それでどうだったの?」

 

「どうって言っても大したことはしてないよ。挨拶して認めてもらって、ちょっとだけお遊びに付き合った程度かなー」

 

「随分と仲良くなれたみたいで良かったじゃない。あなたの事だからてっきり突拍子もないことをしてたんじゃないかと思ってたわ」

 

突拍子もないってのがどんな事を想像してたのかわからないけど、いくら俺でもそんな無茶苦茶な事はしないぞ。後で怒られるかもしれないじゃないか。

むしろ突然小芝居が始まって悪役を振られたんだから、無茶苦茶なのは向こうのほうだ。

 

「ロビンのほうはどんな感じ?見聞色の覇気わかった?」

 

「ええ、レイリーさんから教えてもらって少しだけどわかってきたところかしら。ハンマが教えてくれた時は意味不明だったけれど、あんな説明でもきちんと教えようとしてくれていたのね」

 

やっぱり意味不明だったんだ。確か俺が説明したのって「自分を信じて!」とか「見えないものを見て!」とかそんな感じだった気がするし、かなり昔の話だから仕方ないと思うわ。

その日はお互いの出来事や他愛もない話をしながらゆっくりと過ごし、翌日俺の能力の使い方の意見を聞くためにロビンと一緒にシャッキーの店に行くことにした。

 

だが店に入った途端にシャッキーの「鉄槌ちゃん、随分と暴れてきたみたいね。もうこっちにも話がきてるわよ」の言葉で何があったのか詳しく説明しろって流れになったんだ。

 

 

……

………

 

 

「鉄槌ちゃんって思った以上にバカだったのね」

 

「いや、きみほど面白い男は初めて見たかもしれん」

 

「やっぱり暴れてるんじゃない…いえ、いつも通りかもしれないわね」

 

 

シャッキーに馬鹿にされ、レイリーに笑われ、ロビンには呆れられてる?

詳しく説明しろって言うからその通りにしたのに、聞いた感想がそれなのはどうかと思うぞ。

ちゃんと「引きこもりがちのお嬢さんたちに来客を告げるノックをして、出てきてくれた女帝たちには自己紹介として力を示して、その後即興のお遊びに参加しただけだよ」って言っただけなのに…まぁ超巨大ハンマーでノックした事とか、なかなかハンマーが当たらないからそこら中を叩きまくった事とかにはため息吐かれたけど。

 

「しかし…あの娘たちは演劇までやっているのか。聞いたことがなかったが、思っていたよりも元気そうで何よりだ」

 

「…ねぇ鉄槌ちゃん。本当に彼女たちは演劇なんてしてたの?また何か勘違いしてない?」

 

「本当なんだってば!この俺の蓄積された知識によって導き出された答えに間違いはない!」

 

「どうして鉄槌ちゃんがそこまで自信満々で断言できるのか本当にわからないわ…」

 

レイリーは女帝たちと知り合いだったのか…世間は狭いって言うけど本当なんだな。知り合いってわかってれば何か伝言くらいは聞いておくこともできたかもしれないが、まぁ次に機会があればということにしておこう。

 

しかしシャッキーは疑り深いみたいだな。同僚に会いに行っただけなのに突然「もうやめて!」とか言い出すなんてどう考えてもフリでしかないだろうに。

 

ロビンは今日もレイリーから見聞色の覇気の講義を受けるため2人で出ていった。俺も参考にと思って一緒に行こうと思ったんだが、ロビンから「集中したいからどこにも行かずにここで待ってて」と言われてしまい大人しく留守番してることになったんだ。

 

だから待ってる間にシャッキーに俺の能力の使い方の相談をしてたんだけど、俺自身がどこまでの力に干渉できるのかがわからないから色々と試していけという結論になった。

 

 

 

外で騒がしい声が聞こえると思ったらルフィたちが揃って店の中へと入ってきた。なんか遊園地とかに行って遊んだりしてきたらしい。今日はタコだけじゃなくヒトデと人魚も連れてるな。

デカい声で「腹へったーー!メシーー!」とか言ってるがここバーだぞ。ミルク飲んでる俺が言うのもアレだがお酒を提供する場所だぞ。

俺はカウンターに座っており、麦わらの一味はテーブルのほうにいたんだが、なんかコソコソと話してると思ったらウソップがジョッキ片手に話しかけてきた。

 

 

「なぁハンマもたまには一緒に飲もうぜ!」

 

「いや、俺はロビンにお酒禁止令を出されてるから飲まないぞ。見つかったらたぶん怒られるからな」

 

「え~~??別にちょっとくらいならいいじゃねぇか。うまいぞ?」

 

「お前ら酒飲まされて潰されたの根に持ってるだろ?いくら言われても飲まん」

 

 

そんな酒を勧める言葉には耳を貸さずに手元にあるミルクを飲んでいく。あれ?このミルク、なんか味がおかしいな…まぁいいか。そういやこいつらに1個聞きたいことがあったんだ。

 

 

 

 

 

その後、俺は覚えてなかったんだが麦わらの一味は全滅の危機に瀕していたようだ。

 

 

 

……

………

 

 

 

「ハンマったら遅いわね…またどこかに行ってるのかしら」

 

レイリーさんに手ほどきを受け、今日の分は終わったからと1人で船に戻ってきたのだけどハンマが戻ってこないわ。疲れていたから先に戻ってきちゃったけど、やっぱり迎えに行ったほうが良かったかしら?最近は1人にすると暴れまわってるような気もするし、なるべく一緒にいたほうがいいのかもしれないわね。

 

帰りがけにレイリーさんも「ハンマくんがいたら戻るように伝えておくよ」って言ってくれてたからそろそろ戻ってきてもいいと思うんだけど…

そう思っていたらハンマじゃなく麦わらくんのところの航海士さんたちが船に飛び込んできた。

 

「ロビン!お願い助けて!!」「ロビ~ン!おで殺ざれる!」「頼む!ハンマを止めてくれェ!」

 

「突然どうしたの?」

 

「ハンマがいきなり『皆殺しだ!』って言って暴れだしたのよ!ルフィたちが止めてくれてるけど、このままじゃ本当に殺されちゃう!」

 

どういうことかしら?状況がまったくわからないわ。それにしてもハンマがわざわざ「皆殺しだ」とまで言うなんて珍しいわね。

そう思っていたら外からハンマの声が聞こえてきた。船の外に出てみると…これはどういう状況なのかしら?

 

 

 

「どこに逃げようが無駄だぞ!逃げたら逃げた先の人間ごと殺し回ってやる…ヒック」

 

「「ルフィ!ゾロ!サンジ!」」

 

麦わらくんたちがボロボロになって引きずって持ってこられてるわ。相変わらず仲が良いのかなんなのかよくわからない行動をするわね。でも、それよりもハンマのこの様子からすると…もしかして酔ってるの?

 

「ハンマ、あなたお酒飲んじゃったの?」

 

「あ~ロリンちゃんがいた。ちょっと待っててね…ヒック。この長っ鼻の目の前で仲間全員殺して、ちゃんと同じ気持ちを味わわせてやるからね」

 

「状況がまったくわからないけど…そんなことしなくてもいいのよ。膝枕してあげるからこっちへいらっしゃい」

 

「えー…………そこまで言うなら仕方ない。………よいしょ、zzz」

 

ズルズルと引きずってきた麦わらくんたち3人をそのまま床に落として大人しくこっちへ来てくれる。こういうところはお酒飲んでても変わらないのよね。すでに私の膝枕の上で寝てるし。

理由がまったくわからないけれど、ハンマは膝枕をしてあげるとすぐに寝ちゃう。だからまず大人しくさせるにはこれが一番だわ。それにしても…

 

「あなたたち、ハンマにお酒飲ませちゃったの?」

 

「ウッ!えーと、その、この前飲まされて潰された仕返しにと思ってハンマの持ってたミルクに酒を入れたんだ…」

 

あら、それじゃ仕方ないわね。仕返しされるのはハンマの自業自得だからいいんだけど、今回はその方法が良くなかったって事だわ。

そういえばハンマがお酒飲んだのなんて10年以上前の事だし、飲んだらどうなるかなんて誰にも言ってないから知らなくて当然よね。

 

「知らなかったんでしょうけど、ハンマは酒癖が悪いから飲ませちゃダメよ」

 

「いや、あれは酒癖が悪いってレベルじゃないだろ!酔っ払ったら周りの人間を殺すのか!?」

 

「そこまではやらないと思うんだけど、あなたたち何かしたのか言ったんじゃない?状況がわからないから原因もわからないわ」

 

「えーと…ハンマから『ウォーターセブンでロビンに謝ってたけど何したんだ?』って聞かれたから、ひどいこと言っちまったんだって言ったんだ。そんで更に『なんて言ったんだ?』って聞かれて、ハンマ以外に仲間いないだろみたいな事を言っちまったって言ったら『じゃあ皆殺しな』って言って襲いかかってきたんだ。意味わからないだろ?」

 

長鼻くんから説明してもらって理解できた。そういうことね。それならお酒を飲んじゃったハンマがああなっても仕方ないわ。

彼らにしてみれば理解できない事なんでしょうけど、一応ハンマにもハンマなりの基準というか理由みたいなものはあるにはある。誰が聞いても理不尽だと思う理由だけどね。

 

「「「…うぅ」」」「お前ら大丈夫か!?チョッパー!早く診てやってくれ!」「わかった!」

 

丁度麦わらくんたちも意識が戻ったみたいだし、ちゃんと説明してハンマのフォローくらいしてあげましょうか。意識の戻った3人も含めて、全員に対して声をかけてみる。

 

「あなたたち、ハンマが迷惑をかけてごめんなさい。いろいろと重なっちゃったことだし、ハンマも起きたら何も覚えてないでしょうから悪く思わないであげて」

 

「…ちゃんと納得のいく説明はしてくれるんだろうな?」

 

「もちろんよ。ただ、剣士くんが納得がいくかどうかはわからないけれど…」

 

まず最初にハンマはお酒を飲んだら思考がすごく短絡的になること、そして起きた時には何も覚えてないことを説明しておく。だからお酒を飲むことを禁止しているということも。

 

そしてハンマが暴れたであろう理由、長鼻くんから聞いた事とハンマがさっき言っていたことを合わせればどうしてそうなったのかもすぐにわかった。

もう20年も昔の話だし、寂しいって気持ちはないこともないけれど孤独(ひとり)ではなかったからもう吹っ切れている。でも酔ったハンマはそう思わなかったんでしょうね。

 

だからちゃんと教えてあげる。私の故郷(オハラ)が滅ぼされて家族(母親)も、親しかった人(クローバー博士やサウロ)たちもみんないなくなってしまったことを。

長鼻くんの言葉を聞いて、ハンマが「同じ気持ちを味わわせてやる」って言ってたから長鼻くんの目の前で仲間を殺そうと思ってただろうってことを。

 

「そういうわけでハンマは短絡的な考えになって、長鼻くんの前で全員を殺すって判断になっちゃったんだと思うわ」

 

「「「「「……………」」」」」

 

「私にはハンマしか親しい人がいないのは事実だし、知らなかった事だから仕方ないと思うけれどね。ただハンマって私に対してすごく過保護な部分があるから、重ねて言うけどあまり悪く思わないでくれると助かるのだけど……剣士くんもこれで納得はできないかもしれないけど、理解してくれたかしら?」

 

「……ああ、なんつーか、言いたくない事を言わせて悪かったな」

 

「別に謝ることなんてないわよ。それで殺されそうになってたわけだし、文句はハンマが起きてから直接言うといいわ。何も覚えてないと思うけれどね」

 

本当にね。せめて記憶でも残っていてくれたら注意なりするんだけど、何も覚えてないから言っても意味がないのよね…

今回は麦わらくんたちがハンマの悪酔いに振り回されたけれど、最初の時はまったく知らない人たちだったから余計に災難だったでしょうね。

 

 

きっともう彼らもハンマにお酒を飲ませることはないだろうし、今回のことは事故だとでも思っておいてもらいましょう。

 

 

 

 

 







酔っぱらい大暴れ中会話のみ


「長っ鼻ァァァ!!逃げるんじゃねェェ!!」

「ハンマ!正気に戻れって!」
「聞こえちゃいねぇな…とにかくさっさと眠らせるぞ!」
「ったく手間のかかるヤロウだな」



「さっきから鬱陶しいな!そんなに死にたきゃまずはお前らから血祭りにしてやらぁ!」

「くそ!全然攻撃が効いてねぇぞ!」
「止まるな!とにかくバラけて動け!」
「なんて酒癖の悪いヤツなんだ…」



「なぁハンマ!なんでウソップを狙うんだよ!?あいつはちゃんと謝っただろ!」

「謝ったからどうした?知らなかったら何言っても許されるのか?お前らの解釈で勝手に決めるな。あー、あとまだ死ぬなよ?長っ鼻の目の前でちゃんとトドメ刺してやるからな」



「がはっ!!」「ゾロ!!」「あいつ…傷口が開きやがったか!?」

「痛そうだな…こいつ(ハンマー)で楽にしてやるよ!」



「ヒック、戦えない仲間を庇って一緒になって死にかけてちゃ世話ねぇな」

「うるせェ……仲間を守って何が悪いんだ…」

「悪くないさ。仲間だから助け合う…そんなもん当たり前の話だろ。俺から言わせりゃ、仲間の傷口に触れられて怒って何が悪いんだ?死ぬ前に教えてやる。悪意のない者ほど無自覚に誰かを傷つけるんだぜ?」



「お前らはここで死ぬ。長っ鼻はイーストブルーの故郷の島を目の前で滅ぼしてから殺してやるよ」

「や…やめろ…」

「お前に仲間を守る力はねぇ…やめてほしけりゃ止めてみろ!お前が俺を止める(仲間を守れる)だけの力があるならな!」



「「「…………」」」

「気絶したか…まだ死ぬなよ?ちゃんと仲間の前で殺してやるからな。ヒック」




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