SAOに来たんですが、キリトさんがいないようです 作:青い灰
投稿遅くなりました。
ボス戦とボス名は完全オリジナルです。一応『黄金の仏像めいた多腕型ボス』という原作での発言を引っ張って来てます。
憂さ晴らしのMob狩りを終え、戻ってきた時には既に全員が揃っていた。時間は丁度、扉近くのヒースクリフが頷く。
「どうやら全員集まったようだ。
では諸君、準備の確認をしてくれたまえ」
ヒースクリフは言葉と共に扉に手をかける。俺はその最後尾でストレア、風林火山の面々と共にいた。アスナは副団長ということで最前列である。背後を確認、誰もいないのを確認し、全員でボス部屋前で最後の装備確認。
「行くぞ、お前ら、あとジンに姉ちゃんよ」
「レアだよ、よろしく!」
「おう!よっしゃ、気合い入れて行こうや!」
「「「「おぉぉぉぉぉ!!」」」」
クラインの声に風林火山の面々が叫ぶ。他のギルドでも声が上がっているようで、気合い十分だ。それに笑い、大きく息を吐いて槍を手に取る。
「はー。さてさて、やりますかね」
「頑張ろうね、ジン」
「おうよ、サチも気をつけてな」
「うん。ジンも前に出過ぎないようにね」
横に並んだサチとハイタッチ、するとストレアがおぉー、と目を輝かせて寄ってくる。
「ねぇねぇ、それ私もやりたい!」
「うん、ターッチ」
「ターッチ!ほらジンも!」
「はいよ、っターッチ」
「ターッチ!よっし、頑張ろー!」
「ふふっ、頑張ろうね!」
ストレアとハイタッチを交わす。
サチも元気になったものだ。これもクラインたち風林火山のお陰だろう。お喋り中に熱くなって俺の話を早口で何時間もするのは恥ずかしいのでやめて頂きたいところだが。まぁ良い状態だ。
そういえば黒猫団も俺とサチを追って実力をつけて来ているらしく、今回は残念ながら参加できなかったが攻略組の少し下までは頑張っているらしい。凄まじいな………
「よし、各自準備はいいようだ。
では────征くとしよう」
ヒースクリフが扉に手をかけ、開く。同時に全員がボス部屋に入り込み、俺たちも続く。
そこは円形、石造りの部屋だった。天井含め、丸みを帯びた部屋は見慣れたものだが…………その奥に、黄金に輝くそれはいた。それは目を見開き、般若のような表情を見せる。黄金の体躯は巨大、そして6本もの腕を持つ巨人、と言ったところだろうか。
そして、大気を震わせるほどの咆哮が部屋中に響き渡る。その瞬間にイエローカーソルと共にボスの名前とHPバーが出現。【The Golden Asura】。
槍を右手に、左手を石造りの床につきクラウチングスタートの体勢を取る。それに気づくのは、ボスに集中しているからか、誰1人としていない。
「戦闘───!!」
ヒースクリフが叫ぶ。
『開始』、そう叫ぶ前には飛び出していた。
「─────つぁ!!!」
連続で地を蹴り、全力で加速する。
「っ!おいジン!?」
クラインの声が響いてきた頃には、血盟騎士団を追い越していた。ほんの一瞬、ヒースクリフと目が合う。彼は驚いたように目を見開き、笑って、そして尚も口を止めない。
「開始!!」
彼の声を置いていく。加速、加速、加速。繰り返し地面を低姿勢で蹴る。見えるのはボスだけ、槍を構えて、加速した力全てを使い、跳び上がる。
「一番槍だ、食らえ!」
ボスの首筋を槍で突き刺す。SEと共にHPが目に見えて削れたのが視界の隅に映り、瞬時に2つの腕が迫ってくる。対処に頭を回した瞬間だった。
「はぁぁぁぁッ!!」「せりゃああああっ!!」
聞こえたのは、2つの声。2つの腕が大きく弾かれる。………一瞬『は?』となった。ボスまでの距離は最前線にいたヒースクリフからは50m近くある。この速度についてこれるのは1人だけと思っていたが……………
「もうっ、先走り過ぎよ!!」
「私たちにも頼ってね、1人じゃないんだから!」
アスナと、なんと大剣を構えているストレアだ。遅れてヒースクリフ、クライン、サチが走ってくる。攻略組の全員もそれに遅れて続いてくる。ストレアの方を向き、笑い返す。
「わーってるよ!!」
アスナ、ストレアに遅れて着地し、槍を構える。金色仏は重苦しい咆哮を放ち、こちらを威圧してくる。腕を振りかぶり、引き絞り、それぞれ3本ずつが迫ってくる。
アスナの元に血盟騎士団や風林火山にストレア、
そして俺の隣に輝く剣を持つヒースクリフが立つ。
「合わせたまえ」
「言われるまでもねぇっての」
即座に言い放ち、ソードスキル
〝スピン・スラッシュ〟を発動。
俺は槍を頭上で回転させ、ヒースクリフは大盾を前に剣を大きく引き絞る。
放たれた3本の拳が迫る。
ヒースクリフの鋭い一撃が一本目の腕を逸らし、こちらは溜めからの重い薙ぎが二本目の腕を逸らす。
真横にそれぞれの腕が突き刺さる。
そして三本目の腕を、硬直がほぼ同時に解除された俺とヒースクリフの強攻撃が真上に弾き飛ばし、隙を作る。
「今だな」
「お、らぁッ!!」
どこまでも冷静なヒースクリフを横目に吼え、槍を連続で叩きつける。だが、硬い。奴の剣もソードスキルだったとはいえ、それであのダメージ。プレイヤーとしてもヒースクリフのスキルは事実的に最強なのだ。それであのダメージ………勝ち目が、見えてこないのを悟る。
「埒が明かねぇな………!」
「あぁ、なにか決定打が必要だ」
「んだよ、物欲しげな目で…………
…………言っておくが俺にゃ打開策なんざないぞ」
「君の武器とスキルだが、
まだ良いものがあるのではないかとね」
「あったら苦労しねぇよ」
さては二刀流がバレたか?そんな思考が脳裏をよぎる。嫌な予感しかしないが………奴から手を出して来ることはないだろう。ハッタリをかまして眼を逸らす。
弾いた腕が再び迫り、ヒースクリフとは逆方向に飛び退いて回避する。ちょうどいいところで奴と分断できたが………
「余所見してちゃダメだよ!」
ストレアが追撃の拳を大剣で弾き上げる。もしまともに食らっていたらHPをごっそり持っていかれただろう。ギリギリだった。
「おおっと、さんきゅ」
「うん、気をつけていこう!」
分断されたが、ヒースクリフの野郎は大丈夫だろう。横ではアスナたちが応戦しており、吹き飛ばされるプレイヤーたちは一撃でもかなりHPを削られている。
「あの腕ほんと厄介だな………!」
「……………そういえばジン、
最初の一撃ってどこに命中させたの?」
「あ?そういえば……………」
あの時、確かにあの場所への攻撃で大きく削れた。なら、もしかしたらあの場所が弱点として設定されている可能性がある。ボスにもクリティカルが設定されていてもおかしくはない。あそこにソードスキルを叩き込めれば、そう考えた時だった。
「ジン、ストレア!!危ない!!」
「え」「っ、やべ」
アスナの声と同時に、多腕が突如として迫ってくる。数が多い。迷いはない、ストレアを突き飛ばした瞬間、アッパーカットが身体を打ち上げる。
「あ」
視界の外から次の腕に掴まれる。そして。
「──────が、ふ」
震える。身体が潰れる気持ちの悪い感覚に、脳が吐き気を催させる。地面に、叩きつけられたことを理解する。声が聞こえ、瞬時に途切れそうになった意識を舌を噛んで起き上がらせる。
「やっべ、死ぬ………っ」
見上げると、6本の腕全てが俺を狙っていた。だが、俺の前にあの聖騎士が立ちはだかる。十字架を模した剣が光を帯びた、そう思った瞬間。
「ぬぅんッ!!」
バキィッ、と聞いたこともないような重いSE。飛び上がったヒースクリフが、ただソードスキルで剣を振り下ろしただけで………ボスのHPバーが目に見えて1本目の2割ほど消し飛び、怯む。
「おいおい………マジか?」
「立ちたまえ。
私を震わせた男が先に死んでどうする」
「…………………は、響いたようで良かったよ」
鋭い真鍮色の眼に言われるがまま立ち上がり、回復結晶を取り出してヒール、と呟き砕く。腹立つがタゲを移されないよう攻撃する聖龍連合により、ボスのHPは2本目まで削られていた。
「やはりレベリングは適切だったようだ」
「あいつら本当に嫌いだ。お前も嫌いだけど」
「フッ、一ギルドと比べられるほどに
私も嫌われてしまったか。
これでは勧誘など無理と割りきるべきだな」
「嫌だね、絶対に血盟騎士団は胃が痛くなる。
つーかそういうとこだぞ、団長」
「秘策が、
視線がこちらを貫く。それに少し迷い、今戦線を任せている奴等が目に入る。吹き飛ばされる仲間たち、呆然と立ち尽くしてこちらを見ているストレア…………………
槍を、持ち変える。
右手でメニューを開き装備欄へ。
「では、お手並み拝見といこうか」
左手に現れた剣を手に、溜め息をつき。
あぁもうやけくそだと、心の中で呟いて。
「見世物じゃねぇぞ、オラァ!!!」
眼を丸くする仲間たちの横を抜けて、翔んだ。