SAOに来たんですが、キリトさんがいないようです 作:青い灰
寝る前に連投です。
「はー………やっと帰ってこれたか」
「………なんで私こんな人といるんだろう」
なんとか迷いの森を抜け出し、転移結晶にて35層の主街区、農村のような佇まいのミーシェという町に俺は少女を連れて転移してきていた。森では出会い頭にゴリラを一撃必殺していたからか、彼女は苦い顔をして溜め息をついている。
「気にしたら終わりだぞ。
さて……やっと安全な所まで来れたな。
自己紹介でもしておくか」
「…………シリカです」
「ジンだ。よろしく頼む」
「………?
どこかで聞いたことあるような……?」
「気のせいだろ」
「まぁ、そうかもしれませんね」
すぐに思考放棄したシリカに微妙な気持ちになる。考える気ねぇだろ。まぁ身バレしないだけマシだと軽く息をつき、足を進める。
「さて………まぁ、腹減ったし飯にするか」
「えっ、私も行かないといけないんですか」
「明日の話もしなきゃいかんしな。
あのダンジョンの難易度はそこそこ高い。
確か使い魔の名前は…………ピナ、だったか?
お前も友達を早く救ってやりたいだろ」
「…………………はい」
「っし、オススメの店とかある?
旨いもん食いたいんだけど」
「……………いい話してたのに………」
「うるへ。腹が減っては戦は出来ぬ、だ。
ダンジョン攻略は戦みたいなもんだからな」
「じゃあそのまま宿に行きましょうか。
あそこのチーズケーキが美味しいんです」
「チーズケーキか、そりゃ楽しみだ。
宿もとれて一石二鳥だな」
「えっ、宿にも泊まるんですか」
「ホームなんざねぇし、別に良いだろ」
そうして歩きだすと、シリカはちょこちょこと隣に並んで歩く。………なんか犬みたいだな。
しばらく歩いていると、周りの視線が妙にこちらに向けられていることに気がつく。予想以上に彼女はこの辺では認知度が高いようだ。まぁ前線は前線でコル!レベリング!攻略!で頭が一杯の連中だからだろうが…………流石にこれでは気が散る。
「あっ、シリカちゃん!」
そんな声の方へと目を向けると、2人のプレイヤーがこちらに駆け寄ってくる。パーティーの様だが………と、そういや原作にもこんなシーンがあったことを思い出す。追い払おうと思ったが、一応沈黙する。
「随分遅かったね、心配したよ」
「1人ってことはフリーになったの?
俺らとパーティー組まない?」
「あ………えっと、お話はありがたいんですけど、
今はこの人とパーティーを組むことになってて」
俺のコートの裾を引いてシリカが言う。
すると2人の男はこちらを睨みつけてくる。……………折角だし煽ってみようか。
「………女に強要する男は嫌われるぞ?」
「あぁ? お前……見ない顔のくせに
勝手に抜け駆けしといて何様のつもりだ?
俺らは前からシリカちゃんに声をかけてたんだ」
「ふーん」
「こいつ………!」
「あ、あの! 私が頼んだんです、すみませんっ」
「シリカちゃん、そんな男と組むべきじゃないよ」
「ごめんなさいっ、また今度!」
「おっととと」
走り出すシリカに無理矢理腕を引かれて行く。
「何してんですか!?」
「いや、折角だから煽ってみようかな、と」
「何が折角だから、ですか!?
ていうか、ジンさんも思い出の丘に
ついて行くの私に強要させましたよね!?」
「記憶にございませんねぇ」
「なんで私こんな人といるんだろう!?」
「よいではないか、よいではないかー」
「良くないっ!」
随分と元気になったシリカに引きずられ、宿屋へ。彼女が気持ちを立て直せたようで良かった。
…………そうして、宿屋に引き込まれる前に。
「ふぅん………」
「…………………」
宿屋の近くにいた赤い髪の女の、値踏みするような目がこちらを見ていた。唇を舐める女と目が合い、そして、宿屋の扉がそれを遮った。
◆◆◆◆◆
「んで、お前はここで何してんだよ」
宿屋の一階、シリカに解放されて、やっとの食事にありつこうとしていた時に、視界の隅っこに見えたフードに気付き、俺は立ち上がって話しかけた。
「やっぱり気付いたカ。
まぁバレるなとは言われちゃいないけど、ナ」
「知り合い、ですか?」
「あぁ、そうだ。
改めて、こんなとこで何してる」
「それを聞くなら1000コル、ってとこだナ?」
人差し指と親指で作る、金のジェスチャー。
俺は仕方なく表示されたウィンドウの承諾ボタンをクリックし、情報を買うことにする。
「ニャハハ、毎度アリ」
「いつもご苦労なこって、
鼠のアルゴはニッと笑い、向かいの席を指差した。
俺は向かいに、シリカはアルゴの隣に座る。
まぁそりゃそうなるよね。男と女2人だし。
「えっと……アルゴさん?」
「情報屋のアルゴだ、これからよろしくナ。
竜使い、シリカちゃん?」
「なんだ、知ってるのか?」
「オレっちは情報屋だゼ?
それにこの娘は、中層じゃかなり有名ダ。
なんとあのフェザーリドラをテイムした、
ビーストテイマーなのサ」
「ほーん………あっ」
「500コル、ナ?」
「…………………いや払うけどさ、今の卑怯だろ」
「隙を見せるのが悪いんだヨ」
目の前に現れたウィンドウを承諾して消す。
俺より悪徳な気がするが、これもおふざけの一環。そこまで高くもないし、コルは余るほどある。
「あの、アルゴさん、私も情報って買えますか?」
「いいゼ、最初だから特別に安くしとくヨ」
「この人の安全性とか………」
「おい」
「ニャハハハッ、そんなことならタダでいいゾ!
こいつは絶対に期待を裏切らない、
情報屋、鼠のアルゴが保証してやるヨ!」
「アルゴ………」
「ヘタレだから手を出されることもないしナ!」
「おい」
「良かった……詐欺師みたいだったから」
「誰が詐欺師じゃオラ」