SAOに来たんですが、キリトさんがいないようです   作:青い灰

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結末は完全に構想が終わったのでメモしました。
これであとは書くだけだな!()

随分と長くなっちまった………




取るに足らない襲撃

 

 

 

「あ────ジンさん!」

 

「何かねシリカさん」

 

 

襲い来る植物系Mobたちをそろそろ慣れてきた剣で斬り捨てながら進んでいると、突然シリカが叫び、コートの裾を引いてくる。剣を払い、そちらへ顔を向けると、彼女は丘の頂上を指差しており────縦直方体の形の、岩のオブジェクトが見えた。

 

 

「丘の頂上……!」

 

 

シリカは待ちわびていたようにそう言葉にすると、一目散に丘を駆け上がる。それを慌てて追いかけ、そして長かった丘を遂に登りきる。

 

だが、その岩の上にある筈の花はない。

線のような細く短い草が生えているだけで────

 

それを先に見た彼女はこちらを青い顔で見やるが、すぐに岩に起きた変化に気付いたので首を横に振り顎で岩を指し示す。それにシリカが再び振り向く、その時だった。

 

 

「あ!」

 

 

草を掻き分けて、白い蕾をつけた茎が伸びていく。

早送りのような成長速度で茎は大きくなっていき、

そして────────

 

 

 

鈴の音と共に、淡く白光を放つ花を咲かせた。

 

 

 

 

シリカは一度此方を振り向く。

俺も安堵に胸を撫で下ろし、彼女に向けて頷いた。

 

彼女は恐る恐る、といった様子で右手を伸ばして、その白い花の表面に触れる。すると光となって崩れ落ち、その花だけが彼女の手に残る。そして、全く無音で開示されたウィンドウが花の名を示し───それを彼女が紡ぐ。

 

 

「─────プネウマの花」

 

 

再び安堵、身体から力が抜けていく。これで彼女の目的は達成された。無事に入手することが出来た。プネウマ、その言葉の意味は記憶の中にある。

 

 

「プネウマ………ギリシア語で風、大気……

 そこの哲学じゃ存在を表す用語だ。

 存在………この世界じゃ、特に耳に残る言葉だな」

 

「これが、使い魔の蘇生アイテムですもんね……」

 

「本当にそれらに愛着を持ってないと

 入手することもないようなアイテムだしな……

 無事に入手できたのは、その心意気の賜物だろ」

 

「良かった…………」

 

 

シリカは白い花を大事そうに抱き締める。

さて────彼女は終わったが、俺は此処からだ。急がねば、丘の頂上では囲まれる。まだあの連中に追い付かれぬうちに、潜伏場所まで戻ろう。

 

 

「まだ此処は危ない。町まで我慢できるな?」

 

「…………はい。よろしくお願いします」

 

「おう、早いうちに戻ろう」

 

 

早足に、丘を下りていく。

索敵スキルは、既に警報を鳴らしているのだから。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

小川の渡す橋の上に差し掛かったその瞬間に、隣を歩いていたシリカを手で制する。カンストしている索敵スキルによる隠蔽識別が、遂に引っかかる。

 

 

「え?」

 

「後ろに下がれ。転移結晶の準備を」

 

 

押し下げるようにシリカを下がらせ、橋の向こうを睨んだまま左手で剣を抜き放つ。そのままに右手でメニューウィンドウを開き操作、ショートカットをタップする。瞬間、左手の剣が長槍へと変化する。

 

クイック・チェンジ、と呼ばれる、ソードスキルとまた違った〝派生スキル〟。今のたった数秒ほどの動作で武器を切り替えることが出来るものだ。殆ど使ってこなかったが成る程、これは中々に有用だ。

 

 

「隠れてんのは分かってるぞ。

 出てきたらどうだよ、ストーカーども」

 

 

槍の穂先を隠れているであろう木陰や茂みに向けて警告する。1人ずつ、確実に潜伏場所から追い出す。すぐに観念したのか、全員が出てくる。取り敢えず索敵をかけるが、もう隠蔽の反応はない。

 

現れたのはやはりと言うべきか、昨日の赤髪の女を筆頭としたオレンジカーソルのプレイヤーたち。

 

 

「ロザリアさん……なんで……!?」

 

「あらあら、よく見破れたものね。

 中々に高い索敵スキルを持ってるみたい」

 

「まぁね。ひー、ふー、みー、よー………

 ざっと10人ってとこか。それはともかく、

 待ち伏せなんて趣味が悪ぃもんだな、暇なの?」

 

 

話の流れで敵の数を確認する。

女を含めて10ピッタリ、本当に暇なのだろうか?

 

 

「ちゃんとお仕事はしてるつもりなのよ」

 

「オレンジギルドの、だろうが。

 趣味が悪いってどころか、もう最悪だな」

 

「オ、オレンジギルド………!?」

 

 

後ろからシリカの驚く声が聞こえてくる。赤髪女のカーソルはオレンジではないが、彼女は悪い笑みを浮かべて肯定も否定もせず、だ。

 

 

「じゃあ率直に言うわね。

 シリカちゃん、花を渡して貰えるかしら?」

 

「なっ………!」

 

「駄目に決まってんだろ。

 わざわざ触手Mob掻き分けて行ったんだ。

 そいつが許しても俺が許さん、絶対に」

 

 

もう二度とあんな体験はする訳にはいかない。等と言うのは流石に冗談混じりだが。そんな俺の言葉に赤髪女は堪えきれなくなったように高笑いする。

 

 

「そうなの、あはは!

 私たちのためにご苦労様!」

 

「やらんって言ってんだろ。

 耳詰まってんじゃねぇのか、聞こえますかー?」

 

 

いつものように煽りをかます。耳を向け、大きめの声でそう聞いてみる。赤髪女は引きつった笑みを、辛うじて崩さずにいる。終いには周りのオレンジの連中が宥めようか耳打ちを始めている。

 

 

「…………………………ねぇ?

 あんまり調子に乗らない方がいいわよ」

 

「そう怒んなよ、カルシウム足りてっか?」

 

「……………………忠告はしたわよ」

 

 

赤髪女が右手を高く掲げる。オレンジ連中が慌てて武器を取り、此方を恨めしそうに睨みつけてくる。そして女がその笑みを一層深いものへと変えた。

 

 

「殺していいわよ」

 

「っ、逃げて下さいっ!!」

 

 

オレンジの連中が走り出すと同時に、後ろで彼女の言葉が響いてくる。連中から目を離さぬように少し顔を逸らし、彼女の方へ振り向く。

 

泣きそうな顔をしていた。

膝から崩れ落ちて、結晶を此方に差し出している。

連中から完全に顔を背け、彼女へ笑いかける。

 

 

「そこで見てろ」

 

 

槍を回し、迫るオレンジプレイヤーたちに構える。うっかり殺してしまわないようにするために攻撃はせずに、弾き、逸らすのみ。何の縛りプレイだよ。

 

 

 

 

 

まぁ、ともかくだ。

PoHや最前線と比べれば素人同然の動き。易い。

 

 

「死ねやぁぁぁっ!!」

 

「お前らじゃ殺せないんだよ、なぁっ!」

 

 

まず1人、強めに足払いをかけ転ばせる。

 

 

「っ!?」

 

「ほらどうしたよ、そらっ!」

 

 

2人目、驚く奴の手を蹴りメイスを弾き飛ばす。

 

 

「おらぁっ!!」

 

「腹がガラ空きだぞ、っと!」

 

 

足を引いて3人目、右手で掌底を叩き込む。

 

 

 

 

 

 

と、なんとここで止まってしまった。

完全に驚きやら焦りやらが顔に出てしまった連中を更に煽り、槍をくるくると振り回して背中に直す。

 

 

「この程度かよ、なぁオイ!

 こっちは武器も使ってねぇぞ、ほれ!」

 

「っ………何やってんだい腰抜けども!

 こんなやつ一人に怯んでんじゃないよ!!」

 

 

これで、奴等はシリカのことは眼中になくなった。初めからこれが狙いだったが、思った以上に煽りに耐性が無さすぎる。全く、本当に腹が立つ。

赤髪の女に命令されるが、オレンジの連中は完全に怯みきってしまっている。こいつらはもういいな。

 

 

「チッ、こうなったらアタシが────!」

 

「………………………」

 

 

飛び込んでくる赤髪女を見据えて、だが動かない。これも目的の1つだ。十字槍が引き絞られ、そのまま吸い込まれるように、俺の身体を突き刺す。

 

 

「っ、くくくっ………」

 

「ジンさん!!」

 

 

シリカの声が、また聞こえてくる。

懐では、ぐりぐりと槍を捩じ込む女の笑い声が──

 

 

 

「…………………は?」

 

 

 

何故、という情けない声に変わる。

逃がさないように、槍を掴んでいる女の腕を掴む。周囲から、驚愕のざわめきが聞こえてくる。

 

ダメージを与える。

そこからHPバーへと視線を動かすのは、この世界で戦っているプレイヤーなら当然のことだ。だから、誰もが驚いているのだと思う。女の腕が震えるのが伝わってくる。女とはいえ相手が相手、気色悪い。

 

 

「なんで、勝手に……ひ、HPが……」

 

「お前の槍のダメージが52ってとこだ。

 突き刺してるから毎秒そのダメージが入る、な」

 

 

唐突だが、軽く説明してみる。

ここまでやった上で力の差を見せつければ、流石に大人しくなってくれるだろうと思う。

 

 

「有名なんだけど戦闘時回復(バトルヒーリング)って知ってる?

 俺の自動回復が毎秒50ってとこなんだが………

 はい、ここで問題だ、赤髪女さんよ」

 

「ひっ」

 

 

出来る限り最高の笑顔で、問いかける。

 

 

 

「俺に毎秒与えられるダメージ、なーんだ」

 

 

 

完全に怯えきり、こちらを見上げてカチカチと歯を鳴らして赤髪女はまるで答える様子はない。溜息をつき、女の腕から十字槍に持ち変え、ぐいっと強く引いてやる。バランスを崩した赤髪女を蹴りつけ、尻餅をつかせてからその十字槍を腹から引き抜く。

 

 

 

「2だよ、たったの2。これどう思う?」

 

 

 

もう一度、溜め息をついて十字槍を握る手を離すと十字槍はカラン、と音を立て力なく石橋に落ちる。すると、いつの間にか後ろに下がっていた足払いをかけたオレンジプレイヤーの男が口を開いた。

 

 

「め、滅茶苦茶だ……なんだよ、それ………!」

 

 

青ざめるオレンジギルドに、笑みを消す。

落としてしまった十字槍を拾い上げて、その穂先が当たらないように赤髪女へと投げ返してやる。が、それはその前に再び落ちるだけだ。どうやら完全に大人しくなったようなので、一度、目を伏せてから本題である話に入る。

 

 

「ちょっと話をしようか。

 あぁ、誰1人逃がさないから楽にしていい」

 

「……ジン、さん………?」

 

 

橋の高くなっている縁に腰を下ろし、彼等の方へと向けて話を始めようとした時、後ろの方から彼女が俺の名を呼ぶ。そう、振り向こうとした時だった。

 

 

「ジン……ジン!? 『黒槍』か!!?

 ロザリアさん、こいつ、っ……攻略組だ!!」

 

「なぁ…っ……!!?」

 

「だとしたら、なんだよ?

 シリカ、悪いけど詳しい話は後にする」

 

 

振り向けば、彼女は震えながらも頷く。

それに出来るだけの微笑みを返し、オレンジギルド連中へと向き直る。そして、逃げ出そうとしているメイスを持っていたあの男に気付いた。

 

 

即座に腰から投げナイフを抜き、投擲スキルを使い座ったまま右腕を振り抜く。その投擲スキルによる速度バフのかかった投げナイフは、凄まじい速度でその逃げ出そうとした男の肩に突き刺さり、衝撃で男はその場に押し倒れる。

 

 

「悪いな、聞こえなかったかよ。

 『誰1人逃がさないから楽にしていい』って」

 

 

男はもがくが、しかし自由に動けない。必死に手を伸ばすが、何をしようと無駄なことだ。

 

 

「レベル3の麻痺毒だ。

 効果は10分くらいってとこか……まぁ聞けよ。

 別にあんたらを皆殺しにしてもいいんだけど、

 実はそこの彼女以外からも依頼を受けててな」

 

 

そう催促し、腕を下ろす。

もう誰も動く気配はないので、話を始める。

 

 

 

 

「お前ら、シルバーフラグスって覚えてる?」

 

 

 

 

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