SAOに来たんですが、キリトさんがいないようです 作:青い灰
シリカ編終了………というか、なんというか。
奴のインパクトが強すぎる。
「レベルは……どのくらいなんですか?」
宿に戻り、彼女を部屋に呼び話をする。
あれからシリカは妙によそよそしくなってしまい、完全に萎縮してしまっているようだった。まぁ俺が悪いのだが……嘘は言えないので今のレベルを話す。
「78、だな」
「……………」
帰り道は全くの無言だった。彼女は俯き、しかし、すぐに困ったような笑みを張り付けて顔を上げた。何が言いたいのかは、分かっているつもりだ。
「凄い差ですよね、私とは33も違って───」
「確かにそうだけどさ。
レベルは、やっぱり数字でしかないんだわ」
それに驚いた顔で、また彼女は目を丸くする。
テーブルに置かれた白い花を何気なく見下ろして、次いで自分の手を握って放してを繰り返す。
これらも、どちらも同じ〝データ〟でしかない。
「俺もお前も、生きた人だからな。
そこには何の差もありはしない……と思う。
立ってる場所が違うだけだ」
「………………」
立っている場所の違い、それにまた彼女は暗い顔になりかけるが、身体中から力を抜いて、座る椅子の背もたれに体重を預けて、彼女に笑いかける。
「でも、これも何かの縁だ。
お前が助けを求めてくれるなら、すぐに向かう。
用事があれば何時でもメール送ってくれ。
ボス攻略の時以外なら、大抵は暇だしな」
「……はい、ありがとうございます」
「おう……………っと、少し失礼」
件のメールの通知音にメニューを開く。フレンド欄から確認すると、送り主はクラインだった。何かと思いながらメールを開く。
『大事な話がある。
副団長様もいるから50層主街区の宿に急げ』
「…………?」
ボス攻略の話か……それともサボり過ぎただろうか。だが何か様子がおかしく感じる。しかしアスナまでいるとは、本気で何かあったのだろう。
ピナの蘇生に立ち会えないのは残念だが、急ごう。立ち上がり、メニューを閉じる。
「もう、行っちゃうんですか……?」
「あぁ、仲間から少し……急がないと。
悪いな。何かあったら気軽に呼んでくれ」
「…………はい」
彼女は真っ直ぐに此方を見て、立ち上がった。
「ありがとうございました。
その……私なんかが言うのもですけど。
これくらいしか、言えませんけど。
───────攻略、頑張ってください」
その言葉に、頷く。
「この世界に、負けないでください。
きっと……ジンさんなら、出来る気がするんです」
何の根拠もない言葉だろう。
けど、それは確かに────心に響いた。
「終わらせる。絶対な」
そうして笑いを返して、扉を開けて部屋を出る。
◆◆◆◆◆
「遅ぇぞー!」
そして、50層主街区アルゲード。
もう慣れた迷路を進み、宿へと辿り着いた。そして開口一番、クラインの声が響いてくる。
「悪ぃ! ちょっと下層に行ってた!」
そう返して、その広い部屋を見回す。
テーブルを囲んでソファが配置されており、そこにいるメンバーはクラインを含めた風林火山の面々、そしてアスナ。あと何故かストレアも笑顔で此方に手を振っている。なんで?
「………………色々言いたいけど、まぁいいわ。
今はそれどころじゃないの。ここ、座って」
「お、おう。ありがと……」
ジト目で睨んでくるアスナが、渋々といった様子でソファの端に隙間を作る。武装を外しながら其処へ向かって座る。俺の逆側はストレアが座っており、そして向かいはクラインから少し間を取ったサチ。
「……なんでストレアまでいるのか聞いていい?」
「仲間外れは嫌だなー」
「いや仲間外れとかじゃないけど………」
「私が呼んだの」
と、言うのもアスナだった。
頬を膨らませるストレアに悪い悪い、と謝りつつ、ソファに座り直して、彼女を呼んだ理由を聞こうとするが、アスナはそれを手で制する。
「理由なら話の後で言うわ。
多分、本題を聞けば分かると思うけど」
「………ん、分かった。
それで……皆、なんか凄い深刻そうだけど、
本当にそんなヤバいことでも起きたのか?」
頭を掻く俺の言葉に、ただストレアを除いた全員が凄い目付きで睨んでくる。あのサチまでも、だ。
「そんな軽いことじゃないんだ。
お願い、真剣に聞いて欲しいな」
「んぐ、悪い………」
「はぁー………単刀直入に言うぞ。
うちのメンバーからの情報だから確かなことだ」
サチに諌められ、それに溜め息をついたクラインがいつになく真剣な顔で、前屈みになって言う。
それは…………本当に、耳を疑うことだった。
出来るものなら、聞きたくもなかったこと。
もう二度と聞くことのないと思っていた響きで。
それは俺に、俺たちに、知らしめる。
「PoHの野郎が、生きてるかもしれねぇ」
──────悪夢はまだ、終わってはいなかった。