SAOに来たんですが、キリトさんがいないようです   作:青い灰

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ボス『Illfang the Kobold Lord』攻略後半戦

 

 

 

「さぁて、第二ラウンドと行こうか」

 

「待ちなさい」

「ぐぇ」

 

 

槍を左手に構え、走り出そうとした瞬間。

アスナに後ろ首を掴まれる。

思わず前のめりになってしまい、

息が苦しくなる。

 

 

「んだよ、人がカッコつけてんのに……」

 

「そのカッコつけで死んだらどうするの。

 私も行くわ、手伝わせて」

 

「はいはい………じゃ、スイッチ頼むわー」

 

 

アスナが首を離すと同時に、

気を取り直して走り出す。

槍を左手で回し、ステップで

コボルドロードの背後に回り込む。

 

 

「おぉぉッ!!」

 

 

呼気と共に跳躍、槍の穂先で水平斬りを打ち込み

それから右手に持ち変える。

更に空中で追撃のソードスキルを発動する。

 

 

〝スピン・スラッシュ〟

 

 

右手のみで頭上に構えた槍を回転させて斬りつけ、

その回転の勢いを利用し、両手で構え直して

更に威力の高い薙ぎ払いを見舞う。

 

 

「■■■■■!!?」

 

「スイッチだ!

 一度下がって体勢を整えてくれ!!」

 

「お、おう!助かる!」

 

 

ボスを任せていた集団に叫び、下がらせる。

全体的に体力が下がってきていた、

これ以上は死人が出る前に

畳み掛けてボスを殺す。

背後から凄まじい速度の足音に、叫ぶ。

 

 

「アスナぁ!!」

 

「分かってる!

 はぁぁぁぁッ!!」

 

 

アスナのレイピアが白い輝きを放ち、

ソードスキルが発動される。

細剣も敏捷補正の乗るソードスキルだが………

 

 

「うぉ!?」

 

「何であなたが驚いてるのよ!」

 

 

得意げな顔で言うアスナ。

明らかに10mはあった距離を一瞬で詰め、

鋭い突きの一撃が放たれた。

それにコボルドロードが怯む。

 

確か〝スティンガー〟というソードスキル。

距離を詰め、一撃を放つ技だったか。

 

………いや、これは〝閃光〟ですわ。

ソードスキル補正と敏捷補正のかけ算ヤバすぎる。

原作で言っていた『剣先が見えない』どころか、

まだ一層だと言うのに

姿が捉えられないほどの速度が出ている。

 

 

「スイッチ!」

 

「了解!」

 

 

怯んだコボルドロードへと追撃を仕掛ける。

 

右手の槍を縦に回転させ、3連続の斬撃、

強く踏み込み、その速度を乗せた突きを放つ。

当然ソードスキルではないので硬直はない。

 

怯みから抜けたコボルドロードが

斧を構えた瞬間に離脱……したかったのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

「───ぐ、ぁ」

 

「っ!?」

 

 

なんとか背を向けてアスナを押し飛ばすが、

斧のソードスキル、〝ダブル・クリーブ〟による

水平二連の斬撃に背中を引き裂かれる。

 

鈍く気持ちの悪くなる衝撃が身体を襲う。

クリティカルが入ったのか、

止まる気配のない恐ろしい速度で

視界左上のHPバーが減少する。

 

 

「や、べ」

 

 

思わず、笑みが浮かぶ。

 

まさかこんな所で終わり、とは。

 

 

 

 

吹き飛ばされる。

衝撃によって身体が宙に浮く。

これでは生き延びても、落下ダメージで死ぬ。

 

 

こんな時に冷静になって集中力が高まったのか、

世界が色を失い、スローになったかのように変化。

 

トラウマを思い出したかのような

アスナの絶望に染まる瞳が、見えた。

 

 

 

 

    認められるか、馬鹿が

 

 

 

 

終わってたまるか、この意味の分からない世界で。

理不尽だらけのこんな世界で死んで、たまるか。

 

重くなった目蓋を無理矢理開き、

強く敵を睨みつける。

 

 

 

 

「舐めんなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

全力で吠える。

槍を地面に突き刺し、吹き飛ばされる勢いを弱め、

衝撃で腰のホルダーから外れたポーションを

手に取り、砕いてその液体を口に含む。

 

ミリ単位で残ったHPがギリギリで回復し始める。

 

 

「ぜぇらぁぁぁッ!!!」

 

 

着地と同時に硬直中のコボルドロードへと

左手で槍を構え、大きく腕を引き絞る。

 

 

〝ブラスト・スピア〟

 

 

紅を引く槍を投擲、その頭を撃ち抜く。

ガリッ、と耳を衝くような

サウンドエフェクトが響き渡る。

コボルドロードのHPが目に見えて減少し、

3本目のゲージを吹き飛ばす。

 

遂に耐久値が限界を迎えたのか、

槍が爆散、光の欠片となって消滅する。

 

 

「■■■■■■■!!!?」

 

「削り切る!!手伝え!!」

 

「ぁ、え、わ、わかった!

 みんな、全力でソードスキル!!」

 

「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」

 

 

頭部を貫かれたボスは片目が欠損状態になる。

視界を半分奪い、更に頭部クリティカル、

部位欠損によるスタンが入っている。

スタンのため野太刀に持ち変えはできていない。

 

この隙に最後のHPバーを全て削り、仕留める。

 

アスナの号令で

待機していたプレイヤーたちが走り出す。

 

 

「めんどくせぇな…………!」

 

 

メニューを操作し、装備欄を開く。

砕けた槍もショップにある売り物で

スペアはあるため、それを装備。

追加で腰のポーションを3本飲み干す。

 

 

「おぉし、ブッ殺してやんよ………!」

 

 

濡れた口元を拭い、槍を構える。

 

全員が連続して放つソードスキルによって

凄まじい速度で削られていくボスのHPは既に

3割を切っている。

 

ならば全力でトドメを刺すだけだ。

 

 

 

 

疾駆。

 

スタンから抜けたコボルドロードが

野太刀を取り出して暴れるが、

そのHPは残り2割まで行っている。

 

ならばその2割、全て持っていくまで。

 

 

 

だが、その瞬間。

 

コボルドロードの野太刀が深紅の光を帯びる。

一撃でディアベルを殺したあれが来る。

 

 

 

上等。

 

もうこの距離では立ち止まっても食らう。

なら迎え撃つしかない。

というか、元よりそのつもりだ。

 

 

 

 

「悪いアスナ、だが許せ!!!」

 

「えっ」

 

 

そして一度、軽く跳躍。

 

偶然その場にいたアスナにそう叫び、

思いっきり()()()()()()()()()()

全力で飛び上がる。

 

 

 

 

 

 

 

そして、コボルドの王が

刀を振り上げる、その眼前に迫る。

 

 

 

「■■■■■■■!!!!」

 

 

 

咆哮するコボルドロード。

 

右腕に全力を込め、槍が深紅に染まる。

超至近距離。

 

 

 

「うるせぇよ────クソ野郎」

 

 

 

〝ブラスト・スピア〟

 

 

 

 

 

 

 

深紅の槍が、コボルドロードの頭を刺し穿つ。

 

 

 

自由落下に入ったこの視界は、

コボルドロードのHPバーが消滅するのを、

確かに捉えていた。

 

 

「あー……………」

 

 

落下ダメージ痛そうだなぁ、と

そんなつまらないことを考えて。

 

その後ろで、空中で静止していたコボルドロードは

光の欠片となって爆散、消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

マジで、疲れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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