SAOに来たんですが、キリトさんがいないようです   作:青い灰

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まだ一層なのに何度も死にかける主人公……
今回は短めです。




ただ晴れやかな決断を

 

 

 

 

 

「正直トラウマになりそうだよ、お前が」

 

「うるさいわね………」

 

 

落下ダメージの後、

踏みつけたせいで怒り狂ったアスナに

本気で殺されるのではと覚悟した。

 

というか仲間やプレイヤーを攻撃すれば

犯罪者(オレンジ)プレイヤーになってしまう。

その状態で転移門からワープして町にでも行けば

クソ強NPCの衛兵に殺されるだろう。

なんで逃げるのが大変だった。

 

その場に腰を下ろし、

共に戦った皆で勝利を喜び合う。

 

遠くで『CONGRATULATION!』だの

『やったな!』『すげぇよ!』だのと

聞こえてくるが…………

 

 

「…英雄か……悪くないかもなぁ……」

 

 

誰にも聞こえないような声で呟く。

キリトのようになるつもりはないと思っていたが、

悪くはないかもしれない。

こうやって誉められるのは単純に嬉しい。

 

 

「ま、確かにボスを倒せたのは、貴方のお陰よ」

 

「みんなの協力があって、だな。

 流石にボスをソロではキツいわ」

 

「……改めて、おめでとう。

 これからも頑張りましょう」

 

「……………そうか、

 あと99層もあるのか。頑張らないとな」

 

 

地獄のような長さだが、やるしかない。

最悪、ヒースクリフを倒せるレベルまでは

上げておいて安定を取りたいし………

 

もしも、自分がこの世界で唯一の

イレギュラーなのだとしたら………

何が起こるか、まだ分からない。

オレは、主人公(キリト)ではないのだから。

 

 

 

アイテム欄を見る。

ラストアタックボーナスによる報酬、

ボス討伐の報酬がかなりの量で入っている。

 

槍は残念ながら見当たらない。

斧や刀はエギルやクラインがいたらあげよう。

そして────

 

 

「…………やっぱり、あるんだよな」

 

 

黒いコート。

このステータスでの装備も可能だ。

 

 

「どうしたの?」

 

「ラストアタックボーナス、ってのがあってさ。

 トドメを刺した奴は報酬が少し増えるんだけど、

 それで黒いコートがあった」

 

「良いんじゃないかしら?

 ボスドロップの防具だから強いだろうし」

 

「…………………………」

 

 

少し、沈黙する。

本当に、これを装備していいのだろうか?

 

 

 

 

 

躊躇いがあった。

きっとオレは英雄には、黒の剣士にはなれない。

だから必死に、死に物狂いで、全力で、

1人のプレイヤーとして戦い抜くしかないのだと。

 

憧れがあった。

あの黒い剣士に憧れていた。

英雄に、なってみたいと思ってしまった。

この世界を自分が終わらせようとしていることに、

気がついてしまった。

 

 

 

どうすれば、いいのだろうか。

 

 

 

 

 

「そうね、それに─────」

 

「?」

 

 

アスナの言葉に、思考が凍てついた。

 

 

 

 

「───あなたなら、きっと似合うわ。

 槍を持って風になびく黒いコート。

 …………カッコいいじゃない」

 

 

 

 

そして、凍てついた思考が溶けていく。

 

 

あぁ、そうだ。

気がつかなかった。

 

 

 

黒の剣士に、あの英雄になる。

そんな必要はどこにもなかった。

 

 

 

 

「…………はは、そうか」

 

「えぇ」

 

 

思わず、笑みが溢れた。

 

 

 

 

 

────だって、自分として在れるのだから。

 

剣士にもなる必要はない。

二刀流を無理に取得する必要もない。

やりたいことをすれば良いんだ。

 

そうだったんだ、最初から。

救いたい人がいるなら救えばいい。

この世界を終わらせたいなら終わらせればいい。

 

英雄に、なりたいのなら。

 

その憧れがあるのなら。

 

 

 

 

「うん………似合ってるわ。カッコいい」

 

 

周囲から、おぉ……と歓声が聞こえる。

そんな大した存在ではない。

自分は英雄なんかじゃない。

 

それでも、黒が似合うと言ってくれる人がいる。

あなたが英雄だと、言ってくれる人がいる。

 

 

 

自分の成すべきことを、成すまでなのだから。

 

自分がやりたいことを、やるだけなのだから。

 

 

 

 

「さぁ、ゲームクリアの第一歩だ。

 この調子で、この世界を踏破するか!」

 

 

 

今はただ、晴れやかな気分だった。

 

 

 

 

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