SAOに来たんですが、キリトさんがいないようです 作:青い灰
なにやってんだよ、団長!?
そんなこともあったなぁ。と思い出す。
第一層攻略が終わり、
流れに乗ってきたプレイヤーたちは
攻略を24層にまで進めていた。
そして、24層ボス攻略後。
今回もなんとか犠牲者を出さずに
ボスの攻略を終えていたオレたちは
いつものように床に座り込んでいた。
そして違和感に………
奴が、現れていることに気づく。
「────」
さも自然な、直剣を携えた男。
その灰色の髪は風になびいており、
大きめの盾を持っている。
その男は、ただ1人腰を下ろさず
疲弊したプレイヤーたちを俯瞰していた。
「…………ジン、どうしたの?」
「……い、や?なんでもないけど?」
「?」
アスナに様子がおかしかったのを悟られる前に
止めるが、その瞬間に。
目が、合った。
全てを見透かされるような感覚。
それを瞬時に振り払うように、
作り笑いを浮かべて軽く手を上げて挨拶をする。
「───」
すると、その男もにこやかな笑みを浮かべて
手を振ってくれる。
………まだプレイヤーとして振る舞っている。
ならば、あまり関わるべきではない。
勘づかれる可能性もある。
立ち上がり、転移門へと
その男から逃げるように向かった。
まだ、神聖剣を見せる前の、
ただのプレイヤーとして振る舞う世界の魔王。
いずれ巨大なギルドとして台頭する
〝血盟騎士団〟のリーダー。
そして、ゲーム製作者にしてゲームマスター。
ヒースクリフが、そこにいた。
それから、数日後。
アルゴと情報集めの仕事をしていたオレは、
いつものように彼女の元へと向かっていた。
すると、そこに。
「…ぃっ!?」
思わず路地の角に身を隠す。
本能というか、もう瞬間的に。
そしてそこから、見つけた奴を覗き見る。
やりにくそうなアルゴと、
感情の読めない表情で淡々と話すあの男。
盾と直剣を背にした、ヒースクリフだ。
2人はしばらく話すと、
ヒースクリフがその場を離れる形で
いなくなったのだった。
「もう出てきていいゾ」
「お、ぉう……気付かれてたか」
「あの男が背を向けてたからナ。
オレっちは気付くサ」
アルゴに言われ、その角から出て
彼女の元へと向かう。
すると彼女はニヤニヤ笑いを浮かべながら
すり寄りながら聞いてくる。
「情報の匂いがするナ~?
なぁ、あいつの情報、欲しいカ?
今なら交換で良いゼ~?」
「やめろ。抱きつくぞ」
「脅し方が独特だナ…………」
まさかの色仕掛けである。
最近はおふざけが過ぎると思うよ。
仁義はどうしたよ仁義は?
浜に捨ててきたのか?
取り敢えず離れてくれるアルゴから一歩下がる。
「んだヨ、お得意様だし
抱きつくくらいは許すゾ?」
「理性が持たなそう」
「ふむふむ、ジンは色仕掛けに弱い、カ」
「メモやめろ?というかお前、
誰とでもやりそうな感が凄いな」
「むっ、失礼だナ。
オレっちだって最低限のマナーは守ってるゾ」
「色仕掛けしてきた奴が何を言うか」
「ま、オレっちのココロは
情報として売ってやらんこともないガ?」
「ほう、なんコルだ」
「ざっと10億コルだナ」
「ぼったくりじゃねぇか、
いいのか?期待するぞ?」
「だからなんなんだヨ、その脅し………
つーか本気で買う気なのかヨ」
そのうちマジで買ってやろうと決意。
えー、という顔をするアルゴだが、
まぁ軽口はこの辺にしておいて話を始める。
黒コートの懐からノートを取り出すと、
アルゴの目付きが情報屋のものへと変わる。
「迷宮区まで行ってきた。
マッピングと敵Mobはこんなもんだろ」
「…………成る程。もう4分の1を攻略したんダ、
アインクラッドも本番ってワケだナ」
アルゴの言葉に頷く。
むしろまだまだ序盤な気もするが、
確かに25、50、75などのボスは異常に強く、
それからも敵が強くなる傾向があったハズだ。
「あぁ、全体的に敵Mobが強化され始めてる。
戦闘に慣れてないソロとかは危険だ、
パーティーの推奨もしておいてくれ」
「了解。お前は………いや、これも情報だナ。
中々の情報を手に入れてきてたもんだから
報酬はさっきの奴の買った情報で良いガ?」
「察しが良いな、頼むわ」
「任せナ。
『アスナ、ジンの2人を探している』だってサ。
理由までは教えてくれなかったけどナ」
…………猛烈に嫌な予感がする。
そういえばアスナが血盟騎士団に入ったのも
この時期ではなかっただろうか。
もしも勧誘ならば蹴るべきだろう。
そも、槍は広範囲攻撃だから
パーティーなど多人数での戦闘向きではない。
隣にでも立たれたら邪魔にしかならないし、
攻撃が出しにくい。
どちらかというとソロ向きなのだ。
………というのは建前であり、
ヒースクリフの近くにいたくない、
というのが本音だ。
マジで嫌だよ、あの人苦手なんだよ、
なんか見破られそうなんだよ色々と。
「………で、どうすんダ?」
「オレの情報を売るな。口止め料はいくらだ」
「あぁ……タダでいいゼ」
「は?」
「……………もう遅いからナ。
まぁ、その、なんだ、許してクレ」
「ゑっ」
そう言って顔を逸らすアルゴに、
背筋に冷や汗が流れる。
そして、背後に現れた気配に
ガチガチとゆっっっくり振り向く。
「〝黒槍〟だね?少し良いかな」
「……………………残念ながらオレは
黒槍じゃないのでこの辺で失礼しますね?」
「ははは、面白い冗談だ。
ボスドロップの黒いコート、背負った両手槍。
攻略組で君を知らぬ者はいないさ、ジンくん」
男は笑う。
「なに、1つ聞きたいことがあるだけさ。
我が〝血盟騎士団〟に、入る気はないかい?」
……………いやです……