「ウチハっていつもエイタにくっついてるよな」
一年二組の休み時間。
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、からかうようなその発言。
話すきっかけを得たと浮かれる気持ちと、これを気に仲良くなれるんじゃないかという淡い期待と、それと少々の嫉妬心と。
恋愛経験の乏しい未熟者ゆえの態度に、話題に挙げられたウチハは、視線から逃れようとエイタの背後に隠れる。
だが、その行動がまさしく指摘の通りであることに気付き、頼りにしていた背中を突っ張った。
露わになる熟れた顔。
当然、主張の補強にしかならず。
すぐさま声色をマネた冷やかしが刺し込まれる。
どうすればいいか分からない。
頭は真っ白だ。
家に帰りたい。
足が震えて動けない。
助けてと密かに心を寄せる想い人は、"やめろよ"と低い声で言い放つ。
ビクリと体を震わせてしまうほどの冷たい声に、少女は自身が拒絶されたような感覚に陥り、とたんにグチャグチャとした感情に支配されてしまうのだった。
ここで彼が動揺の一つでもしていたのなら、あるいは違った未来があったのかも知れない。
「エイタなんてだいっきらいだから!!」
本人も驚く大声に、教室中が静寂に包まれる。
次第にざわめきだし、"席につけ──"と入室してきた担任の先生が"どうしたどうした"と聞き込みを開始したことで遂に我慢の限界を迎えた。
走って走って走って。
堪えていた悲しさが地面を蹴る度こぼれ落ちる。
この世の終わりだと悟った。
彼女にとっての、たった一人の救世主を自ら放逐してしまったのだ。
精神的な屋台骨を取っ払われた少女の心中は、筆舌に尽くしがたい。
生徒の駆け込み寺、明かりはついているが人のいる気配のない保健室には目もくれず。
誰かを犯人にして、槍玉に上げたいわけじゃない。
クラスメイト、特にエイタが責められたらと考えると胸がはち切れそうになる。
一輪車が二段掛けに並べられ、大縄がハンドル式の車輪に巻かれ、ボールがカゴに納められた物置地帯。
倒つ転びつ、校舎の一角に設けられたその場所は、気持ちを整えるのに適している。
どうやら彼女のお眼鏡に叶ったようだ。
腰の丈ほどの小さな隙間にスルリと体を滑り込ませ、すんすんと静かにすすり泣く。
悪いのは自分。
受け流せる余裕が、反撃する苛烈さが、"そうだね"と笑顔を浮かべる勇気がなかった。
どれか一つでも持っていたのなら、こんなに悲しみに暮れる必要はなかったのだろうに。
腰を落ち着ける場所の判断基準は前記と引き継ぎ、こんな寂れた場所を選んだ理由はもう一つあって……。
「……いた」
肩で息をしながら、安堵の表情を浮かべるエイタに腕を広げる。
少しの間隔を置き、その意味を察したであろう彼はかがみ込んで優しく抱き留めた。
"大丈夫大丈夫、平気だから"と唱える言葉はまるで魔法のようで、ポンポンと背中のリズムが、さっきまで収まる気配のなかった心臓に安らぎを与える。
母のように抱かれて、ウチハはただただこの時間を堪能するように、両目をつぶって彼に委ねる。
本当はもう大丈夫なはず、なのに……。
より安堵を得るため、甘えるように頭を擦り付け。乱れた髪型をエイタが手櫛で整える心地よさに、背中に回した腕は逃がすまいと輪を作った。
「ごめん、辛い思いさせちゃって……」
「うんん、エイタは悪くない」
「いんや、本当はわかってたんだ。分かってたのに……」
「わ、わたしのこときらいに、なった?」
「そんなまさか」
困ったように笑うエイタに、思わずもう一度捕まえた。
情けないなと感じながらも、動いてしまうものはしようがない。
年齢は同じ筈なのに、理想のお兄ちゃん像を演じられるのも憎い。
長い人生経験を経たような落ち着きと、冷静さと、包容力に包まれて。
お仕事から帰って来た父親みたい、なんて。
でもなんだかそれってヤダなと、不思議とそんな事を頭でこねる。
このまま彼に寄り掛かる人生というのも、それはそれでいいのかもしれない。
けど、そんなことはいつまで続くのだろうか?
少女漫画のように、もしもエイタに大切な人が出来てしまったら、きっといまの関係なんて破綻してしまう。
いまでこそ彼の優しさに依存しているウチハだが、その好意が他の誰かに向いた時、彼女は一体どうなってしまうんだろうか?
任せっぱなしのままでは、もしもエイタが助けを必要とした時、彼の力になれないことに勘づく。
もしそんな時に、エイタと同じくらい自立した女の子に手を引かれたら……。
やはりウチハ同様に、恋へ発展してしまうのだろうか?
彼女は願った。
好きになってほしいと。
彼女は望んだ。
ずっと一緒にいたいと。
だから彼女は決心した。
エイタのようにカッコよくなろうと。
泣き虫を卒業して、エイタが倒れてしまいそうになったその時に、手を差し伸べられるような女の子に……。
ハグという甘露の誘惑を絶ち切って、言葉足らずに少女は告げる。
それに相槌を交えながら、優しい目で少年は聞くことに徹した。
ハチャメチャな文法ながら、言いたいことは大体伝わるのが日本語の良い所。
全部出し切り返事を待つウチハに、少年は笑いかけた。
「うん……応援してる」
まだなにも始まってすらいないのに。
自分が受け入れられたと感じたウチハは、もう舞い上がってしまって。
けれどもすぐ後に"からかわれちゃうから教室では離れていよう"と告げられ、終末のような絶望感に襲われ。
そうだよね、まずは強くならなくちゃ。エイタに好きになってもらえないもんね。
なんて、自分を奮い立たせてみたりして。
この頃だろうか、メツギ家に入り浸るようになったのは。
この頃だろうか、か細い自信をエイタの同一化によって補うようになったのは。
この頃だろうか、自分をボクと名乗るようになったのは。
前々から親不在の場合は、メツギ家にお邪魔していた。
だが、学校で一緒になれない寂しさは拭えず。
代わりにお泊まりをすることで穴埋めをしようと画策した。
客観的に見て、随分と不躾で傍迷惑な子供だ。
いってしまえば、面倒を見る我が子が一人増えたようなもの。
だがメツギ家の面々はそんなことおくびにも出さずに、ウチハの第二の父母となっていく。
本来エイタに注がれていたであろうリソースが、少なくともウチハが奪っていることなど、当の本人は全く気にしていないようだったが……。
そしてある時、人生を大きく変える転換点に差し掛かる。
「か、かっこいい」
メツギ家のリビングにペタンと座り、テレビを食い入るように見つめ、お気に入りの人形をギュッと抱き締めて。
甲冑のように重厚な防具、つばぜり合う剣戟、洗練された美しさ。
バッと旗が一色に振り上がり、歓声が巻き起こった。
何が起こっているのか全く分からなかったが、ただただスゴくカッコいいという想いだけは止まない。
日曜日の朝に放送されているような、強きを挫き弱きを助ける覆面ライダーのような凄みがあった。
そこから近くの剣道教室に興味を持つのは、もはや必然だろう。
エイタの親御さんに連れられ練習を見学。
ご好意で防具を着けさせてもらったり、子供用竹刀を握らせてくれたり、打ち込みを教わったり。
見学終了後、そこにはパンフレットを読み込む大人を尻目に、早々と申し込み用紙へ名前を記入している可愛らしい姿があった。
そのあまりの熱中ぶりに"エイタもやってみる? "なんて母親からの打診が。
カッコいいエイタとカッコいい剣道が出逢ってしまったら、一体どうなってしまうのだろうと妄想は膨らみ、うっとりとした乙女の視線がエイタを捉えた。
「いや……考えておくよ」
大人びた消極的な発言に、思わず眉をしかめた母が背中を突く。
意味をストレートに受け取ったウチハの方は、互いに切磋琢磨し合って双璧となる未来に夢膨らませ、デヘヘと緩みきった笑顔を浮かべるのだった。
だが申し込み用紙が提出されることはなかった。
なんの事はない、ウチハの両親が認めなかったのである。
一転して、悲観しきったように泣きじゃくるウチハ。
そのあまりの仕打ちを目撃して、エイタは我慢できずにウチハへ詰め寄った。
親の連絡先を聞き出し、後先考えずに呼び鈴を鳴らす。
本来なら仕事で忙しく電話に出ることはないウチハの父親だったが、繁忙期を過ぎていたこと、そして緊急連絡先であったことが重なり電話口に呼び出すことに成功した事を彼は知らない。
"もしもし? ウチハか? "と警戒する低い声に、御託は不要とウチハがどれだけ剣道をやりたがっていたのかを叩きつける。
名乗りもせず自らの要求を告げるなど、まるで誘拐犯のそれだ。
だが電話越しの相手は、口を挟んでくるようなことはせず、終始無言を貫いた。
最後の言葉を告げ、鼻息を荒くして返答を待つ。
向こうからは"うんうん"という頷きの後、"家内と話す時間が欲しい"と落ち着いた口調が。
先伸ばしにして有耶無耶にする大人の常套手段。
唖然としたエイタが憤怒を爆発させる前に、ウチハの父は別れを伝えて電話を切った。
無力感に打ちひしがれながら、いい結果にはならないだろうなと弱々しく受話器を戻す。
縋るような視線を送るウチハを見てしまったが最後、"大丈夫、きっとわかってくれるよ"なんて、無責任な言葉を吐き出す自分心底情けなかった。
それから三日経ち。
元気のないウチハを励ますパーティーを密かに計画していた日。
ウチハのご両親から呼び出しがかかる。
何処かそわそわとした様子のウチハに連れられ、ドウゾノ家のリビングに通された。
オレンジジュースが出され、神妙な面持ちでこちらを見つめてくる。
「……」
「そんな固くならなくてもいいよエイタくん。なにも叱りつけるために呼んだわけじゃないからね」
柔和に微笑むその男は、ウチハの父親その人である。
ウチハのシャープな鼻筋、顎の輪郭はどうやら父譲りのようだ。
歳若く、優男で、とても理知的に見える。
寡黙でいつもしかめっ面した自身の父親と自然に比較してしまう。
隣で行く末を見守っているのは母親。
ウチハは隣に座り、ギュッとエイタの裾を引く。
「それで、ウチハの習い事についてなんだ「ウチハに剣道をやらせてあげてください!! お願いします!!」
迷いのない平身低頭。
テレビで知識として得ていた土下座を敢行した。
地面しか見えずとも、動揺が広がり効果絶大であることに気を良くする。
深い意味はなかったが、こんなことでウチハの願いが叶うのなら、いくらだってしてやるとさらにエイタは額を擦り付けた。
「エ、エイタくん!? まずは顔を上げてくれないか!?」
なおもポーズを解かないエイタに、駆け寄った家主が肩を揺すって投げ掛ける。
「何か私達には誤解があるようだが、わざわざ時間を作ってもらったのは、キミにお礼を言いたかったからなんだよ」
「お礼?」
「ウチハはご覧の通りおとなしい子だ。だから勝負事には不向きで、ヘタをすると今よりもっと塞ぎ込んでしまうんじゃないかと心配したんだ。けれど、エイタくんがウチハの想いを伝えてくれたおかげで、娘の気持ちが強いということを知れた。だから、むしろ謝るのは私らの方なんだよ。娘の側に居てくれて、娘の事を考えてくれて、娘の力になってくれてありがとう。そして、同時にすまない。恥ずかしいことに、私達ではウチハの想いに気付けなかった、大人の私が言うのも情けない話なんだがね。……これからもどうか、愛娘の側にいてあげて下さい」
そういって、深々と頭を下げたウチハのご両親。
そんな大袈裟なとたじろぐエイタ。
大人に謝らせちゃうなんてすごい!! とより尊敬の念を深めるウチハ。
三者三様の感情が出揃い、歯車は微かな異音を混じらせるのであった。
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「それじゃあこれよろしくね、ドウゾノさん」
「はい先生」
備品の申請用紙を職員室に出して、教室に戻ろうとした所で、国語の先生に声をかけられた。
クラスのノートをチェックし終えたので、持っていってほしいとのこと。
ついでとばかりに、まだチェックできてない生徒に声かけよろしくとお願いされた。
タイミングわるーと思いながら、両手で抱えると、胸くらいの高さになった。
おっぱいおっきかったら持ちづらそうだなぁーなんてのんきに考えて、下を見て、ズーンと沈んだ。
「ウチハちゃーん手伝おうか?」
「あ、お願ーい」
「職員室に用事?」
「ん───備品の申請ぇ」
「あー部長ってなんだか大変そ」
「うーんどうなんだろ。でも意見通りやすいし、テスト出るとこ教えてくれるし、面接の時に喋れるし。悪いことばっかじゃないよ?」
「私も部長とかやればよかったかなーて時々思うんだけど、文化部だかんなあー」
「無理にやることもないんじゃない? ボクなんて周りに押し付けられる形でなっちゃったし」
「あはは。でもそれだけウチハちゃんが部員に認められてるってことだよ」
「トロフィーもらえませんでしたけどー」
「準決勝惜しかったよねーありゃ相手が悪かった」
「夏休みは部活みっちりだけど、みんなの期待に応えれるように頑張んないと」
「私も夏休み部活あるけど……んー運動部と比べるのも失礼かな。でも今年の夏は作品たくさん作りたい!」
「お互い頑張ろうね!」
「うん!」
二人で拳を突き合わせて笑い合う。
そうだよね、落ち込んでるヒマなんかないよね。
夏休みの予定に話題が変わり、曲がり角に差し掛かった時に彼女が何かに気が付いた。
「あれメツギくんじゃない?」
「え?」
「ほら誰かと一緒にいる……あれは、コツツミさん?」
「……ごめん、先行ってて」
「え? う、うん……」
困惑しながらも去っていく彼女を見送り、ボクは足音を立てないようにしながら二人を見守る。
エイタの一方的な感情。
エイタのことを本当にわかってあげられるのはボク以外いない、もういい加減気付いたらどうなの? と黒い感情を塗り重ねた。
けど、今日は違った。
先に声をかけたのはコツツミさん。
一瞬、見間違いかと目をこする。
だって、ちょっと前までエイタはコツツミさんに無視されてたんだよ?
なのに、ちょっと目を離したスキにどうしてそんなに距離を縮めてるの?
ボクがちょっと構わなかったからって、コツツミさんと関係を持ちたくて頑張ちゃったってこと?
なんで?
どうして?
剣道で結果を残せなかったから?
剣道はエイタが話をつけてくれた大切な場所。
エイタの想いに応えたくて剣道をつづけた。
そしたらエイタは褒めてくれた。
エイタのために剣道にのめり込んだ。
そしたらエイタは笑ってくれた。
友達付き合いも勇気を出してみた。
そしたらエイタは、自分のことのように喜んでくれた。
失敗して上手くいかなかった時も、エイタはずっとそばにいて励ましてくれた。
ボクがエイタにベッタリだったから、しばらくするとクラス中でウワサになった。
ボクは恥ずかしくて、恥ずかしくて恥ずかしくて恥ずかしくて、ボクなんかにエイタはもったいないと首を振った。
泣きたかった、泣き出したかった。
あの頃は自分の気持ちをうまく表現できなかったから、ズキズキと痛む心に暴れ回った。
見捨てられると思った。
だってボク自身、何したいのかわからなかったんだもん。
でも、どこか期待していたんじゃないかな?
エイタなら。エイタならきっと、絶対ボクの味方になってくれるって。
……ずっと、苦しんでる風だった。
やっと、ボクがエイタの力になれる時が来たと思ってた。
けど、いくら待っても。それとなく尋ねても。エイタの味方であり続けても。硬く口を閉じたまま諦めたような顔をするだけだった。
なのに、なのになのになのになのに。
いつの間にボクの知らない人と楽しくしちゃって。黒いウワサがあるからって、念押ししたハズなのにコツツミさんと仲良くしちゃって。ボクが困っていても関係ないねと自分の世界に閉じ籠っちゃって。
なんで? なんでボクじゃないの? ボクは誰よりもエイタのことを考えて、根回しして、頑張って、苦しんでるのに。
ナンデボクヲミテクレナイノ??
バラララッ
気が付いた時にはノートを滑らせていた。
二人の視線が自然と集まる。
エイタの困った顔を見つめる。
壊してやりたかった。心配されたかった。悲しさで一杯だった。
だって、このままエイタはボクをいないもの扱いにして、勝手に幸せになろうとしてるんでしょ?
みんなが笑みを浮かべる未来にヒビが入る。
今さら他の誰かを好きになるなんて考えられない。
ねえお願い、ボクを見て?
じゃないと、ボク何するか自分でもわかんないよ?
やがてエイタは、ボクの気持ちが伝わったのかノートを拾い上げて"悪い"と口先だけで謝りながら手渡し。
そのまま素通りしていった。
……は? なんで謝ってきたの? 悪いことしてる自覚があるのに、なんでボクのこと気にかけてくれないの?
いままでのボクの頑張りはなんだったの?
たった一言の"悪い"で、ボクが気が収まると? 本気で思ってるわけ?
……エイタならわかってくれてると信じてたのに。
遠ざかっていく足音。小さかったヒビ割れがパキリと音をたてて止まらない。
動くことも、声を出すこともできずに。
ただただショックで、ノートの束を握り締めた。
友達に体調の心配をされながら、なんとか放課後まではやり過ごせた。
剣道用具を探して、キョロキョロとロッカー上を探したけれど、見当たらなくて。
ちょっとして。そうだ、今日から部活ないんじゃんと頭をコンコンノックした。
こんなバカだったっけかぁーと目をつぶって心を落ち着けていると……そうだよ、いまなら時間あるじゃん。
エイタとお話しする時間できたじゃん。
そうとわかれば空っぽの学生カバンを振り回して、いくつもの呼びかけを押し切って、エイタを探して走り回る。
エイタだって苦しんだ。
だから"悪い"なんて謝ったんだ。
ボクの知るエイタはどこにもいってない。
だからボクがエイタを追いかけなくちゃ!!
玄関について、下駄箱をのぞきこんで。
上履きが残されているのを確認すると、急いで後を追いかけるために履き替える。
かかとぺちゃんこのまま、ぺったんぺったんスリッパみたいな音を鳴らしながら校門を出て辺りを見渡すと……。
エイタだ。
コツツミさんと密着して。脇の下に手を通されて。交差点で信号待ちしていた。
青に変わった信号に、二人はどんどんと離れていく。
目の前の出来事が信じられない。
このままだとボクは取り残されちゃうと、徐々に目頭を熱くして。
がむしゃらに追いかけるけどすっぽぬけた靴で派手に転んだ。
恥ずかしがってる場合じゃないと靴を拾い上げ、二人のいた交差点に走る。
点滅する青信号。
すりむいた頬が風に撫でられじんわりと痛む。
なんとかギリギリで渡り切って、人混みをかき分けて。
影も形もない二人に、ローファーを両手で抱えながら、ただ立ち尽くすのだった。
へい!ヤンデレお待ちぃ!!次はなにいたしやしょう?
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